北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

京都祇園祭鉾建 四条烏丸にて勇壮な長刀鉾が疾病を祓う

2008-07-13 18:53:01 | 写真

■実況:祇園祭2008

 京都祇園祭、一日より始まった一ヶ月もの期間にわたり進められる疾病祓いの伝統祭事は10日から17日の山鉾巡行に向けて鉾建に進んだ。今回は、その鉾建に関する掲載だ。

Img_4830  山鉾の中で、実に高さ20㍍を超える幾つもの鉾が立てられる行事即ち鉾建は、それはそれは勇壮というものの、何分平日に行われる行事ということで、京都在住の小生含め、多くの方はご覧になったことがないのではないようにも思う。今回は、その様子を初めて撮影する機会に恵まれた為、その様子の詳細を掲載したい。

Img_7937  京都の中心部、四条烏丸。ご覧の通り政令指定都市の中心部に相応しいオフィス街であり、繁華街を形成。交通も阪急京都本線の終点京都河原町駅や阪急烏丸駅に隣接し、地下鉄で京阪線、JRや近鉄と結ばれ、バスターミナルも京都の隅々に向けてバスを発車、ビジネスマンから観光客、学生、修学旅行の児童や生徒で賑わっている。

Img_7949  その京都のメインストリートに忽然と現れるという表現が相応しい山鉾の組み立て。その数実に32に達し、祇園祭の季節がやってくると毎年、各々の町内にある山鉾保存会の手により組み立てられている。そもそも、その鉾建とは組み立ての行事なのだが、全国津々浦々に所在する山鉾に似た山車を用いた祭事において、特に後継者の不足などにより山車を完成状態にて格納庫に保存する方式では、鉾建のような組み立てということが出来ないのであるから、稀有といえる行事なのかもしれない。

Img_7942  さてさて、小生、浅学にて鉾が朝、シートに覆われて鉾建を待っているのに、鉾建が行われる日の午後に四条へ足を運べば既に鉾は天に通じるが如く聳えており、てっきり東京タワーや京都タワーを組み立てるように下部から上部に組み上げていると考えていた小生には甚だその工程の早さが一種疑問でもあった。

Img_7954  写真は、上の写真も含め、夜に撮影されたものは10日に撮影した情景で、鉾建に備えて、長刀鉾や函鉾、月鉾などが覆いが被せられて翌日に行われる鉾建を待っている。メインストリートである四条通は一部に交通規制が引かれているものの、祇園囃子の音色が奏でられている他は、日々の京都の喧騒と全く変らない営みが続けられている。

Img_4827  明けて翌11日、1230時、四条烏丸に足を運ぶと、いよいよ鉾建が行われようとしている瞬間であった。鉾を立てるべく奮闘する保存会の人々が声を枯らし、汗を流す中で、多くの観光客や京都市民、昼休みのビジネスマンに新聞記者、テレビ局の取材が長刀鉾の周りに集っている。

Img_4826  ジャッキのようなもので、ゆっくりと慎重に鉾を立てて行く。車道にて行われるこの鉾建は、保存会の方や警備員さん、そして京都府警の警察官が安全確保のための交通整理にあたっている。蛇足ながら、京都府警の雑踏警備に関する能力は、祇園祭、葵祭、時代祭から五山送り火、そして無数の伝統祭事における警備の経験から、全国では最高レベルにあるのでは、と思う。動きに無駄が無く、危険回避に動きが巧い。

Img_4828  さてさて、ジャッキを使っての鉾建であるが、パズルの最後のピースが当て嵌まったように疑問は氷解した!、鉾建とは、文字通り寝かせてある鉾を立てるという行事なのだ!。これならば確かに立てる行事を開始してより一時間ほどで立てることができよう。だから鉾“建”なんだ!と驚かされた。

Img_8255  疾病を祓う長刀鉾の長刀が、鉾の頂点にあって天を点く。鉾が立てられる瞬間というのは、一種感動を誘うものであった。長刀以外にも高い鉾を立てるということは、バランスが崩れれば周囲の観覧者には不幸である。前後からゆっくりと相互にジャッキを操作し建ててゆく情景に、あたかも転倒戦車を戦車回収車と他の戦車により立て直らせる様子を思い出してみたりした小生。

Img_4829  ジャッキの確実な操作とともに、ゆっくりと、しかし確実に長刀鉾が組み上げられつつある。四条通を行く自動車やオートバイも一瞬ブレーキをかけてしまうほど、初見の方には心躍らせる瞬間だ(かくいう小生も同じであるが)。鉾建の瞬間をシャッターに収めようとタクシーやバスからも慌ててカメラを取り出す様子もみられた。

Img_4845  こうして立てられた鉾には、装飾作業を行う為に通路が設けられる。鉾では保存会の皆さんが慎重にしかし大胆に、順次装飾を行い、曳き初めの前日には“動く美術館”という呼び名が勿体無いほどに、タペストリーなどの装飾品により京都の伝統行事にあって筆頭に挙げられる祇園祭をしめす雅な姿を人々の前に見せることとなる。

Img_4835  高々とした姿をみせる鉾。四条通に姿をみせる鉾のほかにも、四条通に面する路地を進んでゆくと鉾建が行われている。山に関しては、宵山の初日、つまり宵宵宵山に足を運んで見ると、まだ組み上げている途上、という情景に出くわすこともあるが、他方。台風が来ても作業は予定通り行われるくらいに伝統は根付いている。

Img_8279  夕刻と長刀鉾の情景。四条通は車道の通行量にくわえ歩道の往来も多く、阪急烏丸駅から阪急河原町まで、四条通に沿って阪急地下道が設けられているほどだ。宵山には、この四条通をはじめ山鉾が置かれた車道や路地が全面的に車両規制され、毎夜、都路をいっぱいに溢れさせる30万以上の観光客で賑わう。

Img_8283  祇園祭は伝統行事である。なんと山鉾巡行も太平洋戦争中の1943年まで行われており、終戦の次に訪れた祇園祭では、さっそく鉾を組み立てて山鉾巡行を行うほどに根付いた行事である。昨年、宵山に台風が襲ったものの、滞りなく宵山が行われたほどである。皆さんも一度、足を運ばれてみては如何だろうか。

HARUNA

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