◆F-35導入を望むならばF-2増産が妥当な案
日本はF22を導入する模索を続けるよりはF2の生産を続けた方が現実的なのでは、というのが本日のお題。将来F35が必要と考えるのならばF2を生産し続けた方がいいだろう、という点も踏まえて少し書いてみます。
このあたりで最初に一つ。今回掲載の記事はF-15SEが初飛行を果たした日に作成を開始したのですが、コメント欄でお話を戴きましたようにF2にも新しい動きの可能性が一部で報じられています。本来はタイフーンの記事の翌日、土曜日に掲載したかったのですが、ちょっと間が悪かったようですね。
F2の生産継続にはアメリカ側のメーカーとの交渉が不可欠になりますが、この生産継続を求める交渉には生産設備の日本側による買い取りを含め難題となりそうな部分は多いです。買い取ったとして、日本に持ってきても残念ながら新工場を建設するほどの需要があるわけではありません。
アメリカ側を企業買収しようにもロッキードを企業買収するのはちょっと難しいでしょう。しかし、日米政府間交渉であれば、既に運用基盤があり既存の日本製ミサイルをそのまま運用できるF2の重要性を説き、交渉を行えばF2の生産継続、というものは多少可能性はあります。
少なくともF22を日本が取得するよりはF2の生産継続を交渉することの方が壁は低いだろう、と考えます。付け加えて、航空自衛隊が将来的にF35を導入しようと考えるのならば、F35はF4の後継機には間に合わないことだけはまあ、確実ですし、どうしても繋ぎとなる航空機が必要となります。
もっとも、F35を必要数導入するに当たって単価がどの程度になるのか、日本が必要とする防空能力を維持するためには一個飛行隊の編成定数をどのくらいにするのか、そもそもいつ完成して引き渡しが可能となるのか、ということが未知数ですので少々不安なのですが、なんにしても導入はかなり先となることは確実のようです。
F35を導入しようという国では繋ぎの機体を模索するか調達計画の再検討か、という動きがあるようで、F22の導入可能性がほぼなくなった中でF15SEがボーイングで社内飛行試験に成功しました。F15EにFA18Eを思い浮かべる程度のステルス性を付与したというこのF15SEはF35までの繋ぎとしての価値を持ちつつあるようです。
F15SE初飛行段階ではコンフォーマルタンクを搭載した状態での飛行試験を行い、コンフォーマルタンクに内蔵する兵装システムの稼働を確認した後、後日ミサイル発射試験を行う、という流れのようです。基本的に航続距離延伸用のコンフォーマルタンクはF15Cにも搭載できるとマクダネルダグラスは発表していましたし、適合性では問題というものは考えられなかったのですが。
さて、F35が遅れる中、空軍の戦闘機計画に遅延が問題となり始めているイスラエル空軍はF15SEへの関心を寄せているようですし、韓国空軍にも売り込みが行われています。F15SEはF35が間に合うまでの暫定的な措置で導入する、というイスラエル空軍の姿勢で、文字通り繋ぎの機体、という位置づけになります。
韓国空軍も将来的にF35は、国産戦闘機計画とともに導入可能性を示唆していますので、繋ぎ的な要素があるのでしょう。日本は、F35についてどのような認識かは未知数ですが、声は聞こえてくることは確かです。国内でのライセンス生産を行えないF35の導入は、日本の防衛産業に致命的な一撃を加えることになるでしょうから慎重に考える必要があります。
しかし、ステルス機であるF35の導入をなによりも重視する、というのならば性能面では評価の高い航空機ではあります。もっとも、前述の通りF35を導入するとしてF4の後継機としては絶対間に合わないことだけは確かでして、そのための繋ぎの航空機が必要となることだけは確かです。
F35はこのまま順調に試験が進められたとして一応F35Aは米空軍での評価試験が進められてはいるのですけれども、その評価試験を元にF35がどのような航空機かが判明するのはもう少し先、性能を元に航空自衛隊の必要定数を産出できるのももっと先の話となりまして、2020年代の導入ということも考えなければならないかもしれません。
十年先となれば、F2支援戦闘機の初飛行から四半世紀を経た時期ですから、F15運用開始からはまもなく40年を迎えようという頃で、そのころにはF15の引退も本格化している頃でしょう。その頃までF4を飛ばそうにも、昨年がF4初飛行半世紀、ちょっといくら何でも無理があります。そこで、繋ぎの機体としてのF2という位置が見えてくるわけです。
