北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊-異次元協同防衛力の整備を!周辺事態含む大規模武力紛争を抑止/拡大阻止する手段

2022-03-19 20:14:15 | 国際・政治
■戦争へ"参戦しない防衛協力"
 異次元といいますとSF的な響きですが現在の多次元統合防衛力整備とは別に政治的な異次元からの防衛力整備を考えるべきなのかもしれません。

 情報収集航空機の絶対的な重要性を、ここ数週間改めて感じています。早期警戒管制機の有無が航空作戦を左右すると言うことは常識なのですが、電子情報収集機も含めて。こう認識しますのはウクライナ情勢です、さらにもう一つ、戦闘に参加するだけが軍事協力ではないということも改めて認識していまして、これを法整備に生かすべき、と考えます。

 法整備すべき。日本が考えるのは参戦しない国が早期警戒機を飛行させることで、参戦ではないが当該地域の防空と地上作戦に大きな影響を及ぼすことができる、これは日本が我が国周辺以外も含め、こうした任務へ積極的に参加することで、見方を変えれば日本有事や周辺事態の際に同盟国以外の友好国の協力が得られるかもしれないという打算を含む。

 NATOの情報収集機、ウクライナ情勢がNATO域内へ拡大しないよう、早期警戒機や早期警戒管制機に地上監視機と情報収集機が常に飛行しています、これはロシア軍に対して絶対にポーランドやルーマニアへ誤射してはならないという途轍もない圧力を加えていることになりますし、そして確証はありませんがロシアは情報協力を疑っている構図が、在る。

 E-3にガルフストリームAEWにE-8やなにとこれだけ様々な航空機があるのかと感心させられるところですが、NATOはいまのところ参戦していません、そしてウクライナへNATOの情報収集機が確認した情報が提供されている可能性は高いと思うのですが、データ提供は武力攻撃と必ずしも一体化するものではありません。日露戦争でも似たことがあった。

 情報提供、E-3早期警戒管制機が確認した防空情報が仮にウクライナへ提供されていたとして、似た状況というのは、1904年日露戦争に際してバルト海のリバウ軍港から極東のウラジオスト軍港へ向かうロシアバルチック艦隊の動静がイギリスから常に日本側へ提供されていまして、かなり重要な作戦計画へ影響を及ぼしたが、以て参戦と見なされていない。

 参戦していないのだからロシアはE-3を撃墜することはできませんし、なによりもポーランド上空やルーマニア上空に展開しているのですから、ロシア軍が戦闘機を向ければNATOのF-16やタイフーンがスクランブルを掛けてきますし、F-35戦闘機がステルスを活かしてCAP戦闘空中哨戒している可能性もある、つまり戦場の異次元にいる構図です。

 異次元というのは、"戦場という世界"と"参戦国ではない世界"というもの。そしてロシア軍がこれらの航空機を攻撃するならば反撃が考えられ、極論ですが翌日にモスクワ上空を様々な国のF-35が乱舞する可能性も否定できません、だからこそ手が出せない、手は出せないが異次元から収集された情報が我を不利にする、手を出せば第三次大戦の隔靴掻痒だ。

 日本も。こう考える背景には、もちろん今すぐE-767をドイツの在独米軍基地へ派遣して、クレタ島のイギリス軍基地へEP-3電子情報収集機を展開する、というような性急なものではありません。いや別にそうした決断が政府にもあって良いのかもしれないのですが、戦闘に参加しないが情報収集では参加する防衛協力、こうした法整備が必要であると思う。

 情報戦に参加している、こう反論されるかもしれませんが、電子情報戦に参画していることは確かです、しかし、現代戦は情報戦は戦場にメディアや個人のSNSも巻き込むもので、まさかウクライナ支持を訴える市民デモや京都の東山花灯路でのウクライナ支援の声を憲法違反だ、と声高に強権で押しつぶすようなことはあってはなりません。つまり多寡です。

