◆来年は日米安保改訂50周年
いろいろと50周年行事に惹かれるWeblog北大路機関、来年は日米安全保障条約改訂50周年だ。
日米安全保障条約改訂50周年ということは、来年の航空観閲式はF-22やB-2が参加してくれるのではないか、日米国際観艦式が海上自衛隊創設50周年のように行われるのではないか、ブルーエンジェルスが岩国航空基地に展開して飛行展示を実施するのか、などなど期待を高めている今日この頃であるが、日米安保締結50周年を考えると、改訂50周年は、大したことをやらないのかな、とも思う次第。
こうした中で、日米関係は普天間基地代替飛行場問題で大きく揺れている。本日午前中、消費者少子化担当大臣で社民党党首の福島みずほ代議士は、自民党時代に決定し、民主党が調整を試みている辺野古のキャンプシュワブ沖合への海上ヘリポート建設が、予定通り実施されるならば、社民党にとっても、代議士自身にとっても重大な決意をしなければならない、という意思を表明した。重大な決意とは、連立離脱を意味するものと解釈されており、鳩山首相も、重く受け止めていかなければならない、社民党、国民新党の思いは大事にしてゆきたい、と語っている。
現時点で、普天間基地を現状維持するほか、辺野古沖に新しい海上ヘリポートを建設する以外、選択肢は無い状況なのだが、言い換えれば決定までに十年以上、決定後の調整に十年以上を要している普天間代替基地問題を、半年で解決できるものだと考える方が無理というものではないか。こうしたなかで、一応、アイディアとして提示されているのは、主なもので嘉手納基地統合案、硫黄島移転案、そして関空移転案である。
嘉手納基地統合案は、岡田外務大臣が提唱した案で、第18航空団に所属する航空機のうち、F-15飛行隊のみを三沢基地に移転させ、あいた部分に普天間基地の海兵隊ヘリコプターを駐留させる、という構想なのだが、幾つか無理がある。嘉手納の面積を考えれば、日本側が嘉手納基地の再構築に伴う予算さえ捻出すれば、収容は可能だろう。
しかし、まず、F-15移転により騒音を低減させたのちに海兵隊機を受け入れる、ということだが第18航空団はF-15二個飛行隊のみならず、支援するKC-135空中給油機やE-3空中早期警戒管制機が配置されており、現代航空戦を考えるならば、これらの機体と戦闘機の協同は必須、したがって、三沢基地にF-15が移転したのちにも、頻繁にF-15は飛来するだろう。
実際、F-15一個飛行隊を三沢に移転する計画を米空軍は持っているのだが、騒音が減少するのかは疑問である。もうひとつは回転翼機の騒音特性だ、回転翼機とF-15のような固定翼機とでは、着陸までの速度や滑走路への進入経路、飛行高度が異なる。したがって、速度が遅いということは騒音が続く時間の長さが、高度が低い分より大きな騒音が、飛行経路が異なる以上今までよりも広範囲に、続くわけである。嘉手納基地周辺住民が、賛成するかというのは微妙な問題だ。
硫黄島移転案、これは、社民党が提案していたものであるが、こちらも無理がある。厚木航空基地の空母航空団移転が検討されたのだが、第一に硫黄島は水が出ないため大規模な海水淡水化プラントを建設しなくては基地機能はあり得ないという点、天候急変時に着陸できなくなった場合周辺に緊急着陸する代替飛行場が無い点が解決できなかった。
厚木航空基地周辺の陸上空母発着訓練は政治問題となってしまうほどであり、先の二つの問題を解決できないということから、空母航空団の厚木航空基地からの移転は岩国へうつる事となり、瀬戸内海へ大きく突き出した形で基地面積を二倍にするという、岩国航空基地の拡張という結論に落ち着いた事例がある。
加えて、海兵隊機の母艦である強襲揚陸艦も、横須賀基地をなんとか拡張して強襲揚陸艦が入港できるよう措置をとるか、横浜ノースドックをアメリカ海軍横浜施設として拡張すれば対応できるのかもしれないが、果たして強襲揚陸艦が横浜ベイブリッジを通行できるのか、という素朴な疑問が残ってしまう。
硫黄島の基地化、中国海軍が航空母艦建造を進めている中で、小笠原諸島の防備を固めるべく、米軍基地を整備する、というならば、検討の価値はあるのだろうが、普天間代替基地建設は辺野古沖と硫黄島では難易度が違いすぎる。なによりも、米海軍機の硫黄島での発着訓練に社民党は玉砕の島での米軍訓練として反対してきているが、海兵隊であればOK,というのでは整合性が採れないように見える。
関西国際空港案、これは、夕刊紙などがスクープし、橋本大阪府知事が受け入れる用意があると発言したことから知られることとなったのだが、難しい。関西国際空港を発着した米海兵隊機はどこで訓練をすればよいのか、演習場確保の問題、そして強襲揚陸艦の母港に適した基地が無い、という問題がある。
海上自衛隊阪神基地は狭すぎるし、神戸港はもちろん、大阪南港や和歌山に新しい海軍施設を建設する、というのは、少し難しいように思う。しかし、この問題は、先送りすれば何とかなる、というような問題ではないし、社民党と民主党の妥協点は見つからないような危惧も感じられる次第。
HARUNA
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