麻生太郎の自民党圧勝「北朝鮮のお陰」は北の脅威・危険性に対して「左翼」を同類の脅威・危険性扱いし冒涜

2017-10-28 10:45:49 | 政治

 副総理兼財務大臣、天下の麻生太郎が10月26日(2017年)、東京都内での自民党議員のパーティーで「自民党圧勝は北朝鮮のお陰」と発言したと同日付マスコミが一斉に報じた。

 麻生太郎の誹謗中傷失言には慣れっこになっていたから、またかと思った。失言に対して釈明する、このパターンも例の如くで、慣れっこになっている。

 麻生太郎の失言はその意味どおりの「言ってはいけないことをうっかり言う」ということではなく、不適当、あるいは不穏当な間違えた見解が多い。要するに解釈能力が人並みに追いつかない場面を多々見せる。

 先ず10月26日付「NHK NEWS WEB」記事から、その発言を取り上げてみる。    
 
 麻生太郎「(自民党圧勝によって)いわゆる『左翼』という勢力が2割を切ったのは、始まって以来のことが起きたというふうな感じがしている。明らかに北朝鮮のお陰もあるだろうし、色んな方々が色んな意識を持ったんだと思う。特に、日本海側の遊説をしているとつくづくそう思った。

 安全保障の面でも極めて難しい状態になってきた状況にあって誰をリーダーにするのかを有権者に真剣に考えていただいたことが、この結果を招いたんだと思う。その負託に応えるためにも、私たちはしっかり対応していかなければならない」

 もし「北朝鮮のお陰」で左翼勢力が「2割を切った」と言うことなら、自民党圧勝は相対的選択ということになって、安全保障の面から「誰をリーダーにするのか」は主体的選択、あるいは絶対的選択ではないことになって、リーダーの選択を「有権者に真剣に考えていただいた」と言っていることは間違った解釈ということになる。

 より事実に近づけるなら、左翼勢力に1票を投ずるよりも、よりマシな選択として安倍自民党に1票を投じた結果、偶然にも自民党圧勝という現象を招いたと解釈すべきだろう。

 このことは朝日新聞社の10月23、24日両日に実施された、定数3分の2を超える与党の議席数の是非について尋ねた世論調査の結果に現れている。

 「ちょうどよい」32%
 「多すぎる」51%
 「少なすぎる」3%
 「その他・答えない」14%

 安倍晋三は少子高齢化と並べて北朝鮮の脅威・危険性を「国難」と位置づけて衆議院を解散、総選挙に打って出て、選挙に圧勝した。現時点で北朝鮮と言うとき、国家安全保障上の脅威・危険性を属性とした国家と看做す慣例となっている。

 安倍晋三はこの属性(脅威・危険性)によってそのまま「国難」と位置づけることができた。

 麻生太郎は北朝鮮の脅威・危険性を「左翼」と位置づけた野党にも当てはめて同じ脅威・危険性を抱えていると見做す同類扱いをしたのである。だから「北朝鮮のお陰」で「『左翼』という勢力が2割を切った」という解釈を成り立たせることができる。

 麻生太郎が北朝鮮を脅威・危険性を属性とした国家と看做していなければ、あるいは看做していたとしても、日本の左翼勢力が北朝鮮の脅威・危険性とは無縁と見ていたなら、「北朝鮮のお陰」で「『左翼』という勢力が2割を切った」という解釈に繋がることは決してない。

 野党の中で「左翼」と位置づけられる政党であっても、非合法政党ではなく、全て合法政党である。立候補者を立てることができ、投票で必要票数を獲得すれば、国会に議席を得ることができ、5議席以上か、直近の総選挙、直近とその前の参院選挙のいずれかに於いて全国で2パーセント以上の得票を獲得すれば、政党と看做される。

 にも関わらず、麻生太郎は左翼勢力を北朝鮮と同類扱いし、北朝鮮と同じ脅威・危険性を抱えていて、そのことが悪影響して議席を「2割を切った」と発言した。

 では例の如くと言うか、恒例となっている失言の後の釈明発言を10月27日付「NHK NEWS WEB」記事から見てみる。  

 麻生太郎(10月27日に記者団に対して)「国民は北朝鮮からの一連の危機に、どうやったら対応できるのか、いちばん対応できる政権はどの政党の組み合わせかということで選んだということだ」

 10月26日発言の前段部分を省略して後段部分のみを繰返した釈明となっている。但し前段部分を省略することによって、10月27日釈明は有権者が主体的選択、あるいは絶対的選択を経て安倍自民党を圧勝に導いた文意となり、10月26日発言の後段部分の文意とは著しく異なることになる。

