北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

モスクワ危機,プーチン大統領とバイデン大統領-ウクライナ戦争は全面核戦争となるのか?

2022-03-02 20:22:44 | 国際・政治
■高まる核戦争の危機
 プーチン大統領の精神状態をアメリカの情報機関が最優先の情報収集体制とした、こうした報道がありましたが、実際大丈夫なのでしょうか。

 戦略核部隊の警戒態勢強化に言及したプーチン大統領ですが、アメリカ国防総省はこの発言に対して、ロシア軍戦略核ミサイル部隊に顕著な動きはないとの発表を行いました。アメリカ軍は偵察衛星や海底ソナー網と潜水艦部隊等を通じ、ロシアのICBM大陸間弾道弾基地、戦略爆撃機部隊基地、戦略ミサイル原潜基地を監視しており、その結果といえます。

 バイデン大統領は、恐らくロシア軍上層部から外交ルートでの何らかの情報を送られていたのではないでしょうか。荒唐無稽と思われるかもしれませんが、トランプ政権時代にアメリカはアメリカ軍の統合参謀本部議長が非公式にロシア当局に対し、トランプ大統領が荒唐無稽な発言をしたとしても、核の奇襲を行う事はない、こう通知した事がありました。

 プーチン大統領とトランプ大統領、どちらが滅茶苦茶な判断を下す大統領かは一概には言えないのですが、トランプ政権時代にこうしたロシアへの配慮があったのですから、ロシア軍上層部にも、見返りと云う訳ではないのでしょうが、かなり確証の在る状況で戦略核部隊を、ウクライナ歩兵に負けたので水爆をNATOに、という事は無いと通知したのでは。

 デフコン3までアメリカは警戒態勢を高めるのではないか、こう懸念したプーチン大統領の発言でしたが、同様の動揺を感じた記者の質問を受けたバイデン大統領は、全面核戦争の危険はない、こう返答しました。そしてアメリカは全面核戦争を抑止する為に、核攻撃第一撃を検知し核ミサイルが無力化される前に反撃をする体制を確立、抑止力としました。

 MAD,相互確証破壊と呼ばれていますが、水爆弾頭の様な熱核兵器は大都市を標的とする可能性もあるのですが、それ以上に硬化サイロという、地価の厳重な核ミサイル格納庫を一撃で破壊する為に高い威力を有しています。そして核攻撃を受けた際に着弾し核爆発する前に反撃できる体制を整えておくことがMAD,狂った安全保障の態勢を根拠づけています。

 アメリカ軍はカリフォルニア州サニーヴォイルやコロラド州シャイアンマウンテンに北米防空司令部と関連施設を置いており、DSP監視衛星は地球上全ての“一定以上の行動に達する飛翔体”や火山噴火を含む“大気中の一定以上の赤外線放出”を監視しています。特にロシアから軌道傾斜65度前後で北方に飛翔する物体はICBMの可能性があり警戒する。

 NORAD北米防空司令部はバイコヌール宇宙基地など既存の施設は勿論、原野や山間部と海中にも警戒は及び、発見された飛翔体は先ず、電磁放射特性を検知し、過去にロシア軍が実験や演習で使用されたミサイルとの類似性を大車輪で分析します、大車輪と云うのはこれらが北米方向に向いていた場合、僅か45分ほどでアメリカ上空に到達する為という。

 核ミサイルか人工衛星かは、一定以上の高度へロケットが到達した場合、ロケットの側面保護材は二段ブースターと三段ブースター切り離しの際に投棄される為、その分離が衛星から確認されるのです、この保護材は再突入の際に必要であるため、投棄が確認されれば、核弾頭をアメリカに送り込むICBMではない、として警戒態勢を通常追尾へ戻せるのです。

 国家指揮権限者、平時にはアメリカでは合衆国大統領がフットボールという随行武官の暗号表により核ミサイルの権限を有しますが、アメリカ軍の警戒態勢がデフコン2まで高まりますと、合衆国大統領が国家指揮権限者として、核ミサイルの権限を即座に発動できる体制に移行します、ここで所謂“全面核戦争”が生じる、恐らく文明が崩壊し世界が滅ぶ。

 複数のロケットが実験や演習などの事前通告なしにロシア不特定多数の地域から北極点に向け発射された事が確認されたならば、アメリカ軍は核攻撃と判断します。ICBMには演習弾頭型はあっても通常弾頭型は存在せず、核攻撃を意味する。すると着弾と核爆発を待つことなく、ミサイルサイロが破壊される前にこちらも発射する、これが全面核戦争です。

