日本民族の将来について
戦後最悪の一週間が過ぎました、今回の災厄により被害を受けられた方へ心からお見舞い申し上げるとともに犠牲となった方々の御冥福をお祈りします。
本日1446時、その一週間前はまだ平時でしたが、現在では有事という日本。マグニチュード9.0という前代未聞の巨大地震、続く20m超の大津波が広く太平洋岸を襲い、原子力発電所一か所が津波により機能を喪失し爆発事故に発展。送られてくる報道は悲劇的なものを伝えるばかりの48時間、しかし100時間を経ても人々の絆の強さと奇跡を感じさせられる報道もあり、考えさせられるばかりです。大災害は現在も進行中という事案、被害範囲は広範囲すぎて今なお孤立住民がいるという状況、被害の全容は一週間を経ても曖昧模糊としたもので在日米軍を筆頭に各国から送られる救援の手を含めても全く救援は足りていないという状況は信じられない一言に尽きるのですが、まだ生存者はいる、同胞の気力を無為にしてはならないという気概も必要であるのはいうまでもありません。
こういうことは被害がひと段落した後に掲載したかったのですが、まだまだ状況は沈静化していません。しかし、書かなければ、という気持ちもあり掲載に踏み切った次第。次の災害にも考えが及ぶなど非常に失礼な話でもありますが、誠心誠意考えを巡らせた結果、掲載する事としましたので、御不快に思われた方はどうかご了承ください。他人事すぎるのでは、と思われるかもしれませんが、日本列島は地殻運動により誕生した現実を見れば、次が我々の番、しかもそう遠い話では無いのです。そして必ずやってくる訳で、いつかだけが問題。
首都圏の線量は0.04マイクロシーベルト、イタリアの国営放送ではローマが0.25だから大丈夫だ、と報じていた話を耳にしました。日本という国そのものが無くなってしまうのではないのか、という危機に曝されているのが原発事故。地図で見れば明らかなのですが、首都東京まで福島第一原発からの距離は僅か230km、チェルノブイリの事例を見れば今後数十年間は30km半径への居住が不可能となる可能性もあり、加えて第三号炉の燃料棒が冷却できず爆発すればプルトニウムが飛散することになり、日本の国家としての存続危機はいよいよ現実となってきます。もっと放水を、とか、電力を海上の艦船から供給したら等など、口にする人はいますが、しかしそれは後方の安全な距離を保った建物の中から言える発言であって、広義には死んでこい、と言っているに等しい訳でして、当方はとてもではないですが思っても口にすることはできません、記載も出来ませんでした、被爆の危険がある原子炉に近付き、津波の危険がある中で船舶を横付けして、そんなことは書けません。
国民保護法が出来る前に何処とは言いませんが、原子力事故発生を想定した住民避難訓練を何度も提案した指揮官とお会いした事があります。現在は退官されている方ですが、電力会社が原発へのマイナスイメージにつながるとして何度も反対したものの、押し切って初めての訓練を実施された方、個人的に尊敬している方です。しかし反対を押し切って行った訓練の成果は少しでも今回の災害派遣での人命救助に繋がったのだろうと。言い換えれば訓練で実施した事以外の事を急にやれば失敗する、という事でしょうか。ただ、これは今後最悪の場合に陥った場合、恐れ多い事ですが日本民族の未来を考え、皇太子殿下夫妻に駐米大使をお願いし、同盟国アメリカからの最大限の支援、物的では無く最悪の場合では難民受け入れや通過国際金融での支援等をアメリカの国際政治の力をお願いする事を検討するべきです。もちろん、これは東京放棄というような最悪の場合を想定した場合の話ですが。
こうならないよう、日本の危機管理とは、どうあるべきなのかを考える事もWeblog北大路機関の大きな目的であったのですが、今後の東海東南海地震南海地震に備えた20m超の巨大津波に備える“太平洋の壁”というべき巨大防波堤の太平洋沿岸への建設、原子力災害に備えた原子力防災特務艦の建造も必要でしょうし、今回のような交通網の途絶という事案を想定すれば、航空母艦の保有は現実的に検討しなければならないでしょう。ヘリコプターの動員数も自衛隊の規模を考えれば空前の動員数でしたが、絶対数が足りません。夜間と悪天候時に飛行できるヘリコプターは取得費用が30億円から50億円に達しますが、数が欲しかった。港湾施設が稼働しない場合にこそ必要な輸送艦も3隻では全然足りない。
