北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛力とは継続こそが重要 対岸の教訓、Tu160領空侵犯と韓国哨戒艦事故

2010-03-28 22:47:47 | 国際・政治

■物事は急いては事を仕損じる

 普天間問題がなかなか進まない中、インド洋海上阻止行動給油支援にかわる日本のテロとの戦いへの支援態勢への議論はいつの間にかなくなっていて、あたかも日本の安全保障上の最大の問題が普天間問題のように誤解されているようです。

Img_0229 こうした中で、F2生産終了後の戦闘機の国内生産・支援能力についての議論も忘れられているようですが、F2の生産終了は刻一刻と迫ってきています。こうしたなかで、イギリスにロシアのTu160爆撃機が接近し、領空侵犯を行ったとのことです。これは空軍の予算体系が不充分になっているイギリスへの防空の能力の評価、という一面があったのではないでしょうか。イギリス空軍はトーネードを要撃に展開させたのですが、報道では領空侵犯、とありますね。イギリスはアフガニスタン戦費が高騰していて、今後は戦闘機部隊や基地を縮小し、アフガニスタンでは使いにくい大型の装甲車両を削減して小型装輪装甲車の調達を行い、海軍も空母整備計画を見直す可能性があることを示唆しています。

Img_3159 これに加えて、イギリスが参加しているF35計画が順調に遅れていまして、重ねるように開発費用は追加に追加を重ねて上昇、一機あたりの単価に跳ね返っているという状況です。F35Bは、垂直離着陸に成功しましたけれども、まだそういう段階です。イギリス海軍がハリアーの後継機にF35Bを採用する予定で、今更引けないのが現状、FA18Eかタイフーン艦載型にしておけばよかった、といわれているところでしょうか。過去にはタイフーンが実戦配備された直後にもロシアのTu95がイギリスに異常接近する事案がありましたので、今回は少なからずイギリスの防空能力を計る目的があったのでしょう。航空自衛隊の時期戦闘機計画について、一部の識者にはF4そのものを純減という選択肢もあるのではないかという声もあるようですけれども、二個飛行隊が抜けるのならば、相当慎重に例えば稼働率を高めるための補給整備体系の再編や、飛行隊の配置転換などを実施しなければ、対領空侵犯措置の需要が増加した場合に対処することができなくなってしまいます。

Img_8753 加えて、一度二個飛行隊所要の要員や施設、運用体系を省いてしまいますと、今度は現状復帰させるためにまたかなりの労力を必要とすることになります。日本の領空は日本列島が広大であることから非常に広く、北海道北端から南西諸島南端までは、北欧コペンハーゲンから地中海はアフリカ大陸北部アルジェにいたるまでの地域に匹敵します、このあたり、もっと慎重に考えるべきでしょう。ある意味、次世代の日本の航空安全保障を担う重大な問題でその重要性は普天間問題に勝るとも劣りません。

Img_1761  一方で、防衛力は、決して無理をしてはいけません、背伸びをしても屈み続けてもいけないということです。韓国海軍の哨戒艦が黄海で沈没した事案がありました。沈没したのは天安、1200トンのコルベットです。先日、韓国海軍艦艇舞鶴入港の際の記事が急にアクセス増大となっていたのですが、この関係なのでしょうか(ちなみに、昨夜は米軍のKC130に関する記事にアクセスが集中していました、なんでも嘉手納で地上衝突事故があった関係らしく)。韓国海軍では、新型の強襲揚陸艦独島を建造、イージス艦の建造などを急ピッチで実施した結果、ほかの水上戦闘艦への整備補給などが後回しとなっている状況があります。

Img_8372 日本の自衛隊では、現状ではこういうような状況は生じていませんが、将来の脅威に関する見積もりを誤ると、後に無理をしなければならない状況に陥ります。無理というのはどうしても細部で表面化しますので、どこかで重なった部分が集約され、事故につながります。今回の韓国海軍の事故は、機関爆発か、船体の老朽化か、三角波による浸水かは現時点で調査中とのことですが、出先にて聞いた情報だけでも現時点で行方不明者がいるとのこと。無事を祈るとともに、韓国海軍上層部は今後、もう少し規模に見合った予算の体制に移行するよう努力し、事故が起きないようにすることが望まれます。一方で、日本政府も、これを対岸の火事としてみる、ということはあってはならないことです。

Img_0606 鳩山政権は子供手当の費用捻出をはじめとした、一連の公約実現に必要な費用を捻出するための手段として、防衛費の削減に取り組む姿勢を表明しています。鳩山首相が防衛大学校の卒業式での訓辞で述べたことなのですが、自衛隊の装備・部隊体系は現状の予算体系に依拠しての規模で構成されています。先日、沖縄県の那覇駐屯地で第1混成団が第15旅団に改編されたという記事を掲載しましたが、こうして実現した9個師団・6個旅団体制は、1995年に防衛大綱改訂の案として、13個師団・2個混成団体制の縮小案として出されたものが、十五年を経て実現したものということを留意する必要があるでしょう。

Img_0066_1 財源捻出のために2020年代を目処に大きく削減する、というのならばともかく、現時点で短期的に予算を削るというのはあまりに短絡的で無責任です。もっとも、民主党が昨年の衆議院総選挙で示したマニフェストも本来は十年単位で組み替えるべき予算再編による福祉向上を、あたかもすぐに出来るが如く発言して、実行しようとしたために生じたことなのですけれども、ね。さて、防衛力、もちろんほかの物事もそうですが、継続こそ力、といいますか、重要です。

HARUNA

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コメント (4)
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