 法整備で必要と考えるのは、こうした情報収集の防衛協力が憲法上どのように位置づけるかを曖昧としている点で、できることは何かという部分まで踏み込んでいないためです。抜け道もあるのかもしれませんが、抜け道を活用する防衛協力はグレーゾーンであり法整備がなければ時の政権の匙加減が防衛協力の多寡を定める、不確かな指針といえましょう。

 情報収集機。自衛隊は規模としてはかなりの情報収集機を運用しています、なにしろ早期警戒機と早期警戒管制機だけでE-767にE-2Cと二桁を装備していますし、E-2Dも間もなく加わります。そして海上自衛隊のOP-3やEP-3と共に航空自衛隊のYS-11と後継にC-2派生型が開発されている。専用電子戦機は無いものの情報収集機となると規模的に大きい。

 E-767の滞空時間を考えますと、E-2D早期警戒機の重要性もさることながらいずれE-7のような滞空時間の長い航空機も必要となると考えまして、この点でアメリカが将来的に必要となるであろうE-3早期警戒管制機の後継機、E-10多用途警戒機が中断して以来放置されているE-X次期早期警戒機の流れも見極める必要があるのでしょうが、まずは法整備だ。

 日本有事や周辺事態の際に同盟国以外の友好国の協力が得られるかもしれないという打算を含む、こう前述したのですが、具体的にはロシア軍がウクライナにこじつけた、ロシア系住民を毒ガスで虐殺し核開発をしたうえでネオナチが新型コロナウィルスの生物兵器でロシアを攻撃、こうした荒唐無稽すぎて反論のしようが無い開戦口実を見た上でのもの。

 北海道北部に同様の口実を突き付けて道北に侵略を加えてくる可能性があります、何故ならば核兵器もロシア系住民迫害も無くともロシアには宗谷海峡を確保する戦略的重要性があるのですから。そして台湾海峡においても、わたしは台湾で住民投票の上で統一が在るならば、それは選択肢と思う、もちろんロシアがウクライナで行う様な擬似投票ではなく。

 台湾海峡、香港返還の様な両国関係の国際合意に基づく一国二制度での統一ならば歓迎すべきですが、一方で軍事的な統一が行われるならば、少なくとも日本へは浮流機雷漂着の懸念もあり、戦闘がどちら有利に展開しようとも日本のシーレーンが封鎖される事は間違いなく、良い事は何もありません。ただ、そこで自衛隊がF-35を派遣するのも気が早い。

 しかし、情報収集機を派遣するのであれば、別です。ここで法師海老が必要であると考えるのは、結局中華民国空軍との間で情報協定などが結べないのであれば、アメリカの台湾関係法に基づく情報協力を活用する構図となりますので、在日米軍基地はもちろん、日米の情報共有というものをかなり活用しなければなりません、そして日米だけでは不足する。

 オーストラリア空軍やイギリス空軍に隣国韓国空軍のE-7ウェッジテイル、可能ならばNATOが運用するE-3セントリーの応援も望みたい。いや、緊張が高まった時点でこのような各国の航空機が展開し情報共有の態勢を組む事で、強烈な抑止力となります。異次元からの情報収集協力という威力はロシアがウクライナで今まさに実感しているのだから。

 参戦しない事での異次元からの防衛協力、この威力を痛感しているのが現在のロシア軍ウクライナ侵攻です。しかし、何もしないままに将来日本だけ協力を望むという構図はあまりに無責任で、先ず、法整備として参戦しない防衛協力を明確に行える根拠法を立法し、軍事協力といえば戦車や戦闘機で攻撃、という前の段階がある事を明確にすべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【榛名防備録】第二次世界大戦後の空挺作戦,ロシア軍空挺作戦失敗と朝鮮戦争インドシナ戦争

2022-03-19 14:14:44 | 防衛・安全保障
■概説:戦後各国空挺作戦
 BBCによればイギリス国防省分析としてウクライナ侵攻ロシア軍は完全に停止したとのこと、緒戦で空挺作戦が一因でしょう。そこで今回は空挺作戦について少し備忘録的に。