防衛計画の大綱そのものも見直す必要が出ているでしょう。例えば全国に均一な部隊を配置する基盤的防衛力を見直すという発想は、根本から元に戻し、各地域を年当時地域の広さ、人口密集度合の二点を勘案した部隊配置体制というものは必要で、しかし、陸上自衛隊を韓国陸軍並の52万とか、人口割合に応じて日本は韓国の三倍の人口があるのだから120万、という数値を考える事は不可能です。従って、18万定員まで戻した場合であっても、動的防衛力、つまりヘリコプターや輸送艦、輸送機といった機動力を付与して動的運用を行う必要性は出てくるのでしょうね。
ただし、自衛隊は軍事機構ですので、戦車や野砲、戦闘機や護衛艦といった装備との均衡が必要です。こういう場合では、これは阪神大震災でもあった事ですが自衛隊を国土防災隊に改編しろ、というような非常に意味不明な論調が出てくるかもしれません、国家への現時点での最大の脅威は震災ですが、先週の午前中までは同じ比重で軍事的脅威があり、割合が転換しただけの事です。今後、師団や旅団についての再考が行われる事となりましょうが、師団には戦車大隊と特科連隊は不可欠で、その上で施設大隊に加えて各部隊本部に施設作業小隊を充実させるとか、飛行隊をヘリコプター隊に格上げするなどの配慮のもとで行わなければ、未来永劫震災の脅威度合いが比重として軍事的脅威に勝る事では無いという部分、覚えておくべきでしょう。
その折衷案として、自治体が独自に運用する民間防衛隊というような組織は議論の余地があります。消防や警察に比べて自衛隊がこうした災害時に大きな能力を発揮できるのは、自己完結能力を有しているからです。防災ヘリコプターを有している自治体は多いですが、ヘリポートが無い地域を整地する能力や、野外整備能力はありません。警察にしても省簿にしても可搬式シャワーを保有している場合はありますが、入浴洗濯や炊事となれば民間インフラに依存しています。これは発想としては正しく、炊事機具を装備するくらいならば民間のコンビニへ、入浴や洗濯はコインランドリーや公衆入浴施設に行けばいい、平時の発想で成り立っている訳で、それよりは平時に重要な消防車を充足させる予算に集中させる必要があるでしょう。それならば、自治体が独自に消防や警察以外に、また国家直轄の自衛隊以外に防災組織を置く、という事は議論としてはアリなのかもしれません。他方で、数百人単位で平時から実質的な余剰公務員を雇用し訓練することが出来るのか、と問われれば厳しいところが多く、結果的に地域格差の要因ともなりかねないのですね。出来る事と言えば消防団と水防団の都道府県単位での組織化、消防本部の垣根を越えた集団化なのかもしれませんが、どの範囲で行うのか、差し迫った難題となりました。
ともあれ、指揮系統の画一化統一化は絶対必要です。自衛隊の指揮系統は東北方面隊を中心にいち早く立ち上げられましたが、福島原発の事案では遅まきながら自衛隊を中心とした指揮系統が構築されました。自衛隊の指揮下に民間が組み込まれる、これは自衛隊発足以来の出来事です。反対する人もいるのかもしれませんが、指揮系統が複雑化して得られる支援が受けられず亡くなった方を考えれば、反対こそ無責任です。情報の一括化は物資の残量を一括化する事にも繋がり、通信の集約は情報集約の迅速化にも繋がります。ただし、これは現場レベルの話での一括化で、首相官邸などでは部門ごとにタスクフォースを区分する必要があります、前述の震災への自衛隊の指揮系統は、市ヶ谷では無く仙台駐屯地に設けられた事と同じです。
アメリカに対しては今後百年の借りが出来ました。自国民以外の支援の為に兵士が被曝した、しかし万単位での支援の手を被災地へ差し伸べてくれたのはアメリカだけです。韓国は朝鮮戦争での恩をヴェトナム戦争で返す努力を行いました、日本は必然的に今後のアメリカの世界へ向けての努力に対して、共に歩む覚悟が必要となる、国家の矜持とはそういうものだろうと考えます。反戦団体などは反発するでしょうが、しかし、そういう連中がこうした時に備えた準備を怠った事が現状に繋がっているのであって、これはもう無視するしか仕方のない事です。
