北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

普天間飛行場移設問題 キャンプシュワブ沿岸の滑走路一本化を日本側が提案

2010-07-18 23:30:18 | 国際・政治

◆V字滑走路は市街地上空を回避する手段

 日本にとって最大の誤算は海兵隊だ!、本日放映が始まったザ・パシフィックでそういう台詞がでていました。本日はその海兵隊の話題。

Img_9937  普天間協議 滑走路1本も提案:7月17日 9時12分  ・・・沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設問題で、日米両政府はワシントンで専門家による協議を行い、日本側は、2本の滑走路を作る従来の計画に加え、滑走路を1本にする新たな案も提案しましたが、アメリカ側は明確な姿勢を示さず、今月下旬にあらためて協議することになりました。普天間基地の移設問題をめぐり、日米両政府は、ことし5月に合意した共同声明で、名護市のキャンプシュワブ辺野古崎地区に滑走路を建設するとしたうえで、具体的な立地や工法などは、来月末までに専門家による検討を終えるとしています。これを受けて、ワシントンで16日まで2日間にわたって専門家協議が行われ、日本側から外務・防衛両省の担当者が、また、アメリカ側から国務省と国防総省の担当者が出席しました。この中で、日本側は、V字型に2本の滑走路を建設するとしている従来の計画に加え、滑走路を1本にして沖合に数十メートルずらす案も選択肢にするとしたうえで、沖縄の理解を得るため、来月末の時点では立地場所などを1つに絞らず、複数の案を示すよう求めました。これに対し、アメリカ側は「検討する」と述べるにとどまり、明確な姿勢を示さなかったことから、両政府は今月下旬に東京であらためて協議することになりました。◆http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100717/t10015798851000.html

Img_2020  V字型滑走路とする案は、自民党時代の日米交渉で合意に至った方式で、辺野古の沿岸部分に沿ってV字型として、離陸用滑走路と着陸用滑走路を分けよう、という案でした。何故こうした形状とするのか、と言えば沿岸部分に突き出たキャンプシュワブの地形を利用することで、離陸用滑走路の延長上に市街地がなく、着陸用滑走路の進入路下にも市街地がない、という地形を選んだからです。この滑走路を一本とする案は、自民党時代の交渉と鳩山政権時代にもありましたが、どの方向に突き出しても名護市の市街地上空を飛行することになるので採用されなかった案です。それならば、と沖合に出してどの方向から発着しても市街地に出ないようにする方策も考えられましたが、あまり沖合に滑走路を建設すると辺野古漁港が使用不能となってしまうし、沿岸部を埋め立てるよりも沖合を埋め立てたほうが環境負荷が大きくなるということで見送られた案です。

Img_1778 今回の滑走路を一本化する案は、地図を見てみますとV字型の中間を縫うような位置に滑走路を建設するという案でした。これでは、着陸時と離陸時に、市街地上空へ非常に近い空域を航空機が飛行することになり、鳥や民間機、僚機との位置関係によっては安全確保のための回避行動により市街地上空を飛行する可能性があります。何故一本の滑走路に統合するのか、ちょっと分らないのですが、一つ考えられるのは現用のCH-46やCH-53ヘリコプターと比べてちかくはいびされるというMV-22ティルトローター機は騒音が少ないとされるので、市街地に近くても騒音が少ない、と考えられた可能性。もっとも、MV-22に置き換えられるのは主としてCH-46、より大型のCH-53は残りますので、騒音の関係から、というのは少々無理があります。CH-53は西側最大のヘリコプター、55名の人員を輸送でき装甲車や火砲を吊下輸送できるほか、エンジン三基という出力を生かして掃海ヘリコプターにも運用され、15000tの揚陸艦をけん引するデモを行った写真も発表されています。もう一つ考えられるのは、V字型という自民党時代の合意をそのまま履行したくない、という民主党部内の意見が出されたという推測でしょうか。ううむ、それならば市街地への騒音を増大させる滑走路の一本化ではなく、V字型を改めX字型にして市街地への騒音を遠ざけるという決定があっていいようにも思います。もっとも、今回は日本から打診をしただけでして、決定には至っていないのですけれども、ね。

