◆武器輸出三原則が想定外の多国間国際分業
北澤防衛大臣は11月26日の衆議院安全保障委員会にて、10月のゲーツ国防長官来日の際に、SM-3ブロック2A次世代弾道弾迎撃ミサイルの欧州配備計画について説明を受けた旨答弁した。
この中で、日本が日米共同で開発しているSM-3ブロック2A次世代弾道弾迎撃ミサイルの欧州輸出は、結果的に日本が共同開発において武器輸出三原則の例外と位置付けられている米国以外への防衛装備品輸出にあたることとなる答弁であるが、言い換えれば武器輸出三原則の定義や方針を変更させることに含みを持たせたものとなる。
この答弁は、北澤防衛大臣と公明党の佐藤茂樹代議士との答弁で出た内容なのだが、北澤大臣は、併せて、厳しい財政状況の中で効率的な装備調達を前向きに考えてゆく、という発言をしており、これまでタブーとされた防衛装備品の輸出が、厳しい財政状況での効率的な装備調達という観点から解禁される可能性を示したことになったといえよう。
他方、日本製の電子部品は、汎用品に関して、既に精密誘導ミサイルや航空機の航法装置などに流用されており、日本車の足回りやエンジン部分が装甲車に転用される事例、日本製自動車がそのまま軍用車両として武装を施し、転用されている事例は既に知られており、直接人員の殺傷や破壊に用いられる防衛省制式装備品の輸出という定義以外では、軍需品の輸出は行われている現状がある。
もっとも、これは過去に、日本製ピックアップトラックにミラン対戦車ミサイルを搭載した車両が戦車駆逐車として使用され、日本国内の一部でこれを問題化しようとしたものがあるが、大きな流れとはならなかった例があり、特に汎用品は汎用の広い枠内に軍需用が存在しているわけであり、技術的にも難しい。
他方で、今日、企業買収や合併など一連の流れを見ればわかるように、90年代から企業形態の多国籍企業化が加速しており、日本企業が海外の防衛産業を吸収合併するという点も十分あり得る。結果、日系企業が海外の防衛産業を買収することで、日本企業か結果的に武器を生産し供給するということも考えられるわけだ。
たとえば、巨大軍事産業として日本で認知されるボーイングやロッキード、BAEなどの企業は、一般に言われるような戦争の利益によって企業規模を拡大したのではなく、吸収合併により規模を拡大させたわけであり、吸収合併による生き残り策を採らなければ、世界の軍需産業は生き残れない状況が現出しているということも理解する必要がある。そして、日本の防衛産業に対しても、こうした波が波及する可能性も理解する必要があろう、もっともこうした再編の波や国際競争から国内の防衛産業を維持する防波堤として、武器輸出三原則は機能することもあるのだが。
さて、武器輸出に関しては、経済産業省の管轄で規制されているわけで、日本企業が生産に関与していたとしても、日本の港湾や空港から汎用品というかたちで輸出されるのならば、問題とはなりえないということもできるのだが、多国間国際分業で生産されるもの、一時期トヨタ自動車が多用していた方式であるが、これと同じ方式で生産されるF-35のような開発計画に、将来的に参加する可能性を残すのであれば、これはSM-3で参加するのだが、武器輸出三原則の問題は避けて通れないものとなる。
そもそも武器輸出三原則は、憲法上の平和主義の観点から中立を保つべく、一応名分上は輸出が可能となっている三原則を拡大解釈し、定義した一切の武器を日本国内の港湾や空港から輸出させないことが目的となっている。しかし、日本製の汎用品が転用され、しかも今後の多国籍企業や多国間国際分業により日本との資本関係を含め関係のある企業が軍需産業に関係してゆく場合のことを考えれば、維持することの事業評価は改めて為されて然るべきではないのだろうか。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)