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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

タイフーン戦闘機 日本に東アジア地域運用基盤を構築してはどうか?F-X選定の一視点

2010-07-16 12:26:55 | 国際・政治

◆BAE販路拡大と日本の有事運用を見据え

 BSフジで10式戦車に関する討論番組が昨夜放映されましたが、そこに元陸幕長の冨澤暉氏が参加されていました。氏の発言への説得力はともかく、どこかで聞いた御名前、とおもい、考えていましたが、何の事は無い、F機関の藤原岩市少佐の娘婿殿でした。お元気そうでなによりです。

Img_1890  閑話休題。イギリスのBAEが次世代ステルス無人機を発表しました。タイフーンを開発したイギリスもこの分野では遅れている、と思われてきましたが技術力の底力を見せつけようとしています。さてさて、今回はユーロファイタータイフーンを日本が導入する上で支障となっている稼働率の面で、日本とイギリスが互恵関係を得られるよう試みれば、タイフーン導入は日英ともに良好な結果を生むのでは、という視点で物事を考えてみましょう。具体的にはタイフーンがアジア地域への輸出を考える上で一つのネックとなっている一点でメーカー整備支援への不安、アジアで運用されている事例がない、という現状です。ちょうど日本では防衛大綱改訂にあわせて武器輸出に関する姿勢を柔軟化させようという動きがありますので、BAEが提示している内容でライセンス生産の認可がありますから、日本でライセンス生産を行うとともにアジア地域でタイフーン導入国が日本で整備支援を受けられるようにして、BAEの運用支援が及ばない地域で日本から部品供給や整備支援が行える地域では日本が支援を行えるようにする案はどうか、と。

Img_1863  タイフーンは高性能です。性能面では、タイフーンは現時点で一つの到達点といわれるトランシェ3においてアクティヴフューズドアレイレーダーを搭載、最大探知距離は大型機の場合で320km、1平方mのステルス制が高い目標を120kmの距離で捕捉した上で同時に20目標を追尾して6目標に対処できる能力が盛り込まれ、航空阻止、制空戦闘、対艦攻撃等々航空自衛隊に課せられる任務に広く対応できます。航続距離が少々短いことが問題点としてあげられていたのですがトランシェ3Aからコンフォーマルタンクが採用され、燃料搭載が5640lから8640lに増大してこの部分が大きく改善されますので、広い日本の領空を守るための長大な航続距離、という要素は満たされているわけです。

Img_2128 それならば何故、航空自衛隊は導入を躊躇しているのか、といわれるかもしれませんが、これは米空軍との交互互換性という問題です。正直な話で言えば、有事の際に航空自衛隊の機体が整備能力の限界などで飛行定数を維持できなくなった場合、米空軍と同じ機体を運用していれば、受領して運用することができます。イスラエル空軍が第四次中東戦争で不足した戦闘機を急遽アメリカから輸入して、塗装は米空軍の塗装のままで国籍表示だけ書き換えて供給したことがありました。こういう一種裏技ができなくなる。そして米軍が日本に持っている整備基盤、嘉手納基地なんかにはヴェトナム戦争を支えた整備基盤があるのですがこれを利用できなくなるということがあります。フォークランド紛争でイギリスは空母機動部隊や航空機の展開などで防衛を成し遂げましたけれどもその分航空機の整備はNATOが持っている基盤にお願いしてそして足りない部品はNATOの共通部品プールから持ってきて対応しました、こうした一種裏技的な運用ができなくなる。これが大きな問題です。

Img_1910 この点で、それならばF1やF2は?と思われるかもしれませんが、圧倒的な規模の航空戦力を駆使して押しつぶす運用を採ってきた米空軍に、少数機を分散的に運用してでも対艦攻撃を行う、という発送の航空機を米空軍が持っていなかった為でして、対艦ミサイル四発を搭載できるA6攻撃機を含む空母航空団と込みで空母でもあれば、また話はちがったんでしょうけれども、これはこれで非現実的。そんな機体は欧州共同開発でコルモラン空対艦ミサイル四発を搭載できるトーネードくらいでしたので、国産するしかなかったわけです。しかしそれ以外は米軍機、と。過去に欧州機の導入が無視される一方でFSX計画の祭に国産戦闘機が模索されたのは、部品供給や運用基盤を濃くないで何とかできるという一点に依拠していたわけですね。一方で、それ以外で戦闘機はアメリカ製志向、これは維持されたわけです。

Img_1880 さて、運用基盤と予備機体系ですが、米軍が採用していないタイフーンはこの二点で非常に大きな問題を抱えています。日本周辺でタイフーンを運用している国もないので融通してもらうことはできませんし、イギリスもドイツも運用はしますが予備機というのは充分になく有事の際に緊急輸入、ということも出来そうにありません。このあたりをどう解決するかが大きな問題になってくるのですが、ライセンス生産と日本にアジア地域でのタイフーン運用基盤を構築するBAEとの協定を締結するという二つの案でしょうか。タイフーンの運用基盤を構築して、東アジア地域を中心にイギリス国内の支援が及ばない地域の整備支援を行う、ということができれば、これら整備能力の余剰を有事の際における日本の予備整備能力とすることができます。もちろん、これはBAEがもっとも恩恵を受ける形であるべきで、三菱重工を含め下請けに甘んじなければなりませんが、欧州機であっても米軍機と同型機の導入ほどではないにしても有事の際の余剰というものを整備することが出来ます。NATOや在日米軍の部品プールを利用できるわけではないのですが、運用支援を行うために部品プールを国内に造るという方式ですから、この面が解決です。

Img_1771 そして有事の際に作戦機が不足となった場合の余剰機の調達ですが、これは実現しないものの日本の運用基盤がイギリスの運用基盤を補完する形で少数機の導入でも稼働率を高めることが出来るという利点から広く配備される可能性があります。これにはBAEとの協定に加えて武器輸出三原則のみなおしにより日本で他国空軍の戦闘機が整備できるようにならなければなりませんし、タイフーンの販売で一部予備部品供給の面で一翼を担うことになれば日英は一蓮托生となりますから、今後はタイフーンと競合するF35の売り込みでアメリカと対立することもあるやもしれませんが、例えばインド空軍がMiG21の後継機にタイフーンを考えているといいますし、日英合致して売り込めばF35に対抗できるやもしれません、韓国もかなり真剣に検討していましたのでF15SEへの対抗は大変かもしれませんが新世代機であり隣国で整備できるという点を強調すれば風は吹くかもしれません、シンガポール空軍にも売り込んでみる価値はあるでしょう、中東はイギリス国内の基盤で何とかなりそうですが、ね。日英間で、こうして協力関係を構築しておけばイギリスの将来戦闘機計画が持ち上がったさいに技術提携も期待できます。戦闘機生産基盤での日英同盟、検討する価値はあるのでは、と思うのですがどうでしょうか。

HARUNA

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コメント (38)
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