ご存じの通りF2は日米共同生産です。現在F2の生産終了、といわれているのはアメリカでのF2の生産分担部分が製造を終了となるので、これ以上生産を継続することが出来なくなる、というわけです。なるほど、F16とは主翼もフレームも異なる航空機ですし、生産数は先細りが必至です。
しかも少数多年度調達方式を採用していますから、どのくらい生産ラインを維持できるか未知数であるという日本の調達方法は、アメリカでは理解できなかった、ということなのでしょう。早期警戒機のE-767用APY-2レーダーが生産終了して日本が造成できなくなった事を思い出します。
こうしてF2は生産終了に追いやられていったという流れです。現時点では生産継続が難しくなっている、といわれるのですが、もうひとつの視点では日本国内の生産企業には防衛省の要望が多少は通じたとしても、ほかに顧客の多いアメリカに対してはその限りではない、ということも考えられます。
F2は石破長官時代に将来発展性の限界から当初の調達計画を下方修正する、という決定となりました。しかし、F2はレーダーの近代化改修により開発当時は画期的なAESA方式でありながら捜索範囲が狭く欠陥、といわれた部分が改善され、かなり長距離の目標を捜索できるようになりました。
機体強度の問題で機動性に問題があるのでは、といわれていたのですが強度不足を報じられる機体の多くがそうであるように、こちらも改善されています。火器管制装置や統合電子戦装置も国産ですから、日本が必要としたときに必要な改修を行うことが出来るのですし、日本製の各種装備も追加搭載が容易となっています。
このように性能面ではかなり向上したわけですね。今になりますと、性能面で導入できなかった、といわれても、もともとFA18Aも問題があり欠陥機ではないかといわれていたのが、欠陥を克服して名機に数えられるようになりました。F15もF14より劣る部分があると言われたのですがF14除籍後も傑作機として現役です。
最初から欠陥のない機体、というとどうしても平凡な機体しか開発できませんので、現在までのF2をもって評価することは難しいのでは、と考えます。すなわち、現在の航空防衛体制を考えますと、F2というのは性能面で問題は少なく、下手な新型機よりは使いやすい面がある訳です。
F35の導入を考える場合、F4このう契機に間に合わない以上繋ぎが必要という事は考えつつも、繋ぎの航空機をF35の引き渡し可能となるまでまで導入するのならば既に運用基盤のある航空機が理想的ですし、F35を導入しないとしてもF2自体の性能は低くありません。総合的なコスト面では利点はあります。
しかし、入手できるステルス機が基本的に輸出が望めないF22と完成まで時間を要するF35くらいしかなく、欧州でもイギリスが無人機を開発したほかにはステルス戦闘機を彷彿させるものがありませんし、先延ばしにするだけにもなりそうなのですが、しかし先延ばしにするとしてもF2の生産維持には防衛産業維持の利点があります。
ううむ、時間を稼ぎ、F35のライセンス生産が認められない、という事が考えられた場合は、F2の生産を延長することでとともにT4練習機の後継機計画に戦闘機生産能力の片りんを分散して残す模索を行い、というような時間稼ぎの方策も考えられます。時間が無いというのが目下の難題ですからね。
F2の生産継続には生産設備をどうするのかという前述の問題はあるのですが、最小限の戦闘機を配備して、その稼働率を高めることにより抑止力を維持する、という日本の防衛政策を継続するために、どうしても防衛産業の協力は必要になる訳で、その為に戦後一貫して航空機のライセンス生産と一部国産化を試みてきた訳です。
もっとも、日本を単純な戦闘機の市場としてしか見ない場合には、ライセンス生産と稼働率に拘るのではなく、イスラエル空軍のように数をとにかく揃えればいいのでは、という圧力が戦闘機生産国からはあるのでしょうが、このあたりを理解させ説得するのが外交の役割ですから、F2についてもう少し考えてほしい、と思う次第です。
HARUNA
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