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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

菅直人総理、防衛白書公表の延期を指示、竹島問題記述での時間稼ぎ

2010-07-28 22:55:19 | 国際・政治

◆安全保障問題での内外への説明責任を放棄

 日本の安全保障政策を発表する防衛白書ですが、本年度はその公表を先送りするという異例の決定が報じられました。

Img_3706  韓国に配慮、防衛白書了承先送り 竹島で反発受け・・・ 政府は今月末に閣議了承する予定だった2010年版防衛白書を9月以降に先送りする方針を固めた。日韓両国が領有権を主張する竹島(島根県、韓国名・独島)について「わが国固有の領土」とする記述に韓国が反発。8月29日の「日韓併合100年」を控え、韓国に配慮した。仙谷由人官房長官が27日、防衛省に指示し最終決定した。 防衛白書の閣議了承に関し、対外関係を理由に先送りするのは極めて異例。韓国の意向を踏まえ、閣議了承の直前に先送りする対応に日本の保守層を中心として反発が出るのは避けられない。

Img_0983  これまでも韓国側は竹島を日本の領土と明記した防衛白書や外交青書が公表されるたびに反発してきた。ことしは特に日韓併合100年の節目に当たるため、外交ルートなどを通じて、竹島を日本領土と明示しないよう働き掛けてきた。 日本政府は9月に先送りしても、北方領土と並び竹島を「わが国固有の領土」と記述する方針は変更しない構え。防衛白書は既に関係者向けに約千部印刷されている。2010/07/28 02:02   【共同通信http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010072701001155.html

Img_1901  引用は以上です。そして引用文は異常です。日本の防衛白書は日本の防衛政策について日本国民はもちろん、世界に広く発表され、日本はどのような安全保障環境の認識のもとで防性政策を展開してゆくのか、という概観を発表するものなのですから、領土問題がある、という認識を記すことはもちろん、領土問題以外の安全保障問題についても姿勢を示すもの、これを先延ばしにする、という事は現在の政府は国民への、世界への説明責任を放棄している、という事になります。特に国家が存在する以上、防衛力を持つ権利があるのですが、その防衛力は軍事的均衡の観点から周辺国に対して妥当性を説明する義務があります。これを先延ばしにする、という事は果たして国家を担うという責任を正しく認識しているのか、問われるところと言われても仕方ありません。

Img_7189  また、竹島問題に端を発する日韓関係を理由として先延ばしするという姿勢ですが、果たして防衛白書を発表するまでに、この問題を抜本的に解決できる目途でもあるのでしょうか。領有権問題について、何らかの決定的な政策変更を行う意図が政府にはあるのでしょうか。日韓関係の懸案を前進させるという覚悟があるのでしょうか。そういう意図が無く、日が悪いので、後日紹介して誤魔化そう、という考え方の方が、これは普天間問題を含め昨今の日本の対外政策に強く表れている事なのですが、相手を侮辱し、国際関係において最も非礼に当たります。

Img_4258哨戒艦を盛り込む」と首相 閣議了承先送りの防衛白書・・・ 菅直人首相は28日、2010年版防衛白書の閣議了承で、30日の予定を9月以降に先送りしたことに関し「韓国海軍哨戒艦沈没は、主要国(G8)首脳会議でも大きな課題だった。これを盛り込むべきだと私が判断した」と強調した。 ただ実態は、日韓両国が領有権を主張する竹島について「わが国固有の領土」とする記述に反発する韓国に対し、8月29日の「日韓併合100年」を控え、首相官邸が配慮した。首相発言は「過剰配慮」との批判をかわす狙いがありそうだ。「配慮したのではないか」との質問には答えなかった。

Img_3292  これに関し防衛省の前田哲報道官は28日の記者会見で、27日に官邸側から修正指示があったことを認めた上で(1)韓国海軍哨戒艦沈没をめぐる日本の対応(2)首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書の概要を盛り込むべきだ―などの指摘があったと説明した。 竹島に関する記述に関しては「この5年ぐらい同じものだ」と指摘し、修正版でも表現は踏襲されるとの見通しを示した。2010/07/28 20:27   【共同通信】http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010072801000967.html

Img_9131_1  ううむ、手堅く最初の記事だけの引用でまとめようと思いましたらば、同じ共同通信で同じ日にこうして報じられていました。竹島問題の話からいきなり哨戒艦に切り替えましたね。哨戒艦の問題はすでに配布されている防衛白書でも抜け落ちているとは思えません。抜け落ちていれば書き加えるのは再編集になりますので、製本まで相当期間掛かるのでしょうね。一部配布されているようですが・・・。抜け落ちていたとして、さあ今日から書きくわえよう!、というレベルの内容な否かは読んでみればすぐわかる事なのですが、この話は置いておいても、とりあえず、民主党らしいといいますか民主党ですね。

Img_9684_1  民主党菅直人政権は、前の鳩山由紀夫政権と同じく、首尾一貫せずにブレるようです。最初に出た内容の竹島に関する問題で譲歩というか先延ばしというか、こういう発言で叩かれるということから、早速哨戒艦を思いついたように発表する。質問に答えないということは黙示的に同意したと受け取られる事ですので、論旨のすり替えを行ってしまった訳です。対外的にどう受け取られるのか、という事を考えてこの発言を行えば問題ですし、対外的な視点を考えずころころ変えたのであれば問題外です。

Img_7295  一国を動かす、という事は他国との関係を考えなければなりません。国際関係は信頼の蓄積が無ければ潤滑には動きません。この点で現政権は前政権から失敗の伝統を踏襲しているのですが、大急ぎで認識を改めてほしい、もしくは野党に戻る決意も含め考えてほしいです。政権与党では権限は委譲出来ても責任からは逃げることは出来ないのですからね。本日は、日本のタンカーがアフリカ沖で海賊に襲撃された可能性がある、という報道があり、こちらを少し考えようとも思ったのですが、やはり、と防衛白書先延ばしの話題を掲載しました。

HARUNA

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コメント (16)
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