■2007年8月4日 呉地方隊展示訓練
2007年8月4日、海上自衛隊呉地方隊が実施する大阪湾展示訓練のために護衛艦、練習艦、輸送艦などが大阪港天保山に入港した。今回は呉地方隊展示訓練の第一幕の情景を紹介したい。
大阪湾展示訓練は、二日間実施される予定であったが、台風の接近に伴う天候の悪化に伴い、第一日目が中止となり、二日目のみが実施となった。そのため、第一日目に乗艦する予定であった名古屋からの一行は残念な結果となってしまったが、せめて停泊艦艇だけでも、ということで天保山に展開した、小生はそちらに同行。天保山は日本における観艦式発祥の地として知られる。今回は、入港の様子を無料で利用できる天保山渡し舟にて対岸の埠頭に渡り撮影した。
ヘリコプター護衛艦「ひえい」がその美しい姿を大阪港に見せた。「はるな」型の二番艦が姿をみせたのが1508時。当日は、第二日目に備えて予行を実施していたようで、この日の天候は晴れ。第一日目の前日に台風が接近したということで予行が出来なかったのが、展示訓練の実施に響いたようである。
「ひえい」は呉基地に展開する護衛艦隊第4護衛隊群の旗艦であり、満載排水量は6800㌧。二門の5インチ砲とともに広大な後部飛行甲板が注目を引く。対潜哨戒を行うヘリコプター3機を搭載する「はるな」型は、1974年の「ひえい」の就役を以て2隻体制となり、海上自衛隊洋上航空は第一歩を刻むこととなった。本型2隻による運用試験や戦術研究が、今日の有力な洋上航空哨戒能力を育むこととなった。
護衛艦「うみぎり」。「あさぎり」型8隻の最終艦である。海上自衛隊は、護衛艦8隻搭載ヘリコプター8機からなる“八八艦隊”編成の四個護衛隊群充足を期していたが、12隻の「はつゆき」型と、その改良型である8隻の「あさぎり」型の就役により、海上自衛隊の機動運用部隊は次の段階へのステップに到達した。対空・対潜・対艦誘導弾を搭載し、ガスタービン推進方式、哨戒ヘリコプターを搭載する汎用護衛艦だ。
呉の練習艦隊より練習艦「あさぎり」が入港する。海上保安庁の巡視船が警戒に当たっており物々しい様子である。実は入港予定日にあたる前日は労働団体や学生団体による自衛艦入港反対の集会が行われていた。肝心の入港日には活動を行わないという一種、手段の為の目的のような中身の無い印象を受けた。それよりはリアリズム、コンストラクティビニズム、何でも良いので現実的な安全保障への模索を行った方がいいのでは、とも感じた次第。
天保山遊覧船から展示訓練参加部隊を見学しよう、と一行は考えた。やはり艦船というものは陸上からみるよりも海上から観た方が印象が全く異なる。海からの視点というものは新鮮だ。ちょうど、輸送艦「くにさき」では夕刻ということで自衛艦旗が明日の夜明けまで降ろされているところだ。
大阪天神祭が全てを象徴しているように、大阪は水の都である。なるほど、京都から大阪、というと今は阪急かJR,京阪なのだが、その昔は水運だったわけだ。水運により行き来する物資の拠点として栄え、京都を越えた商都として発達した街、それが大阪なのだなあ、という印象を新たにした次第。
天保山観覧車と展示訓練参加部隊の護衛艦2隻、練習艦2隻。観覧車から俯瞰風景を撮影、という考えもあったが、投機性考え断念した次第。護衛艦と観覧車という取り合わせは一見意表を突かれる取り合わせであるが、これはこれでなかなか面白い情景であると思う。
練習艦「やまぎり」と「あさぎり」。満載排水量で4900㌧、諸外国を見渡せばまだまだ第一線で通用する艦である。レーダーが対空用のOPS-14と、後期型のOPS-24三次元レーダーとなっており、比べるとどうしてもやや劣っているといわざるを得ないがデータリンク装備などを改めれば、まだまだ現代の任務に対応が可能だ。
「うみぎり」。その隣には「ひえい」が停泊している。間もなく12隻が就役した「はつゆき」型護衛艦と、続いて「あさぎり」型の耐用年数というものを考えてゆかなければならない時期を迎える。日本経済が最盛期に建造された艦だけにかなりはやいペースで建造されている。後継艦は財政上悩ましい問題であり、ロースペック化なども念頭に置くべきなのでは、と考える。
全長178㍍の巨体を停泊させる輸送艦「くにさき」。大型ヘリコプターとエアクッション揚陸艇を用いて任務を遂行する輸送艦で、着上陸時に際して後方から部隊を揚陸させ第二戦線を形成、島嶼部防衛に際しての部隊輸送を行い、更に災害派遣では入り組んだ海岸線へもいち早く展開し、広範囲の任務を遂行することが可能だ。
エアクッション揚陸艇を搭載するドックを開いている。2隻のエアクッション揚陸艇を搭載する。本艦は、機械化された一個普通科中隊と戦車一個中隊、特科中隊や施設小隊など装備を同時に輸送でき、短距離であれば1000名の輸送も可能とされている。同型艦3隻で呉に第1輸送隊を編成しており、3隻で陸上自衛隊の一個連隊戦闘団を輸送可能、とされている。
「くにさき」は「おおすみ」型輸送艦の3番艦で、満載排水量は14000㌧。ヘリコプターは甲板に係留されるが、過去の災害派遣などの実例からローターを取り外せば艦内にUH-60JA輸送ヘリコプターを搭載可能であり、これはローターを折畳むことが可能なSH-60J哨戒ヘリコプターを搭載可能なことを示しているのだろうか。
天保山遊覧船は、港内を一周し練習艦のすぐ後ろにある乗船場に戻ってきた。入港した護衛艦や練習艦、輸送艦は電灯艦飾の準備を行っている。ただし、前述のように前日、入港反対の集会が行われていたことから大阪府警機動隊が警戒線を引いており、電灯艦飾を良好に撮影できるポイントが立ち入り禁止となっていたのが残念だった。
電灯艦飾。1900時を過ぎたばかりであり、まだまだ薄暮であるが薄っすらと艦艇の輪郭が仄かな光で包まれている。「あさぎり」型はマストが二本あり、後部マストはガスタービンエンジンの排気熱により影響を受けるという問題があるものの、デザイン的には秀でている。良いデザインは抑止力を生み、加えて電灯艦飾を行う際にはマストの間にも電灯が吊るされるので美しい情景をみせてくれる。
「ひえい」格納庫と飛行甲板では祝賀会が行われている。ヘリコプター3機を収容する格納庫はかなり広大である。後部飛行甲板は一機の発着と共に一機の待機スペースがある。当初は二機の同時発着を期した設計が打診されたが、5インチ砲2門の搭載を優先するという目的で、現在の設計となった。
夜の帷が降りはじめ、電灯艦飾も見栄えのいい時間帯となったが、翌日は乗船。しかも近傍ということで大阪に一泊せず京都からの展開である。美しい電灯艦飾を撮影するべく、渡船場から対岸に渡る、今度こそ俯瞰風景をもとめて観覧車を利用する、など考えたものの、翌朝のことを考えると、今回は慎重に、明日に備えることとして大阪を後にした。
HARUNA
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