◆経産省・文科省予算での防衛省協力が理想
次世代エネルギーの話題を前回掲載しましたが、本来は本日の話題を掲載する為に作成した序文が大きくなったので独立記事として完成させました次第。新技術は市場原理に任せるのではなく、国主導で開発を行い、普及流通の基盤までもを国が基礎部分だけは担うべき、という話。
最初に。少し前回掲載した記事で誤解を招く内容がありましたので記載しておきますと、次世代エネルギーそのものを全て反対するつもりはありません、日本の発電量に確たる位置を占める原子力発電を置き換えるものにはなり得ない、ということを示したかったわけです。脱石油の手法として注目されているのは知っていますが、脱原発ではなかった技術、それを菅首相の発言に我田引水的にそうだ賛成だ、と考えるのはちょっと違うのではないか、という話。だって、復興基本法案を創設するのに三か月以上掛った首相が辞意表明したのちに突如今月に入ってから最重要法案、と言っているわけですからね。順番は復興が最重要だろう、何故いまなのか、優先順位が違うのではないのか、ということ。
日米 環境配慮の装備品調達へ :6月20日 4時18分 ・・・日米両政府は、21日、ワシントンで開かれる外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2+2」で、二酸化炭素の排出量を減らすため、自衛隊とアメリカ軍の間で、バイオ燃料を使う航空機など環境に配慮した装備品の調達を積極的に進めていく方針で合意する見通しとなりました。日米両政府は、日本時間の21日の夜、ワシントンで、4年ぶりとなる外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2+2」を開きます。
このうち、議題の一つの安全保障や防衛分野の協力では、両国の政府部門で二酸化炭素の排出量を減らすため、自衛隊とアメリカ軍の間で、環境に配慮した装備品の調達を積極的に進めていく方針で合意する見通しとなりました。具体的には、新たな施設を建設する場合、できるかぎり太陽光発電の設備を備えることや、バイオエタノールを燃料とする航空機を積極的に導入することなどを検討しています。また、装備品の国際的な共同開発・共同生産について、「武器輸出三原則」の例外範囲の拡大などを念頭に、日本政府として参加できるように取り組むことを確認することにしています。さらに、朝鮮半島で有事が起きた場合、韓国在住の日本人を国外に退避させるための計画づくりを加速させることや、有事の際の日米共同の作戦計画について、中国や北朝鮮の動向を踏まえた見直しを進めることで合意する見通しです。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110620/k10013628331000.html
米軍はバイオエタノールによる戦闘機等の運用に既に実績がありますから、この技術を応用することが出来れば、ある程度その普及への道ヅ時をつけることはできるかもしれません。もっとも、航空自衛隊の任務はバイオエタノール普及ではありませんで、これは忘れてはなりません。また、この話を推し進めるという事はバイオエタノールによる運用に既に実績がある航空機が次期戦闘機選定に加点されることになるのですが。他方、通常の航空用燃料に対して特段腐食性や燃費などによる戦闘行動半径や加速性能に影響が出無ければ、戦闘機としての性能に加えて一応の備考欄に考えても良いと思うのですが、ね。
次世代エネルギーとして、現在では研究から実用化にシフトしているのがバイオエタノールです。食用となる穀物から燃料を精製するということで、穀物価格の高騰を招く可能性が示唆されており、加えて相当低価格での穀物供給が実現しなければ生成されるエタノールの価格はどうしても大きくなり、1リットルあたりの価格は日本での場合レギュラーガソリンの販売価格と競争力を持つ程度になるとされているのですが、原価と定価を並列に考えることは難しく、加えてガソリンやディーゼル燃料には既存の生産基盤と販売網があることから、相当政府が本腰を入れて業界団体との調整を行わなければ流通は無理でしょうし、バイオエタノールそのものに腐食性があるとの指摘があり、長期間での使用はエンジンの劣化を促進する危険性が解決しない限り、普及は不可能といって過言ではないように考えます。
