北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

東日本大震災より三ケ月 復興への道筋見えぬ本質的な不安

2011-06-11 22:17:15 | 北大路機関特別企画

◆三ケ月を経たのは東北地方太平洋沖地震のみか・・・

 震災、という呼称を用いれば災厄は現在進行中ですから、東日本大震災から三ケ月、というのは不適切で、地震発生から三ケ月、というのが正しいのでしょうか。

 3.11とも呼称されるこの地震は今を生きる日本民族全てに恐らくその一生に渡り焼きつけられた災厄の記憶でしょう。当方も実のところ危機管理の重要性と今回のような地震の可能性を示唆しつつも、現実にここまで大きな大震災を同じ時代の人間として接するとは想像せず、正直に己が想像力の稚拙さを恥じて自然の限界を見誤っていた事を反省する次第。

 他方で悲観に暮れるのは、もう既に限度でして、そろそろ復興に移る、というこちらで使い古された表現ではなく、復興が可能となるか不可能となるか、という臨界に迫っているという事が突き付けられており、付け加えればこの原動力は住民と自治体が限界を超えている以上消去法で政府の行動如何に掛かっているという現実があります。

 復興は住民の手によってのみ行われる、これは震災から一週間でしたか一ヶ月でしたか、掲載した内容なのですが、復旧を終えない事には復興に移行できないという実情も記載しました通り。そして、政府の妙な余裕ぶりといいますか現実逃避ぶり、復興に既に着手しているような錯覚をもっている言動と政策を見ますと復興に移れないという被災地の実情はどうやら視察に足を運ぶ総理本人でも確認できていない模様。

 復興を行うのは住民の手によって行われ、住民の復興への着手とは雇用基盤の回復とその地域の建設業や住宅整備に関わる企業と関係する商業基盤が自ら青線を引く事によって達成される、という事になるのですが、被災地の企業は復興への転換点が遅れればそのまま仕事が無い事によって雇用を維持できず、窒息死してしまいます。

 その転換点とは道路による交通やインフラ再整備によってまず被災地へ住民が戻る事が出来るようになり、初めて端緒に就く事が出来る訳ですが、これが出来ていない。現時点で瓦礫除去に時間を要しており、完全撤去まで三年を要するなどという言葉を出している時点で素手のこの地域の復興を政府が断念しているということを公言しているに等しい、という事。

 即ち、三年間住民が戻れない地域、その場所に三年後住民が戻ったとして、産業基盤は三年間契約をとれない地域からは離れてしまっている訳で、一次産業と二次産業はこの時点ですでに原野を開拓するほどの労力を要している状況に陥っているはずで、第三次産業も住民が戻らない以上必然的に成り立たず、その頃には荒野が広がっているだけの海岸線に落ち込んでいるでしょう。

 瓦礫除去が進まない最大の要素は、民間建設会社への抜本的な転換が行えていない為、その理由は競争入札を行うほどの自治体の基盤が回復していない事と、重ねて瓦礫除去費用を自治体が捻出できない事に起因します。本来はここで国費を投入して中央が直轄事業として首都圏のゼネコンを中心に募れば三ヶ月目を経た今日で既に見通しは立っているでしょう。

 ところが、予算不足か政策決定能力の不足か、上記対策手法に転じることなく災害派遣に当たっている自衛隊に依存している状況。他方自衛隊は戦闘集団としての自己完結能力を以て対応しているだけですので、規模に対する建設能力等は限られているのです。ここを政府が認識できていないからこそ遅れているのですよね。何処其処の地域の瓦礫除去、納期は一カ月後、競争入札!、としないのは何故か。

 住宅復興については、更に稚拙でして、そもそも津波で破壊された防波堤が再度建設されない以上は被災地域への住宅再建を含めた建築物の新規着工は認めないとしながら、肝心の防波堤再建に関する道筋を示さない、これでは被災地の復興はもう諦めてどっか行け!と言っているに等しい。

 これも防波堤が必要ならば中央が直轄事業として大手建設企業の支援を募って、防波堤再建に着手すればいいのにもかかわらず、これを実行に移さない、だから住宅再建も出来ないという現実、これを政府は無視しているのですから、あまりに無策と言いますか無責任です。