Img_1556 日本側が八月末までに普天間航空基地代替飛行場の名護市辺野古のキャンプシュワブ沖に建設する方式についてづいう建設方式化に関する明確な方向性を示すという日米合意が鳩山首相時代に結ばれました。実はその期限まで、もうあと一カ月少々しかないのですが、こうした中で自民党時代とは異なる施工方法が模索されはじめている、というようです。キャンプシュワブ沖合への海兵隊飛行場建設は鳩山政権時代に日本側の都合で一方的に一度白紙に戻すという愚策を行い、日米関係を瞬時に険悪化させたことはご記憶の方が多いとは思います。国際公序では、いかなる決定であっても二国間合意に至った政府間の合意は、覆すには双方の合意、少なくとも同意がなければならない、と考えられているのを一方的に反故にした日本の政策を前に、海兵隊の立体的作戦を行う観点から第三海兵師団の在沖地上戦闘部隊からヘリコプターで20分以内の場所であれば、アメリカは合意する用意があるとの姿勢を見せており、これをもとに勝連半島沖に広大な埋め立てによる海上基地を建設する方法、平時には広大な有事用地区を有する嘉手納基地に統合するという案、普天間飛行場の滑走路を短縮して住宅街から着陸地域を遠ざけることで移転したと強調する案、いろいろ検討されましたがすべて現実性はありませんでした。テニアンやグアムに移転するという案は在沖米軍地上戦闘部隊との連携から不可能で、全国への訓練移転案から、海上自衛隊の護衛艦に移転する案まで出ましたが、結局現実味がなく、当初の日米合意に沿って辺野古のキャンプシュワブへ移転されることが決定、これを受け鳩山内閣は辞意を表明するかたちとなりました。しかし、菅直人政権は鳩山内閣時代の合意を履行するとしており、旗色が悪いためか先週の参院選では沖縄県に候補者を立てませんでした。このため、キャンプシュワブ沖に飛行場を建設する、という合意までは一歩前進したのですが、そこでもたついている、もたつき始めた、という状況です。

Img_1770 在沖米軍は短期的に見れば日本の防衛にそこまで影響を及ぼすものではありませんし、在日米軍は長期的に見れば日本から撤退させて自衛隊が国土の防衛にあたるべきでしょう。ただし、在沖米軍を長期的にみた場合は抑止力が最も働いているのは台湾海峡と朝鮮半島に対してであり、台湾有事に際して米軍が介入できない状況に追いやられる、という形で抑止力が低下すれば本当に台湾有事、という状況に陥る危険性があります。そうなれば台湾に中国軍の拠点が設営され、日本のシーレーンを脅かすという可能性が生じて日本は沖縄を最前線として中国と向き合わねばならず、沖縄の負担は激増することになりますので、これを防ぐためにも長期的に在沖米軍は必要なわけです。しかし、在日米軍は短期的に見れば日本には不可欠ですが、長期的には朝鮮半島が平和的に南北統一を果たし、台湾海峡問題を含め大陸中国が海洋の自由と武力紛争の禁止という国際公序を誠実に履行できる政治体制に変革を遂げれば、米中関係が良好化して日本への脅威はなくなり、在日米軍は歴史的役目を終えることも考えられます。長期的短期的に取り違えなく、日本のかじ取りをお願いしたいと考えますね。さて、ザ・パシフィック、米軍がガダルカナルへ上陸したら反撃が無かったり、日本軍をやっつけたと思ったら実は第一次ソロモン海戦で三川艦隊の巡洋艦戦隊殴り込みを前に米海軍が敗走していて翌日米艦隊がいなくなっていて上陸した海兵隊員が唖然としたり、夜襲による一木支隊の攻撃は米軍から見ても恐怖だったのか、と中々面白かったですね。次週は戦艦金剛&榛名が飛行場を艦砲射撃します。

HARUNA

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