原子力発電は今後どうなるのだろう、せめて原子炉を地下に移設して緊急時には即座に石棺を構築できるよう、とは考えていたのですが、改めて痛感しています。しかし、今後日本では原子力発電は受け入れられるのでしょうか、太陽光発電を行うにはまず太陽電池生産に必要な電力が太陽電池が経年劣化するまでの総発電量よりも少ない事は有名で太陽光発電にシフトすればその為の電力に原発が必要となってしまいます。全て火力発電にシフトするとしても、火力発電は多量の燃料を必要とします、二酸化炭素や石油確保という問題ではなく火力発電所を地震が襲い、厖大な発電用燃料が津波で拡散し着火した場合どうなるのか、首都圏の計画停電という現状を見ますと地熱発電と水力発電でこの膨大な電力需要を満たせるとはとても思えません。首都圏の電力需要は最大4000万kwとのことですが、地熱発電所は首都圏最大規模なもので八丈島の3300kw、日本最大である秋田の葛根田地熱発電所で8万kw。福島第一原発の発電量497万kwと比べると桁が違います。
非常に身勝手な事だと憤慨する方も多いでしょうが、福島第一原発が稼働を開始したのは1971年、現在問題になっている三号炉は1974年に稼働を開始しています。石油危機以降の電力需要増大に原子力発電が応えていたという現実があります。原子力発電所の地下移転、火力発電所シフト、地熱発電所を国土全域へ建設、それにしても電気料金に跳ね返る事なのですが、日本が製造業を廃止し金融業の充実を図ったり、通勤という制度を廃止し在宅勤務か農林漁業にシフトしない限り、電力は必要になってしまう訳で、これも真剣に考えなければならないのでしょう。
しかしなにより人命救助が最初です。上記の話は今後十年や二十年の話。人民解放軍が派遣されるとか、韓国軍の派遣とか、色々と聞くのですが何故来ないのでしょうか。侵略される、と聞きますが災害派遣に乗じて占領した事例はありません、着上陸のデータが収集されるという声もありますが三陸に将来上陸される可能性は実際のところ考えられるのでしょうか、四川地震の際に自衛隊の救援を中国が断った際に我々は奇異に思いましたが、恐らく先方も奇異に思っている事でしょう。とにかく生存者がまだ海上にいるのです、駆逐艦でもフリゲイトでも、足りていないのですから10隻でも20隻でも三陸沖まで来れる海軍には中国海軍でも韓国海軍でも台湾海軍でも一隻単位でも良いので派遣をお願いしたいです。
人命救助と重なる部分もあるのですが、避難所への物資輸送よりも人命救助を最重要視しているため、なかなか避難所への物資輸送が届かない状況が続いていました。一部で捜索救難を縮小して物資輸送へ、という声があるのですが、しかし見殺しにしていいのか、だが生きている人を避難所で助けるのも重要だ、どちらも重要なのだけれどもどちらも同時に行うまでの能力が無い、苦しい話です。一部の地域では集団疎開も検討されているとの事、落下傘で投下すればとの声もありますが落下傘も日本に無尽蔵にある訳ではありませんし、落下傘投下では押し潰される人も出てくるでしょう。仙台空港が復旧すれば余剰の日本航空や全日空のボーイング747を長期リースして物資集積拠点とし、そこからC-1やC-130を拠点として、とも考えるのですが。ともあれ、日本民族は辛い境遇にあった同胞は絶対に見捨てない、という事を改めて強く明示してほしいと思います。このあたりの諸外国への広報を含め、現政権はその最たるものですが日本国の政府が不得手とするところですからね。
復旧ですが、輸送業者や生産業者等を包括して指揮運用することが可能となる武力攻撃事態法を適用しないのは何故なのでしょうか、社民党出身の与党議員は反対するかもしれませんが党議拘束を掛けて押し通せば可能でしょう、とにかく建機にしても輸送車両にしても、統一指揮系統で運用しなければ無駄が生じてしまいます、道路復旧は現時点で急務の一つですから、このあたりを考えて武力攻撃事態法の初適用を真剣に検討するべきです、自民党も武力攻撃事態法を大災害時でも適用できる法律を議員立法で提案することが、一つ重要なのかな、と考えます。国土交通省HPを見ますと少しづつではありますけれども道路は復旧しつつあります、これを更に強化しなければ、復旧はままなりませんし、原発からの避難もままなりません。
復興、これは考え方が速すぎるかもしれませんが、震災特例で住居を失った方を優先で生活保護を受給できる新法制定が必要でしょう。仕事が事業所ごと、工場ごと、機材ごと失った方が多くいます。現在受給している自治体ごとの生活保護を一旦財源ごと国が回収し、それを総額を数割程度削減した規模で再分配し、配れる総数を増加させることが必要です。むろん、受給しやすいよう生活保護と震災支援保護と呼称を変える必要もあるのですが、大災害に置いても暴動や略奪が起きないわが国では、こうしたかたちで日常を復興させる必要があるでしょう。明らかに地方自治の観点からは問題ですけれども、地方分権では対応できない規模の災害、被害が無い自治体地方公共団体であっても、今回は被害が無かっただけの話ですので被災者受け入れや救援物資に加えて、財源の面でも御願が必要だと信じます。
