北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】慈照寺/銀閣寺,将軍足利義政の絶望の楽園-そして銀閣寺だけが残った

2022-03-09 20:00:41 | 写真
■そして銀閣寺だけが残った
 観音殿の佇まいと東山の風情は成る程美しいものです、しかしそれ以上に侘び寂と云う文字そのものの歴史を湛えていることはこれまで記したとおり。

 銀閣寺を将軍足利義政の絶望の楽園、こう表現される事と共に成程と感じさせられる歴史を辿り、そして絶望の楽園に籠る義政を笑うなかれ、20世紀半ばの憲法九条を盾に危機の世界政治から目を背けている今の日本こそ全て絶望の楽園でないか、とは前述しました。

 義政。しかし、結果論ですが室町幕府の権威を高めた功労者でもありまして、当たり前ですが、足利義政はどこから資金を得て当院を創建したのか。義政が当院に逃げ込んだ要因の一つに妻富子との関係がありますが、富子は賄賂を高利貸しする等、凄かったらしい。

 御山荘御要脚。義政は大名から建設費用を集める事としました、権力が無い室町将軍、しかしこれは意外にも越前の朝倉氏景と美濃の土岐成頼に播磨の赤松政則、御触書に応じて資金を拠出した大名は数多く、また守護大名を通じ農民からも臨時税を徴収したとのこと。

 将軍の作庭、貴族邸宅や寺院庭園からも巨木や巨石を供出させていたといい、権限は少ないと言われてもそれは行政全般であり、作庭も幕府が行うとなれば幕府の権限、徴発には当時の被差別階級とされた河原者が動員され、しかも幕府権限を行使できるとして人気に。

 検知、という幕府には名所旧跡となる寺社仏閣や貴族邸宅の一種の番付があり、あの寺院の襖と伽藍を、あの邸宅の巨木と奇岩を、徴発する構図になっていて、現存する銀閣寺の庭園は歴史に残らない数多庭園の一角を彩ったものを再度集成したものでもある、という。

 奉行人連署奉書、徴発にはこうした証書とともに河原者が当り、貴族も僧侶も拒否すれば謀反扱いとなる為に接遇も丁重で、河原者も日当に食事の接待や酒宴も催された。河原者が不快を感じれば、次の奉行人連署奉書が届き、下手をすれば屋敷の方を解体し奪われる。

 応仁の乱の時代には権限が無く、そもそも所掌業務の狭さから圧政とは無関係であった足利義政は、不思議にも圧政ではないが暴政という所業を隠居後にこうして銀閣寺造営で進めた構図です。もっとも、作庭は義政の名人芸であり、これが初めてでは無かったのだが。

 東山文化。銀閣寺から始まったこの文化は詫び寂びという、豪奢のみを頂点とした金閣寺に代表される北山文化の対称のように造営されるのですが、しかし奉行人連署奉書で徴発を受けた方は別として、御山荘御要脚は大名の美術意識を刺激し、概ね尊重されたらしい。

 四畳半、そもそも畳というものは敷き詰めるものではなく一つ一つ座席のように用いたもので、通常は板の間、その上に家具を並べ、座席として必要に応じ畳を、通常は敷物で代用する事が基本でした、しかし、義政は畳で部屋の間取りを画一化する“発明”を残す。

 詫び寂びとともに、豪奢から離れる独自の日本文化を造営しつつ、しかし義政は銀閣寺の完成を見る事無く没します。銀閣も一時は漆塗りで艶を放ち、当時は観音殿といい、銀閣と称されるようになったのは金閣と書籍の上に並べられ比較された江戸時代の頃という。

 戦国時代、義尚の陣中での病死により室町幕府の権威は三度地に落ち、時代は統治者の空白が戦国乱世へと進んでゆきました。もっとも、関与していれば幕府権威が戻り太平の世が、という保証もないのですが、東山文化は幕府を行政と別次元で延命する一助ともなる。

 そして銀閣寺だけが残った。歴史はどう転ぶか分らないものだ、改めて銀閣寺の小さな、しかし日本風といえる、東山文化の発露を望みつつ、歴史とは複雑で面白くそして残酷なものだと感慨深く噛みしめました。さて、私たちも後世に歴史の一部、今の日本はどう、表現されるのでしょうか、ね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ支援-トルコS-400ミサイルをEU仲介で供与できないか?荷物化するロシア製装備

2022-03-09 07:00:48 | 国際・政治
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 キエフやハリコフなど市街地へ無差別攻撃の報道映像を見ますと先の大戦での記録写真を思いだし焦燥感を感じます、なにか支援の方法は無いものか、現地で使えるもので。

 トルコ軍が配備するS-400地対空ミサイルシステムをアメリカが仲介しウクライナへ供与できないか。もちろん、最新鋭のミサイルシステムである故にトルコには見返りが必要で、アメリカは勿論日本を含めた各国がトルコに代替としてペトリオットミサイルを補填に供与し、そしてS-400配備が原因にて輸出停止となっているF-35戦闘機の輸出を実行する。

 F-35戦闘機、今回トルコはウクライナ政府の要請に応じてボスポラスダータネルス海峡の封鎖を決定し、ロシアとの決別とも取れる厳しい措置を執りましたので、NATO加盟国であるトルコは、明らかに期待された責務を果たしています。しかし、S-400ミサイルの導入でデータリンクがバックドアを通じ漏洩する懸念からF-35の引き渡しが行われていません。

 F-35戦闘機はトルコも部分開発に参加し、開発費も負担しているのですが、F-35の特色であるデータリンクにより戦域情報支配と戦域優位を確保する戦闘機の形状を採った端末、という特性から、S-400と連接する危険は納得できるものがあります、なにしろF-35はスタンダードSM-6やペトリオットミサイルの誘導さえ可能な、インターネット戦闘機です。

 MiG-29供与を検討している。このいっそS-400をトルコからウクライナへ、と着想しましたのは、アメリカのブリンケン国務長官がポーランド空軍に残るMiG-29戦闘機をウクライナへ供与できないかという、開戦当時から囁かれている施策をアメリカ政府として支援する方針を示した為です。ポーランドはMiG-29引き渡しの代償にアメリカがF-16を贈る。

 ポーランドのMiG-29を供与する、誤解の無いように記しておきますとポーランド首相は反対しています。しかしブリンケン国務長官はポーランドとの外相会談の際に共同声明で示したものでして、水面下での調整が進められているという。ウクライナのゼレンスキー大統領は空軍力の不足を課題としており、NATO介入、不可能ならば戦闘機等を求めている。

 MiG-29,では何故この機種かといいますと、ウクライナ空軍はMiG-29を運用しており、操縦士も整備員もこのMiG-29に慣れているという。NATO加盟国には東ドイツ空軍の機体など東西冷戦時代にソ連からMiG-29を導入していますが、NATO加盟に際して電子装備を一新するなど改良は加えているものの、老朽化が進んでおり、後継機を探しているもの。

 S-400地対空ミサイル、トルコは2019年にロシアから導入したものですが、性能は物凄い。ペトリオットミサイルの射程は120km程度となっていますが、元々広大なロシアの国土を防空するべく開発したものであり、射程は400kmと非常に広範囲を防空可能、例えばポーランド国境に近い西部のリヴィウに配備するならば首都キエフを防空圏に含む事が可能だ。

 ウクライナ軍はS-300ミサイルを運用しています、そしてS-400はこのS-300の発展型なのですね。S-300そのものはソ連時代に開発され、ロシア時代に入り更なる改良型が開発されており、ウクライナに配備されているものは旧式化しているともいわれますが、重要なのは、S-300を運用したウクライナ空軍が運用可能ということ。教育支援は必要ですが。

 トルコに利点はあるのか、こう問われますと、もうS-400を運用継続するのは不可能だろう、という視点です。2019年に導入した最新鋭型ですが、ウクライナ侵攻で始まったロシアへの経済制裁が行われる中で、トルコはS-400の弾薬や整備支援とアップデートを受けられるのでしょうか、SWIFT除名により現金手渡しとなりますし、何より風当たりが強い。

 最新鋭装備である事は認めるのですが、ロシアとトルコ、世界とロシアの関係を考えますと、高い買い物ではあったが、トルコが手放せる好機ではないか、と。もちろん高い買い物ではあったが高い授業料としてはなりません、だからこそ、日本もミサイル防衛にて充分ではないのですが、アメリカ始めトルコにペトリオット等を補填して良いのではないか。

 トルコへペトリオット、といいますと日本の防衛関係の情報が漏えいするのではないかと危惧されるかもしれませんが、NATO加盟国であるトルコは情報保全に関するNATO協定に加入しています、そして日本から仮に移転するとしても紛争当事国に輸出するものではありませんし、地対空ミサイルは防御用装備であり特例、と言い切る事も不可能ではない。

 トルコ政府ですが、忘れてはいけないのは、MiG-29戦闘機をウクライナへ供与するという施策を最初に示したのはEU欧州連合です、するとMiG-29とともにS-400もトルコが、加盟悲願と云うEUを通じて、ウクライナへ供与するならばトルコがEUに加盟できるよう例えば日本政府からも外交的に働きかける等必要でしょう、S-400供与、検討してほしい。

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