北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

A-400M初飛行! 欧州共同開発輸送機は実用化に向け一歩前進

2009-12-13 22:54:43 | 先端軍事テクノロジー

◆A-400M初飛行、C-Xは開発継続

 師走といえば、八日の真珠湾攻撃、十四日の赤穂浪士討入、十六日のアルデンヌ冬季攻勢と、奇襲尽くしなのですが、今年は欧州から驚きの知らせが届きました。遂にエアバスA-400が初飛行を遂げたとのこと。

Img_5771  A-400Mか、C-Xか、と日欧ともに苦心の新型機開発は、先に開発を始めたA-400Mが初飛行を果たしました。C-Xが先に飛行できれば、と少し考えてはいたのですけどね。C-1輸送機の老朽化を受けて、その後継機を開発するとともに、現在8㌧の搭載量を最大37㌧として、空輸能力の不足を一気に解消しようという高い志とともに航空自衛隊の次期輸送機として開発が進められているC-X次期輸送機。次期輸送機C-Xと次期輸送機P-Xを同時開発するという野心的な展望のもとで川崎重工を中心として約700名の航空技術者が日本の航空関係企業から結集して始動した。

Img_2064  2003年にエンジンをGE社製CF-6-80C2に決定、2004年にはモックアップが完成、2005年には胴体部分や主翼が次々と完成、2006年に強度試験機が防衛庁に納入され、2007年にいよいよ初飛行を、と考えられたのだが、ここで計画はとん挫する。2月に輸入したリベットの強度不足が判明し、急きょ入れ替えを開始、7月にはロールアウトを果たした。

Img_9059  しかし、2008年には胴体部分が大変なことになり、初飛行の見通しは立たず、2009年にも飛行は実現しなかった。いろいろ聞いたのですが、・・・、という状況の模様。ああ、今年もやはり駄目だったか。C-1のレーザーによるミサイル妨害試験は順調みたいなんだけど、肝心のC-1後継機初飛行は来年に持ち越しの模様。航空自衛隊は、F-Xといい、C-Xといい、航空機関係は、見通しが立たないものが多いのだなあ、と少し思ってしまう次第。

Img_2071  しかし、同じように苦戦が伝えられた欧州より、欧州共同開発の輸送機は何とか初飛行にこぎつけた旨、速報が届きました。以下、時事通信より引用:最先端の軍用輸送機が初飛行=エアバスA400M、欧州航空界の悲願 ・・・ 【セビリア(スペイン)時事】欧州の航空機大手エアバスの子会社エアバス・ミリタリーが中心となり、各国共同で開発してきた最先端軍用輸送機エアバス「A400M」の初の試験飛行が11日午前から、最終組立工場のあるスペイン南西部セビリアで3時間50分にわたって行われた。

Img_2103  欧州航空業界の悲願だった同機の開発は大幅に遅れていたが、試験飛行は順調だった。2013年にも各国への納入が始まりそうだ。 A400Mは冷戦後の1990年代、軍事目的よりも平和維持・人道支援活動の物資空輸に使う目的で開発することが決まった。しかし英仏独など7カ国の共同開発は調整が難航。03年の試作機生産開始後も技術的問題が生じていた。(2009/12/11-22:48)

Img_3208  日本の次期輸送機C-Xの開発は2001年から開始されているのだけれども、実は欧州も、C-130輸送機や、やや小ぶりな欧州製C-160輸送機の後継としてエアバスA-400Mの開発が進められていた。欧州八カ国が参加する一大航空計画として1995年にエアバスミリタリー計画が発動。

Img_8541  1999年にはエアバスからエアバスミリタリー部門が分社化され計画は順調に進んだ、のならばよかったのだが、開発費負担が参加各国の間で空転し、各国の要求性能が混交したのちに機体重量が大きくなり、エンジンの推力不足に見舞われることとなった。開発遅延は、輸送機需要に関する各国情勢の変化を招き、しかも計画遅延ならば代替機を、という流れに繋がり計画離脱や調達計画の縮小、と連鎖的に悪循環に陥っていたわけだ。

Img_8485  日本のC-XとA-400Mは、C-Xはジェット双発であるのに対してA-400Mはターボプロップ四発機と、輸送機の運用思想に対する相違点が見てとれる。だが、C-130輸送機を凌駕する搭載量、より延伸した航続距離というコンセプトでは共通しており、輸送能力を比較するとC-Xの輸送能力は最大37.5㌧、37㌧搭載時の航続距離は5600km、30㌧搭載時は6500km、12㌧搭載時は8900kmA-400Mは最大搭載重量37㌧、航続距離は30㌧搭載時は4500km、20㌧搭載時6600km、かなり重なる部分がある。

Img_3019  計画開始は、C-Xは2001年、対してA-400Mが1995年と、六年違いなのだから初飛行が早いのは当然といえば当然なのだが。一方で、開発に関しては遅延を嫌う独仏政府関係者から、初飛行を急ぐようにとの圧力もあったようで、初飛行後の実戦配備まで、技術は嘘をつかないのだから、大きな無理を抱えての飛行なのではないか、と気になったりもする。他方、C-Xについては、初飛行はA-400Mに先を譲ったものの、遅延してでも技術的問題を克服したうえでの初飛行を望みたい次第。

HARUNA

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コメント (6)
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