■週報:世界の防衛,最新11論点
今回の防衛情報は水陸両用作戦関連の揚陸艇や哨戒艦の話題を中心に海上防衛の話題を紹介しましょう。
アメリカ海軍はSSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇LCAC-103の試験を完了しました。LCAC-100型エアクッション揚陸艇はSSC型と呼ばれ、長らく運用されてきましたLCAC-1型エアクッション揚陸艇の後継となります。LCAC-100型とLCAC-1型は一見して同型のように見えるのですが、幾つかの部分は大きく運用の経験が反映されています。
SSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇は操縦システムが従来の油圧方式からフライバイワイヤ方式へ転換され悪天候や厳しい海象下での操縦性が大きく向上しています、また、船体とエアクッション部分の接合部分が耐腐食性アルミニウム合金へ大きく転換されておりエアクッション部分への負担が提言した事で整備性と船体寿命が強化されているのです。
V-22オスプレイ可動翼機と同系統のロールスロイスT406エンジンを採用した点も大きな進歩で、海軍ではMV-22やCV-22などとの艦上整備共通化が可能となりました。アメリカ海軍はSSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇を73隻導入する計画、その取得費用は40億5400万ドルとされ、LCAC-103は2020年2月6日に納入、試験が行われていました。
■アラフラ級哨戒艦一番艦進水式
自衛隊も間もなく建造を開始する哨戒艦ですが予算を全体に圧迫させず自動化を進めるのは難題です。
オーストラリア海軍はアラフラ級哨戒艦一番艦の進水式を実施しました。これはSEA-1180計画として2009年に決定した12隻の哨戒艦建造計画で、アラフラ級は哨戒艦ですが測量艦や水陸両用作戦支援能力を有する多機能艦で、また2014年に制定のSEA-1905では改良型で掃海艦型の2隻が増強されることとなり、14隻体制を目指します。
一番艦アラフラはASC造船オズボーン造船所にて建造され、二番艦エアも同じ造船所で建造中です。建造費は一隻3億オーストラリアドルで40mm機関砲と25mm機関砲及び無人機運用能力を持ち満載排水量は1640t、全長は80mあり2基の5950hpディーゼルエンジンにより最高速力は22ノット、21日間の連続任務が可能、乗員は40名とのことです。
■ポポヤヤンマー型コルベット
機雷敷設艦以外大型艦を建造してこなかったフィンランドがそれなりに大型の水上戦闘艦を建造する時代だ。
フィンランド海軍は計画中のポポヤヤンマー型コルベットへiXblue社製システムの搭載を発表しました。iXblue社製システムシステムはPhins慣性航法システムとNetans情報共有装置で、搭載予定の戦闘情報システムとの互換性を有するとしています。これはフィンランドが1930年代の海防戦艦以来となる大型艦計画が実現へ前進した意味を持ちます。
ポポヤヤンマー型コルベットは満載排水量3900tとフリゲイト並みの大きさで、ミサイル艇が主力であり従来のラウマ級コルベットやヘルシンキ級コルベットが満載排水量500t台であった事を考えれば、フィンランドでは同型艦4隻の建造はロシア軍の標的となり過大との指摘もありました。しかし多様なシステムを搭載した結果と海軍は説明しています。
■マートレットミサイル発射実験
舟艇を狙うミサイルはそれ程威力が必要ないという点で特殊です。
イギリス海軍はAW-159ワイルドキャット哨戒ヘリコプター用のマートレットミサイル発射実験を成功させました。ワイルドキャット哨戒ヘリコプターはリンクスシリーズとして開発された汎用ヘリコプター派生型の哨戒ヘリコプターですが、イギリス海軍は近年指摘されていた小型舟艇多数による艦艇への飽和攻撃への対処能力構築を急いでいました。