 住宅再建着手できない以上、公共交通機関も整備できていないのですから被災地の産業は復興する余地はありません。兎に角一にも二にも瓦礫除去、そして同時並行で防波堤の再建によって復興に着手できるように整備することが、冗談ではなく一分一秒を争う喫緊の課題、そうでなければ地域の産業と建設業が窒息死して本当に再建、復興、不可能になるという状況。

 特区指定。これが上記のとおり復旧から復興に移転出来た瞬間に必要になる重要な命題です。例えば被災地域での自動車取得や建築基準法緩和、これは大急ぎで行わなければならないと考えます。公共交通機関が壊滅して自動車が津波に流された現状では、自家用車が無ければ移動が出来ず、通学も通勤も出来なくなります。

 自動車取得税の減免などは想定されているようですが、当然これでは不十分で、自動車が手元に戻るような施策を考えなければなりません。例えは悪いのですが動くのであれば廃車であっても全国から余剰乗用車を掻き集め、被災者へ震災以前の水準の自動車を供給できるようにしなければ、生活さえも元に戻せないのです。車検切れ、排気基準不適格、色々あるでしょうが、例えば五年間の時限でも良いので対応できる措置が必要。

 住宅地ですが、まず防波堤の再建と並行する必要があるとしたうえで、仮設住宅を集合地域として建設するのではなく、これは過去に記事として掲載したのですがトレーラーハウス、そしてこれは記載しませんでしたがコンテナ式スーパーハウス、これを被災者で、住宅を津波に流された世帯を中心に貸与、出来れば供与するべき。

 どんな理由があろうとも元いた地域に戻って貰ってこそ始まるのが復興です。建築基準法の建蔽率の観点からどの地域であっても土台以外の土地が住宅にはあるのでして、そこにトレーラーハウスなりコンテナハウス等を置けばよく、電線は復旧が進むなか、下水道は浄化槽方式を、上水道は間に合わなければタンク設置を、ガスはプロパンタンクの設置を行えば対応できるはずで、国内生産が間に合わなければ緊急輸入してでも揃えなければならないでしょう。

 仮設住宅は元々の生活空間とは切り離した地域に建設されます。その場所を新しい開拓村とでもするのなら問題ないのですが、元の地域に戻って貰い事を考えれば年限で二年程度、現状ではもう少し延ばすようですが、基本出て行ってもらうという条件で仮設住宅に入居してもらうのでは、復興への時間を延期するだけです。個々人の土地に戻って貰うべく、この種の住宅、設置と退去が容易な方式を最大限活用するべき。

 さてさて、東日本大震災では自衛隊の活躍が大きく報じられています。自衛隊創設以来、最大の関心事が寄せられているというところでしょうか。自衛隊員の活躍には頭が下がります、そして災害派遣の為に多くの人員が派遣され、その空白を埋めて警戒監視に当たっている隊員も同様です。

 一方で、自衛隊への過度な依存が復興への転換に支障となっている訳です。要員は簡単で先ほど書いたように自治体は予算が足りず、政府が直轄事業として復興に移行させる腹構えが無いので、自衛隊にしか頼れないとの状況が続いているからです。これは何とかしてほしい。

 要するに、即応能力と自己完結能力は戦闘集団としての自衛隊に勝るもの無しですが、その後の復興は民間企業の方が能力は上ですし、住民が復興に関与しなければ書類上で鹿復興は出来なく、本当の意味で住民の営みが戻り活気が再構築される事は無い、これは重要。

 これら復興が実現するのかという内容に特化し掲載しました。原発事案については明日以降に掲載する予定なのですが、現地が復興に移行できず窒息死してしまう可能性があり、復旧から復興へ、地域の限界を超える状況に際しては国が先頭に立って遂行するべき、という姿勢を採る事が、上記問題の解決策には唯一必要で可能な手法と考えます。

 何かやれば批判に曝される、という危惧があるのでしたら、それは間違いです。遅延は失敗に勝る、という言葉もありますが、遅延には限度があり、限度を超える事はそのまま失敗を意味します。何かできる事、上記に考えつく対処法を明記しましたが、出来る事今日やらねばならない事を即座に、この責任だけは感じてほしいです。

 出来ないというのならば仕方ないです、それならば政権を改めればよい事。しかし、自らの無策にも気付かず、単純に権力にさえしがみつければそれでいい、復興プランはあるということを復旧さえ目途が立たない中掲げている人物が政権中枢にいる、これは一億の不幸としかいいようがありません。

北大路機関:はるな

コメント (4)
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