 空挺部隊の運用は難しい、今回のロシア軍ウクライナ侵攻にて再認識させられました。FSB文書として漏洩した文書、世界をにぎわせましてどこまで本物なのかは不明ですが、この文書によればロシア軍は20カ所に空挺作戦を実施して19カ所で失敗したという。今の時代に目立つ空挺作戦を分散させた背景はなかなか理解できないものです。何が在ったのか。

 分散運用はC4I時代においては常道となりまして、実は分散することは電子空間で相互支援が可能なのであれば集中に拘ることは悪手です、航空目標に対して脆弱ですので、冷戦時代などは固まれば戦術核の標的となるために分散と集合の迅速さが重要であるとして、機械化部隊が優先されてゆきました、これがC4I時代ではもう少し連携度合いが早くなる。

 しかし、空挺部隊は相当に地上部隊と連携するか、相当に航空優勢確保に自信があり常続的な友軍航空機の戦闘空中哨戒下でなければ、実現しないのかもしれません。もっとも、これが実現するならば2002年アフガニスタン空挺強襲や2003年イラク北部空挺作戦、アメリカの成功が挙げられますし、フランスも2013年マリのサーバル作戦にて実施しました。

 トルコ軍もクルド武装勢力掃討作戦にて空挺作戦を成功させているので、ロシアも自信があったのか。ロシア軍空挺作戦、20カ所を強襲して1カ所しか成果が出なかったことは、恐るべき失敗であり厳しい訓練を耐え抜いた空挺兵には気の毒ではあるのですが、第二次世界大戦後の空挺作戦を見ますと複数の地域に空挺部隊を分散させた例が余り無いのです。

 朝鮮戦争、アメリカは成功例として朝鮮戦争にて第187空挺連隊戦闘団が北朝鮮軍退路を遮断するべく1950年10月20日に平壌北方の粛川と須川に降下、空挺堡を確保しています。ただ、連隊戦闘団では橋頭堡を結ぶ兵力には不足し、空挺作戦は成功しましたが退路遮断という戦略目標には届かず、結果的に北朝鮮撤退を許し朝鮮戦争が長期化する一因となる。

 朝鮮戦争では1951年3月23日に中華人民共和国軍の介入により戦線が崩壊した際、ソウル北方の文山に降下し橋頭堡を確保しましたが、中国軍を押しとどめるには至らず失敗したともいわれます、ただ、遅滞戦闘には成功し国連軍後退を成功させましたので、戦略目標は達成したといえる。新装備であるC-119輸送機による重装備輸送能力も効果が大きい。

 インドシナ戦争においてフランス軍は空挺作戦を多用しています、1952年のフードン作戦では空挺大隊をC-47輸送機で、また1953年のランソン作戦では3個空挺大隊をC-47輸送機で降下させ成功しています。C-119輸送機は火砲など重装備を空中投下できましたがC-47は所謂第二次大戦中のダコタ輸送機が投入、軽装の空挺兵が作戦を主幹しました。

 ディエンビエンフー空挺作戦、アメリカ以外の空挺作戦となりますと有名なものはフランス軍がインドシナ戦争において1953年11月20日に実施した空挺作戦で、これにより盆地であるディエンビエンフーを確保し飛行場とする勝利につながりますが、孤立したディエンビエンフーは包囲されつつ空輸により補給線を維持する、この発想に無理がありました。

 ディエンビエンフーは盆地ですが、その盆地を見下ろす高台にベトミン軍が山砲はもちろん榴弾砲まで分解輸送し砲兵火力で圧倒、1954年5月7日に陥落しています。この他ではヴェトナム戦争のジャンクションシティオルタネート作戦や1956年のイスラエル軍ミトラ峠空挺作戦や続く英仏空挺作戦、アメリカ軍グレナダ侵攻作戦など、一応の成功例はある。