ミサイル発射試験には駆逐艦ディフェンダーに展開しら第815艦上航空隊のワイルドキャットが参加、マートレットミサイルはロケット弾を原型として精密誘導能力を付与したもので、非常に小型軽量であることから、ワイルドキャットヘリコプター1機に20発を搭載可能、これは空母艦載機の定数である4機に搭載した場合80発を運用となっています。
■カナダ軍ヘリに重大問題
CH-148は日本ではS-92として警視庁航空隊が採用していますね。
カナダ統合軍主力ヘリコプターCH-148が定期整備中にテイル部分へ深刻な亀裂の欠陥が確認されました。これは11月26日、定期整備中のCH-148に亀裂が発見され、尾部の重要な箇所であった為にカナダ軍は緊急の点検を実施、3機を追加して抽出検査を行ったところ、同一箇所に亀裂が発見、急遽カナダ軍が保有する23機全ての点検が行われました。
サイクロンの愛称を持つCH-148,21機を検査したところ、異常の無い機体は2機のみであり19機にひび割れが確認されています。残る2機は運用せず予備機として長期保管中であり、検査は未だ着手されていません。カナダ空軍では今回の問題を重大視していますが、CH-148は統合軍の対潜機や艦載機として重要な機体であり、空白は頭の痛い問題です。
■CH-148サイクロンクラック
S-92固有の問題なのか最終組立やロットの問題なのでしょうか。
カナダ統合軍のCH-148サイクロン機体クラック問題と共に過去の問題が再度カナダ国内で問題視されているようです。CH-148サイクロンは導入計画の遅延やコスト超過がカナダ国内で問題されています。元々は米英や海上自衛隊などで広く採用されたシーキング、カナダ軍正式名CH-124の後継機として24機が導入されましたが、トラブルが続きました。
CH-148サイクロンは哨戒機や救難機として運用されており、24機が32億ドルで導入される計画でしたが、追加費用などを要求され取得費用は57億ドルとなっています。また2020年4月にはギリシャ沖のイオニア海においてフリゲイトフレデリクトン艦載機がフライバイワイヤ制御システムの不具合から海上に墜落する事故が発生し殉職者も出ています。
■MCM機雷戦艦建造開始
MCM機雷戦艦という大型艦にUUV水中無人機を大量に搭載する構想は見方を変えれば両用作戦艦にも転用でき注目しているもの。日本の掃海艦もこれをめざすべきだった。
ベルギー軍とオランダ軍が導入するMCM機雷戦艦の一番艦オステンデ建造が開始されました。ECAグループが建造を担当する新型艦はベルギー軍とオランダ軍が共同で12隻を導入する新しい概念の掃海艦であり、現代の複雑な機雷を、多種多様な水中無人機や無人掃海艇等を遠方から管制し一隻で広い海域の機雷掃討任務に当る大型の機雷戦艦です。
MCM機雷戦艦の建造はECAグループコンカルノー造船所において建造、満載排水量は2800tと掃海艦としては破格の大きさで全長82.6mと全幅17m、最高速力は15.3ノットで乗員は63名です。搭載する無人掃海艇は全長12mに排水量20tと搭載艇としてはこちらもかなり大型、11月30日に起工式迎えたオステンデはベルギー海軍の艦艇となっています。
現代の機雷は従来型の係維機雷よりも一発当たりの目標選定能力を高めた知能化機雷が多く、掃海艇が掃海器具を曳航するだけの従来の機雷掃海では効果が充分ではなく、水中探知装置を用い一発一発発見し破壊する機雷掃討が主流となっています。これでは一隻の掃海艇に掃討できる海域は限られる為、こうした大型の多機能艦は一つの選択肢でしょう。
■フランスのEDA-S揚陸艇
エアクッション方式のLCAC以外にもEDA-S揚陸艇は冗長性ある汎用艦ということで注目すべきですね。
