◆日米首脳会談開催も不透明に
日米関係は、軍事同盟のみならず、国際基軸通貨や通商関係、国連を軸とした世界秩序、果ては価値観などの面で結びついているものだが、この中で安全保障体制が揺らいでいる。
あの小さな基地が日本の命取りになるのか、この言葉は伊藤博文が1904年の旅順要塞攻防戦において、乃木大将率いる第三軍が海軍と東京の大本営に急かされる形で物資蓄積や攻撃準備射撃不十分なままの攻撃前進を強いられたことで、たび重なる総攻撃が失敗し、発した言葉である。百五年の時を経てはいるが、普天間基地の問題と重なるようにも思えてくる次第。
来年の日米安全保障条約改定50周年にともなう、日米安全保障条約深化のための日米協議を実施することについて、アメリカ側が普天間問題の不履行が続く限り、開催することは現実ではないとして、開催の延期を通告してきた。また、コペンハーゲンでの日米首脳会談についても、日米合意履行以外の説明、日本の連立与党に関する内部事情であれば、説明を聞くことは大統領の時間の浪費であるとして拒否する意思をホワイトハウスが表明した。
国際公約ともとれる日米首脳会談での鳩山総理の言葉をあたかも反故にするが如く、国内の連立与党との協調を重視する姿勢は、アメリカはもちろん、世界に対しても背信行為であるとしか映らない。同時に、果たして他の国際公約も履行する意思はあるのか、日本政府の発言は妄想か政策実行の意思があるのかをどのように見極めるかが大きな難題となるのだろう。
辺野古沖移転であるが、水面下の調整に調整を重ね実現した内容だけに、再び再検討の可能性を民主党が示したことは、沖縄県内の世論に国外移転を前提とした現状の計画について白紙撤回であると受け取られている節があり、現時点でも辺野古沖移転は、数ヶ月前以上に県内の反発が予想される状態となっている。
国外移転、特にグアム移転は現実的ではないことを北澤防衛大臣はグアム視察を通じて表明した。グアムがだめならばテニアンやクウェジェリン、と思いたくなるのだが、マリアナ諸島自体が、米軍が戦略上必要とする南西諸島よりも遠すぎるのだ。フィリピン国内か韓国南部を模索した方がまだ現実的であり、調整を考えれば、一旦は辺野古沖に移転するほかない。
外交交渉一つ行えない政府はあり得ない。総辞職するか、対米関係の意図的な悪化を招かないならば、すぐにでも辺野古移転を表明し、政権公約の変更を沖縄県民に陳謝するべきだ。しかし、現政権の優柔不断が続くならば、アメリカ側は交渉に赴く前に、まず自民党本部で意見を調整し、政府との交渉に臨むというかたちになることも、そう遠くは無いかもしれない。
HARUNA
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