北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

原発攻撃!ロシア軍チェルノブイリ&ザポリージャ原発占拠-軍事標的としての原子力発電所

2022-03-05 20:22:05 | 国際・政治
■どう守る?日本全土一七原発
 日本には現在17カ所の原子力発電所が置かれていますが、昨日のロシア軍によるザポリージャ原発攻撃と先月のチェルノブイリ原発占領はまさに驚きの事件でした。

 松野官房長官はウクライナのザポリージャ原発攻撃に関する談話で、我が国では原子力施設が攻撃された場合にはイージス艦のSM-3ミサイルとペトリオットミサイルPAC-3により迎撃する体制であると説明しました。ただ、これは弾道ミサイル攻撃が行われた場合と前提で示しており、弾道ミサイル以外による攻撃が、今後課題となるのかもしれません。

 原子力発電所が攻撃される可能性、これは過去にも幾度も防衛上の課題として検討されていた事であり、自衛隊には一時期、重要施設防護訓練を含むゲリラコマンドー対処任務として繰り返し訓練されており、加えて警察も福井県警などは原子力施設警備隊という、MP-5短機関銃にM-1500狙撃銃等の特殊銃と防爆警備車を装備する専門部隊を置いている。
■電力会社には想定外
 軍事攻撃を原発が受けるという状況は電力会社には想定外でしょう、対策するならば関西電力陸戦隊や東京電力地上軍が要る。

 原子力施設警備隊などは、防御側の強みといいますか、機動隊一個中隊に近い人員規模で、市街戦の条件を整えた原発施設において、MP-5,相手がボディーアーマーを装備しているならば89式小銃かHK-416小銃が欲しい所ですけれども、増援部隊が駆け付けるまで充分な対処が可能といえます。もっとも問題は若狭湾の原発のみ警備厳重と云う点なのですが。

 MP-5は素晴らしい装備ですが、戦車には対抗できません。また流石に警察にパンツァーファウスト3個人携帯対戦車弾を装備させることは現実的ではなく、警察比例の原則を逸脱したものですが、ザポリージャ原発の攻撃事例を見ますと戦車によりバリケード突破という手法が採られており、日本有事となった際には現実の脅威と云わざるを得ない状況です。

 例えば北海道の泊原発や新潟県の柏崎刈羽原発など冷戦時代にソ連軍の着上陸懸念が在った宗谷海峡に面し4個師団を置いた北海道や首都東京最寄であり2個連隊を置いて防衛する新潟県などでは、一つの留意事項といえましょう。またゲリラコマンドー対処と云う意味では、福井県の原発以外にも原子力警備隊を常駐させる必要は云うまでもありません。
■PAC-3-MSEは射程30km
 日本のミサイル防衛は高い水準に有りますがペトリオットミサイルは弾道ミサイル防衛を考えれば射程はそれ程長くありません。

 松野官房長官は弾道ミサイルへの対応としてイージス艦のSM-3ミサイルとペトリオットミサイルPAC-3を提示していますが、一つ問題があります、それは原子力施設の近くにペトリオットミサイル部隊が展開しているとは限らないのです。若狭湾の原発密集地域には確かに饗庭野分屯基地の第12高射隊が置かれていますが、原発は日本全体に多いのです。

 山陽山陰四国地方にペトリオットミサイル部隊はありませんが、島根原発と伊方原発があり、日本最大の柏崎刈羽原発や東日本沿岸部の女川原発と福島第二原発及び廃炉が進む福島第一原発付近にもペトリオットミサイル部隊はありません、更に静岡県浜岡原発付近には浜松の高射教導隊が置かれているのみ、能登半島志賀原発もミサイルの防衛圏外という。

 柏崎刈羽原発などは日本最大の原発であり、此処を防衛する為に高射隊を置いても良いと考える程ですが、この他にも南九州の川内原発は築城基地に高射隊が置かれていますが、築城基地からはPAC-3の射程外であり、ここから高射隊を移動させてしまいますと基地防空が手薄となる。そしてペトリオットミサイルの防衛任務は人口密集地の防空も含まれる。