ここでアメリカの例を見ますと、特に2006年以降の原油価格高騰を背景にバイオ燃料の軍用機への使用をかなり真剣に進めています。もともとの基礎研究は1990年代より推進されていたものが原油価格高騰により実用化が加速された、というかたちなのですが、2008年にはB-52爆撃機による使用試験が実施され、今日では空母艦載機であるF/A-18にも使用されています。一応バイオエタノールの自動車用燃料への混合を法的に定めるなど、エネルギー政策としてバイオエタノールの普及には取り組んでいるのですが、既存業界団体の存在を考えた場合では、軍用として一定の需要を創出しておくことは大きな意義があるでしょう。
軍用、として需要を置くことは必然的に最低限の供給先を確保することになるのですし、なによりも石油関連団体が反発したとしても国防というエネルギー安全保障の筆頭にある政策として行うのであれば、関連団体が不経済性を指摘したとしても安全保障の問題として乗り越えることができるのですし、また軍隊が航空機用燃料として使用するのであればその使用量全体を見た場合連邦政府機関が例えば公用車にバイオエタノールのを使用する場合や警察などが車両として使用を進めた場合よりも総量が大きく、加えて経済効率よりも安全保障の観点を重視することが可能になります。逆にいえば、日本でもバイオエタノールの使用を国内における次世代エネルギーとして進める場合には自衛隊用需要としての一定水準を考えて進めることが一つの方法となるかもしれません。
実際問題、燃料価格高騰は自衛隊の広報活動に影響を及ぼしていることはみなさんご存じのとおりで、観艦式や展示訓練の規模縮小、航空祭の飛行展示抑制などの事例があります。燃料価格高騰がこれ以上進むのであれば、防衛上必要な訓練にも影響を及ぼす可能性はあり、その安全策としてバイオエタノールの普及に関する研究を行うことは意義があるでしょう。この場合は経済産業省と文部科学省が技術研究と普及研究を行い、予算をねん出。防衛省がこれに協力する、という構図が理想です。防衛費にはこれらの普及を支援するだけの余力はありませんが、特に防衛省は燃料に関しては独自の備蓄設備と供給基盤を持っているのですから、最低需要の捻出とともに、普及に必要な設備を有しているということになります。
しかし、確実に20年は掛るでしょう、アメリカも20年以上かけて実用化に運びましたからね、こういう分野は技術だけの問題ではありませんから、時間はかかるわけです。安全保障からバイオエタノールを考えますと、こういうことが考えられるのではないでしょうか。他方で、これも最初のところ、前回掲載記事にも戻る部分があるのですが、バイオエタノールは石油の代替物であって原子力の代替ではないのですよね、それならば、再生可能エネルギー促進の法整備ではなく、もっと常温核融合の研究に予算を投じてもいいのではないでしょうかね、常温核融合こそ原子力発電の代替になるものなのですが。これを考えたならば、再生可能エネルギー促進に常温核融合発電を入れていない、話題も出てこない事はちょっと視野狭窄なのでは。
また、何故原発廃止を次世代エネルギーだけに頼ろうとするのか、電力需要の構造を変えて省エネルギーを促進すればいいのですよね、家電エコポイント制度終了はそれこそ時代に逆行するものですし、火力発電用燃料確保の観点からはガソリンを転用するために例えばエコカー補助金の再導入も考えていいのではないでしょうか、家庭用電力の省エネルギー化やエコカー普及による燃料需要低減は、まあ、生産に電力が必要であることは認めるのですけれども経済を活性化しますし、太陽電池を量産したり、研究室レベルの研究を普及させるよりは、この夏、本日もすでに猛暑でしたけれども、そのなかの電力需要ひっ迫緩和には役立つと思うのですが、ね。
ただ、どういう理屈をつけたとしても、復興に予算がいくらあっても足りない状況に次世代エネルギー、電力需要が今日明日逼迫しているのに数十年以上を要する新技術への期待、復興基本法案の制定に三か月以上かかっている政府が突如出してきた将来を左右する法案、何かずれていると思うのですよ。優先順位というもの、理想と妄想の区別、それくらいはしっかりしてくれないと、この国が無くなってしまいます。
北大路機関:はるな
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