加計学園獣医学部新設認可に学園理事長の加計孝太郎と30年来の腹心の友である安倍晋三の政治的関与があったのではないかとの疑惑が持ち上がっているが、加戸守行前愛媛県知事が参考人招致の国会答弁で「12年間加計ありきだった」と答弁していながら、国家戦略特区諮問会議の議事録にも国家戦略特区ワーキンググループ議事録にも「加計」の名前が、加計学園が新設獣医学部の事業主体に決まるまで一言も出てこなかった奇妙な事実を改めて考えてみることにした。
安倍晋三が国家戦略特区を利用した加計学園獣医学部新設認可に対する安倍晋三自身の政治的関与疑惑の否定に用いる理屈はほぼ次のとおりと決まっている。
「2017年10月8日8党党首討論会」(日本記者クラブ) 志位和夫共産党委員長「冒頭解散を強行した理由はただ一つ、森友・加計疑惑隠し、これ以外にないではないですか。そうでないと言うんだったら、冒頭解散の理由をはっきり説明していただきたい」 安倍晋三「まず、いわゆる森友問題、そして獣医学部の新設の問題についてでありますが、私もこれまで予算委員会や閉会中審査において丁寧に説明を重ねてまいりました。一部説明の足りない点、あるいは姿勢については反省すべき点はあると思いますが、ただ、委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています。 また、民間議員の八田(達夫)委員も初め、原(英史)さんもそうなんですが、民間議員の皆さんは口をそろえて、一点の曇りもないということは明確にされています。 また、愛媛県の加戸知事は、ずうっとこの問題に取り組んでこられた。門をあけようと頑張ってきた方でありますが、行政が歪められたのではなく、歪められた行政が正された、こう言っておられます。 あの予算委員会を全部ご覧になった方、全部ご覧になった方は、かなり納得をしていただいたのではないか。この報道されなかった部分も含めて、ご覧になった方々はかなり納得されたのではないかと思います」(文職は当方) |
《第48回衆議院総選挙の結果をうけて 安倍総裁記者会見質疑》(logmi/2017年10月23日) 記者「幹事社、西日本新聞のイトウと申します。森友学園問題や加計学園問題についておうかがいします。 野党は先の臨時国会冒頭での開催について、『森友・加計隠し』と批判してきました。今回の衆議院選挙の結果は、森友・加計学園問題についてすでに十分に説明し、国民から理解を得られたからだと受け止められているんでしょうか。 また各種世論調査では、内閣支持率はなお下回っています。この状況にどう向き合っていくお考えでしょうか。 安倍晋三「この問題については、私の予算委員会、あるいは閉会中審査において、相当時間をかけて、また丁寧に質問にお答えをさせていただきました。そのなかにおいて、前川(喜平)前次官も含めて、私から依頼された、また支持を受けたという方は1人もいなかったということが明確に明らかになりました。 そしてまた、特区のプロセスを進めてこられた民間議員のみなさまは、「プロセスには一点の曇りもない」と述べておられました。 また、ずっとこの獣医学部の新設に信念を持って努力をされてきた、ドアを叩き続けてこられた加戸(守行)前愛媛県知事は、行政が歪められたのではなく、歪められた行政を正したのであると明確に述べておられました。 こうした、あまり報道されなかった部分も含め、公開審議をすべてご覧になった方には、かなりご理解をいただけたものと思っております」(文飾当方) |
安倍晋三が「委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています」と言っていることは2017年10月9日の当「ブログ」に書いたが、親分が表に出ないで、いわば陰に隠れていて、表の仕事は子分にやらせると言った悪事の構図、あるいは役割の構図はこの世の中にいくらでも存在する。
2017年7月24日午前衆院予算委員会閉会中審査 前川喜平前文部科学事務次官「この今治市における加計学園の獣医学部の新設の問題につきましては、文部科学省は基本的には内閣府からさまざまな指示を受けていたということでございますので、その結果はペーパーに残っておりまして、その中に、官邸の最高レベルの言っていること、あるいは、総理の御意向と聞いている、こういう文言があることは御承知のとおりでございます。 私は、これは事実であるというふうに思っておりますし、そのように恐らくは内閣府の藤原当時の審議官がおっしゃったのであろう。その先のことは、これはわかりません。藤原さんが誰からそれを聞いたのか、それはわかりません。 私自身は、総理から直接伺ってはおりませんが、しかし、9月9日と記憶しておりますけれども、和泉総理補佐官から、国家戦略特区における獣医学部の新設について文部科学省の対応を早く進めろ、こういう指示をいただきまして、その際に、総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ、こういうお話がございました。これにつきましては、私は、総理は御自身では言えないのだというふうに思いましたので、そのことについて総理にお伺いするということは考えてもみなかったわけであります」(文飾は当方) |
勿論、総理補佐官の和泉洋人はそんなことは言っていないと否定している。だが、前川喜平前事務次官が紹介した和泉洋人の「総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ」という言葉からは、安倍晋三を親分に譬えると、親分が表に出ないで、いわば陰に隠れていて、表の仕事は和泉洋人や萩生田光一といった子分にやらせる悪事の構図、あるいは役割の構図の究極の姿と見て取ることができる。
もしこのような悪事の構図、あるいは役割の構図のもとに安倍晋三の政治的関与が密かに進められたとしら、安倍晋三が「委員会の中で明らかになったことは、前川さんも含めて、私から言われた、あるいは私が関与したと言った方は一人もいないということは、明らかになっています」とどのくらい声をからして何度言おうと、政治関与ゼロの証明にはならないということである。
大体が安倍晋三が行政を歪める不正行為を表に出て正々堂々とやらかすはずはない。息のかかった忠実な子分に命じて実行させるというのは相場が決まっている。
また安倍晋三は加戸守行前愛媛県知事の閉会中審査の発言を利用して、「愛媛県の加戸知事は、ずうっとこの問題に取り組んでこられた。門をあけようと頑張ってきた方でありますが、行政が歪められたのではなく、歪められた行政が正された、こう言っておられます」と、このことを以って自身の無罪の証明に何度となく使っているが、加戸守行も安倍晋三を親分とした悪党集団の一味と見ると、少なくとも安倍晋三側に立つ人物となっている以上、この発言を額面通りに受け止めることはできない。
加戸守行の2017年7月10日の参議院閉会中審査での発言。
加戸守行「加計ありき、加計ありきと言われますけど、12年前から声を掛けてくれたのは加計学園だけであります。私の方からも東京の有力な私学に声を掛けました、来ていただけませんかと。けんもほろろでした。
結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました。今更、1年、2年の間の加計ありきじゃないんです。それは、愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に積もっているからでもあります」
加戸守行は現在今治商工会議所特別顧問をしていて、2016年9月21日の「第1回今治市特区分科会」に民間事業者として出席、《獣医師養成系大学・学部の新設について》なる「資料4」を提出している。
「資料4」には、「1、獣医師養成系大学・学部の新設についての背景」、「世界に冠たる先端ライフサイエンス研究を行う国際教育拠点」云々等々の「2、新設する大学・学部の目指す基本コンセプトの趣旨」、「3、既存の大学・学部との関係」、そして最後に「4、近年の獣医師に関する需給バランス (試算)」が取り上げられている。
問題になるのは3の「既存の大学・学部との関係」の項目にあるから、その説明を記載してみる。
〈・既存の大学・学部では、一律の教育(コアカリキュラム)が主であり、上記1にあるような新たな分野への対応(アドバンス教育)は、専門教員の不足もあり、十分な取組がなされているとは言えない。
・ 具体的には、大学基準協会の獣医学教育に関する基準(改定案)によれば、学生入学定員数を30~120人とした場合、アドバンス教育まで含めた場合の必要な専任教員数は、68~77人以上とされているが、ほとんどの大学では十分でない。〉
この「3、既存の大学・学部との関係」についての分科会での加戸守行の説明を見てみる。内閣府特命担当相の山本幸三が分科会の議長、内閣府地方創生推進事務局審議官の藤原豊が進行役として出席している。
加戸守行「次に、3でありますが、『既存の大学・学部との関係』についてであります。
既存の獣医師大学・学部では、コアカリキュラムが主でありまして、人獣共通感染症や越境国際感染症、あるいは食の安全などの新たな分野への対応は、専門教員の不足ということもありまして、十分な取り組みがなされているとは言えない状況にあります。
今回構想しております新設の獣医大学・学部では、新たな分野に応えるアドバンス教育を実施するため、必要な教員数を確保することが必要であると考えております」
これだけの説明である。
終わに次のように発言している。
加戸守行「最後に、今治市あるいは愛媛県におきましては、経済界を挙げて獣医学部新設の実現を強く期待しております。
以上であります」
山本幸三も藤原豊も、加戸守行の説明に対して何も質問はしていない。民間有識者として出席している アジア成長研究所所長の安倍晋三ベッタリの八田達夫の「資料4」に関する発言を取り上げてみる。
八田達夫「ご提案のもともとの趣旨は、加戸特別顧問が御説明になりました。そのときに用いられた資料4のお話というのは、実に説得的だったと思います。物事を提案するときにはこうしなければいけないというモデルのようなものでした。
まず、現在ではライフサイエンス研究において、獣医学部というものが人間の医学に関しても非常に役に立つという新しい状況になった。しかし、それにもかかわらず日本の獣医学部は国際水準に到達していないので、その研究水準を高める必要がある。
もう一つは、地元の感染症に関する危機管理の人材を育てる必要もある。西日本ではこの人材の要請が極端に不足しているのだから、西日本でこういうことをやらなければいけない。これは非の打ちどころのない御説明だったと思います。私はこれはぜひ推進していくべきだと思っております」