 部分軌道爆撃。一発のロケットでも上記の通り警戒します、何故ならば部分軌道爆撃という核攻撃が考えられるためです。部分軌道爆撃とは先ず強力な弾頭を搭載したICBMを一発のみ北米大陸上空へ飛翔させ、高高度核爆発を引き起こす。するとEMP核電磁パルスが電子機器を破壊し、通信網を遮断します。この為、宇宙への警戒監視は今も続くのですね。

 トランプ政権時代の通知が在った為に今回ロシアが、という仮説を立てましたが、もちろん、ロシア大統領権限として核ミサイルをNATOやアメリカと同盟国に対して投射する可能性は常に〇ではなく、また可能性としては今年一月よりも核戦争の可能性が格段に高まっている事は現実です。2020年代も1950年代から続く核による見知らぬ明日を歩んでいるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都幕間旅情】慈照寺/銀閣寺,足利義政と足利義尚-鹿苑寺金閣寺と慈照寺観音殿の比較

2022-03-02 20:01:47 | 写真
■足利義政は京都をどう見たか
 当地は東山の名の通りやや小高く造営の頃には応仁の乱後の京都と復興前途の様子が見えた事でしょう。

 慈照寺こと銀閣寺、慈照院殿の院号でも知られる臨済宗相国寺派の寺院で相国寺境外塔頭として位置付けられ、延徳2年こと西暦1490年に室町将軍足利義政の隠遁所東山山荘を寺院に改めたという寺院です。この時代は応仁の乱の戦災痕跡未だに色濃く残る時代です。

 応仁の乱、この一角は当時どのような面持ちかといいますと、戦乱の前には浄土寺という陣が広がっていたのですが、やはりといいますか戦災は当地の寺院も見逃さず、廃屋が並んだのみと云う。なおこの浄土寺、復興し今日は銀閣寺前に山門を構え今に至るのですが。

 足利義政は嫡子義尚に将軍職を譲り、応仁の乱に幕府の統治機構限界から将軍が戦乱を抑えるだけの権限を持たなかった為に将軍後見人として権限を拡大させようとしたものの、足利義尚はあっさり応仁の乱を終戦させ、その後の混乱もあり逃げ込んだのがこの山荘で。

 金閣寺こと鹿苑寺を造営したのは祖父に当る三代将軍足利義満です、足利義政はこの金閣寺を幾度か探訪し、この鹿苑寺の荘厳豪華な建築様式を北山文化と称しますが、慈照寺こと銀閣寺は金閣寺をある程度参考とし、自分だけの世界観を造営してゆく事となりました。

 東求堂と観音殿、この二つの実が創建当時の建築物ですが、失われた建物は意外と多く、隠居したとはいえ室町将軍の美的感覚を誇示する規模ではあったらしい。方丈が本堂、弄清亭そして庫裡と造営され今日に至るのですが、東求堂と観音殿は共に国宝に列せられる。

 観音殿は長享3年こと西暦1489年に完成していまして、山荘の頃に既に今でいう銀閣を完成させており、御本尊を奉じる観音殿を完成させたことが此処を山荘から慈照寺とした転機なのかもしれません、しかし足利義政が此処に籠ったのはこう事情が事情なのですから。

 高倉殿や室町殿、義政が作庭を行うのはこの慈照寺が初めてではなく、かつて幕府に関連する建物や庭園を造営しているのですね、室町将軍としての権限をまったく与えられなかったものの、建物の造営や設計には権限が及んだようで、故に慈照寺も洗練された風景で。

 会所と泉殿、西指庵に船舎というように慈照寺の伽藍は年々広まっていたのですが、不思議であるのは義政はこの山内に会所こそ造営したものの、公的会議施設や接遇施設にあたる施設は無く、要するに幕府の行政施設や院政の様な将軍後見人の機能を考えていません。

 義尚、若き将軍は実父義政の隠遁とは別に栄光の道を歩み、応仁の乱鎮定とともに、その残り火というべき大和河内の騒擾も落ち着くと、幕府権力の再構築に目処をつけます、そして近江の地にて幕府と対立した六角高頼の討伐へ派兵することとなります。将軍らしく。

 六角高頼は近江の寺社領や公家所領の不法占拠を続け、陳情に応える形で長享元年の西暦1487年、大兵力を以て出陣、丁度正午の頃でいわば時代祭か観閲行進の威容を誇示しての出陣です。義政は小高い当地から、どのように俯瞰する京都の復興を見たのでしょうか。

