◆中国海軍動向、防衛省統合幕僚監部発表
中国海軍艦艇8隻が沖縄近海に出現、警戒中の護衛艦がその監視に当たっているようです。
23.6.8統合幕僚監部:(お知らせ)中国海軍艦艇の動向について・・・6月8日(水)正午頃、海上自衛隊第2護衛隊群(佐世保)所属「くらま」が、宮古島の北東約100kmの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進する中国海軍のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦3隻、ジャンカイⅡ級フリゲート1隻及びドンディアオ級情報収集艦1隻の合計5隻を確認した。
なお、同日午前0時頃、海上自衛隊第2護衛隊群(佐世保)所属「ちょうかい」が、宮古島の北東約100kmの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進する中国海軍のフーチン級補給艦1隻、ダージャン級潜水艦救難艦1隻及びトゥーヂョン級艦隊航洋曳船1隻の合計3隻を確認した。http://www.mod.go.jp/jso/Press/press2011/press_pdf/p20110608.pdf
中国海軍艦艇による沖縄近海での航行は珍しくは無くなったのですがシチルシステムを搭載した艦隊防空駆逐艦であるソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦とともに出現したという状況と、沖縄県と八重山列島の中間線を突破したという今回の艦隊行動、そして複数艦による行動ということで特色があるものでした。一方で海上自衛隊も9500tの護衛艦ちょうかい、7200tの護衛艦くらま、を展開させ警戒に当たっているとのこと。
八重山列島は、日本が今後死活的利益に関わるであろうシーレーンの防衛に重要な位置を占める台湾、そして米軍の一大拠点が整備されている沖縄本島とを結ぶ重要な島嶼でして、台湾有事の際には最も影響を受ける我が国の領域となります。逆にいえば、この地域の主権を日本が維持することは中国の台湾に対する軍事的可能性の選択肢を制限して地域平和を維持する事にも繋がりますので、今回は出現した中国の大型艦を上回る有力な護衛艦により警戒活動を実施した事に少なくない意義があると言えるでしょう。
一方で、東日本大震災を契機に日米の軍事機構による防災協力体制が改めて評価され、八重山列島下地島に日米防災拠点を構築し、自衛隊と米軍により協同運用を行うとの提案が政府よりなされている事は先日紹介しましたが、今回のように八重山列島と沖縄本島の中間にこうした軍事的な行動を挟まれた事と勘案しますと、防災拠点であっても米軍が展開する以上大きなポテンシャルを有しており、その重要性は波及効果として島嶼部防衛に繋がる点からも意味を持っています。
他方で、空前の災害派遣となっている東日本大震災への対応と同時に、くらま、ちょうかい、という大型護衛艦を監視任務に充当した事は自衛隊の多方面における同時任務遂行能力を発揮出来た事にもなり、この点でも抑止力になるでしょう。同時に、わが国周辺国におけるこうした事態がそのまま拡大する可能性が安全保障を考える上で常に考慮が必要であり、その為の防衛力整備に重要性がある事は、昨今の常態化した非常時においても忘れてはならないと考えました。
北大路機関:はるな
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