加戸守行の「資料4」の説明を「実に説得的だった」とヨイショしている。
「既存の大学・学部との関係」で、「新たな分野への対応(アドバンス教育)は、専門教員の不足もあり、十分な取組がなされているとは言えない」、「学生入学定員数を30~120人とした場合、アドバンス教育まで含めた場合の必要な専任教員数は、68~77人以上とされているが、ほとんどの大学では十分でない」と資料で既存の大学・学部の不足を指摘している以上、新設を目指している獣医学部はアドバンス教育に関してはどのようなカリキュラムを設ける方針でいるのか、何人ぐらいの専任教員数の確保を目指し、その目途を立たせることができるのか等々、不足を補って既存の大学・学部よりも教員や施設の規模・教育内容共に優れているとすることのできる比較を後に持ってこなければ、獣医学部新設要請の説得力ある説明とはならないはずだ。
にも関わらず、この程度の説明を安倍ベッタリの八田達夫は「実に説得的だった」とヨイショし、 加戸守行は「12年間、加計ありきで参りました」と発言している以上、「既存の大学・学部との関係」、いわば既存の大学・学部との比較は頭の中に加計学園を置いているはずだし、置いていなければ、既存の大学・学部の不足に言及する比較はできないはずだが、加計学園の一言も発していない。
対して山本幸三にしても内閣府審議官の藤原豊にしても、加戸守行が既存の大学・学部の不足を指摘している以上、頭に想定していなければならない新設の獣医学部がどのような獣医学部なのか、事業主体は何者なのか、一言も聞かずに既存の大学・学部との比較だけの説明で終わらせている。
もう一つ、2017年8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月5日開催の政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG・座長八田達夫)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、加計学園幹部が出席していたにも関わらず、名前も発言も議事録に記載されていないと報道、その報道に対して八田達夫が敏感に反応、同じ2017年8月6日付で、「国家戦略特区WG」(平成27年6月5日)の議事要旨について」と題して、〈今治市が独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させたが、特区WGの提案ヒアリングでは、通常こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはない〉と、議事要旨に加計学園関係者の発言を記載しなかったことの正当性を謀っているが、付け加えられている次の一文がその正当性を怪しくする。
〈その後、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから、議論経過をできる限りオープンにすべきと私が考え、提案主体とも再度協議し、本年3月6日に議事要旨を公開しました。その際、当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整しました。〉
2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ」の議事要旨を2017年3月6日に公開した。この1年9カ月後というのは何を意味するのだろうか。
考えられることは加計学園の関係者の出席と発言をそのまま議事要旨に載せることは不都合と考えて、議事要旨自体を非公表とする予定でいたが、非公表に対する批判を恐れて加計学園関係者を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはないと決めることにした「説明補助者」に仕立てて公開することにしたということであろう。
なぜなら、獣医学部新設の認可を巡る国家戦略特区諮問会議と付随するワーキンググループの議論である。国家戦略特区は自治体指定であったとしても、自治体が新設獣医学部の事業主体として名乗り出ていない以上、民間という立場であっても、獣医学部の事業主体そのものを「説明補助者」と位置づけること自体が矛盾する。
愛媛県や今治市自体を説明補助者と位置づけるなら、十分に納得ができる。愛媛県や今治市は補助金や学校建設用地等を提供するだけで、主体はあくまでも加計学園である。
加戸守行が「12年間加計ありき」でありながら、新設の獣医学部がどのような獣医学部なのか、事業主体は何者なのか、一言も加計学園の名前を言わずに既存の大学・学部との比較だけの説明で終わらせていることと加計学園関係者を説明補助者と位置づけること自体に無理がありながら、説明補助者と位置づけて、出席したワーキンググループの議事要旨からその名前と発言を記載していなかったことと考え併せると、加計学園の名前を隠す必要からの確信犯行為でなければならない。
安倍晋三を親分とした悪党集団が親分自身は陰に隠れて、忠実な子分に表の仕事をさせて加計学園獣医学部新設認可を実現させた政治的関与の悪事の構図、あるいは役割の構図だったからこそ、加計学園の名前を出すことができなかった。