◆新しい基地を建設せず普天間代替施設を整備
普天間代替施設問題、はたしてどうなるのだろうか。さまざまな提案が出されているが、Weblog北大路機関としては、なんとか民主党、アメリカ政府、沖縄県が妥協出来そうな突飛な案を提示したい。
岩国は満杯、硫黄島は基地維持が困難、関空は母艦の母港から遠い、嘉手納は騒音問題と米軍曰く収容機能で不可能、グアムは遠すぎて不可能。個人的には、辺野古沖に、やはり飛行場は造るべきと思う訳です。ただ、辺野古沖の飛行場が、基地以外の飛行場であるなら、県民や政権公約との妥協点はあるのではないか。
沖縄県の第一の論点は基地撤去と部隊の海外移転、しかしこれは不可能で妥協点は無し。妥協点は普天間を閉鎖するとともに新しい基地を造らない、というところだ。つまり、集約できるのならば、在沖基地であっても、基地が増えることとはならないので、その枠内で、移転問題を解決するならば妥結点が見出せる。
そこで、非常に突飛な案だが、とお断りしたうえで普天間移転問題とともに問題化している那覇空港の拡張問題、着陸枠がいっぱいとなってしまい、早急に第二滑走路の建設を模索しなくてはならない那覇と、移転先を探さねばならない海兵隊普天間航空基地の問題を同時に解決する案を一つ提示したい。
官民共用空港である那覇空港に米軍部隊を移転、航空管制は自衛隊が行い、陸海空自衛隊と米海兵隊共用の那覇基地として整備する。そして那覇空港に代わる民間空港の代替設備を辺野古沖に海上空港として建設する。那覇空港は、那覇軍港と隣接しており、物資の揚収にも便利、基地機能は高い。
空港となると、基地よりも大型化するのだが、現時点で米側は、辺野古沖の航空施設を、より沖合に建設してもよいとの妥協点を提示しており、意義の見出しが難しいV字型滑走路ではなく、従来の飛行場としてより沖合に建設すれば、騒音問題は解決できるだろう。環境問題、漁業権問題は、検討の余地はあるが、これは別のレベルの問題だ。
米海兵隊の移転と両立するためには、第一に辺野古沖の空港施設を暫定施設として1600㍍滑走路とともに海兵隊ヘリコプター部隊を収容する施設を建設し、3000㍍滑走路と空港ターミナル施設が完成するまでの間、海兵隊が駐留、辺野古沖飛行場の第二期工事として1600㍍滑走路に平行して3000㍍滑走路を海上に建設する。
この3000㍍第二滑走路が完成した時点で辺野古沖飛行場はアメリカ海兵隊航空基地から、民間空港である沖縄空港と改称、沖縄空港は新しい沖縄の表玄関となる。民間空港である那覇空港の施設は、一部が海兵隊に移管され、飛行場から旧那覇空港、新那覇航空基地に移駐する、というかたちとする。
新空港は、海上空港であるから拡張工事には柔軟性があり、3000㍍滑走路と1600㍍滑走路の二つを有する空港として運用を開始し、1600㍍滑走路は、中型機中心の運用としつつ、最終的に3000㍍滑走路に拡張する、という方式をとる。中型機発着枠の余裕は沖縄県島嶼部のハブ空港としても機能することを意味する。
名護市の辺野古に沖縄空港を造った場合、問題は交通だ。名護市から那覇市までは約60km、大阪駅から関西国際空港までよりも距離があるのだ。そこで辺野古飛行場を沖縄空港として整備し、那覇市との間を、那覇空港と那覇市内を結ぶモノレールのように、沖縄中央道に並行する形で100%国費にて那覇市、沖縄市、名護市を結ぶ高速鉄道を整備する。
高速鉄道の距離は57km、一大公共事業となるだろうが、空港~都市間交通の充実とともに、沖縄本島全体の経済活性化にも寄与する案であろう。沖縄本島北部地域からの那覇空港へのアクセスには、距離的な問題があり、空港と高速鉄道の整備は、地域振興の観点からも検討の余地はあるはずだ。
沖縄県内は、本島の場合でもモノレール以外の鉄道は無く、もっぱら自動車による移動が主であるのだが本島は北部と南部を結べば京都~姫路間に相当する距離であり、名護市沖への空港移転を契機として鉄道敷設を行えば空港輸送とともに通勤通学輸送の面でもこの上ない地域振興策にもなろう。