フランス海軍は最新のEDA-S揚陸艇を受領しました。フランス海軍ではCTM揚陸艇をミストラル級強襲揚陸艦などの搭載艇として運用していますが、老朽化が進んでおり後継揚陸艇を必要としていました。フランス海軍は14隻のEDA-S揚陸艇を取得する計画で、11月26日に最初の2隻が引き渡されました、2022年にも6隻の取得を計画しています。
EDA-S揚陸艇は全長28.6mと全幅6.7mで、ミストラル級のドックには4隻が搭載可能、基準排水量は65tでルクレルク戦車を含む80tまでの各種装備や物資を搭載可能ですが搭載能力は65tまでに抑え80t重貨物輸送は緊急時のみ、速力は空虚状態で16ノットと全備状態で11ノット、航続距離は650kmでありシーステート5の海象でも運用可能です。
アルバレートとアルクビューズ2隻は固有の艇名が冠せられています。フランス海軍の揚陸艦はドック型揚陸艦の搭載艇ながら750tという巨大な揚陸艇や、基本設計は搭載艇でありながら長時間の独自航行が可能であるもの、エアクッション揚陸艇ではないが沿岸部まで直接上陸できるものなど、個性的な設計が多いのですが、EDA-S揚陸艇は在来型です。
■ウクライナ哨戒艇2隻受領
ウクライナ海軍としてはアゾフ海武力衝突で失った警備艇を何としても補充したいところでしょう。
ウクライナ海軍はアメリカ沿岸警備隊用アイランド級哨戒艇2隻を受領します。これはアメリカ政府からウクライナ政府に対して行われる25億ドルの防衛援助の一環となっており、ロシア黒海艦隊の敵対行動により大量の艦艇を拿捕されたウクライナ海軍の再生に寄与する事でしょう、2021年内に3隻のアイランド級哨戒艇がアメリカから回航されます。
アイランド級哨戒艇はディープウォーター計画により建造された21世紀型巡視艇で引き渡される3隻は2002年に竣工したもの、全長34mでキャタピラー3304Tディーゼルエンジンを2基搭載し船体はアルミニウム合金製となっています。沿岸警備隊での運用に際しては法執行機関塗装が施されていますが、引き渡しに際しては迷彩塗装へ変更されています。
■インドネシア哨戒艦計画
インドネシアの哨戒艦は初回勘という枠ではあるけれども重武装の哨戒艦と云うものは区分として変な気がしますね。
インドネシア海軍の90m型哨戒艦計画はトルコ製戦闘システムを採用するとのこと。これはトルコのハヴェルサン社製の開発したアドベントCMS戦闘管理システムで、システムはタレスネーデルラント社が供給します。なお、今回決定したのは戦闘管理システムのみであり、戦闘情報システムの構成要素は2021年12月時点ではまだ決定していないという。
90m型哨戒艦計画は計画名こそ哨戒艦、OPVですが装備ではフリゲイトに近い仕様となっています。満載排水量2100t、最高速力は28ノットでシーステート5まで運用可能、シーステート6でも航行は可能です。装備は76mm艦砲と対艦ミサイル8発及び大口径機関砲でヘリコプター搭載能力があります。2隻建造予定で一番艦が8月に起工式を迎えました。
■LCSオークランドNSM搭載
沿海域戦闘艦はテロリストや海賊を想定した武装のみであるので中国艦からは巡視船並みの扱いしか受けられず重武装化が急務という。
アメリカ海軍の沿海域戦闘艦オークランドはNSM海軍ストライクミサイル搭載を完了しました。沿海域戦闘艦は冷戦後の1990年代から2000年代にかけテロとの戦いを念頭に高速性能とセンサーノード性能を比較的小型の水上戦闘艦へ搭載したものですが、2010年代に中国海軍海洋進出が進むと、57mm砲とRAMのみという軽武装が問題となります。
NSM海軍ストライクミサイルはノルウェーのコングスベルク社が開発した艦対艦ミサイルで射程は350kmとなり、欧州ではエクゾセ艦対艦ミサイルの後継と位置づけられています。オークランドは2020年6月26日に就役しており、アメリカ海軍では強力な水上打撃力を搭載した事で南シナ海など前方海域における任務遂行力が高まると期待されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回の防衛情報は水陸両用作戦関連の揚陸艇や哨戒艦の話題を中心に海上防衛の話題を紹介しましょう。
