安倍晋三街頭演説:円安恩恵の訪日外国人数を誇るが、プラスマイナスの二面性に気づかないアベノミクス自慢

2017-10-20 11:01:44 | 政治

 2017年10月19日付19時01分の「NHK NEWS WEB」記事が同日の各党代表、あるいは代表の各地での街頭演説を伝えている。安倍晋三のみ拾ってみる。 

 京都府城陽市での街頭演説

 安倍晋三「観光客もずいぶん増えた。800万人だった海外からの観光客はいま2400万人。おそらく、もっと増えていくと思う。この海外からの観光客がずいぶんお金を使っている。

 日本人は1人平均5万円だが、外国人は15万円使う。全国では今なんと4兆円も使っている。前政権時代にはたった1兆円だった。もっともっとおそらく伸びていくと思う。

 この近畿にも平等院があり、来月には熱気球フェスタというものもあると聞いているが、ぜひ海外からきてもらい、帰りには茶だんごでも買って、抹茶ソフトもついでに食べてもらう。こうやってこの地域にもどんどんお金を落としてもらいたい」

 「時事ドットコム」「首相動静(10月19日)」)を見ると、京都府城陽市での街頭演説は大型量販店「アル・プラザ城陽」前で午後2時36分から3時12分まで36分間行われたようだ。    

 城陽市以外は奈良県生駒市、大津市、京都市西京区などで街頭演説を行い、昼飯は午後1時35分から奈良市の「お好み焼・鉄板焼 きん太 奈良二条大路店」で秘書官と摂り、その後利用客や従業員と記念撮影をしたそうだ。終始ご機嫌のいい表情を浮かべていたに違いない。

 安倍晋三のこの訪日観光客自慢は日本政府観光局の10月18日の発表を早速利用したものなのだろう。都合の良い統計は何でも利用するが、都合の悪い統計はスルーする。

 日本政府観光局が発表した9月の推計訪日客数についての報道を2017年10月18日付「NHK NEWS WEB」記事から、その内容を見てみる。  
 
 2017年9月の訪日観光客数は9月としては過去最高約228万100人(昨年同月比+18.9%)

 国や地域別人数

 中国人 67万8300人(昨年同月比+29.9%)
 韓国人 55万6900人(昨年同月比+29.3%)

 この記事では他の国の客数は記載していないが、「日本政府観光局」のPDF記事を見てみる。   

 第3位は昨年同月比+0.1%しか増加していないが、台湾の34万7800人。以下、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドとアジア勢が続き、次いでオーストラリア、米国、英国、カナダ、フランス、ドイツと欧米が続いている。

 アメリカは(昨年同月比+3.5%)の10万200人と10万人以上を記録しているが、 英国以下は3万人以下となっていて、アジアに偏った訪日となっている。

 観光庁公表の今年2017年1月から9月までの外国人旅行者消費金額は推計約3兆2700億円。この3兆超えはこれまでで最も早いペースだとしている。

 上記「NHK NEWS WEB」記事はこの増加の理由として韓国との路線でLCC=格安航空会社の増便や新規就航が相次いだことや、中国の観光客に対するビザの発給要件が緩和されたことを挙げている。

 何よりの理由は一時的に円高に触れたが、民主党政権時代から比較したなら、格段に円安となっている為替にあるはずだ。民主党政権時代の2011年はドル円相場は79円80銭にまで円高となっている。現在は112円80銭。1ドルが1.41倍になる。円安が120円に達したときは約1.5倍にもなった。

 日本円で言うと、1万円持っていると、1万5千円分の使い勝手が出ることになる。日銀の金融緩和策が円安に貢献し、その円安が貢献することになった訪日観光客数の増加である。

 2016年1年間の訪日観光客数は過去最高の2403万9 千人を記録しているから、安倍晋三が「800万人だった海外からの観光客はいま2400万人」は間違っていない。

 だが、訪日観光客数の増加によってウハウハと歓迎している一方の状況に対して円安の影響で原材料や製品そのものを輸入に頼っている生活必需品の値上がりが中低所得者の生活を直撃している現実がもう一方にある。

 厚生労働省が2017年2月22日発表の「毎月勤労統計調査 平成28年分結果確報)」によると、物価の影響を加味した実質賃金は2012年前年比-0.9%、2013年前年比-0.9%、2014年前年比-2.8%、2015年前年比-0.9%とマイナス続きで、2016年になってやっと前年比+0.7%と僅かばかり増えたのみである。  

 この要因は上記PDF記事に現金給与総額が2013年前年比-0.4%とマイナスとなっているが、2014年前年比+0.4%、2015年前年比+0.4%、2016年前年比+0.5%と3年連続で僅かずつ増えていることと原油安や円高で物価が下がったことにあるだそうだが、現金給与総額が2014年、2015年と僅かながらプラスに転じながら、同じ2014年と2015年の実質賃金がマイナスだったことは2016年の実質賃金前年比+0.7%は給与よりも原油安や円高がより貢献したプラス転換に見える。

 つまりアベノミクスの成果だと振り回して自慢する程のことはない2016年の僅かばかりの実質賃金のプラスであって、その要因の一つが円高だとしても、これまでの急激な円安をほんの少し修正した、言ってみれば円安圏内の僅かな円高であって、全般的には中低所得層を直撃している生活費高騰に一息つくことを許す程の影響を与えることができるわけではない。

 統計上、少しぐらい実質賃金が上がっても、一般生活者の可処分所得を窮屈な状況に追い込んでいることに変わりはないということである。だからこその「景気の実感を感じない」の世論調査に於けるアベノミクス評価であろう。

 アベノミクスがその程度でありながら、安倍晋三は京都府城陽市での街頭演説で、「日本人は1人平均5万円だが、外国人は15万円使う」と外国人観光客の1人当たりの消費額をアベノミクスの成果の一つに付け加えて自慢する。

 外国人の場合、少ない訪日機会で1度に多くの買い物をするという状況はあるだろうが、例えそうであったとしても、日本人観光客が日本国内の旅行で1人当たり外国人観光客よりも10万円も少ない5万円しか消費できないという数字上の差額が数字だけを意味するものではないことを考えもしない。

 日本人観光客1人平均5万円は日々切り詰めて、1円でも安いスーパに買物に行くという一般化している状況の反映でもあり、アベノミクスで拡大した経済格差によってカネに余裕のある者が観光の機会をより多く持つことができ、カネに余裕のない者が観光の機会を僅かか、全然持てない状況にあることの反映でもあるはずだ。

 要するに物事は殆どの場合、プラスとマイナスの二面を併せ持つ。一国の首相がプラスだけを言うことは、マイナスの影響を受けている国民を蔑ろにしていることになる。

 安倍晋三は都合の悪い統計、あるいは都合の悪い状況に目を向けず、都合の良い統計、都合の良い状況にのみ目を向けることでしかアベノミクスの成果とし得ないから、現在の格差社会を「真っ当な社会」と言い放つことができる。

 誤魔化しの多いアベノミクスであることに気づかなければならない。現在、安倍晋三はアベノミクスの誤魔化しを各地の街頭演説でバラ撒いている。

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