 いわば巧みに誤魔化した。

 新聞・テレビのマスコミが伝えている麻生太郎の10月26日発言は一部分を切り取ったたもので、悪意や面白おかしさを狙ってバイアスを掛けている場合が無きにしも非ずだが、挨拶後の全発言を載せているネット記事があったから、参考のために引用してみる。

  【文字起こし】麻生太郎副総理の「北朝鮮のおかげ」発言、前後を含めた書き起こしTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」/2017.10.28 土曜日02:24 )  
麻生太郎副総理兼財務相が10月26日、東京都内での自民党議員のパーティーで、衆院選での自民党の圧勝について「明らかに北朝鮮のおかげもある」などと発言したことについて、前後の文脈も含めて書き起こしました。

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(あいさつの後)

22日におこなわれました衆議院の選挙で、自由民主党は284議席というのを頂戴しましたが、われわれ衆議院の方は10議席、465議席に議席が減っていおりまして、その減った分はほとんど自由民主党だけが10議席減ったみたいなところだったもんですから、そういった意味では274で普通なところが、引き続き284という議席をいただきましたんで、いわゆる議場の占有率から言ったら前より遥かに良くなったことを意味しておると思って、大変私ども喜んでおります。

また、昭和30年に自由民主党が、時の民主党と自由党と一緒になって自由民主党が、社会党左派と右派が一緒になって日本社会党というのができたんですが、あれ以来、今日まで60数年経ちますが、少なくとも社会党・共産党等々のいわゆる左翼という勢力が3割を切ったなどという歴史はこれまで一回もありません。

今回はいわゆるまあ共産党と、まあ立憲だが護憲だか知りませんけれども、あの政党が左翼だという前提に立って計算しても66、社会党が2議席で69ですか。465分の69ということはパーセントでいけば、17%くらいということになりましょうか。したがって、2割を切ったなどというのは、これはもう始まって以来のことが起きたんだというように、私はあの数字を見てるとそんな感じがしております。

明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろいろな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだと思って、特に日本海側の遊説をしていると、つくづくそう思って、声をかけられる話が、そういう声をかけられるのが凄い多かったのが、遊説をしていた私どもの正直な実感です。

いずれにしても、大きく私どもの時代というものが、独立この方、かなりの時間が経ちますけども、最もなんとなく、前の安全保障の面でも極めて難しい状態になってきたという状況にあって、誰をリーダーにするかというのを有権者の方々で真剣に考えていただいた結果が、今日の結果を招いたと思っていますが、その負託に応えるためにも、私どもきっちり、その対応をやっていかねばならんと思っています。

いずれにしても、これまで自由民主党、衆参で過半数、衆参で2/3、そういったことをきちんと持てるようになって、はじめて政権が安定する。政権の安定が結果として、政治というか、経済の安定、経済政策の安定、経済政策の持続的な安定というのが確保でき、結果としてその期待があって、自由民主党がどうやら勝ちそうだとなった途端に、株価は14日間連続で、20日まででしたかね。14日間連続で株価が上がってったんだと思っております。是非とも、いろんな意味で時代に応えるべく、そういった数字に、期待されている数字に応えねばならないのが我々の責任だと思っていますので、衆参で手を合わせて頑張って参りたいと思っていますので、今後とも、よろしくお願い申し上げてご挨拶にかえさせてもらいます。ありがとうございました。

 上記文言から左翼を北朝鮮と関連付けた発言のみを取り出してみる。

 今回はいわゆるまあ共産党と、まあ立憲だが護憲だか知りませんけれども、あの政党が左翼だという前提に立って計算しても66、社会党が2議席で69ですか。465分の69ということはパーセントでいけば、17%くらいということになりましょうか。したがって、2割を切ったなどというのは、これはもう始まって以来のことが起きたんだというように、私はあの数字を見てるとそんな感じがしております。

明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろいろな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだと思って、特に日本海側の遊説をしていると、つくづくそう思って、声をかけられる話が、そういう声をかけられるのが凄い多かったのが、遊説をしていた私どもの正直な実感です。

 最初の「NHK NEWS WEB」記事が取り上げた麻生発言は一部分を切り取り、ある程度要約しているが、何らバイアスがかかっていないことが分かる。

 麻生太郎は共産党と立憲民主党、そして社民に対してそれらが合法政党であるにも関わらず北朝鮮と同じ脅威と危険性を抱えた「左翼」に貶める同類扱いの冒涜を働いたのである。

 合法政党に対するこのような冒涜が一国会議員の発言であったとしても許されるはずはなく、ましてや副総理兼財務大臣の重職を任され、国家運営の一翼を担っている国会議員が働いた冒涜であるならば、たちまちその資格を失うはずである。

 単に副総理兼財務大臣の辞任ではなく、議員辞職に相当する重大な罪を犯したと指弾できる。

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