 ペトリオットミサイルPAC-3の射程は15kmから20km、改良型として順次導入が始まるPAC-3-MSE、MSEというと小田急ロマンスカーのようだ、これで射程が30kmです。原発近傍に配置されるならば射程は充分ですが、日本の原発は人口密集地から離れた地域に建設されており、いうなれば都市と原発を同時に守るには倍のミサイル部隊が必要です。
■イージスアショアという選択肢
 現在の状況はイージスアショアかイージス艦が増強されるならば多少楽になるのかもしれません。

 イージスアショア陸上配備イージスミサイル防衛システム、こちらが配備されましたならば状況は改善するのかもしれません、ペトリオットミサイルとは段違いに射程の大きなスタンダードSM-3を運用します、その射程は1300kmに達し、当初計画の秋田県と山口県、当時の政権の首相と官房長官の地元、ここに配備するだけで、一応は対処可能となる。

 イージスアショア陸上配備イージスミサイル防衛システムの建設は中止され、代替の護衛艦が計画され設計図の作成に取り掛かろうという段階です、早ければ2028年くらいに一番艦が竣工するのでしょうか。しかしそれでも大きな問題があります、スタンダードSM-3は中間段階、放物線を描く中間段階を迎撃する為、サッカーで云えばキーパー役が要る。

 スタンダードSM-3はサッカーで云えばミッドフィールダーですので、相応に優秀なのですがサッカーボールでも高く蹴り上げられたボールがいきなりゴールに迫るようにゴールキーパーが必要となり、この役割はPAC-3-MSEでなければ対応できないのです。もっともスタンダードSM-6というゴールキーパーに対応するミサイルの新型が開発されてはいる。
■第二の脅威は巡航ミサイル
 弾道ミサイルは本日5日もk他朝鮮が日本海に向け発射した為に脅威を再認識された方も多いでしょう。

 弾道ミサイルへの攻撃は、PAC-3-MSEが充分な数が有れば目処はつきます、が、原子力発電所を攻撃する手段は弾道ミサイルだけではありません、戦車や特殊部隊は前述しましたがもう一つ、巡航ミサイルがあります。ウクライナ戦争でもロシア軍はイスカンデル弾道ミサイルと共にかなりの数のカリブル巡航ミサイルを使用、射程は2400kmに達します。

 巡航ミサイルは、北朝鮮でも開発を進めていますし、また中国も既に装備しているものですし韓国軍も保有するなど現代戦の標準装備となっていますが、こちらは超低空を飛翔する為、レーダーサイトが発見した場合でも事前から防空部隊が展開していなければ迎撃は難しく、そしてスタンダードSM-3では迎撃できません、飛翔経路が低すぎるのですね。

 E-2CやE-2D早期警戒機にE-767といった早期警戒管制機が空中警戒へ飛行しているならば、低空目標はまさにこの種の航空機が得意としているところですが、日本全土を覆うように早期警戒機を飛行させるという任務、日本は早期警戒機と早期警戒管制機の保有数が二桁という、数としては非常に多いのですけれども、滞空時間の短いE-2Cなどには厳しい。

 ペトリオットミサイルPAC-2は射程120km、こちらは巡航ミサイルを迎撃可能です。また陸上自衛隊の11式短距離地対空誘導弾でも迎撃が可能ですし、極端な話ですが飛翔経路さえデータリンクにより捕捉できるならば、航空自衛隊の基地防空用20mmVADS高射機関砲でも迎撃は可能となります。しかし、それも配置されているならば、であり、難しい。
■必要な負担と割り切るか
 ミサイル防衛は例えばイエメンからの度重なる攻撃に曝されるサウジアラビアやカタールなどは巨額の予算を投じて産油施設や空港と人口密集地を防衛しています。

 わたしは、原子力発電所は軍事目標と成り得るもので、限定侵攻であっても軍事目標を達成する為に相手国の優先度が高いものであれば、日本本土の原子力発電所をミサイル攻撃する事は、放射性物質を拡散する事で後方攪乱が可能となりますし、数発が付近着弾するだけで膨大な防空部隊を前線から引き抜く必要が生じ、攻撃は有り得ると考えています。