アメリカ海軍はSSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇LCAC-103の試験を完了しました。LCAC-100型エアクッション揚陸艇はSSC型と呼ばれ、長らく運用されてきましたLCAC-1型エアクッション揚陸艇の後継となります。LCAC-100型とLCAC-1型は一見して同型のように見えるのですが、幾つかの部分は大きく運用の経験が反映されています。
SSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇は操縦システムが従来の油圧方式からフライバイワイヤ方式へ転換され悪天候や厳しい海象下での操縦性が大きく向上しています、また、船体とエアクッション部分の接合部分が耐腐食性アルミニウム合金へ大きく転換されておりエアクッション部分への負担が提言した事で整備性と船体寿命が強化されているのです。
V-22オスプレイ可動翼機と同系統のロールスロイスT406エンジンを採用した点も大きな進歩で、海軍ではMV-22やCV-22などとの艦上整備共通化が可能となりました。アメリカ海軍はSSC-LCAC-100型エアクッション揚陸艇を73隻導入する計画、その取得費用は40億5400万ドルとされ、LCAC-103は2020年2月6日に納入、試験が行われていました。
■アラフラ級哨戒艦一番艦進水式
自衛隊も間もなく建造を開始する哨戒艦ですが予算を全体に圧迫させず自動化を進めるのは難題です。
オーストラリア海軍はアラフラ級哨戒艦一番艦の進水式を実施しました。これはSEA-1180計画として2009年に決定した12隻の哨戒艦建造計画で、アラフラ級は哨戒艦ですが測量艦や水陸両用作戦支援能力を有する多機能艦で、また2014年に制定のSEA-1905では改良型で掃海艦型の2隻が増強されることとなり、14隻体制を目指します。
一番艦アラフラはASC造船オズボーン造船所にて建造され、二番艦エアも同じ造船所で建造中です。建造費は一隻3億オーストラリアドルで40mm機関砲と25mm機関砲及び無人機運用能力を持ち満載排水量は1640t、全長は80mあり2基の5950hpディーゼルエンジンにより最高速力は22ノット、21日間の連続任務が可能、乗員は40名とのことです。
■ポポヤヤンマー型コルベット
機雷敷設艦以外大型艦を建造してこなかったフィンランドがそれなりに大型の水上戦闘艦を建造する時代だ。
フィンランド海軍は計画中のポポヤヤンマー型コルベットへiXblue社製システムの搭載を発表しました。iXblue社製システムシステムはPhins慣性航法システムとNetans情報共有装置で、搭載予定の戦闘情報システムとの互換性を有するとしています。これはフィンランドが1930年代の海防戦艦以来となる大型艦計画が実現へ前進した意味を持ちます。
ポポヤヤンマー型コルベットは満載排水量3900tとフリゲイト並みの大きさで、ミサイル艇が主力であり従来のラウマ級コルベットやヘルシンキ級コルベットが満載排水量500t台であった事を考えれば、フィンランドでは同型艦4隻の建造はロシア軍の標的となり過大との指摘もありました。しかし多様なシステムを搭載した結果と海軍は説明しています。
■マートレットミサイル発射実験
舟艇を狙うミサイルはそれ程威力が必要ないという点で特殊です。
イギリス海軍はAW-159ワイルドキャット哨戒ヘリコプター用のマートレットミサイル発射実験を成功させました。ワイルドキャット哨戒ヘリコプターはリンクスシリーズとして開発された汎用ヘリコプター派生型の哨戒ヘリコプターですが、イギリス海軍は近年指摘されていた小型舟艇多数による艦艇への飽和攻撃への対処能力構築を急いでいました。
