対して元検事で弁護士の郷原信郎氏が、〈ブログで首相の発言を批判。取材に対し「三権分立の一角をなす行政の長が、起訴されている被告のことを、司法の場で裁かれていないのに『詐欺を働く人』と決めつけた。無罪推定の原則をおかしており、大変な人権侵害だ」と話した。〉と書いているから、具体的にどういったことを言っているのか、「郷原信郎が斬る」( 2017年10月12日)なるブログにアクセスしてみた。
〈昨夜(10月11日)のテレビ朝日「報道ステーション」の党首討論で、安倍首相が、「籠池さんは詐欺を働く人間。昭恵も騙された。」と発言した。内閣の長である総理大臣として、絶対に許せない発言だ。
籠池氏は、森友学園が受給していた国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」の不正受給の事実についての詐欺罪で逮捕され、起訴された。しかし、刑事事件については、「推定無罪の原則」が働く。しかも、籠池氏は、その容疑事実については、完全黙秘を貫いていると報じられている。その籠池氏の公判も始まっておらず、本人に言い分を述べる機会は全く与えられていないのに、行政の長である総理大臣が、起訴事実が「確定的な事実」であるように発言する。〉――
要するに安倍晋三は既遂判定の段階に至っていない容疑判定の段階でありながら、裁判で既遂が決定したかのように発言していると批判している。
〈法務大臣には、個別の刑事事件に関しても、検事総長に対する指揮権がある(検察庁法14条但し書き)。その法務大臣に対して、閣僚の任免権に基づき、指揮を行うことができるのが総理大臣だ。そのような「行政の最高責任者」が、司法の場で裁かれ、判断されるべき籠池氏の詐欺の事件について、「籠池さんは、詐欺を働いた」などとテレビの総選挙に関する党首討論で、言い放ったのである。法治国家においては、絶対に許せない「首相失格の暴言」だ。〉――
行政の長である安倍晋三が司法の領域に踏み込んで「推定無罪の原則」を破る発言をする。一種の司法侵害に当たる。民主国家と言えども、裁判官が安倍晋三の思いを忖度しない保証はない。
郷原氏はその他に助成金の不正受給を詐欺罪で告発する異例を訴えてもいる。
安倍晋三が番組でどういった発言をしたのか、録画しておいたが、視ないままにしておいた録画のその部分を文字に起こしてみた。文飾は当方。
「報道ステーション」 後藤謙次コメンテーター「森友・加計学園というのは最高責任者としての結果責任が問われていると思います。総理先程『李下の冠を正さず』と仰いましたけども、じゃあ、実際にどう正すのかという部分で、例えば森本問題では総理の指示によってもう一度検証すると、あるいは加計問題については認可問題をゼロに戻すというような決断をするお考えはないでしょうか」 安倍晋三「先ず森友学園の問題なんですが、私が1回もお目にかかっていないということはこれはハッキリとしています。私が1回も指示していないということはハッキリしています。 うちの妻が一度も頼んでいないということも明らかになっていることです。あと問題となっていることは松井さん(日本維新の会代表)が言われたように詐欺です。逮捕され、起訴されました。 これからまさに司法の場で進んでいくんだろうと思います。で、(国有地売却の)値段が通常だったかどうかも、財務省がこれは民間の方々から訴えられているわけですから、捜査当局が明らかにしていくんだろうと思います。 で、詐欺を働く人物のつくった学校の、妻が名誉校長を引き受けたことは、これはヤッパリ問題であったと、こういう人だから、騙されてしまったんだろうなと、こう思う――」 後藤謙次コメンテーター「これはね、総理がちょっと結果を出すようなケジメをつけない限り、あと延々と続いていくんじゃないでしょうか」 ここで安倍晋三ベッタリの日本のこころの中野正志が口を挟んで、「これは規制改革ですよ」などと言って、安倍晋三を援護する。 |
後藤謙次は質問がゆるい。安倍晋三が検証するとか、ゼロに戻すとか言うはずはない。
安倍晋三は相変わらず言い抜け名人の優れた才能を見事に発揮している。「うちの妻が一度も頼んでいないということも明らかになっていることです」と無罪証明をしているが、問題となっていたことは安倍晋三の妻昭恵が森友学園が創設を予定していた小学校の名誉校長であったことから、建設用地となった国有地売却に関して売り主側の財務省の役人が安倍晋三にまで忖度の幅を広げて不動産鑑定評価額9億3200万円の約7分の1、近隣国有地の約1割程度、約1億3400万円のタタキ値で売却したのではないのかという疑惑が持ち上がっていたのである。
この忖度疑惑は国側が地中のゴミの撤去・処理の経費として8億1900万円の値引き額を弾き出したのだが、見積もったゴミの量程に存在していなかったことが様々に指摘されいることと国側がゴミの量を満足に説明できないことから持ち上がる原因の一つとなっている。
