次期衆議院議員選挙 争点とすべき 2つのこと ◎森友・加計政治関与疑惑にまみれた 指導者を続投させるべきか否か ◎成長実感ゼロのアベノミクスを 効果があると見せかける幻想に 今後も付き合うべきか否か |
安倍晋三が2017年9月25日記者会見を開いて、衆議院を解散することを表明、9月28日に臨時国会を開いて冒頭解散した。今度の衆議院選も世論調査の政党支持率から見て、自民党一強、野党多弱の情勢に変わりはないように見えたが、都知事小池百合子が9月25日の記者会見で新党希望の党を立ち上げ、民進党新代表前原誠司が9月28日午前の党執行役員会で、「民進党として公認は行わず、希望者は全員、希望の党から立候補させたい」と希望の党との事実上の合流を提案し、了承を得ると、様相が一変した。
一変した様相は各マスコミの世論調査での比例投票先政党支持率に現れた。2017年9月28日付「J-CAST」から見てみる。
毎日新聞9月26~27日世論調査
自民党29%
希望の党18%
民進党8%
公明党5%
共産党5%
日本維新の会3%
無党派層 自民党15%対希望の党14%
選挙は多くの場合、政党支持率の中で最もパーセンテージが高い無党派層の動向がカギを握る。それが拮抗しているというのは希望の党に対する期待値の高さを示している。
朝日新聞9月26~27日世論調査
自民党32%
希望の党13%
民進党8%
公明党6%
共産党5%
日本維新の会3%
無党派層 希望の党17%対自民党13%
ここでは無党派層が上回っている。ちょっとした結果で、希望の党への投票が雪崩を打たない保証はない。安倍晋三と公明党代表の山口那津男が希望の党牽制の舌戦を展開せざるを得なくなった。
9月30日自民党全国幹事長会議。
安倍晋三「かつてブームが起こって、私たちが政権を失った時に生まれたものは、混乱と経済の低迷だった。しかし、私たちは自公政権をしっかりと作って、状況を一変させた。厳しい厳しい選挙戦になるが、まなじりを決して戦い抜いていく決意だ」(NHK NEWS WEB/2017年9月30日 11時52分)
ブームの信用性に警告を発している。
9月28日都内街頭演説。
山口那津男「中身は民進党の出身者の方々だ。準備していない寄せ集まった人たちに日本が直面する課題を委ねるわけにいかない。(民進党は)1カ月前に代表選をやったばかりだが、離党者が続出している」(日経電子版/2017/9/28 16:06)
山口那津男はリーダーシップの問題を抜きに寄せ集めの協調性を問題にしている。寄せ集めでなくても、リーダーシップを欠いた場合、協調性を欠くことになる。寄せ集めであっても、リーダーシップ次第で協調性を築くことができる。
要するに寄せ集めであっても、「日本が直面する課題」を委ねることができるケースも出てくる。
民進党代表前原誠司は希望者は全員希望の党公認と言っていたが、小池百合子は安全保障と憲法への姿勢で選別、リベラル派は排除すると言い出した。
要するに安全保障と憲法に関わる姿勢が小池百合子と一致する者だけを集めて、その両政策を推し進めるとき、反対する者が出て、党そのものが混乱することを前以って避けようという思惑からで、この思惑は憲法や安全保障政策で右と左の相反する議員が入り混じっていた民進党の混乱を学習した答なのだろう。
だが、自民党にしても全員が憲法と安保政策で厳密に一致しているとは限らない。安倍晋三の支持率の高さを前にして黙して従っているという状況があることも見逃すことはできない。首相の支持率が高いと、選挙の際、その顔となるゆえに公認を得るにも当選を獲得するにもその顔に頼らなければならない。当然、大勢順応の状況が生まれて、それが表面的には全員政策の一致に見えるという場合もある。
だから、自民党にしても首相が支持率を失って選挙の顔としての効能を失うと、これでは選挙が戦えないと党内から様々な意見が表面化する、あるいは離党者や新党結成の動きが出たり、実際に新党を結成するケースも生じた。
大体が一つの党内に派閥やグループが存在すること自体が必ずしも政策が一致してはいないことの証明としかならない。
