■第1混成団から改編
本日、陸上自衛隊那覇駐屯地において第1混成団が第15旅団へと改編され、改編記念行事には北沢防衛大臣も出席しました。
第15旅団新編記念行事では、第1混成団長反怖謙一陸将補が新しく初代第15旅団長に着任、北沢防衛大臣、火箱陸幕長が出席し、北沢防衛大臣は、地理的特性をふまえ、ゲリラや特殊部隊による攻撃などに実効的に対処することが求められている。国民の理解と信頼を求められるよう土井力してほしい、と訓辞しました。新編行事には、隊員700名が参加、車両150両が参加しての観閲行進が行われたとのことです。
これまで、那覇駐屯地には、第1混成団が駐屯して、沖縄県の防衛警備及び災害派遣に当たってきましたが、1996年に混成団を旅団へと改編することが決定していて、今回、この改編が実現した形となりました。南西諸島の防衛力を強化するために旅団へ改編となった第15旅団は、旅団本部を中心に、第51普通科連隊、第6高射特科群、第15施設中隊、第15偵察隊、第15飛行隊、第15後方支援隊、第101不発弾処理隊、第15化学防護隊、第15音楽隊を基幹として編成されています。人員は2100名、戦車部隊や野戦特科部隊は編成に組み込まれていないのですが、空中機動力が高く、沿岸監視などを想定した部隊編成となっています。
第1混成団は、第1混成群に第301普通科中隊、第302普通科中隊、第301重迫撃砲中隊を置いて基幹戦闘部隊としていたのに加えて、沖縄県の防空を担うためのホークミサイルを運用する第6高射特科群、第101後方支援隊、そして不発弾の多い沖縄県に対応するべく編成された第101不発弾処理隊、急患を航空搬送することを大きな任務とする第101飛行隊から編成されていました。不発弾処理、防空、急患輸送、この三つが大きな任務であったわけですね。
今回新編された第51普通科連隊は、三個普通科中隊を基幹とする旅団普通科連隊で、本部管理中隊に重迫撃砲小隊を置く編成を採っているものとおもわれます。公開された新編行事での写真では、軽装甲機動車が多数写っていまして、推測ですが併せて01式軽対戦車誘導弾を装備、離島防衛を背景として高い抑止力が発揮できるだろう、ということができます。一方で、四国は善通寺の第2混成団が第14旅団に改編される際には二個普通科連隊を基幹とする編成に改編されていますので、将来的には沖縄県内に第52普通科連隊が新編される、ということもあるかもしれません。
第8高射特科群は、ホークミサイルを運用する部隊です。ホークミサイルは基本的に方面隊のもとで直轄運用されるのですけれども、飯塚駐屯地に司令部を置く西部方面隊の第二高射特科団の指揮下ではなく、沖縄のホークミサイル部隊は混成団に直轄運用されるというかたちをとっています。白川分屯地の第323高射中隊、勝連分屯地の第324高射中隊、知念分屯地の第325高射中隊、南与座分屯地の第326高射中隊、そして第306高射搬送通信隊から成る編成を採っています。北海道東千歳の第七師団に所属する第7高射特科連隊と並び、直轄部隊を除く高射特科部隊としてはもっとも強力な部隊なのですけれども、中射程のホークミサイル以外の野戦高射装備を有していないのも特色です。
第15飛行隊は、UH60JA多用途ヘリコプター、CH47J/JA輸送ヘリコプター、そしてLR2連絡偵察機などを運用している部隊で、航続距離が非常に大きい陸上自衛隊のヘリコプターは、民間の防災ヘリコプターやドクターヘリの能力では展開することのできない遠隔地への緊急救急搬送を行う任務を有しています。これは第101飛行隊から続いているもので、有事の際には離島への空輸任務にあたることもできるでしょう。ただし、第15旅団は、第1混成団時代も含めて野戦特科部隊を持っていませんのでOH6やOH1のような観測ヘリコプターを持っていません。付け加えれば、離島防衛にあれば非常に大きな能力を発揮するだろう戦闘ヘリコプターや対戦車ヘリコプターも配備されていません。
第15偵察隊は、第1混成団時代にはなかった部隊で、87式偵察警戒車や沿岸監視装置などを運用しているとのことです。那覇駐屯地に展示保存されているものを除けば、陸上自衛隊の装甲車両が沖縄に持ち込まれるのは初めて、となるのでしょうか。沖縄戦で第32軍が戦車隊を配置して以来かもしれません。沖縄県内には陸上自衛隊の演習上はなく、第1混成群も駐屯地のグラウンドのとなりにて訓練を行っていたのですが、普天間飛行場返還を含めた米軍再編にともなう一連の変革の中で、沖縄県内の米軍演習上を陸上自衛隊と共同使用するという計画ですから、87式偵察警戒車の射撃訓練を含めた様々な訓練も実施できることとなるでしょう。対戦車隊を編成して、96式多目的誘導弾システムを配備すれば、ヘリで空輸ができて万全だったのですけれどもね。
南西諸島の防衛警備を考えるのならば、こうした旅団とともに、中隊規模での警備隊、対馬警備隊のような部隊を広範に配置する方法が一つ考えられるかもしれません。一個中隊規模では、フォークランド紛争におけるイギリス軍警備中隊のように、相手が大隊規模で上陸をすれば万事休す、となるかもしれませんが、対馬警備隊の場合、中隊は山間部での遊撃戦を展開する訓練を実施してきました。これは九州からのヘリコプターによる増援が到達するまでの時間を稼ぐことが目的でしたけれども、フォークランド諸島とイギリス本土ほど、南西諸島の島々は分散していませんので、対戦車ミサイルや迫撃砲を持って普通科中隊が駐屯することには意義があるでしょう。
また、海上自衛隊と協同して、50~100トンクラスの高速艇、スウェーデン水陸両用戦団、昔の沿岸砲兵が運用しているような強襲艇を運用する事ができれば、こちらも機動力を発揮でき、大きな抑止力となります。こうした部隊が沖縄にて任務に当たっている、ということも大きな意義があります。自衛隊が全くいない状況であれば、小隊規模の特殊部隊が上陸して、日本以外の国旗を掲げ既成事実を構築しようとする危惧もあるのですけれども、一個小隊でも89式小銃と携帯式ミサイルを手に隠れて状況を通信機にて那覇や東京に送ることは大きな意義があります。
沖縄県、南西諸島は、大陸から太平洋までを通じる中間にあります。そして東シナ海には天然ガスを算出する関係上、排他的経済水域の中間線に関して、日本と中国、韓国との間で国際紛争が既に勃発しています。この国際紛争が武力紛争に展開しないという保証はどこにもないわけで、特に大陸からの圧力を押さえるのに第15旅団2100名への重責はもの凄いことになるのですけれども、平和と安定のために新しい旅団が寄与してくれることは確かです。
HARUNA
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