安倍昭恵に関して言うと、籠池泰典が当初国有地を10年期限の定期借地契約としていたが、より長い期限の契約変更を望んで安倍昭恵の携帯に電話したところ出なかったから、留守電に依頼の件を入れておいたところ、後日経済産業省出向安倍昭恵付職員の谷査恵子から連絡が入り、谷査恵子自身が財務省に赴き、依頼の件ついて動いている。
当然、谷査恵子は安倍昭恵の指示で動いた。指示であることを伝えることで財務省側にとっては門外漢の経産省の職員が経産省とは繋がりのない用件について尋ねることができ、後に籠池泰典にFAXで返事ができたはずだ。
財務省側は谷査恵子が安倍昭恵の意向で動いていること、安倍昭恵が森友学園の新設小学校の名誉校長となっていることと併せて安倍昭恵に対して何らかの忖度を働かせたのではないのかと疑うことができるし、首相夫人ということで、その背後にいる安倍晋三を忖度の対象としたということもある。
忖度抜きには考えられない8億1900万円という大金過ぎる値引き額となっていることを考慮しなければならない。
もし事実忖度があったとしたら、安倍晋三は役人たちが勝手に忖度したのだと、罪は役人側にあって、自身と妻の昭恵には罪はないとするだろうが、安倍昭恵が直接国側に口利きをしなくても、首相夫人として気をつけなければならないはずだが、忖度を誘い出しかねない疑われる行動をしている。
当然、「うちの妻が一度も頼んでいないということも明らかになっていることです」と、このことを以って無罪証明とすることはできないはずだ。
安倍晋三は森友学園森友泰典のことを「詐欺です。逮捕され、起訴されました」と言い、「詐欺を働く人物のつくった学校の、妻が名誉校長を引き受けたことは、これはヤッパリ問題であったと、こういう人だから、騙されてしまったんだろうなと、こう思う」と妻安倍昭恵を被害者に仕立てている。
現在は削除されているが、森友学園のウェブサイト「瑞穂の國記念小學院」の「教育理念」のページに「教育の要」として次の項目を掲げていた。
〈天皇国日本を再認識。皇室を尊ぶ。伊勢神宮・天照大御神外八百万神を通して日本人の原心(神ながらの心)、日本の国柄(神ながらの道)を感じる。
愛国心の醸成。国家観を確立。
教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)。道徳心を育て、教養人を育成。
「大學」素読による人間学の習得。〉等々。
安倍昭恵が森友学園の「瑞穂の国記念小学院」の名誉校長に就任したのは2015年9月5日、辞任したことが明らかになったのは森友疑惑最中(さなか)の2017年2月24日衆院予算委員会で、「妻は、名誉校長を引き受けていることで、子どもたちやご両親にご迷惑をかけ続けることになるので辞任させていただくと、(学校側に)申し入れた」と発言したことによってだった。
要するに2年半、名誉校長であり続けた。安倍昭恵は名誉校長就任後に「瑞穂の国記念小学院」の公式サイト内の「ごあいさつ」のページに国会で疑惑が追及されてから削除されているが、自身の言葉を載せていた。
〈籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。
瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。
そこで備わった「やる気」や「達成感」、「プライド」や「勇気」が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております。〉――
例えこの教育理念まで詐欺であったとしても、安倍昭恵は文字で書かれたこの教育理念を自らの目を通し、自らの頭で捉えて理解することで、その理念に感銘し、その内容一つ一つを信じたからこそ、名誉校長を引き受けたはずで、その自身の理解は詐欺でも何でもない。
ここには“傾注”という積極性しか窺うことができない。当然、「こういう人だから、騙されてしまったんだろうなと、こう思う」としている加害者に対する被害者の関係はどこからも見えてこない。
籠池泰典が例え裁判で詐欺罪が確定したとしても、このことはあくまでも籠池側の問題であって、財務省側の問題でも、安倍昭恵側の問題でもない。
いわば籠池が詐欺を働くような人だから、財務省が騙されたとか、安倍昭恵が騙されたという関係にあるわけでは決してない。理由は断るまでもなく、詐欺と国有地格安売却に繋がったのではないかと疑われている安倍晋三に対する財務省側の忖度はまるきり別問題だからである。
疑われている安倍晋三に対する忖度はあくまでも安倍昭恵を通して財務省側へ発信の進路を取ったと見られている。籠池泰典が例え「詐欺を働く人物」であったとしても、国有地格安売却に関して安倍晋三に対する忖度という形が何ら関与していないと断定できる否定証明とは決してならない。
だが、安倍晋三は裁判で確定していないにも関わらず、籠池泰典を「詐欺を働く人物」と決めつけ、そのような人物であることを理由に自身に対する忖度はなかったこととする矛盾した否定証明に用いている。
まるで詐欺同然の論理となっている。無罪証明に詐欺同然の論理を駆使する。加古池泰典に100万円寄付したとされることを含めて、まともな論理展開では無罪を証明できないからではないだろうか。