◆普天間問題は棚上げを政府決定
普天間問題は、18日までに結論を、というアメリカ側からの要請に対して、結論は先送りという結論を出した鳩山首相。そういういい加減な決定が通るほど現与党は緩んだ政党なのだろうか。
本日の三党連立与党会議で、なにかしら方向性は出るのだろうと期待したのだが、何も決めないということを決めて終わりという状況、別のものが終わってしまいそうな結論だ。しかし、午前中に辺野古沖での環境評価など辺野古沖に移設を前提とした調査は行うと首相は発言し、午後には辺野古沖には移設しない方向で検討すると、またブレた。あれでは信用するなと全力で表明しているに他ならない。この決定が、実は無関係にみえるF-X選定に波及する可能性について、というのが本日の話題。
安全保障問題における防衛問題としては、次期戦闘機選定も、そろそろ結論を出さねばならない状況にあり、F-22導入希望は、現時点ではアメリカの内政事情から非現実的、F-35の導入は未完航空機の導入も非現実的。現実的な機体は、欧州機のタイフーンか、米国製空母艦載機のF/A-18Eか、巨大な戦闘爆撃機F-15Eか、という状況、もうひとつF-2生産継続、とこれくらいか。ここに普天間問題を起点とする日米摩擦の要素が加わり、更に泥沼化しそうな様相。
機体性能を考えれば、思い切って欧州機を導入する、という英断が理想的なのではあるが、対米関係を考えれば、欧州機の採用は更に日米関係に罅を入れるのでは、という抑制が掛かってしまう。米国のご機嫌をとるべく、という視点が加わってしまうやも。他方で、日米関係が悪化したままであれば、ライセンス生産に関する技術供与の水準に影響が出て、良いことは無い。他方、正直なところ、F-4EJ改の航空機としての寿命、つまり耐用年数はほぼ無くなっている待ったなしの状況があるわけで、今日明日中にでも決定が必要な実情。F-2の米国生産部分を買い取り生産継続という選択肢、先送りともいうが、この一手も時間が経てば採り得なくなる。
そもそも、日本の防衛装備体系は日米の親密な関係を前提として整備されており、策源地攻撃能力を含む航空戦力投射能力はもとより、奇襲防止を目指す戦略偵察能力や、経空脅威と要撃戦闘が続く中での持続的な防空任務を継続するための補給物資備蓄についても、その能力は、米国の支援を前提とした規模となっている。つまり、米軍の支援が本格化するまでの一定期間を持ちこたえるという前提で装備体系が構築されてきたわけだ。安全保障では、日米関係が何よりも優先する。
話を少し戻そう。普天間問題は、その結論を実質的に凍結に近い形で先送りしているのだが、その間に生じる問題の一つに、こうしたF-X問題のような直接関係ない問題にも姿を落としてくることを認識するべきだ。まさか現時点で、F-22を輸出してほしいとも、F-15Eをライセンス生産したいので高性能なAPG-70レーダーをつけて欲しい、F/A-18Eを導入するので最新のAPG-79の供与を、とはいえまい。しかし、アメリカ製ではなく欧州機にする、とも言いにくいだろう。こうした観点からも、普天間問題は、今月18日までの解決を切望したい。
HARUNA
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