北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ソマリア沖海賊対処任務 多国籍海軍部隊支援に補給艦を!NATOが要望

2010-07-17 22:48:03 | 国際・政治

◆海上自衛隊は補給艦5隻を運用

 今回の西日本豪雨災害ですが、小月航空隊、第17普連、第35普連が対応したようです。思いのほか被害が大きかったようで、台風と違い突如来る豪雨災害への備えの重要性を痛感しました。

Img_0247  さて、閑話休題。本日はソマリア沖海賊対処任務の話題です。NATOが補給艦を出してくれ、と要望を寄せました。ソマリア海賊:NATO、日本に補給艦派遣要請 実施に法整備必要・・・ 東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策を巡り、北大西洋条約機構(NATO)が日本政府に対し、海賊対策に従事しているNATO軍艦船の給油のため、自衛隊の補給艦を派遣するよう求めていることが16日、分かった。政府は給油活動の可能性について検討するが、補給艦を現地に派遣して給油活動を行うには、海賊対処法改正か新法制定が必要になる。

Img_1558  NATOは米国を中心とした軍事同盟で、8日に東京都内で開かれた日・NATO高級事務レベル協議で給油活動を要請。同協議は年1回、定期的に行われており、日本側は外務省の佐々江賢一郎外務審議官、防衛省の大江博防衛政策局次長、NATO側からは事務総長補が出席した。 

Img_3821  海賊対策は自公政権下の09年3月、海上警備行動に基づき、護衛艦2隻の派遣で始まった。同7月には根拠法を海賊対処法に切り替えている。当時は海上自衛隊がインド洋で、テロ対策に従事する各国艦船に対し給油活動を実施しており、海賊対処法では外国船への給油は想定していなかった。

Img_6877  しかし、民主党政権が今年1月、自民党などの反対を押し切り、インド洋の給油活動から撤退。政府は16日、海賊対処法に基づく対処要項を閣議決定し、海賊対策を来年7月23日まで1年間延長した。インド洋の給油活動に代わる新たな国際貢献策として、海賊対策での給油活動を模索している。【仙石恭 毎日新聞 2010年7月17日 東京朝刊http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100717ddm003040066000c.html

Img_6526  現在海上自衛隊は常時二隻の護衛艦をソマリア沖に派遣して海賊対処の為の船団護衛に当たっています。ソマリアは現在国家機能が正常に機能していないため海賊を取り締まる機関が無く、元々外国船籍の漁船による漁業権侵害から漁場を護るために武装していた漁民の一部が沖合を航行する商船等を占拠して船会社に身代金を要求するという海賊行為が多発しており、これを未然に防ぐのが各国海軍の派遣部隊です。

Img_4098  海賊対処の任務は艦船の場合は二種類あります。一つは海上自衛隊のように船団を編成して商船を水上戦闘艦で護衛する船団護衛方式、これは日本くらいしか実施していません。もうひとつは艦船が哨戒して海賊行為を行う恐れのある船舶に対して臨検を行い海賊行為が行われた場合には事後的に対処するという哨戒方式で、これが各国の行っている海賊対処任務では主流です。この哨戒方式は長期間継続して任務を行うには補給艦からの支援が望ましく、海上自衛隊に補給艦の派遣が要請された、という形です。

Img_2830  しかし、この場合、海上自衛隊が補給艦を派遣する場合には補給艦の護衛に護衛艦を派遣する必要が生じてきます。海賊には補給艦と商船の区別がつきにくく、最近では減ったのですけれども補給艦を商船と勘違いして海賊が襲撃する、という事例が報告されていました。もちろん、補給艦には機関銃を始め武装が施されていて被害に遭う事は無いのですが、武器使用の面で制約のある我が国では抑止するために護衛艦の随伴が不可欠となるでしょう。

Img_2883  そうした場合、現在派遣している二隻の護衛艦に加えてもう一隻の護衛艦が必要となり常時三隻をアフリカ沖に派遣する必要が生じてきます。海上自衛隊には40隻以上の大型護衛艦が配備されているのに、2隻や3隻、と思われるかもしれませんがアフリカ沖に常時派遣するのですから基地の沖合へ数隻遊弋させるのとはわけが違います。つまり交代の護衛艦を派遣させ、待機させる必要が出てくる訳です。

Img_5837  加えて海上自衛隊の護衛艦も船ですから、定期的に造船所において数カ月単位で重整備を行う必要がありますし、教育訓練に要する期間も忘れてはなりません。その上で昨今、中国海軍の行動が活発化していて、そこにロシア海軍の再生という状況もある訳です。日本周辺海域の緊張が高まる中、アフリカ沖に増援、というかたちになったのですが、一方で護衛艦定数は削減されている状況です。付け加えるならば、海上自衛隊の補給艦は5隻のみ、稼働数と海域の広さを考えれば日本周辺でも充分とは言い難い状況です。

Img_5807  ソマリア沖の海賊に対処することの必要性は、海運に依拠して経済活動を行う日本にとり、極めて重要な事ではあるのですけれども、補給艦の数、護衛艦定数はこのままの状況で任務を増やすという方策はどうにかならないのか、とこの種の話を聞くたびに考えます。本年末には防衛大綱改訂を控えていますので、護衛艦定数と補給艦の増勢は現実的に検討するべきだと考えます次第です。

HARUNA

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コメント (14)
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