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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空自衛隊次期救難ヘリコプター選定 可能ならば機種の共通化が望ましい

2010-07-03 23:28:49 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆約40機が調達される見込み

 航空自衛隊の次期救難ヘリコプター選定がいよいよ開始されるようです。EH-101かNH-90か、S-92の可能性もありますしEC-225やCH-47JA、いやCV-22という可能性も0ではありません。

Img_7938  航空自衛隊は、航空機事故等を想定した救難ヘリコプターとして1991年からシコルスキー社の機体を三菱重工がライセンス生産する形で約40機のUH-60Jを装備しています。万一の航空機事故はもちろん、有事の際の損耗により脱出した航空機搭乗員が危険にさらされた際、必ず救助する、という航空救難体制がある、ということは航空機搭乗員や航空機に関わる全ての要員にとり、心の支えとなります。文字通り命綱ですからね。

Img_4712  この機体の後継機ですが、20年くらいを掛けて40機程度を調達してゆく事となります。基本的にライセンス生産を求めることになるでしょう。一気に外国から購入すると多少安く買えるかもしれませんが予備部品と整備で苦労しますし、20年ほど後に一気に耐用年数を迎えてまたまた少ない予算から一機に買わなくてはなりません。ちまちまと20年かけて輸入していると仕様変更で部品が調達できなくなったり、機体そのものの生産が終了してしまう事も考えられます。長く安定して調達して運用するには気心知れた日本のメーカーによりライセンス生産が基本でしょう。

Img_8310  事故が起きるような状況というのは、快晴無風の日中という状況は中々考えられず、視界が極端に悪い悪天候の夜間、ということも想定されるので1660馬力という強力なエンジン二基を搭載して航続距離1300kmにも達するUH-60に前方赤外線監視装置、航法用気象レーダー、慣性航法装置にGPSを組み合わせたものをUH-60J救難ヘリコプターとして採用しています。

Img_4998  これならば、夜間でも悪天候で視界が悪くとも周辺状況は確認できますし、エンジン出力が大きいですから気流が少々悪くとも力技で操縦することが出来ますし救難に必須のホバーリングで空中に停止する事も悪天候下で可能、航続距離が長いですから遠い海上での事故にもある程度対応できます。最近は空中給油受油装置の搭載が始まり、航続距離が大きく延伸する事となりました、これは救難能力の向上となる訳ですね。

Img_0310  UH-60Jは海上自衛隊で救難ヘリコプターとして約20機が調達されていて、陸上自衛隊でも30機以上が調達され、多用途ヘリコプターとして運用されています。陸海空で同じ機種のヘリコプターを運用しているのですが、加えて海上自衛隊ではUH-60Jの胴体を基本としたSH-60J哨戒ヘリコプターを100機近く調達していましたので、整備補給を効率化することが出来ました。

Img_0268  そこで、救難ヘリコプターですが、航空自衛隊の独自の仕様を盛り込むことは任務遂行上不可欠なのですが、同時に共通の機体を陸海空自衛隊で導入して教育から部品調達まで、そしてライセンス生産における部品調達の費用の低減も含めた考慮があれば非常に理想的です。過去に自衛隊ではV-107を陸上自衛隊は輸送用に、海上自衛隊は掃海用に、航空自衛隊は救難用に採用して川崎重工にてライセンス生産を実施していましたが、高い稼働率とアメリカのバートル社での生産終了後にも調達できた、という安定供給が実現しています。

Img_6821_1  自衛隊のヘリコプターといいますと、観測ヘリコプター、対戦車/戦闘ヘリコプター、輸送ヘリコプター、要人輸送用ヘリコプター、哨戒ヘリコプター、掃海輸送ヘリコプター、練習ヘリコプター、救難ヘリコプターとかなりの機種がありまして、それぞれ任務に適した機体が選定されています。それぞれ個々にこれが最適、という機体はあるのですけれども、出来ればエンジンや整備部品などを共通化できれば取得にも整備にも維持にも稼働率向上にも寄与することでしょう。

Img_1055  全部一機種で、対応できるのならば理想なのですがこれは特性上無理ですので、冒頭に挙げたEH-101やNH-90,S-92にEC-225やCH-47JA,CV-22ですが、選定を行う一方で航空自衛隊だけの機種選定では無く、陸上自衛隊の多用途ヘリコプターや海上自衛隊の救難ヘリコプターに転用できないか、SH-60Kの生産終了後に導入する新しい哨戒ヘリコプターの原型に対応させる、という事を念頭に置くべきなのでは、と思います。

Img_3048  この点、EH-101は海上自衛隊がMCH-101やCH-101として採用していますので当方が最も適していると考えるのですが、機体が大型で大型機の墜落というような状況以外には大きすぎるようにも、またエンジンが三基ついていますから信頼性は高いのですが整備を考えると三基というのは難点となるかもしれません。

Img_4683  もちろん、共通化を金科玉条の如く掲げることがすべてではありません。無理に共通化するという事は、大は小を兼ねるの論理で必ずしも必要でない大型機や高性能機が充当される事にもなり得ますから、このあたりの分水嶺の判断は慎重に行う必要があります。こうした点を踏まえ、もう少し広く航空自衛隊以外の意見も反映が望ましい、と思いつつどういう機体が選定されるのか、興味は尽きませんね。

HARUNA

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コメント (6)
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