◆南西諸島には中国艦部隊が出現
統合幕僚監部によれば7月3日にIl-38が2機日本海側から、4日にTu-95が2機太平洋側を東北沖へ進出、本日5日にはTu-95が2機、東海、四国、九州沖へ往復しました。そして3日、南西諸島には中国艦2隻が出現しています。
それぞれ航空自衛隊が緊急発進して対応したのですが、三日間で三回の緊急発進、というのは最近では非常に稀有な状況ですし、本日の対領空侵犯措置では沿海州を拠点として展開した爆撃機が九州沖まで進出してくる、というのもこれは非常に珍しい状況です。もっともTu-95は航続距離が大きいので沖縄方面に進出した事も多いので、技術的には可能な事なのですけれども、三日目の編隊が最も南下、ロシア軍の行動は活発ですね。
7月3日、ロシア海軍のIl-38哨戒機2機が沿海州から能登半島方面に接近、恐らく近傍の小松基地からF-15が2機緊急発進したと考えられるのですが、能登半島沖90kmの地点で日本海沿岸に沿って北東に転進、男鹿半島沖110km、奥尻島沖80km、留萌沖100kmで転進を行い、稚内沖での転進を最後に沿海州へ飛び去りました。三沢基地のF-2,千歳基地のF-15にそれぞれ移管して航空自衛隊は対処したと考えられます。
7月4日、今度はTu-95爆撃機二機が沿海州から北海道の礼文島に直進する方向で接近、転換して宗谷海峡上空を通過、この状況で千歳基地のF-15が緊急発進したと考えられます。択捉島と国後島間を飛行したのち、根室沖で転進、帯広沖を飛行して襟裳岬沖から太平洋を南東へ飛行。
三沢基地のF-2が対応したと考えられるのですが、続いて南下したことから百里基地のF-15かF-4の緊急発進を受けた可能性があり、金華山沖200kmを大きく転回して再度今度は襟裳岬へ接近する航路を採りました、三沢沖で二回にわたり360度旋回を行った後襟裳岬沖で東へ転進、続いて太平洋上で北へ転進して北方領土上空を飛行し、サハリン上空を経由して沿海州へ飛び去りました。
5日の飛行は最も長距離で実施されていて、サハリンに沿って南下、国後島沖で一度太平洋に方向を変え、三沢基地沖200kmで東京に向かう進路をとります。千歳基地と三沢基地の緊急発進を受けたのでしょうね、恐らく百里基地の戦闘機からスクランブルを受けつつそのまま伊豆諸島の三宅島南部の公海上を飛行。
Tu-95は御前崎沖で更に東海地方へ向かう進路をとりそのまま紀伊半島沖を飛行、このあたりで小松基地から緊急発進を受けたのだと思われます。四国沖を太平洋へ距離を放しつつ今度は九州沖へ転進、新田原基地のF-4から緊急発進を受けつつ種子島に接近、公海上で転進し同じ航路を戻りつつ続いて土佐湾へ接近。
Tu-95、再度進路を変え百里基地より緊急発進を受けたのでしょうか、福島沖まで往路を同じ復路を経て沿海州に戻るかと思われたのですが、福島沖で突如転進、銚子へ急接近しつつ再度北上するべく大きく向きを変え、三陸沖を襟裳岬へ最短ルートで飛行、襟裳岬、根室沖で転進を繰り返し、北方領土上空を経てサハリン方面へ飛び去ったことが確認されています。
防衛省はどの機体が緊急発進したのか、という事は報道発表していないので、緊急発進した部隊、というのは予想です。一方、ここまで長距離での運用や連続しての飛来となりますと、もしかしたらば浜松基地のE-767や三沢基地に配備されているE-2Cのような空中警戒機の出動もあったかもしれません。
それにしても三日間連続、緊急発進へ待機するアラートハンガーの隊員の方は緊張の連続だったでしょう。なにしろ、ソファーでリラックスして待機しているのですが、前触れ無しにじゃーん、とベルが鳴り響いて分かっていてもどきどきするわけです。耳に優しいチャイムにしてほしい、という要望もあったようなのですが、却下されています。
一方で三日間連続、となったのですが統合幕僚監部HPで報じされたのは本日5日に三件掲載されていた訳で、明日続かない、という保証は無い訳ですから、緊張は今も続いているでしょう。他方で、3日には沖縄近海に中国海軍の水上戦闘艦2隻が出現、海上自衛隊が警戒に護衛艦きりさめ、を派遣しています。
3日土曜日、2030時に佐世保基地を母港とする第7護衛隊所属の護衛艦きりさめ、が沖縄本島西南西170kmの海域を東シナ海から太平洋に向かい航行しているのを発見したとのことです。発見されたのは旅州型ミサイル駆逐艦の石家荘と江衛Ⅱ型の洛陽の二隻。洛陽は満載排水量2250㌧の小型汎用フリゲイトですが、石家荘はロシア製SA-N20艦対空ミサイルを搭載していまして、注意を要する新型艦です。
旅州型は中華型イージスと騒がれた旅洋Ⅱ型の蘭州と海口に続いて建造されたもので、旅洋Ⅱ型のようなアクティヴフューズドアレイレーダーの四面配置は行っていませんが、一応、継続して建造されたミサイル駆逐艦ですから、どういうレーダーの能力があるのか、注意を払う必要がありそうです、海外での任務が増えている海上自衛隊ですが日本周辺海域でも忙しい。このように日本周辺は北方からの脅威が再度高まっているとともに、多極化している、という状況の象徴のような数日間でした。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)