◆高い展開能力を持つティルトローター機沖縄配備
アメリカ海兵隊が運用するMV-22の沖縄配備について、一定の見通しが立ったようです、本日はこの話題。
オスプレー配備時期、日本と調整=来年10月以降、普天間24機-米国防総省 【ワシントン時事】米国防総省当局者は3日、垂直離着陸輸送機MV22オスプレー2個中隊計24機を米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に2013会計年度(12年10月~13年9月)から順次配備する方針を明示し、配備時期を日本政府と緊密に調整する考えを明らかにした。 当局者は「オスプレー配備は沖縄に展開する第3海兵遠征軍(3MEF)が日本を守り、同盟国の役割を果たす能力を格段に強化することにつながる」と述べ、配備に理解を求めた。 三つある海兵隊の遠征軍の中で唯一、海外に司令部を置く3MEFの機動性と東アジアでの抑止力維持の重要性を強調した。西太平洋で現在、オスプレーが常駐配備されている基地はない。 オスプレーはヘリコプターと固定翼機の長所を取り入れた機能を持ち、アフガニスタンやイラク戦争に投入されている。ただ、開発段階で墜落死亡事故が頻発。米国内でも安全性を疑問視する声がくすぶっている。沖縄では04年に普天間飛行場に隣接する沖縄国際大に米軍ヘリが墜落しており、基地の固定化も含め、沖縄の不安が高まっている。
同省当局者は「海兵隊はCH46中型ヘリコプターをオスプレーに切り替えていく。普天間への配備時期は13会計年度からの開始を見込んでいる」と述べた。 一方で、「普天間飛行場への配備時期の最終決定はなされておらず、オスプレーの沖縄への移動の詳細は日米両政府で緊密に調整し、決定される」とした。また、「MV22オスプレーは高い安全性の運用記録を保持している」と主張した。 普天間配備は、軍拡を進める中国へのけん制や朝鮮半島有事に即応する体制を整える目的もある。海兵隊によると、オスプレーの最高速度はCH46の2倍近く、戦闘行動半径は約4倍。完全武装の兵士24人が搭乗できる。(2011/06/04-15:59)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011060400220
◆◆MV-22の沖縄配備計画が具体的に明示されました。MV-22はティルトローター機として、ヘリコプターの発着施設をそのまま流用できる一方で通常の輸送機のような素早い展開能力がある航空機、そして従来のCH-46輸送ヘリコプターと比較した場合戦闘行動半径が非常に広くなっていることから、例えば台湾有事や朝鮮半島有事に対する即応展開能力を有することになります。空中給油を受けた場合の航続距離は3700km、最高速度は550km/h以上、こうしてMV-22を配備すること自体が有事の際に米軍が迅速に介入する姿勢を示す訳なのですから、これ自体が東アジア地域における不安定要素がそのまま軍事的緊張に展開する事を抑止する重要な役割を果たすわけですね。特に東日本大震災以降、日本が受けるダメージを慎重に諸外国は見守っていましたが、先日はヴェトナム漁船に対して中国巡視船が威嚇発砲を行い、その前にはフィリピンが南沙諸島問題に関して同国のミスチーフ環礁の不法占拠問題については中国との間で強硬姿勢を採る姿勢が見られ、緊張感を醸成することで注目をひくという形を採りました。このように、少しづつですが震災後の日本の国力低下を危惧した新しい情勢づくりの変化が垣間見られます。
他方で、ティルトローター機の導入については、特にその安全性に危惧が集まっています。ティルトローター機は一見安全性に問題があるとされているからですが、これはシコルスキーがヘリコプターを初飛行させた際に、エンジンが停止状態であっても安全に着陸できる様子を繰り返し展示した事で、ヘリコプターの安定性に関する信頼性を勝ち得た一方で、離陸状態ではヘリコプターと共通する形状を持つティルトローター機が事故の際に重大な結果をもたらした事が、一つの印象となっているのかもしれません。しかし、MV-22は危険な航空機なのか、と問われれば安全が確認されているからこその第一線配備が行われている訳でして、一方の現在使用されている海兵隊のCH-46ヘリコプターは初飛行が1958年と半世紀以上前の航空機、米軍向けの機体生産は1987年に終了しているヘリコプターですから、もっとも若い機体であっても二十年以上前の航空機、ということになります。この点、老朽化が進むCH-46の方を安全で安心な機体、と今後も使用継続を求めることはできない訳でして、安全性の面からもMH-22の配備は望まれる訳です。
他方で、台湾とも近い下地島へ先日日米共同の防災拠点を構築して自衛隊と米軍が定期的に使用する、という案が出されているほか、岩国航空基地へ移転予定の米空母艦載機部隊について、その陸上空母発着訓練を行う飛行場として、鹿児島県島嶼部の馬毛島を転用する案が出された上で、このための自衛隊施設建設へと話が流れる中、南西諸島の抑止力はゆっくりとではあるのですが、進んでいる、という印象。同時に、海兵隊のMV-22に関して、その運用状況などを見た上で、例えば日本飛行機等で整備支援が受けられる基盤が構築されるのならば、広大な日本列島の、特に島嶼部を防衛するために方面隊直轄の方面航空隊等にV-22を配備する、という検討はあっても良いのかな、そんなことも考えてみたりしました。
北大路機関:はるな
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