 ロシア軍ウクライナ侵攻、しかし、これが空挺作戦として失敗した背景には、とにかく同時に複数というよりも数十カ所を攻めた、そして航空優勢を獲得できず空輸補給が続かない、地上部隊との連携失敗と言うよりも無視、この作戦を立てたのは誰だ、と今後一世紀は言われ続ける無計画があるのかもしれません。やはり政治主導の作戦だったのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3.16宮城福島沖地震-福島第一原発福島第二原発,"最後の責任者は誰か"十一年前からの課題

2022-03-19 07:00:08 | 防災・災害派遣
■検証:3.16東北地震
 ノーモアヒロシマノーモアフクシマと云うは容易い。本来は2011年に解決すべき命題が時機を逸して放置されたまま改めて認識された、そんな出来事がありました。

 3月16日の深夜に発生した福島宮城県沖地震、久しぶりに緊急地震速報が発令とともに直後に大将都道府県が次々拡大するという恐怖を感じるとともに、原子力発電所が、結局は大事にはいたら無かったのですが、福島第一原子力発電所の使用済み核燃料プール冷却や炉心圧力の異常という報道が、いやな予感を感じ続けたあの2011年を思い出させました。

 福島第二原発では使用済核燃料の循環装置が一時的に機能不随となるなど、一応同程度の地震に対しては十分な対策は為されているはずなのですが、東日本大震災の教訓が活かされたとは中々言い難い状況となっています。そして何よりも現在の日本原子力発電体制において、東日本大震災にて不明確であった、最後の責任者、が不明確のままとなっている。

 最後の責任者とは。これは原子力行政以前の問題として、所掌する私企業の施設として原子力発電所があるのですから、行政は国有でない以上例えば強権発動を行えば、原子力事故を安定化させよ、政治主導の行政命令を発令する事は制度上可能です、ただ、ここで企業が撤退した場合、強権発動としても無理矢理施設から脱出する要員に罰則はありません。

 原発事故という、確たる前例があるにもかかわらず、福島第一原発事故以上の例えば短時間での許容被曝量限度を上回る状況において、所掌事業者が大量被ばくにより作業不能となった場合、最後に責任を持つのは誰であるのか、その為に必要な専門部隊や核事故での放射性物質降下地域での、憲法上の限界を超えた、作業を行う集団はどうあるべきか、と。

 電力会社と協力企業一つとっても、例えばM-113のようなNBC環境下で活動できる車両は聞く限りではありません、除染設備も施設型のものはありますが、広域除染や原発施設内の放射性物質降下環境での障害除去に関する専門機材もありません。そしてNBC防護能力ある輸送車も無い為に万一の際に周辺住民を退避させる手段もまた、無いままなのです。

 原子力発電所は今なお日本国内に多数が維持されており、そして日本のエネルギー安全保障からは欠く事が出来ない存在となっています。しかし、それだけに万一の事態、いや11年前の事故を上回る事態が発生した際の責任所在が制度として確立されていないまま、惰性の様に原子力発電を行う事もまた無責任と云わざるを得ません、原発維持の努力が薄い。

 昨夜の地震には原子力関連の被害情報がNHKなどにより流されると共に、結果的に大きな被害は生じていない訳ですけれども、悪い予感と厳しい記憶の再来を痛感したものでした。当地は距離はありますが、敦賀原発はじめ若狭湾原発密集地域において万一の状況となった場合には影響が及ぶ地域にいます故、どうしてもこの問題を深く考えてしまうのですね。

 最後の責任者はどうあるべきなのか、この本来は2011年の東日本大震災を受けて早い時期に結論を出すべき重要論点を、放置したまま、11年目の巨大地震を突き付けられた構図、そろそろ原発事故を、起こさないのではなく、最悪の状況が起きた場合の準備、ダメージコントロールという視点で準備する機会が昨夜の地震であったのではないかとも考えます。

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