 ロシア軍のザポリージャ原発攻撃を受け、国連安全保障理事会が招集されましたが、ロシアはザポリージャ原発攻撃はウクライナ軍の自作自演として開き直っています、かなり無理がという以前の問題に聞こえるのですが、こうした北朝鮮以上に凄い発想の隣国がいるのですから、ミサイル防衛は多額の予算が必要ですが、必要な負担と割り切る必要があるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナへ自衛隊装備供与決定-自衛隊輸送機で空輸,岸田-ゼレンスキー電話会談で表明

2022-03-05 07:00:24 | 国際・政治
■ザポリージャ原発攻撃事件
 ロシア軍ウクライナ侵攻を受け日本の戦後政治は大きな転換点を迎えつつあるようです。

 岸田総理大臣は4日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。この際、ロシア軍がウクライナ最大で欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃した事に触れ、福島第一原子力発電所事故を経験した日本としてはロシア軍の蛮行は前代未聞であり、断じて許す事は出来ないとし、その上でウクライナへ自衛隊装備供与する事を伝えました。

 日本は戦後初めて、交戦中の紛争当事国へ正式な防衛装備品提供を決定しました。防衛装備品は防弾チョッキや鉄帽に戦闘糧食や衛生機材が提供され、通信機器や医薬品と発電機やカメラとコンピュータ等も提供され、防衛装備品は航空自衛隊輸送機により輸送されるとのことです。なお自衛隊機でのウクライナ領内への搬入を含むかは言及されていません。

 ウクライナへは各国が防衛装備品供与を進めていますが、アメリカのジャベリンミサイル供与やイギリスのNLAWミサイル供与とともに、これまで中立政策を重視していたスウェーデンやフィンランドが対戦車ミサイルや小銃など供与を実施、ドイツも当初の鉄帽のみの供与方針を一転させ携帯地対空ミサイルや旧東ドイツ軍備蓄弾薬の供与を決定しました。

 ロシア軍ウクライナ侵攻は国際法上の正当性も、国際の平和と安全を付託された国連安保理をも経ず、言いがかり的な虚偽虚構の民族浄化や化学兵器開発と核開発にナチス再来を口実として着手され、国際社会の平和への訴えかけに水爆の恫喝を以て応える前代未聞の非道であり、ウクライナ支援への波についに日本もいま戦後政治の転換点を迎えています。

 自衛隊装備のウクライナ供与は、防衛装備品移転三原則の観点から、紛争当事国への供与は認められない方針ですが、今回は特例的に、国連安全保障理事会制裁当事国ではないなど、条件を満たすものとしています。ただ、第二次安倍内閣による見直しまでは武器輸出三原則拡大運用として、事実上防衛装備品の第三国提供は、ほぼ不可能となっていました。

 韓国軍への弾薬提供、厳密には2014年の自衛隊南スーダンPKOにおいて内戦再発の懸念がある騒擾に際し、PKO派遣国に韓国軍のK-2小銃へ適合する5.56mmNATO弾運用国が陸上自衛隊しかなかったということで、自衛隊から韓国軍へ5.56mm弾一万発が供与されています、これはまさにPKOではあっても交戦中の軍隊へ防衛装備品が提供された事例だ。

 ただ、自衛隊の装備品提供は殺傷力を持たない装備に限定されています。こうした中でも、例えば国土交通省が運用する電源車や通信中継車輛、移動携帯電話基地局等が提供されるならば携帯火器の提供を上回る意義を持つものですが、航空自衛隊の空輸能力には限度があり、現在のところ続き装備品提供の展望や目処などについて政府の言及はありません。

 軽装甲機動車のような民生品のみで製造されている装甲車両などは供与可能かもしれません、元々は01式軽対戦車誘導弾の機動運用を念頭に開発されたため、ジャベリンミサイルと相性が良いでしょう。また、即座に必要なウクライナ軍装備ならば、保管期限が年内に切れる各種ミサイル等の弾薬は供与することも真剣に検討してよのではないでしょうか。

 ウクライナ軍は航空戦力の欠乏に苦しんでおり、ゼレンスキー大統領はNATO航空戦力の介入が無理であれば戦闘機の供与を求めています。また供与されるスティンガーミサイルの射程では足りず、より高高度から爆撃を加える航空機への防空能力を求めています。ただ、残念ながら今自衛隊には戦闘機や地対空ミサイルに供与できる装備品はありません。

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