ミサイル発射試験には駆逐艦ディフェンダーに展開しら第815艦上航空隊のワイルドキャットが参加、マートレットミサイルはロケット弾を原型として精密誘導能力を付与したもので、非常に小型軽量であることから、ワイルドキャットヘリコプター1機に20発を搭載可能、これは空母艦載機の定数である4機に搭載した場合80発を運用となっています。
■カナダ軍ヘリに重大問題
CH-148は日本ではS-92として警視庁航空隊が採用していますね。
カナダ統合軍主力ヘリコプターCH-148が定期整備中にテイル部分へ深刻な亀裂の欠陥が確認されました。これは11月26日、定期整備中のCH-148に亀裂が発見され、尾部の重要な箇所であった為にカナダ軍は緊急の点検を実施、3機を追加して抽出検査を行ったところ、同一箇所に亀裂が発見、急遽カナダ軍が保有する23機全ての点検が行われました。
サイクロンの愛称を持つCH-148,21機を検査したところ、異常の無い機体は2機のみであり19機にひび割れが確認されています。残る2機は運用せず予備機として長期保管中であり、検査は未だ着手されていません。カナダ空軍では今回の問題を重大視していますが、CH-148は統合軍の対潜機や艦載機として重要な機体であり、空白は頭の痛い問題です。
■CH-148サイクロンクラック
S-92固有の問題なのか最終組立やロットの問題なのでしょうか。
カナダ統合軍のCH-148サイクロン機体クラック問題と共に過去の問題が再度カナダ国内で問題視されているようです。CH-148サイクロンは導入計画の遅延やコスト超過がカナダ国内で問題されています。元々は米英や海上自衛隊などで広く採用されたシーキング、カナダ軍正式名CH-124の後継機として24機が導入されましたが、トラブルが続きました。
CH-148サイクロンは哨戒機や救難機として運用されており、24機が32億ドルで導入される計画でしたが、追加費用などを要求され取得費用は57億ドルとなっています。また2020年4月にはギリシャ沖のイオニア海においてフリゲイトフレデリクトン艦載機がフライバイワイヤ制御システムの不具合から海上に墜落する事故が発生し殉職者も出ています。
■MCM機雷戦艦建造開始
MCM機雷戦艦という大型艦にUUV水中無人機を大量に搭載する構想は見方を変えれば両用作戦艦にも転用でき注目しているもの。日本の掃海艦もこれをめざすべきだった。
ベルギー軍とオランダ軍が導入するMCM機雷戦艦の一番艦オステンデ建造が開始されました。ECAグループが建造を担当する新型艦はベルギー軍とオランダ軍が共同で12隻を導入する新しい概念の掃海艦であり、現代の複雑な機雷を、多種多様な水中無人機や無人掃海艇等を遠方から管制し一隻で広い海域の機雷掃討任務に当る大型の機雷戦艦です。
MCM機雷戦艦の建造はECAグループコンカルノー造船所において建造、満載排水量は2800tと掃海艦としては破格の大きさで全長82.6mと全幅17m、最高速力は15.3ノットで乗員は63名です。搭載する無人掃海艇は全長12mに排水量20tと搭載艇としてはこちらもかなり大型、11月30日に起工式迎えたオステンデはベルギー海軍の艦艇となっています。
現代の機雷は従来型の係維機雷よりも一発当たりの目標選定能力を高めた知能化機雷が多く、掃海艇が掃海器具を曳航するだけの従来の機雷掃海では効果が充分ではなく、水中探知装置を用い一発一発発見し破壊する機雷掃討が主流となっています。これでは一隻の掃海艇に掃討できる海域は限られる為、こうした大型の多機能艦は一つの選択肢でしょう。
■フランスのEDA-S揚陸艇
エアクッション方式のLCAC以外にもEDA-S揚陸艇は冗長性ある汎用艦ということで注目すべきですね。
