北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

一ヶ月を切ったインド洋対テロ給油支援 代替任務は多国籍部隊参加か、アフガン派遣か

2009-12-16 14:05:06 | 国際・政治

◆普天間問題で忘れられている日米間の難題

 フィリピン、ルソン島の活火山であるマヨン山が噴火の兆候を見せ、富士山のように美しい山容は一変、一週間以内に火砕流を伴う大規模噴火の恐れがあることから、五万人に避難命令が出されたとのこと。19世紀には10km先の街を火砕流が埋め尽くし住民全滅という惨事にもなっており、注意が必要だ。

Img_6426  日米摩擦を拡大させるインド洋給油支援終了まであと一ヶ月を切った。本日の話題は、火山の話題やボーイング787初飛行、防衛省技術研究本部による硫黄島での無人機飛行試験が順調であるなど、様々な話題があるのだが、あえて一ヶ月を切った海上自衛隊のインド洋派遣任務、対テロ海上阻止行動給油支援任務と、その代替任務についてのアフガニスタン情勢悪化を掲載したい。普天間問題で忘れられているが、テロ対策特別措置法が無効となる2010年1月15日まで、一ヶ月を切ってしまっている。

Img_6369  インド洋から次は何処か、鳩山首相は、アフガニスタンの民生復興支援を実施することで、給油支援ではなく、アフガニスタン直接の復興に寄与することを目的とした荒唐無稽な構想を打ち立てているが、そのアフガニスタンでは、各国からの支援金がもとで汚職が増大していることを話し合う国際会議が開かれているところであり、人が入っての復興支援でなければ無意味である状況を示している。一方で、鳩山首相と同じように民間団体による人道支援を計画する韓国では、警備のために350名の陸軍部隊を派遣する計画を発表している。現段階では、治安は以上の通り、最悪に近い状況だ。

Img_9848  このままテロ対策特別措置法を再延長してもいいのではないか、という気がしないでもない、アフガニスタンの状況は以上のとおりであるのは別としても、鳩山首相は、アフガニスタンでの給油支援がアフガニスタンに寄与していないとして反対しているからだ。海を見たことが圧倒的に少なく、缶詰を除けば魚の入手も難しい内陸国アフガニスタンへアラビア海での評価を聞く方が間違っている。海上自衛隊の補給支援を受けるパキスタンの意思を完全に無視した構想であるため、首相は補給支援の国際的評価について、根底から考えを改めるべきではないだろうか。

Img_7041  一方で、鳩山首相は、10月18日に海賊対処任務派遣部隊の支援に、テロ対策特別措置法に伴う補給艦部隊を転用することを表明している。この提案が生きているのは不詳ながら、海賊対処任務は、アメリカが中心となり実施されている多国籍協同任務部隊に、海上自衛隊が参加するというかたちでの協力なのか、ということが注目されるべきだ。第151多国籍協同任務部隊に日本が参加するのであれば、臨検により海賊容疑船へ対処する方式に転換することとなるのだが、このことは重大な意味を持つことになる。

Img_1738  現状の確実な護衛が可能である船団護衛方式は現在の合同任務部隊方式では実施することができず、被害の増加につながる可能性があるわけだ。集団的自衛権行使の問題にも波及するのかもしれないが、それ以上に現在の確実な船団護衛方式を放棄するということは問題視されて然かるべきで、他方、日本の二隻派遣された護衛艦による海賊対処任務部隊とは別の指揮系統で、テロ対策特別措置法による補給艦と護衛艦のみを多国籍協同任務部隊に編入するというのも、既に二隻の護衛艦は、補給艦からの支援も前提に派遣されているため指揮系統の混乱につながる可能性がある。

Img_1762  これはどういうことかを説明すると、現在、海賊行為はソマリア沖アデン湾から、各国海軍の警戒が比較的手薄な、ソマリア東岸のモガディシオ、ポピオ、ハラーフェ沖合に移行しており、多国籍合同任務部隊に海上自衛隊が参加すれば、アフリカ東岸沖に派遣される可能性が出てくるということだ。現時点で、インド洋・アラビア海へ派遣されている対テロ海上阻止行動給油支援部隊は、アフリカ東岸沖までは任務範囲に含まれていないことから、海上阻止行動と同時に海賊対処部隊に対しても支援任務を実施しているのだが、アデン湾の海賊対処任務に対し、補給艦が東岸方面に転進した場合、支援を継続できなくなってしまうわけだ。

Img_7541   もちろん、野党時代に、自民党の時限立法に反対し、恒久法を求めていた民主党らしく、普通にインド洋において対テロ任務や海賊対処任務問わずして補給支援を行う恒久法を制定し、テロ対策に限らない海上多国籍間法執行活動法というようなものに基づいて、運用、実質的に対テロ給油支援を継続しつつ、ほかに海賊対処任務をも行うことで、対テロ戦争に反対する社民党へ、関与の割合を薄めたことを強調し、補給艦の対テロ海上阻止行動給油支援への社民党の理解を得るということもあり得たのかもしれないが、給油支援の恒久立法、こちらの方が逆に難しいかもしれない。

Img_1932 ただ、日本からの支援を求めた韓国海軍の海賊対処部隊はテロ対策特別措置法に依拠していたため日本から支援を受けられなかったということも過去にあったことを思い出せば、給油に関する恒久法は柔軟運用につながるともいえよう。もっとも、アフガニスタン支援の恒久法を求めていたのであり、ともとも補給艦のことは民主党には念頭になかったのかもしれないが、そうなったらば、野党時代に叫んでいたように、思い切ってアフガニスタンに部隊か民間人を派遣するということくらいしか選択肢は消える。

Img_6661_1  もっとも、今日のBBCをみると、イギリスはアフガニスタンで相当苦労しているようで、特に戦費負担や航空機を中心に装備の調達に苦労している。社民党がアメリカへの支援を問題視するのならば、イギリスの支援というかたちででも、陸上自衛隊の空中機動部隊をアフガニスタンに派遣するというのも、相当な覚悟はいるが選択肢としてはありえる。もともと、民主党は小沢党首時代に陸上自衛隊によるアフガン派遣を提唱していたのだから、充分な装備とともに、インド洋からアフガニスタンへ、という選択肢はもっと検討されるべきかもしれない。

Img_7387  インド洋派遣の代替として、海賊対処多国籍部隊への海上自衛隊の参加は、現在続けている海賊対処任務に影響が及ぶこととなるし、他方で、普通に補給艦を日本の帰属対処のために転用するだけでアメリカ側の理解を得られるのかは、疑問でもある。なにより、このことについてどういった日米調整が行われているかが不透明であるし、アフガニスタン情勢は、非常に悪化している。普天間問題で日米関係が摩擦を起こしている中、こういう状況だからこそ、何かの妙案、決断を望みたい。現在の連立与党に対外外交能力があるのか、政府足り得るのか、反対だけは得意な野党時代から、もういい加減に切り替えが必要な時期となっているのではないだろうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする