■特報:世界の防衛,最新論点
フィリピン軍は数は少ないが様々な種類の最新装備を導入、一歩間違えれば雑多なモザイクとなりかねませんが再建と云いますか実質治安軍から陸軍へ転換を進めている。
フィリピン陸軍はイスラエル製サブラ軽戦車の導入を開始する。サブラ軽戦車はスペインGDELS 社製ASCOD装甲戦闘車の車体へイスラエルエルビットシステム製105mm砲塔を搭載したもので、戦闘重量30tとTORCH-XTM戦闘管理システム及びコンバットNG射撃統制を搭載したもので、フィリピン陸軍は20両を1億7200万ドルにて取得します。
サブラ軽戦車はフィリピン軍が導入する初の新造戦車となります、フィリピンはアメリカ軍より供与されたM-4戦車やM-41戦車以外、まともな機械化装備をもちませんでしたが、2017年に発生したマラウィ騒擾にて浸透した大隊規模のイスラム武装勢力掃討に五カ月を要しまともな戦車が必要となったためです。フィリピン陸軍は15万規模となっています。
■パンドゥールサブラ導入
チェンタウロや16MCVのような設計ではなく装甲車に105mm砲を搭載したものではあるのですが。
フィリピン陸軍はサブラ軽戦車に続きパンドゥールサブラ戦車駆逐車10両を2023年までに導入し初の戦車大隊を編成する方針を発表しました。これは導入が決定しているサブラ軽戦車20両と、今回発表されたパンドゥールサブラ戦車駆逐車10両を合せて30両で戦車大隊を編成するもので、定数は30両、所謂主力戦車は含まれませんが初の戦車大隊です。
パンドゥールサブラ戦車駆逐車はオーストリアが開発したパンドゥール2装輪装甲車にイスラエルのエルビット社が開発したサブラ105mm砲塔を搭載したもので、サブラ軽戦車として導入するオーストリアスペイン共同開発のASCOD装甲戦闘車車体に搭載した砲塔と同型のものとなっています。パンドゥールサブラ戦車駆逐車の導入費用は94億ペソという。
フィリピン軍はこれまでFV-101スコーピオン装甲偵察車を機甲戦力として運用していますが、稼働率は低く76mm低圧砲を搭載するも弾薬が枯渇し十分な訓練が行えていません。フィリピン軍は1999年に米比両国で行ったJDA統合防衛力評価においてアジア最弱という厳しい指摘が為されており、戦車大隊新編は20年に渡る防衛力強化の一つの到達点です。
■T-129戦闘ヘリコプター
一機当たり5000万ドルですが日本のように必要でも放置している現状よりは評価できる一歩と云える。
フィリピン空軍向けT-129-ATAK攻撃ヘリコプター初号機は2021年内に納入される、トルコ政府が発表しました。これはトルコ航空宇宙産業が2億6939万ドルで契約したフィリピン空軍戦闘ヘリコプター6機の導入計画で、フィリピン軍は非正規戦闘などへの対処へ必要性を痛感していた攻撃ヘリコプターの最も安価な機体を導入することとなりました。
トルコからのT-129は12月14日に出荷、2021年内にフィリピン国内へ到着したとの事です。T-129-ATAK攻撃ヘリコプターはイタリアのアグスタ社、現在のガリレオヘリコプターがA-129マングスタとして開発した機体のトルコ仕様で、マングスタ自体が開発当時にアメリカ製AH-1Sコブラと比較し半分の取得費用で導入できるという安価を重視した機体だ。
こうした価格を重視して設計されたとのことですが、現在は一機当たりの取得費用は5000万ドルなっていまして、陸上自衛隊が導入したAH-1S対戦車ヘリコプターよりはかなり高くAH-64Dに近いという現代の戦闘ヘリコプターの価格高騰を端的に示しているのかもしれません。フィリピン空軍は2020年7月にこの導入をトルコ政府との間で締結しています。
■ATMOS自走榴弾砲
数は一ケタ少ないように思うのですが自衛隊で廃棄されるFH-70の譲渡要請などがあるのか。
フィリピン陸軍向けのATMOS自走榴弾砲が引き渡しを開始したとのこと。これは2021年12月30日にフィリピンへ搬入されたとの事で、イスラエルのエルビットシステムズ社が開発したトラック方式の装輪自走榴弾砲、フィリピン軍のホライゾン2計画として進められる陸軍近代化の主軸で、フィリピン軍が初めて導入する155mm自走榴弾砲となります。
フィリピン軍の主力野砲は第二次世界大戦中にアメリカより供与された105mm口径のM-101榴弾砲130門と戦後イタリアより導入したOTOメララM-56軽量砲100門、155mm榴弾砲もあるにはありますが、50年前のヴェトナム戦争中に在比米軍が持ち込んだM-114榴弾砲12門を管理替えした程度で近年イスラエルよりM-71牽引砲を導入したばかりです。
ATMOS自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を採用、フィリピン軍は2020年4月に12両を4700万ドルにて取得する契約を締結しています。今回の納入は先行する8両、2022年内に残る4両が取得され、フィリピン軍は12両を2個砲兵中隊へ配備するとのこと。L-15砲弾で射程は30kmに達し、ERFB-BB砲弾を用いた際の射程は41kmとされています。
■UMTAS対戦車ミサイル
自衛隊もそろそろAH-64Eに切替えて調達を再開すべきとも思うのですよね。
フィリピン空軍が導入するT-129-ATAK攻撃ヘリコプターは最新のトルコ製電子装置を搭載する事が明らかとなりました。機体には20mm機関砲と最大76発のハイドラ70ロケット弾を搭載、またUMTAS対戦車ミサイルの運用能力も有していて、これはトルコが独自に開発したレーザー誘導式のミサイルで限定的な空対空対処も可能とされています。
更にトルコ製FLIRのASELFLIR-300Tを搭載し夜間戦闘能力も高いとされています、ASELFLIR-300Tは5000mの距離で装甲車両や人員を識別可能であると共に、近年評価を上げているトルコ製無人航空機にも遠距離探知能力が評価されているシステムで、この採用によりフィリピン軍はゲリラ対処以上に限定的な島嶼部防衛にも資する装備といえます。
■中古AH-1Sを取得
案外自衛隊のAH-1Sも延命改修したならばもう少し寿命を延命できるのかと思いつつTOWミサイルの限界も感じます。
フィリピン空軍はヨルダン陸軍から提供されたAH-1S対戦車ヘリコプター受領式を行いました。これは2018年にフィリピン政府とヨルダン政府の防衛協力協定締結に際して、AH-1S対戦車ヘリコプター中古機2機の譲渡が発表されていたもので、フィリピンでは新たに導入するトルコ製T-129攻撃ヘリコプター取得に先立つ運用研究等に用いるという。
AH-1S対戦車ヘリコプターは空輸によりクラーク空軍基地へ搬入されたのちに、メジャーダニロアティエンザ空軍基地の第15航空団へ配備される計画で、操縦要員はヨルダンへ派遣しヨルダン軍による操縦教育課程を経ているとのこと。AH-1SとT-129は機関砲が同じM-197-20mm機関砲であり、操縦ではコックピットも同じタンデム方式となっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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フィリピン軍は数は少ないが様々な種類の最新装備を導入、一歩間違えれば雑多なモザイクとなりかねませんが再建と云いますか実質治安軍から陸軍へ転換を進めている。
フィリピン陸軍はイスラエル製サブラ軽戦車の導入を開始する。サブラ軽戦車はスペインGDELS 社製ASCOD装甲戦闘車の車体へイスラエルエルビットシステム製105mm砲塔を搭載したもので、戦闘重量30tとTORCH-XTM戦闘管理システム及びコンバットNG射撃統制を搭載したもので、フィリピン陸軍は20両を1億7200万ドルにて取得します。
サブラ軽戦車はフィリピン軍が導入する初の新造戦車となります、フィリピンはアメリカ軍より供与されたM-4戦車やM-41戦車以外、まともな機械化装備をもちませんでしたが、2017年に発生したマラウィ騒擾にて浸透した大隊規模のイスラム武装勢力掃討に五カ月を要しまともな戦車が必要となったためです。フィリピン陸軍は15万規模となっています。
■パンドゥールサブラ導入
チェンタウロや16MCVのような設計ではなく装甲車に105mm砲を搭載したものではあるのですが。
フィリピン陸軍はサブラ軽戦車に続きパンドゥールサブラ戦車駆逐車10両を2023年までに導入し初の戦車大隊を編成する方針を発表しました。これは導入が決定しているサブラ軽戦車20両と、今回発表されたパンドゥールサブラ戦車駆逐車10両を合せて30両で戦車大隊を編成するもので、定数は30両、所謂主力戦車は含まれませんが初の戦車大隊です。
パンドゥールサブラ戦車駆逐車はオーストリアが開発したパンドゥール2装輪装甲車にイスラエルのエルビット社が開発したサブラ105mm砲塔を搭載したもので、サブラ軽戦車として導入するオーストリアスペイン共同開発のASCOD装甲戦闘車車体に搭載した砲塔と同型のものとなっています。パンドゥールサブラ戦車駆逐車の導入費用は94億ペソという。
フィリピン軍はこれまでFV-101スコーピオン装甲偵察車を機甲戦力として運用していますが、稼働率は低く76mm低圧砲を搭載するも弾薬が枯渇し十分な訓練が行えていません。フィリピン軍は1999年に米比両国で行ったJDA統合防衛力評価においてアジア最弱という厳しい指摘が為されており、戦車大隊新編は20年に渡る防衛力強化の一つの到達点です。
■T-129戦闘ヘリコプター
一機当たり5000万ドルですが日本のように必要でも放置している現状よりは評価できる一歩と云える。
フィリピン空軍向けT-129-ATAK攻撃ヘリコプター初号機は2021年内に納入される、トルコ政府が発表しました。これはトルコ航空宇宙産業が2億6939万ドルで契約したフィリピン空軍戦闘ヘリコプター6機の導入計画で、フィリピン軍は非正規戦闘などへの対処へ必要性を痛感していた攻撃ヘリコプターの最も安価な機体を導入することとなりました。
トルコからのT-129は12月14日に出荷、2021年内にフィリピン国内へ到着したとの事です。T-129-ATAK攻撃ヘリコプターはイタリアのアグスタ社、現在のガリレオヘリコプターがA-129マングスタとして開発した機体のトルコ仕様で、マングスタ自体が開発当時にアメリカ製AH-1Sコブラと比較し半分の取得費用で導入できるという安価を重視した機体だ。
こうした価格を重視して設計されたとのことですが、現在は一機当たりの取得費用は5000万ドルなっていまして、陸上自衛隊が導入したAH-1S対戦車ヘリコプターよりはかなり高くAH-64Dに近いという現代の戦闘ヘリコプターの価格高騰を端的に示しているのかもしれません。フィリピン空軍は2020年7月にこの導入をトルコ政府との間で締結しています。
■ATMOS自走榴弾砲
数は一ケタ少ないように思うのですが自衛隊で廃棄されるFH-70の譲渡要請などがあるのか。
フィリピン陸軍向けのATMOS自走榴弾砲が引き渡しを開始したとのこと。これは2021年12月30日にフィリピンへ搬入されたとの事で、イスラエルのエルビットシステムズ社が開発したトラック方式の装輪自走榴弾砲、フィリピン軍のホライゾン2計画として進められる陸軍近代化の主軸で、フィリピン軍が初めて導入する155mm自走榴弾砲となります。
フィリピン軍の主力野砲は第二次世界大戦中にアメリカより供与された105mm口径のM-101榴弾砲130門と戦後イタリアより導入したOTOメララM-56軽量砲100門、155mm榴弾砲もあるにはありますが、50年前のヴェトナム戦争中に在比米軍が持ち込んだM-114榴弾砲12門を管理替えした程度で近年イスラエルよりM-71牽引砲を導入したばかりです。
ATMOS自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を採用、フィリピン軍は2020年4月に12両を4700万ドルにて取得する契約を締結しています。今回の納入は先行する8両、2022年内に残る4両が取得され、フィリピン軍は12両を2個砲兵中隊へ配備するとのこと。L-15砲弾で射程は30kmに達し、ERFB-BB砲弾を用いた際の射程は41kmとされています。
■UMTAS対戦車ミサイル
自衛隊もそろそろAH-64Eに切替えて調達を再開すべきとも思うのですよね。
フィリピン空軍が導入するT-129-ATAK攻撃ヘリコプターは最新のトルコ製電子装置を搭載する事が明らかとなりました。機体には20mm機関砲と最大76発のハイドラ70ロケット弾を搭載、またUMTAS対戦車ミサイルの運用能力も有していて、これはトルコが独自に開発したレーザー誘導式のミサイルで限定的な空対空対処も可能とされています。
更にトルコ製FLIRのASELFLIR-300Tを搭載し夜間戦闘能力も高いとされています、ASELFLIR-300Tは5000mの距離で装甲車両や人員を識別可能であると共に、近年評価を上げているトルコ製無人航空機にも遠距離探知能力が評価されているシステムで、この採用によりフィリピン軍はゲリラ対処以上に限定的な島嶼部防衛にも資する装備といえます。
■中古AH-1Sを取得
案外自衛隊のAH-1Sも延命改修したならばもう少し寿命を延命できるのかと思いつつTOWミサイルの限界も感じます。
フィリピン空軍はヨルダン陸軍から提供されたAH-1S対戦車ヘリコプター受領式を行いました。これは2018年にフィリピン政府とヨルダン政府の防衛協力協定締結に際して、AH-1S対戦車ヘリコプター中古機2機の譲渡が発表されていたもので、フィリピンでは新たに導入するトルコ製T-129攻撃ヘリコプター取得に先立つ運用研究等に用いるという。
AH-1S対戦車ヘリコプターは空輸によりクラーク空軍基地へ搬入されたのちに、メジャーダニロアティエンザ空軍基地の第15航空団へ配備される計画で、操縦要員はヨルダンへ派遣しヨルダン軍による操縦教育課程を経ているとのこと。AH-1SとT-129は機関砲が同じM-197-20mm機関砲であり、操縦ではコックピットも同じタンデム方式となっています。
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