二階俊博の街頭演説「黙っておれ」は民主主義でも何でもない 安倍晋三の野党議員質問へのヤジと同じ悪質性

2017-10-17 10:48:04 | 政治

 公共事業を地元利益誘導の道具とした自民党運輸族ドンの自民党幹事長二階俊博が10月14日、大阪府守口市での公明前職応援の街頭演説中にヤジを続けた聴衆を「黙っておれ」と厳しく制して、演説を中断する一幕があったと「朝日デジタル」(2017年10月14日17時29分)記事が伝えていた。

 文飾は当方。

 〈二階氏の演説が始まると、聴衆から「消費税を上げるな」とヤジが飛んだ。二階氏は最初は「ちょっと。演説中だから黙ってなさい」と控えめに注意していたが、ヤジは止まらなかった。

 二階氏は演説を中断し、「分かったから、黙っておれ」と声を荒らげた。「世の中にはいい加減な人もおる。自分も何でも持ってきてこの上に立って(演説を)やればいい。こっちがやっているときにいらんことを言うのは許されない」〉――

 二階俊博のこの咎め立てに別の聴衆が「そうだ」

 二階俊博「これが民主主義ってもんだろう。ねえ」

 そう呼びかけて演説を再開した。

 何が民主主義なのか皆目見当がつかない。聴衆が賛成できない政策を延々と述べるのを「いらんことを言」わずに最初から最後まで黙って聞くのが民主主義ということなのか。あるいは賛成できない候補者の遊説だった場合、「いらんことを言」わずに黙って去るのが民主主義なのか。

 逆に民主主義だからこそ、反対の政策にヤジを飛ばすのができるのではないのか。独裁国家だったら、反対の政策を押しつける長々とした演説に対して見咎められたら何をされるか分からないからと、その場から離れることもできず、内心の思いに反して終わりまで聞き届けて最後は手を叩いたり、両手を上に上げて「バンザイ、バンザイ」と叫んだりして賛意を示したり、歓迎をしていることを示さなければならない。

 公共事業を地元利益誘導の道具とした自民党運輸族ドンの二階俊博は「自分も何でも持ってきてこの上に立って(演説を)やればいい」と言っているが、本当にそうしたなら、許してくれるだろうか。

 許すはずはない。警戒中の警察官に排除させるのがオチだろう。

 聴衆は「消費税を上げるな」とヤジを飛ばした。そのヤジが繰返されるようだったなら、いくら穏やかな口調を用いようとも、「黙ってなさい」と沈黙を強制するではなく、消費税増税の政策遂行の側に立ち、しかも自民党幹事長に鎮座している要職者なのだから、増税の決定に至った経緯や増税の必要性を説得する臨機応変な対応が必要ではなかったのか。

 そのような対応を取っても相手が納得せずにヤジを続けるようなら、自分たちの横に招いて増税反対の主張を述べさせて、その主張に対して自分たちの意見を述べる。

 ギリギリまでそういう対応を取ってこそ、民主主義と言うものではないのか。

 もしそういう対応を取っていたなら、神対応だと持て囃されたに違いない。

 だが、神対応とは程遠く、「黙っておれ」とヤジを飛ばした聴衆を沈黙させ、「こっちがやっているときにいらんことを言うのは許されない」というおかしな民主主義を持ち出した。

 与党自民党の幹事長でありながら、道理を尽くしたとは決して言えない。

 この「黙っておれ」の沈黙の強制はヤジの聴衆に対してだけではなく、増税反対の国民の声を間接的に封じ込めるのと同じ作用をもたらしたはずだ。「いらんことを言うのは許されない」との文意を持たせて。

 もし二階俊博が結果的に相手が納得しなくても、増税の決定に至った経緯や増税の必要性を説く、至って道理を尽くす態度を見せていたなら、増税反対の国民の声に対する間接的な封じ込め作用も、「黙っておれ」と威圧的な態度を見せた二階俊博に対する反発も引き起こすことはないはずだ。

