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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

AH-64Dを補完 重戦闘ヘリ&軽戦闘ヘリ複合運用に関する研究

2008-07-02 19:18:06 | 防衛・安全保障

■1999年後期頃に陸自が研究

 C.ジョニー氏のWeblogにて先月行われた“次期多用途ヘリコプター勝手に選定!”のアンケートの結果は意外なものであった(今月のアンケート→http://6mmbbjohnny.blog.jp)。

Haruna_img_8005  47票の投票数の中で一位は川崎重工OH-1多用途ヘリ化の18票(38%)、二位が富士重工UH-1J改良型の15票(31%)、三位に欧州機のNHインダストリーズNH-90、4票(8%)。以下、ベル412の3票(6%)、アグスタウエストランドAW-139の3票(6%)、三菱重工MH-2000の2票(4%)、アスグタウエストランドCH-101の1票(2%)、その他1票で、シコルスキーS-92は0票となっていた。途中まではOH-1改の邁進で、そのまま一位を守り抜いた形。

Haruna_img_9061  これに関連して、1999年に陸上自衛隊部内でOH-1の対戦車ヘリコプター化を真剣に検討していた、というのが今日の話題。陸上自衛隊部内では、平成17年度から用途廃止が始まる対戦車ヘリコプターAH-1Sの後継として、AH-1Z戦闘ヘリコプターとAH-64D戦闘ヘリコプターという二つの最有力候補が提示されており、陸上防衛体系に最も合致した機種に関して真剣な討議が進められていた。

Haruna_img_9011 特に、当時の米軍において進展中であったフォース21型デジタル師団への部隊改編には高度なC4I能力に対応できる機体が必要としていたわけで、AH-64Dが最有力候補、他方、AH-1Zもレーダー機能を追加できるとして巻き返しを図っていた。

 他方で、AH-Xとして高度な戦闘ヘリコプターを導入した場合、特に調達コストの面で必要数を充足できるかに疑問があり、早い段階から重戦闘ヘリコプターと軽対戦車ヘリコプターによるハイローミックスの構想が出されていた。実際問題として、UH-1Hの後継としてUH-1Jの調達に続く新多用途ヘリコプターに、夜間飛行能力を高めたUH-60JAを採用したところ、高性能ではあるものの高価格となり、結局UH-1Jの製造を継続するという結果を招いた事例がある。こうしてAH-Xでもハイローミックスの道筋が模索されていたわけだ。

Haruna_img_8938_1  しかしながら、陸上自衛隊全般の航空運用を視野に入れた場合、フォース21型の部隊運用を取り入れた日本型次世代部隊運用体系を確立させるには、対戦車任務に加え、索敵、戦場管制なども可能な重戦闘多用途ヘリコプターの必要性が高まり、この能力を唯一有しているAH-64Dの選定に至ったのはご存知の通り。しかしながら(これは結局実現しなかったのだが)、平成15年度開発着手を期して、重戦闘多用途ヘリコプターを補完する軽戦闘ヘリコプターLAHの開発計画も提示されていた。

Haruna_img_9068  LAH計画には、OH-1観測ヘリコプターを基本としてコックピット周囲の改造による電子装置能力の向上、搭載兵器増強による短期改修計画を推す案と、ローターブレード、ギアボックス部分を取り替える本格改修計画を推す案が提示されていたとされる。現状のOH-1は、武装搭載量が132kgと大きな制約がある為、91式SAM連装発射機2基を降ろさなければならない。SAM発射器片方を残して235?の燃料とともに増槽二つを取り外せばTOWミサイル8発(ミサイル8発152kg+発射器106kg)が辛うじて搭載可能となるが、戦闘行動半径108nmはかなり短いものとなろう。対地掃討用に2.75インチロケット弾を搭載する場合はもう一機随伴するか、TOW4発を減らして19連ポットを搭載することになる。機銃ポットを搭載する場合は、更に何かを犠牲にしなければならない。従って余り現実的ではなく、OH-1を武装型に改造するには大型化するか、対戦車ミサイルを2発程度に抑え、機銃とロケットを搭載する必要があろう。

Haruna_img_5602  しかしながら、AH-64Dの価格高騰に伴う調達中止により、否応無くAH-1Sに代わる次期対戦車ヘリコプターの選定が必要になったわけで、これに川崎重工がOH-1のキャビン改造による多用途ヘリコプター型を提案した背景には、OH-1の技術を基本として陸上自衛隊標準ヘリコプターの選定と整備系統の統合による低コスト化を目指したのではないか、と考えることも出来よう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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