フランス海軍は最新のEDA-S揚陸艇を受領しました。フランス海軍ではCTM揚陸艇をミストラル級強襲揚陸艦などの搭載艇として運用していますが、老朽化が進んでおり後継揚陸艇を必要としていました。フランス海軍は14隻のEDA-S揚陸艇を取得する計画で、11月26日に最初の2隻が引き渡されました、2022年にも6隻の取得を計画しています。
EDA-S揚陸艇は全長28.6mと全幅6.7mで、ミストラル級のドックには4隻が搭載可能、基準排水量は65tでルクレルク戦車を含む80tまでの各種装備や物資を搭載可能ですが搭載能力は65tまでに抑え80t重貨物輸送は緊急時のみ、速力は空虚状態で16ノットと全備状態で11ノット、航続距離は650kmでありシーステート5の海象でも運用可能です。
アルバレートとアルクビューズ2隻は固有の艇名が冠せられています。フランス海軍の揚陸艦はドック型揚陸艦の搭載艇ながら750tという巨大な揚陸艇や、基本設計は搭載艇でありながら長時間の独自航行が可能であるもの、エアクッション揚陸艇ではないが沿岸部まで直接上陸できるものなど、個性的な設計が多いのですが、EDA-S揚陸艇は在来型です。
■ウクライナ哨戒艇2隻受領
ウクライナ海軍としてはアゾフ海武力衝突で失った警備艇を何としても補充したいところでしょう。
ウクライナ海軍はアメリカ沿岸警備隊用アイランド級哨戒艇2隻を受領します。これはアメリカ政府からウクライナ政府に対して行われる25億ドルの防衛援助の一環となっており、ロシア黒海艦隊の敵対行動により大量の艦艇を拿捕されたウクライナ海軍の再生に寄与する事でしょう、2021年内に3隻のアイランド級哨戒艇がアメリカから回航されます。
アイランド級哨戒艇はディープウォーター計画により建造された21世紀型巡視艇で引き渡される3隻は2002年に竣工したもの、全長34mでキャタピラー3304Tディーゼルエンジンを2基搭載し船体はアルミニウム合金製となっています。沿岸警備隊での運用に際しては法執行機関塗装が施されていますが、引き渡しに際しては迷彩塗装へ変更されています。
■インドネシア哨戒艦計画
インドネシアの哨戒艦は初回勘という枠ではあるけれども重武装の哨戒艦と云うものは区分として変な気がしますね。
インドネシア海軍の90m型哨戒艦計画はトルコ製戦闘システムを採用するとのこと。これはトルコのハヴェルサン社製の開発したアドベントCMS戦闘管理システムで、システムはタレスネーデルラント社が供給します。なお、今回決定したのは戦闘管理システムのみであり、戦闘情報システムの構成要素は2021年12月時点ではまだ決定していないという。
90m型哨戒艦計画は計画名こそ哨戒艦、OPVですが装備ではフリゲイトに近い仕様となっています。満載排水量2100t、最高速力は28ノットでシーステート5まで運用可能、シーステート6でも航行は可能です。装備は76mm艦砲と対艦ミサイル8発及び大口径機関砲でヘリコプター搭載能力があります。2隻建造予定で一番艦が8月に起工式を迎えました。
■LCSオークランドNSM搭載
沿海域戦闘艦はテロリストや海賊を想定した武装のみであるので中国艦からは巡視船並みの扱いしか受けられず重武装化が急務という。
アメリカ海軍の沿海域戦闘艦オークランドはNSM海軍ストライクミサイル搭載を完了しました。沿海域戦闘艦は冷戦後の1990年代から2000年代にかけテロとの戦いを念頭に高速性能とセンサーノード性能を比較的小型の水上戦闘艦へ搭載したものですが、2010年代に中国海軍海洋進出が進むと、57mm砲とRAMのみという軽武装が問題となります。
NSM海軍ストライクミサイルはノルウェーのコングスベルク社が開発した艦対艦ミサイルで射程は350kmとなり、欧州ではエクゾセ艦対艦ミサイルの後継と位置づけられています。オークランドは2020年6月26日に就役しており、アメリカ海軍では強力な水上打撃力を搭載した事で南シナ海など前方海域における任務遂行力が高まると期待されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)