◆ピョートルヴェリキー・モスクワ、母港へ
統合幕僚監部によれば、24日1200時頃、第13護衛隊の護衛艦いそゆき、が上対馬南東約40kmを航行する巡洋艦二隻を確認したとのことです。
二隻は、先頭にキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦、続いてスラヴァ級ミサイル巡洋艦が航行。発表された写真の艦番号から、北方艦隊旗艦ピョートルヴェリキー、黒海艦隊旗艦モスクワであると判明しました。二隻はそのまま対馬海峡を南下したとのことで、極東地区で行われたボストーク2010演習を完了、母港へ帰港するものと思われます。
日米のイージス艦をはるかにしのぐ大型艦である原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリキーは5月16日、ミサイル巡洋艦モスクワは5月22日、それぞれ対馬海峡を通峡し、ウラジヴォストークに向かいましたが、突如の遠方からの大型巡洋艦日本周辺への出現に少々驚かされました。
これは冷戦後最大規模の軍事演習ボストーク2010を実施する目的で参加したもので、折からの朝鮮半島情勢緊迫化に対処するかたちとなり、北方領土での着上陸対処訓練や中ロ国境への緊急展開要領の確認を行うかたちとなり、ロシア軍のポテンシャルの高さを示す結果となりました。
ロシア海軍の大型巡洋班は主として、冷戦時代、西側が軽空母を含む空母艦載機に依存していた長距離対艦攻撃能力を長距離対艦ミサイルにより代替する、より端的にはアメリカの空母部隊に対処する目的で建造された性格が強いのですけれども、大型の巡洋艦が有する威容というものの大きさを再確認する事となりました。
しかし思い起こせば、かつてのソ連の軍事的圧力とは、今日の中国による圧力とは比べ物にならないほど大きかったのですね。80年代の戦車マガジンに掲載されている赤の広場でのパレードの写真を見てみましても、第二次大戦でドイツ軍を押し潰し、世界を二分する勢力の一つ、という威圧感がありましたが、中国の場合は過小評価することはできませんものの、おお、新型か、という規模です。
世界の艦船を俯瞰しても、米海軍に対抗する勢いで新型の大型艦が揃う中、如何に日米で対処してゆくか、というような印象でしたが、今日では核兵器は弾道ミサイル防衛体制が確立するまでは別として、海上自衛隊の稼働部隊だけで中国海軍には充分対処できるという状況です。色々と考えさせられたボストーク2010演習ですけれども、先日終了、そして巡洋艦は帰途に就いたとのこと。平穏な航海を望みたいです。
HARUNA
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