◆F16は選外だが無難
FX交渉において、航空自衛隊にとって本命の機体が一つは輸出されず、もう一つは調達が先になるということで難航している現状。
それならば、もうF16でもいいのでは、というのが今回の話題、F16はいい飛行機ですよ、という前半。少しかっ飛んで、いっそ将来ロッキードが生産終了した後は日本が部品供給を行えるようにライセンス生産をしてみては、ともしたのが本日のお話後半部分。さて、航空機としてみた場合、F16はF15の廉価版という印象、ハイローミックスのローとして一段低い印象として見られていますが、米空軍で2000機以上が運用されている傑作機で、現在も生産が続けられています。主流であるF16Cが米空軍に納入されている一方で、F16Eが産油国やイスラエル空軍を中心に配備されています。
F16Eとなると、コンフォーマルタンクを搭載していて外観がF16Cよりも大分変わっており、しかも高性能を追求したことで取得費用はかなり高くなっています。新しい機体を導入するとなれば初期調度品や整備体系の確率にかかる費用を総合したユニットコストでF2よりも高くなる可能性もあります。しかし初飛行は2003年で比較的新しく、エンジンもF2のF110より強力なF100GE132が搭載されており、レーダーもAESA方式のAPG80を搭載、初飛行時のメーカー曰くF2と同等かそれ以上、と表現されたことがあります。もっとも、F2は能力で、まだ伸びしろがあり、しかも七年を経て相応に強化されているので、この種の単純な比較は出来ないのですが、悪い機体ではなさそうです。
航空自衛隊が重視するステルス性ですが、F15SEのように機体内部に武装を格納できませんので、この点は劣るのかもしれませんものの、しかし、機体が元々小さなF16の派生型ですから、RCS,つまりレーダーの写り具合について、そこまで大きくないとはいえるでしょう。FA18EもRCSを低くするべくエンジンに空気を取り入れるエアインテイク、正面からレーダー波を受けるとエアインテイクの奥にあるエンジンが反射してしまうのですが、このあたりF16はどう応えたのか、F35技術試験用にレーダーの低RCS実証試験用としてF16を改修していますし、少々問題はあるのかもしれませんが、しかし用途を誤らなければ対応できるレベルなのかな、と。必要なのは相手のレーダーに捕捉されないことで、それならば電子戦用装備の充実で補う、という視点に立てば、これはEA18がF22に電子戦で一度対処できたことを多分に踏まえての話なのですが、ステルス機への対処や非ステルス機での対応、というかたちになるのではないでしょうか。
もうF16でいいのでは?と投げやりな意見を出してみたのですけれども、F16、ライセンス生産を行う、という前提です。過去には既存機種以外の航空機を選定した場合、初度調達部品や教育関係で費用がかさみ、と記載したのですが、戦闘機国産技術の喪失よりはまともな、といいますか、多少高くとも戦後長く構築してきた基盤を今失うわけにはいかない、今失えば永続的に外国製、特に国内に部品プールのあるアメリカ製の航空機を買うことになるのですからね。F16もアメリカ製ですが、国内の産業を残せば、生産基盤は将来、伸びしろを残します。
ロッキードでは、かつてF2スーパー改という、F16CをF16Eに付与させたような性能向上プログラムを提示したことがありましたが、まあ、横浜航空宇宙展で公開されたという機体のイラストは、あまりにアレでして、ツッこんだら負けのような気がしたとともにF22の導入がここまで難航するとは思われていなかった当時の小泉・ブッシュ関係、あまり相手にされませんでした。とはいいつつも、もう少しいい機体が導入できるだろうという思いこみの元で、国民に説明できない航空機は導入しないとした当時の石破防衛庁長官によりF2の調達数下方修正が発表、さてなにを導入するのか、国民に説明できる航空とは、と考えさせつつも、最初の躓きを迎えたわけです。
F2が駄目とは言っても武器輸出三原則の関係上F35の国際共同開発には参加できないことはあの時点でわかっており、読売新聞の確かあの頃に掲載されていた日本の安全保障に関するコラムに航空自衛隊の上の方の人が残念がっている、と掲載されていました。しかし、F22は、ううむ1999年頃の確か北朝鮮ミサイル危機でしたか、あの頃はもうF22でFXは決まったような風潮はあったのですが、なにを導入するつもりだったのでしょうかね、しかし、なにを選ぶかの自信は感じられました。さて、F35が絶賛炎上中、とまではいかないにしても、もともとF16くらいの費用で調達できる、としたF35であるのだけれども、どうやらF15並になりそう、といわれたのが今世紀に入ってから。
F35,昨今ではF15よりも高い航空機となりつつあり、その分高性能、と盛んに強調されています。さて、アメリカが冷戦時代世界中の友好国に安価なF5戦闘機を供給して、それらの国が僅かながらでもF16を調達しているのですが、途上国にはF16もかなり高価な航空機です。これを将来的にF35に置き換えられるか、といえばちょっと現実味がなく、手頃な価格の戦闘機、というとスウェーデンのグリペンくらいしか思い浮かびません。そこで、ロッキードが将来F16のラインを閉じてF35の生産に移行した後、日本が生産基盤を構築すれば、そこから世界に供給できるような気がしないでもありません。
政府部内で武器輸出三原則が再検討するかを再検討されているとはいえ、F16を日本から供給するとは、突拍子の無い案ですけれども、過去にはバートル社のV107輸送ヘリコプターについて、アメリカでの生産が終了した後はライセンス生産を行っていた川崎重工が世界に供給した事例があります。かなり非現実的ですが、F16をライセンス生産すれば、こうしたオプションの可能性も浮上してくるわけです。・・・、まあ、絵空事ではありますが、本気で日米交渉を行えば、可能性はなきにしろあらず、とも。
・・・、後半部分は置いておいて、F22導入は不可能、F35は間に合わず、F2増産にはアメリカの壁、FA-18EやF-15Eは設計の古さが気になり、欧州機は論外、というのならば、F16、という選択肢も考えてみる価値はあるのではないでしょうか。F16は当分米空軍でも運用が続けられる機体、しかもF16Eは中々の性能です。多用途性は高いですし、能力向上プログラムも継続されています。他に選択肢が無いのならば、と考えてみるのもどうでしょうか。F16でしたら、エンジンのF2との互換性や、日本製各種装備との適合性を日米間で話し合う余地もあるように思います。
HARUNA
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