党を一つに纏めるということは同じ考えの者を集めることではなく、そのようなことは不可能であって、党首、あるいは代表が世論調査で支持を得ることができるかどうか、支持を得るだけのリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっていることになる。
希望の党に多くの民進党議員、その他からも参加して、既に比例投票先政党支持率に現れているように国民が期待を寄せるようになって一大政党化する可能性が出て、自公現政権と勢力が拮抗、あるいは政権交代が起きたとしても、希望の党と自民党が政権交代を担う二大政党制時代が到来した場合、二つの危険性を指摘することができる。
一つ目は同じ保守政党同士ということで、自民党と希望の党がそれぞれに利益を代表する個人・団体・階層が重なって、利益がそれらに偏る危険性を抱えることである。
自民党は保守党ゆえに国家の利益を第一番とし、歴史的に大企業や高額所得層の利益を優先的に代表してきた。その結果の格差社会ということであろう。
希望の党も保守党である。同じ道を進まなければ、保守とは言えなくなる。
当然のことだが、利益を代表するとは代表対象の特定の個人・団体、あるいは特定の階層の利益を優先的に図ることを言う。このようなことは如何なる政党も国民全ての階層の利益を代表することは不可能であることから起きている。
国民全ての階層の利益を代表した場合、国全体の利益をかなりの程度平等に細分化してそれぞれに配分しなければならなくなり、大きな利益を上げている大企業や高額所得者の不平・不満に基づいた大反対が湧き起こるだけではなく、大企業の数プラス総合利益とほぼイコールする国力自体が弱体化することになる。
結果的に特定の個人・団体、あるいは特定の階層ごとの利益を優先的に代表することになって、より現実的ということになる。
利益を代表する対象の違いは二大政党制を取る米国の民主党と共和党を見ればわかる。「Wikipedia」を参考にした。
民主党「一般的に保守の立場を取る共和党に対してリベラルの立場を取る政党」
支持母体――農家、労働者階級、労働組合、および宗教的・民族的マイノリティー、リベラル系団体、環境保護団体 全米訴訟弁護士協会 アメリカ労働総同盟 IT業界、有色人種(特にアフリカ系)、公民権運動団体 労働者階級 東海岸・西海岸を中心とする都市部住民
共和党「一般的に保守主義及びキリスト教の立場を取る政党」
支持母体――キリスト教信者が多い地域(バイブル・ベルト)、キリスト教原理主義者、ティーパーティー、全米ライフル協会、軍産複合体 ウォール街、新自由主義者、リバタリアン、退役軍人協会、福音派、石油産業、自動車産業、エリートの一部、南部・中西部の白人の一部、カントリー・ミュージック・ファンのかなりの部分、石油産業や自動車産業等々の業界団体。
同じ保守党が二大政党制を取ることで弱者の利益を代表するリベラル派が小政党化した場合、前者が代表する利益が大企業や高額所得層等に優先的に偏ることになって、下から見た場合の不平等が起こることになる。
理想的なのは保守党とリベラル政党が二大政党制を取って、保守党が政権を握ることによって前者が利益を代表する対象の利益が偏り過ぎた場合は後者の政党を政権党に選択して後者が利益を代表する対象の利益の回復を図り、それが偏り過ぎた場合は揺り戻しを図る、社会の上層部と下層部で交互に利益を循環させる考え方でバランスを取ることであろう。
二つ目の危険性は二大政党が保守党同士ということで、軍事的にあるいは経済的に国家的危機に迫られた場合、保守党同士の二大政党が手を結んで巨大な政治権力を握ることになる大政翼賛化の実現である。
実現させた場合、少数派の意見・主張は無視され、大企業や高額所得層を多数派と見做す意見・主張のみが尊重されて、その利益を軍事的にあるいは経済的に代表する政治の独走が始まることになる。
各個人・各団体・各階層の利益を循環させるためにも、大政翼賛化させて政治の独走を招かないためにも、特に中低所得層はリベラル政党を育てる方向に目を向け、保守と保守ではなく、保守とリベラルの二大政党制が根付くように働きかけるべきではないだろうか。