■J-ALERT・原発・弾道弾
7月期自衛隊関連行事は現在情報収集中、明日掲載の方向で調整中。50万アクセス突破記念特別企画は50枚の写真にて掲載の特集記事で、明後日掲載の予定。
6月30日1640時頃、福井県美浜町に設置されている警報システムが誤作動を起こし、防災無線で「弾道弾が当地域に着弾する恐れあり」という警報がスピーカーから流れたという。福井県美浜町は原発の町であり、警報の誤作動に気付いた町役場職員により止められ、訂正放送が流されたものの現場ではかなり混乱したとのことで、警察も出動する事案に発展した。黒鉛パイル炉と違い、軽水炉は損壊に強い構造といわれるものの、冷却水など重要な幾つかの部分は脆弱性を有しているので、精密誘導弾か核攻撃を受けた場合、重大な事態に発展する可能性がある。
全国瞬時警報システム(J-ALERT)は、津波災害や弾道弾攻撃などのように突発的な事態の発生に際して緊急情報を提供するもので、2004年度から消防庁所管で進められている。J-ALERTの最大の利点は速報性であり、防災無線網を利用することで広域的に即座に情報を伝達することが出来る。ただし、誤作動した場合、かなりの混乱を招くことも事実で、今年三月には岐阜県大野町でも誤作動の事案が起こっている。なにしろ事実であれば安全な場所に避難しなければならないので当然だ。
J-ALERTについて、その意義に疑問は無く、また誤作動も機能上完全に防ぐことは難しい為、これは看過すべき事案であろう。なんとなれ、国家意思決定などの戦略的中枢への誤報配信や、誤報に基づく国際関係上極めて問題のある行動に繋がらない範囲内においては、極力回避すべき誤作動、というレベルであり、誤作動そのものは、正常作動の場合の利点と比較考量した場合で考えなければならない。他方で、J-ALERTの問題点を一つ挙げるとすれば、災害情報に関しては気象庁が消防庁を通じて、弾道弾情報などについては内閣官房から消防庁に配信されるのだが、弾道弾情報に関しては所管は防衛庁航空自衛隊航空総隊と在日米軍の二元からであり、このタイムラグがどの程度抑えられるか(事案が事案だけに確認は必要)という問題点。
もう一つは原子力発電所。チェルノブイリ原発事故を元にしたシュミュレーションとして若狭地区における原子力発電所事故に伴う危険区域を放射線防護学の権威にお聞きしたところ、やはり季節風の関係もあるが、京都・大阪・名古屋の都市圏にも相応の措置が必要となる状況があるようだ。ただ、日本の原子力行政は、ある種イデオロギー的な市民運動に対応する必要上から、原子力事故は起き得ない、という前提で進められている。国民保護法制に基づく原子力事故対処訓練が数年前に実施され、マスコミでも多く報じられたが、これは“とある関係機関”が必要性を強く提唱し、実施に至ったという。他方で、チェルノブイリの事例では半径30km以内の住民(家畜なども)を緊急避難させているが、こういった最悪の場合を想定した訓練や情報公開も必要ではないかと考える。
原子力は、枯渇の可能性を有する化石燃料や供給に偏りが生じうるバイオ燃料を補完し、次世代エネルギーが開発実用化されるまでの極めて長い間、必要な動力ではあるのだが、同時に問題点は皆無ではない。少なくとも、今回の誤作動は、原発周辺地域に弾道弾攻撃が行われることを想定して準備されていたものであり、福井県が面する日本海を挟んだ近隣諸国や地域には核兵器と弾道弾技術を有する国も幾つか存在している。そして、その国々の中には、かならずしも友好的と言い切れるほどに信頼醸成が培われていない事例もあるわけで、外因性の人的理由に基づく事案を含め、最悪の場合を、自治体や行政関係機関、住民を交え、検討しておく必要はあるのではないか、と考える。
HARUNA
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