 聴衆のヤジに対して二階俊博の「黙っておれ」、あるいは「いらんことを言うのは許されない」の発言に正当性が与えられるとしたら、国会の場での野党議員の質問中に安倍晋三が総理大臣席から飛ばしたヤジに対しても同じ言葉を以ってして沈黙を強制しなければならなくなる。

 勿論、安倍晋三の自席からのヤジは民主主義でも何でもない、そのカケラさえない。なぜなら、質問に対する答弁という形で反論の機会が与えらているからで、ヤジを挟む必要性も余地もないからだ。にも関わらず、質問の途中でヤジで応酬するのはヤジで使った言葉、あるいはヤジで発信した意味内容を答弁では用いることができず、ヤジとするしかないからだ。

 例えばネットで流布しているが、2015年2月19日の衆議院予算委員会での民進党玉木一郎に対する安倍晋三のヤジを取り上げてみる。国からの補助金を受けている法人からの1年間の政治献金禁止の政治資金規正法に反して当時の農水相の西川公也(こうや)のそのような法人からの献金を玉木一郎が取り上げた。

 西川公也は献金の事実を認めたが、「補助金の交付決定を知らなかったことから、違法性の認識なかった。道義的見地から補助金を受けていたことが分かった時点で返金を済ませた」と答弁。

 玉木雄一郎は西川公也が政治献金を受けた別の法人を取り上げ、その法人が国から補助金を受けている別法人と住所が同じ、トップも同じ、役員も同じの実質同じ組織で、ダミー会社を迂回させた脱法的な献金ではないかと追及すると、西川公也はその指摘は当たらない、あくまでも別法人だと答弁。

 対して玉木雄一郎は「政治資金規正法の趣旨を考えると、こんなことを許している法律は改正すべきなんですよ」と主張。

 そのとき安倍晋三が自席から「日教組、日教組、日教組はやっているよ」とヤジを飛ばした。

 玉木雄一郎「総理、ヤジを飛ばさないでください。今、私が話していますから。ヤジを飛ばさないでください、総理。これは真面目な話ですよ。政治に対する信頼をどう確保するかの話をしているんですよ」

 大島委員長「いやいや、総理もちょっと静かに」

 安倍晋三「日教組はどうするんだよ」

 玉木雄一郎「日教組のことなんか、私は話していないじゃないですか」

 北海道5区の小林千代美民主党衆院議員の会計担当が2009年8月の衆院選に絡み、北海道教職員組合側から1600万円の資金提供を受けて選挙費用に充てていたとされる容疑で 2009年10月に札幌地検特特捜部から家宅捜索を受け、その後逮捕され、2010年2月に裁判で政治資金規正法(企業・団体献金の禁止)違反で資金提供側、資金受領側共に有罪判決が出ている。小林千代美はその責任を取って議員辞職した。

 安倍晋三はこの事件を指して「日教組はやっているよ」とか、「日教組はどうするんだよ」とかヤジったのだろう。但し「日教組」という言葉にしても、その意味内容にしても、西川公也の政治献金は日教組の政治献金みたいに悪質ではない、大したことはない、あるいは軽いもんだと免罪する思いを含んでいて、質問に対する答弁の中ではとても使うことができない言葉、あるいは意味内容だから、ヤジを使って発信するしかなかったのだろう。

 だからと言って、許されるわけではない。西川公也が国の補助金を受けている法人から政治献金を受けいてたことと日教組の過去の政治資金規正法違反事件はあくまでも別個の問題である。にも関わらず、悪質性の比較で西川公也の政治献金に絡めて大した問題ではないとしようとした。

 安倍晋三はヤジを使って理屈に通らない卑怯な振舞いに及んだに過ぎない。却ってその悪質性は計り知れない。

 二階俊博の聴衆の消費税増税反対のヤジに対して増税の決定に至った経緯や増税の必要性を増税側の政治家としての説得の役割を果たさずに「黙っておれ」と声を荒げ、こっちがやっているときにいらんことを言うのは許されない」と、それがヤジの類であったとしても一方的に抑えつけようとした悪質性とどっこいどっこいではないか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする