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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

とわだ型補給艦とわだ就役から今年で23年 後継艦はどうなるか!?

2010-07-04 23:45:34 | 海上自衛隊 催事

◆とわだ型3隻・ましゅう型2隻

 海上自衛隊は第一海上補給隊に、とわだ型3隻、ましゅう型2隻の計5隻の補給艦を配備して、護衛艦や外国艦船への給油や補給に当てています。その中の、とわだ型が就役から今年で23年を迎えます。本日はこの話題。

Img_8573  現在数の上では主力の、とわだ型ですが、一番艦が就役したのは1987年、従来この種の艦船は24年で近代化改修を行って艦齢を延長させるか、新しい艦を建造して交代して除籍するか、という選択肢を提示されますので、とわだ型もそろそろ後継艦を建造するのか、近代化改修を施すのか、考えなくてはならない時期となってきました。海上自衛隊の護衛艦は、アメリカ海軍のイージス駆逐艦が8000トンですから小ぶりと勘違いされるのですが、それは相手が世界最大の海軍だからでして、諸外国の水上戦闘艦が3000~4000トンくらいの満載排水量なのに対して、はつゆき型で4200トン、あさぎり型で4800トン、最近の、むらさめ型で6200トン、たかなみ型で6300トン、かなり大型です。イギリスが1982年のフォークランド紛争で遠くイギリス本土から展開する際にフリゲイトが小型だったので何度も洋上補給を行わなくてはいかなかったりして苦労した、という記録があります。

Img_0720  この点、海上自衛隊の護衛艦は大型なので搭載している燃料も多く、航続距離は長いことが期待されるのですが、通常、水上戦闘艦は全力航行すれば数日で燃料がなくなってしまいますし、燃料以外に生鮮食料や消耗品は補充しなくてはなりません。そのために外洋に出る海軍は補給艦を整備しなくてはなりません。海上自衛隊護衛艦も大型ではありますが水上戦闘艦である以上航続距離には限界があり、戦闘行動や行動半径を考えれば補給艦の存在は重要です。この重要な、しかし見過ごされがちな補給艦について大きな話題となったのは小泉内閣時代に行われたインド洋海上阻止行動給油支援を行っていた際に補給艦が不足していたという際のことです。インド洋給油支援、再開するのかしないのか、民主党政権部内ではいろいろと意見があるようですが、自民党政権時代に実施されていた当時は4隻しかない補給艦、非常にやりくりが苦労した、という話が当時から伝えられています。

Img_1075  海上自衛隊が補給艦を導入したのは1962年、はまな就役の際です。当時は給油艦と呼称され、満載排水量7550トン、基準排水量2900トンと小型ではありましたが、当時草創期から国産艦への転換期にあった海上自衛隊の部隊運用を支えました。1979年には満載排水量9000トン、基準排水量5000トンの、さがみ、が建造されました。燃料に加えて潤滑油から弾薬、食料、消耗品まで補給できるようになり、はるな型、しらね型、たちかぜ型といった大型護衛艦の導入期にあって、海上自衛隊の補給能力を高めることに寄与しました。

Img_1282  さて、日本の防衛政策は1970年代までは経済発展を主軸として、第一に北海道への極東ソ連軍の侵攻を米軍の到着までなにが何でも持久戦で持ちこたえる、という北方重視。第二に朝鮮半島情勢が緊迫化してソ連の支援の元での北朝鮮の軍事行動に際して、九州や日本海側への圧力に対処する、という、いわば日本列島に立てこもって持ちこたえるというものが防衛政策の基本でしたが、1970年代後半から、シーレーン防衛というものの重要性が認識されるようになってきました。いや、重要性は第二次大戦中に船舶を潜水艦に次々と沈められている頃から認識されていたのですが、太平洋戦争敗戦の頃から復興に至るまで、本土防衛で手一杯だった、というのが実状でしょうか。

