◆空自FX隠れた本命?進化するF-2の能力
航空自衛隊次期戦闘機選定、本命のF-22輸出型は音沙汰なし、F-35は攻撃機だし選定に間に合わず、タイフーンは欧州機という運用上の不具合の危惧、F/A-18EやF-15FXは基本設計が古い。
そんななかで、次期戦闘機選定がなんとするべきか決まりかねてるうちに、戦闘機をライセンス生産し続けてきた防衛航空産業が、F-2支援戦闘機の生産終了とともに維持が難しくなりつつあるという事で、戦闘機の運用基盤ごと失われつつあります。日本で部品を含め生産しているからこそ、行える修理と整備、その基盤が失われれば稼働率が下がりますから、より多くの戦闘機が必要となり、予算も多く必要になります。そんな中で、一つの打開策としては、F-2の生産継続という選択肢があり得るのではないかな、と思う今日この頃です。
F-2支援戦闘機は、空対艦ミサイル四発を搭載する対艦攻撃に重点を置いた航空機として日米共同開発されていて、アクティヴフューズドアレイレーダーを搭載、長く研究を続けてきた複合素材の採用による機体の軽量化や、フライバイワイア方式の機体制御などが惜しみなく投入されている機体で、総合性能は非常に高いのですが、一つ欠点がありました。空対空ミサイルでは、中距離ミサイルとしてAIM-7スパローを運用していたのですが、このミサイルはレーダーにより誘導する方式なのですけれども、ミサイル本体を発射した戦闘機がレーダーで誘導してやる必要があるものでした。
航空戦で用いられるミサイルはレーダーで目標を追尾する中射程のレーダーホーミングミサイル、目標のエンジンなどが発する赤外線を追尾する短射程のミサイルに分けられるのですが、現代の航空戦は、秒単位の変動する状況との戦いですから、ミサイルを発射したのち、ミサイルが目標に命中するまで誘導しなくてはならない方式のミサイルと、ミサイルが発射されたらば目標までレーダーで自分で命中することが出来るミサイルとがあれば、後者の方が、戦闘機が航空戦で生き残るには好都合です。この点で、命中までレーダーで誘導しなくてはならないF-2の問題は、大きな欠陥といわれていたわけです。
航空自衛隊は、レーダーホーミングミサイルで、発射後誘導が不要なミサイルとして99式空対空誘導弾AAM-4とこの種のミサイルとしては世界的に有名なアメリカ製のAIM-120AMRAAM空対空ミサイルをF-15戦闘機に搭載し、運用しているのですが、昨年からF-2支援戦闘機へも、このAAM-4空対空ミサイルの搭載試験を行っています。写真は、岐阜基地の飛行開発実験団に所属するF-2初号機に搭載されたAAM-4空対空ミサイルと、そして外側に搭載されている燈色のものが精密誘導爆弾であるGPS誘導爆弾JDAM。これは試験飛行を終えて岐阜基地に着陸するときに撮影した写真です。
AAM-4は、発射後にレーダー誘導が不要である撃ち放し方式の空対空ミサイルですが、精密誘導を行う場合はレーダーによる指令誘導が可能な方式を採用していて、射程は100km程度ある、とされています。ミサイル本体は、アメリカ製のAIM-120AMRAAMよりも大型となっていますが、これはAIM-120AMRAAMが航空機を攻撃することに重点を置いているのに対して、日本の防空の場合では巡航ミサイルなどへの迎撃も必要であるだろう、と考えられ、威力を高める必要からミサイルに搭載する炸薬を多く搭載しているため、ミサイルが大型化しています。
発射後の誘導が不要な撃ち放し方式のミサイルですから、一機の戦闘機が同時に多数の目標に対処することが出来るという特性がありまして、このミサイルをF-2が運用能力を獲得することは、その能力を大きく高めることになるでしょう。更にAAM-4には、空気取り入れ口を設けてダクテッドロケットエンジンを搭載し、極超音速で射程を延伸する改良型の開発が行われています。また、ミサイルの誘導シーカー部分にも改良を施し、次世代の航空戦に対応できるレーダー誘導ミサイルとして開発が進められていますから、この将来発展性が大きいAAM-4をF-2に搭載するという意義は重要です。
F-4戦闘機の後継機というものは、なかなか決まりそうになく、そうした中で、老朽化だけが進んでゆく、という状況にあるのですけれども、F-2支援戦闘機の生産継続を行うのならば、近代化改修の為に必要な技術情報は、F-2に関しては日本側が持っているのですから、F-2の生産を継続してゆくのならば、将来の近代化を行う場合には、日本が独自に行う事が出来る自由度が広くなります。ステルス性はステルス機に比べれば低く、超音速巡航も出来ないF-2ではありますが、日本が独自に改修できる、という自由度では、他の候補機を圧倒しているのですよね。
日本の領空は非常に広いのですが、その広い空を隣国と比べて少ない作戦機で防空を行う事が出来るのは、機体の性能もさることながら、防衛産業各社が少ない機体が全て自前で整備して修理し、点検し飛行させることが出来るように運用基盤を創っていることが挙げられます。そして、こうした基盤を持たない国では旧式化してしまうような機体でも、日本であればバージョンアップして使えるように能力を向上させることができるわけです。この基盤を維持するためにも、本命となるようなステルス機などが誕生し、日本で生産することが出来るときまで、F-2の生産を継続して、更に一機一機の能力を高めてゆくことも重要なのではないかな、とAAM-4&JDAMを搭載したF-2を見上げて、ふと思いました。
HARUNA
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