コンクリートから人へ、を推し進めましたが今回人が被災しました、コンクリートが人を護る、そういう発想での公共事業強化は不可欠です。復興には構造改革特区制度を利用する法案が必要です。減税により生活復興に専念できる制度と建設基準法の緩和により仮設住宅程度の建築物であっても永住家屋として建築できる構造改革特区とし、国の直轄事業として今回を超える津波を想定した防波堤の建設も行わなければ人々は戻って生活することが出来ないように考えます。家屋を失った人への私有地への仮設住宅を直轄事業で建設することは財産権の侵害にもあたってしまいますが、被災地を無人化してしまう事と比べれば新法制定による対応は真剣に考えなければなりません。
財源ですが、自衛隊10万動員命令でも予備費は54億円、厳しいのは分かるのですが、この国は本気なのか、とも。しかし、復興には地震と津波、そして原発を考えれば100兆円規模の復興資金が必要になってくると思います。首相は震災に合わせた増税は行わない、としているのですがその分復興資金も増額させない、というのでは困ります。これ以上国債を乱発して日本銀行に背負わせたとしても、結局国債への信用度を低下させてしまうだけで、この場合は時限立法で一年単位の特別措置法でもいいので、消費税を被災地以外の地域で30%や50%というレベルで掛ける必要が出てくるかもしれません。どこまでが被災地かで、論争が起きてしまうでしょうが、とにかく復興資金が必要、消費税以外に控除廃止を含め個々人の国民にお願いするほかありません。他に方策があるのならば、御指摘いただけると幸いなのですが、日本を復興させる活力である製造業等生産を阻害しない範囲では個々人にお願いするほかないのではないのかな、とも考えました。
教育の再建、原子力災害が発生し広範囲が汚染される状況ではこちらも難題です。まず現時点での被災地域、卒業等の手続きが完了していない地域での学位はもちろんですが、被災者が大学進学などを行う場合、高額な授業料をどうするのか、ということは無視してはならない問題でしょう。加えて、これは非常に心が痛む話ですが、配偶者を失った学童、なんとか有能な人材はその実力を最大限引き伸ばしたい、有能な人材を放置することこそが国家への計り知れない損失になるのですし、まだ新学期や入学時期まで若干の時間はあるのですから行き届いた重要でしょう。他方で、これは日本の歴史上はじめての事となるやもしれませんが、原子力災害が広域化した場合、もしくは長期化した場合、新学期の開始を延期し、夏季休暇を前倒しで実施することで入学シーズンを五月中旬以降に遅らせる配慮が必要となるかもしれません。既に京阪神地区への原子力災害地域からの疎開は個人単位で始まっていますから、無理に編入転校を行うのではなく、まず時間を置くことが重要です。
地域医療ですが、医薬品の備蓄体制を再考しなければならないでしょう。余剰を戒めとする合理化は節税歳出削減の際には重要な命題なのですが、現時点では単なる医薬品不足の要因となっています。医薬品の購入に対する国庫補助の比率を高め結果的に総合備蓄数の増大を図り、他方で備蓄状況をデータリンク化しておく必要があります。結果的に行政機能の肥大化を生み、税金の無駄が多くなることは自明で、その分余剰公務員の天下り先が増大する結果になるのは見えているのですが、しかし、ストックが無ければ現状がどうにもならない実情で、それを勘案すれば我慢できないものでしょうか。
このように幾つか挙げた事例なのですが、地方自治の再建、住民自治制度の再建など課題は山積しています。そうした中で、今この瞬間も救援を求める生存者と支援を必要とする孤立者が居る訳で、事態は現在進行中、そして始まったばかりです。苦しい時代が来ます、そしてそう簡単には終わりません。第二次大戦敗戦に匹敵する国難の時であり、有事です。そうした中ですが、乗り切れるよう個々人が努力しましょう。次は必ず来ます、その時への備えとともに。
HARUNA
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