Img_8341  1980年代になると、シーレーン防衛を充実させるために、はつゆき型護衛艦12隻の大量建造やP-3C哨戒機100機体制の確立へ歩んでいきました。護衛艦は満載排水量2800トンの、みねぐも型、2750トンの、やまぐも型、3950トンの、たかつき型から4000~4200トンの、はつゆき型へと大型化しましたので、必要な燃料や物資も増大することとなったわけです。シーレーン防衛を担うべく、それまではヘリコプターを運用する護衛艦は、はるな型2隻、しらね型2隻の4隻のみで、第一護衛隊群の第51護衛隊と第二護衛隊群の第52護衛隊にそれぞれ2隻が配備されていたのですが、護衛艦隊の護衛隊群を同一編成にしよう、という流れとなり、新しく護衛艦8隻、ヘリコプター8機を一個護衛隊群とする体制に移行することとなりました。ヘリコプター搭載護衛艦を旗艦として、航空機に備えるミサイル護衛艦を2隻、ヘリコプター1機と各種ミサイルを搭載した護衛艦を5隻配備する編成へ転換することとしたわけです。

Img_6337  この為、とわだ型補給艦の建造が始まりました。1987年に1隻、1990年に2隻が就役したこの補給艦は、満載排水量12100トン、一隻でいっこ護衛隊群の8隻にたいして補給を行うことを目的として搭載する燃料や弾薬などの総量が決定されました。護衛隊群は四個ですので、引退した、はまな、を差し引いても、さがみ、そして、とわだ型3隻、で四個護衛隊群をバックアップ、という体制になったわけです。しかし、日本が専守防衛から世界の安定こそが日本の平和の礎として国際貢献に積極的に参加するとは、1990年の時点では考えられなかったのです。9.11以降、海上自衛隊がインド洋給油支援を行い、8隻の護衛艦に支援を行う、ということを第一に考えて決して大きくない海上自衛隊の補給艦を長期間、インド洋やアラビア海で運用させるという想定外の任務に、能力の限界が露呈します。

Img_0218  インド洋給油支援が始まる前、9.11前なのですが、ちょうど2000年度予算で基準排水量13500トン、満載排水量25000トンの、ましゅう型の建造が決定して、2003年と2004年に2隻が建造されました。補給に加え災害派遣や国際貢献への支援を念頭に置き、みねぐも型の二倍以上となった、むらさめ型や、たかなみ型に応えるべく大型化したのが幸いして、インド洋給油支援では活躍しました。さて、とわだ型の満載排水量は9000トンなのですが、1993年から9500トンの、こんごう型イージス艦が4隻建造され、続いて10000トンの、あたご型が就役、更に昨年から19000トンの、ひゅうが型の就役が始まり、22DDHとして2015年には満載排水量24000トンの護衛艦が就役します。

Img_8495  新しいヘリコプター搭載護衛艦には、ほかの護衛艦への給油機能が盛り込まれるとのことですが、ほかの護衛艦も大型化しますので総合的には補給艦への需要は低くはなりません。そして、国際貢献の任務も、これからは増加することはあっても減少することはなさそうです。とわだ型の後継艦は、どうなるのでしょうか。アメリカ海軍が空母部隊の支援用に建造したのが49000トンのサプライ級、かなり大型です。アメリカの艦は大型、と先ほど書いたのですが、イギリスのフォートビクトリア級は36580トン、スペインとオランダが共同開発したパティーニョ/アムステルダム級が17040トン、ドイツ海軍のベルリン級が20243トン。イタリアとギリシャ海軍が共同設計を採用したエトナ/プロメテウス級が20000トンですから、ましゅう型はこれらのなかでは中間に位置する大きさです。海上自衛隊の活動範囲の広域化を考えれば満載で30000トンクラスのものも必要といえるでしょう。

Img_0188  一方でカナダ海軍やオランダ海軍では、補給艦と揚陸艦の中間のような多目的艦の建造を計画しています。補給艦なのですけれども、後部の上部構造物はヘリコプターの運用能力を重視していて、陸上部隊の輸送も念頭に置いた設計の艦となるようで、こうした艦船の整備も日本にはあり得るのかもしれませんが、海外派遣の中枢艦として整備するのではなく単に補給艦として考えるのならば非効率になってしまうのですが。ともあれ、補給艦の重要性はインド洋給油支援を差し引いても護衛艦の大型化と任務範囲の広域化により重要性も高まっており、補給艦はどのように予算上扱われるのか、今後の動静に注目してゆきたいです。

HARUNA

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コメント (4)
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