那覇空港について。現在、一日の発着数が300便を越えた那覇空港では、滑走路が一本であり、その拡張問題が切迫している。加えて、航空自衛隊、海上自衛隊と滑走路を共有しているため、緊急発進などが行われる際には、過密空港である那覇空港の航空管制を更に悩ませる状況となる。
この際、名護市に那覇空港の代替を建設するならば、滑走路は海上空港となるため、第二滑走路の整備は比較的容易になる。一方で、那覇基地は、航空自衛隊の南西方面航空混成団司令部が置かれている南西諸島防衛の要衝であり、F-15飛行隊を隷下に有する航空隊も置かれている。
また那覇には、海上自衛隊の哨戒機部隊である第5航空群が展開している。P-3C哨戒機20機を運用する航空隊は、高い対潜哨戒能力とともに洋上哨戒能力も大きく、長い飛行時間を活かして南西諸島における洋上哨戒にあたり、外国艦船の不審な動向に目を光らせている。
那覇基地は、那覇駐屯地でもあり、陸上自衛隊第1混成団の司令部と主力部隊が置かれている。第1混成団は、近く第15旅団として拡大改編される計画となっており、沖縄県島嶼部の防衛警備及び災害派遣にあたる。第1混成団は、火砲などは有さないものの、第101飛行隊を隷下にもち、空中機動旅団である第12旅団と並ぶヘリコプター部隊を持つ。
しかし、ヘリコプターは、有事の際にはどれだけあっても足りるものではなく、那覇に米海兵隊がヘリコプターを駐留させていれば、この点好都合である。南西諸島有事の際には、陸上自衛隊の輸送支援に米海兵隊ヘリコプターの協力を要請することも出来、那覇集中は南西諸島防衛にもこの上ない利点を持つ。
もうひとつ、那覇空港は飛行場としては沖縄県内で米空軍の嘉手納基地と並ぶ規模を有する。もちろん、ここで構想したような沖縄空港は、恐らく那覇空港よりも大きくなるのだが、日米共同運用で航空自衛隊が那覇基地を管制すれば、嘉手納基地と並ぶ拠点を日本が持つこととなり、沖縄での日米の均衡がとれる。
沖縄は日本の領土なのだから、嘉手納が圧倒的に大きいという状況は、好ましくないだろう。こういう見栄はどうでもいいように思われるかもしれないが、沖縄にここまで米軍基地が多くてはどこの国なのか分からない、といわれる現状に対しては、反論できるよう、大きな基地が必要となる。
もうひとつは、米海兵隊が那覇に駐留することで、弾道ミサイル防衛にあたる防空砲兵部隊も必要に応じて駐屯することとなろう。もちろん、那覇基地には航空自衛隊の高射群がペトリオットミサイルを運用しているが、より濃密な防空体制を確保できるし、基地警備は海兵隊と共同警備を行えば、ゲリラコマンドーに対しても万全の警備を敷くことができる。
名護市辺野古沖に米軍基地を建設することが、“新しい基地を建設するため反対である”という論点で進められるのならば、民間空港である“沖縄空港”としての建設であれば、問題は少ないだろう。また、暫定設備として辺野古沖に那覇空港と交代できるまでの間、海兵隊航空基地として運用させるのだから、米側からも反発は少ないだろう、次の移転を含めても、いったんは辺野古沖に移転するのだから。
1600㍍滑走路を見込んでいた辺野古沖代替設備は、沖縄空港となることで、3000㍍滑走路二本を有する巨大空港は、関西国際空港建設費に匹敵する1兆5000億円を要する事となるが、那覇空港の代替であり、国内に量産される採算性に問題のある地方空港とは異なり、採算性は充分見込める空港設備、つまり無駄ではない公共事業だ。
日米関係を考えれば、普天間代替基地に関しては、問題先送りによる越年は望ましくない。そして、那覇基地に将来的に移転するにしても、辺野古沖の海兵隊飛行場は予定通り建設して普天間が返還されたのち、辺野古沖に沖縄空港が建設されるまでは、十年近くを要するだろう。この間、沖縄県民の合意形成など、新しい場面での道筋を見つけるための、時間稼ぎも可能となろう、那覇移転を前提とする建前での辺野古沖工事開始、一つの選択肢とはなるのではないか。
HARUNA
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