 義尚の六角討伐は、武田に細川と伊庭や伊勢の諸将も呼号、六角氏が膨大な幕府軍に驚き甲賀に逃げ込んだ事でこう着状態となり幕府は、鈎、いまの栗東市あたりに本陣を引きました、膠着状態、しかし第一次大戦の西部戦線と違い毎日朝夜酒宴の余裕はあったらしい。

 鈎の本陣、一向に膠着状態が解けず将軍義尚は尚の字が悪いとおもい名を義煕と改めますが、そんなものではどうにもならず、鈎の本陣で体調を崩し長享3年にあっさりこの世を去ります。義政は将軍職譲った我が子の訃報さえも、ここ慈照寺で聞く事となるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キエフ危機-第一回停戦協議流会とロシア戦車64km車列出現,トルコは対ロシア海峡封鎖

2022-03-02 07:00:24 | 国際・政治
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ情勢は国連がESS緊急総会を開会しEUや欧州中立国からのウクライナ武器援助が開始されたものの、依然予断を許しません。

 ロシアウクライナ停戦協議は、停戦合意に至る事無く閉会しました。これはウクライナ隣国のベラルーシにて行われた協議で、当初は開催についてウクライナ侵攻へ基地を提供しているベラルーシでは中立的な協議は出来ないとし、トルコやポーランドなどの開催地を打診していましたが、停戦の可能性があるならばとウクライナ政府が妥協した形です。

 停戦協議では、ロシア軍の無条件の戦闘中止と全面撤退を要求したのに対し、ロシア政府代表団は、ウクライナのNATO加盟禁止に関する国際条約の締結とウクライナ軍の武装解除による非武装化、ウクライナから2014年にロシア軍が武力奪取したクリミア半島のロシア併合容認、現在のゼレンスキー政府退陣等を求めていますが、受け入れられていません。

 第一回停戦協議、停戦に至る事無く双方が原則論を突き付けあっただけでの閉会と云う構図でしたが、第二回停戦協議を行う事では合意し、早ければ現地時間3月2日にも行われる見通しです。ただ、今回会議の場を提供したベラルーシがベラルーシ軍のウクライナへの越境攻撃開始を発表しており、第二回停戦協議の開催場所はまた混迷の懸念があります。

 キエフ北方のロシア軍車列は64kmに達している事がアメリカの民間衛星画像サービスマクサーテクノロジーズ社画像により判明しました。これまで確認されていた車列の長さは5kmであったものが27kmに伸び、現地時間2月28日時点で64kmに達していたとのことです。キエフとベラルーシ国境までは直線で90kmですので、これは大変な規模です。

 ロシア軍の64kmという車列は、所謂接敵行軍ではなくたんなる戦略機動となっており、幾つかの視点で見る事が出来ます。一つは、咄嗟射撃が出来ない戦略機動であり、ウクライナ軍がこうした格好の目標を制圧出来ない情勢に在るというロシア軍有利の視点と、完全な戦力逐次投入と云う戦術上の禁忌を行っているロシア軍稚拙という視点でみられる。

 キエフへの64kmの車列は戦車師団の機動と考えられ、これはロシア軍がキエフ攻略からキエフ包囲へ切り替えているとも分析する事が可能です。ただ、今後国連総会ESS緊急会合がロシア非難決議を採択した場合、仮にロシア軍が包囲している場合でも人道支援物資のキエフ搬入が可能となり、第二次大戦の様な包囲飢餓作戦は難しいとも言えるでしょう。

 トルコ政府はボスポラス・ダータネルス海峡封鎖を事実上決定しました。これは3月1日にロイター通信が報じたもので、トルコのチャブシオールガム外務大臣が黒海沿岸各国等に通知したトルコ国営アナドル通信の報道を引用、1936年のモントルー条約に基づくもので、黒海と地中海を結ぶ最狭部800mの海峡で、この封鎖は黒海の完全孤立を意味する。

 ボスポラス・ダータネルス海峡封鎖は、モントルー条約によれば紛争中に封鎖可能という明文とともに、登録基地へ帰港の艦艇を除外する規定があり、これによりロシア黒海艦隊はセバストポリ軍港の艦艇について、地中海には出られなくなりますが、地中海を航行中の一部の艦艇は戻れる事とはなります。ただ、ロシア海軍には非常に問題があるのです。

 ロシア黒海艦隊とともに2022年1月に地中海においてNATOが展開させた合同空母部隊牽制の為に、北海艦隊、バルチック艦隊、更には太平洋艦隊までを地中海に展開させており、これらの艦隊はモントルー条約に基づく帰港する艦艇に含まれない為、地中海展開艦艇はバルト海のリバウ軍港まで補給は無く、黒海に展開した艦隊は当面母港へ帰れません。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする