■特報:世界の防衛,最新論点
今回はフィリピン軍の現状について最新の論点を纏めてみました。日本の隣国の一つであるフィリピンの安全保障情勢を見てみましょう。
フィリピン海軍はパグシシカップ2021演習においてMARU海兵隊水陸両用即応群能力を実証しました。これは西ミンダナオ地域、スル州パナマオのバランガイブランシー沿岸部において実施した大規模な演習の最終段階に行われた大規模な展示訓練において、水陸両用装甲車を含む機械化部隊を洋上から海岸線に展開させる実動演習を演練したものです。
パグシシカップ2021演習での揚陸演習はフィリピン海兵隊第8上陸大隊と海軍第2建設大隊が中心となり、予備役部隊や周辺住民ボランティアも参加し、ターラック級揚陸艦から発進した上陸用舟艇2隻とAAV-7両用戦闘車4両、及び複合高速艇など舟艇が参加し実施されています。なお、フィリピンは韓国でライセンス生産されたAAV-7を取得運用中だ。
AAV-7両用戦闘車も参加した今回のパグシシカップ2021演習はフィリピン海軍が新しく編成したMARU海兵隊水陸両用即応群の実証実験としての側面を有しているとともに、上陸作戦のほか、人道支援や大規模災害における海上からの救援を想定したものであり、戦闘訓練と共に巡回医療や沿岸部での井戸掘削等、訓練内容は多岐に及ぶものとなっています。
■海軍史上二度目のミサイル訓練
自衛隊では普通のハープーンの様なミサイルはなかなかフィリピンには荷が重いのでしょうか。
フィリピン海軍は水上戦闘艦からの史上二度目の対水上ミサイル発射試験に成功しました。フィリピン海軍は2000年代まで第二次世界大戦中の中古艦を装備するなど限られた海上防衛力で凌いでいましたが、近年中国海軍の軍事圧力増大を受け海軍力強化を進めていました。射撃試験を実施したのはイスラエルより取得したスパイクER対戦車ミサイルです。
スパイクER対戦車ミサイルは射程8kmの対戦車ミサイルですが、イスラエルのラファエル社は艦載用にMPAC多目的発射装置を改修しており、小型の警備艇であっても近距離であれば水上戦闘艦に大きな打撃を加える装備として販売しています。ミサイルの発射試験は2021年10月28日にミンダナオ島近海に設定された演習海域において実施されています。
パグシシカップ2021演習として実施されたミサイル発射演習は、フィリピン海軍の第3水上舟艇船体の警備艇より実施されました。射程8kmの対艦ミサイルはハープーン対艦ミサイル等と比較すれば射程は短いですが、排水量25tの小型警備艇にも76mm艦砲に匹敵する打撃力の付与が可能です。演習は対テロ任務等も加えて五日間に渡り実施されました。
■ホセリサール級に対空ミサイル
ミストラルと云うのは野戦用の自衛防空戦闘に用いるものという印象があるのですが。
フィリピン海軍は新型フリゲイトホセリサール級へミストラル3艦対空ミサイルを搭載する計画です。ホセリサールは韓国の現代重工により一番艦ホセリサールが2020年に、まだ二番艦アントニオルナが2021年3月に竣工、本級は韓国海軍のインチョン級フリゲイトのフィリピン海軍仕様となっています、建造費は2隻で160億ペソ、兵装は含みません。
ホセリサール級フリゲイトは満載排水量2600tで韓国製海星艦対艦ミサイルや76mm艦砲を搭載していますが、建造費160億ペソとは別の兵器費用は20億ペソしかなく、艦対空ミサイルの搭載は後日搭載となっていました。しかしMBDA社との間で正式にミストラル3艦対空ミサイル調達が決定したという、射程は6km、原型は歩兵携行式MANPADSです。
フィリピン海軍は1992年にミスチーフ環礁を中国に占領されていますが、海軍近代化は鈍く十年前まで駆逐艦は第二次大戦中の護衛駆逐艦とアメリカ製カッターのみ、潜水艦は勿論ミサイル艇も保有せず、潜水艦を探知可能な航空機は哨戒ヘリコプターを含め皆無でしたが、近年更なる中国の軍事圧力を受け、漸くながら沿岸作戦能力を整備しつつあります。
■T-129攻撃ヘリコプター検討
日本もAH-1S後継ヘリコプターの選定が難航していますが。
フィリピンはトルコよりT-129攻撃ヘリコプターとFNSS-PRS装輪両用装甲車導入構想を更に進めました。これは10月1日にフィリピンのロレンザナ国防大臣とトルコのアカル国防大臣の電話会談において、調達装備の概要では、2021年4月に進捗の在ったトルコからの防衛装備供与に関する具体的な納入時期と予算について詰めの交渉を行ったものです。
FNSS-PRS装輪両用装甲車はFNSS社がファミリー化した装輪装甲車で四輪型の偵察車と六輪型の装甲輸送車、砲塔搭載が可能な八輪型の多目的装甲車型があり、いずれも水陸両用能力を有しています。フィリピン軍は四輪型の導入を計画しており、これは操縦手と車長及び斥候兵など5名が定員となっており、RWS遠隔操作型銃搭の搭載も可能というもの。
T-129攻撃ヘリコプターはアグスタウェストランド社が開発したA-129攻撃ヘリコプターをトルコのTAI社がライセンス生産し、独自の戦闘システムを搭載したもので、スパイクERミサイルやヘルファイアミサイルの運用能力を有し、改良型としてトルコ製エンジン搭載型の開発も進められています。フィリピンは防衛力強化として陸軍刷新を進めています。
■東欧製ブラックホーク取得
ブラックホークヘリコプターをフィリピンは工夫し安価に取得しました。
フィリピン軍は新しく取得したブラックホークヘリコプターを東部ミンダナオ軍管区へ配備しました。配備された数は4機、フィリピン国内で活動を続ける武装ゲリラ鎮圧任務へ投入されます。ブラックホークヘリコプターではありますが軍用型のUH-60ではなく民間型のS-70iヘリコプターを取得し軍用仕様としたもので初期機の不具合を解消したもの。
S-70iヘリコプターはシコルスキー社の子会社であるポーランドのPZLミエレツ社により製造されているもので、UH-60よりも飛行能力以外の性能は無いものの、安価となっています。フィリピン軍は2億4146万ドルで5機を取得しましたが、初号機が事故に見舞われた為、これらの問題を是正した4機が、改めてフィリピン軍へ配備されたかたちです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回はフィリピン軍の現状について最新の論点を纏めてみました。日本の隣国の一つであるフィリピンの安全保障情勢を見てみましょう。
フィリピン海軍はパグシシカップ2021演習においてMARU海兵隊水陸両用即応群能力を実証しました。これは西ミンダナオ地域、スル州パナマオのバランガイブランシー沿岸部において実施した大規模な演習の最終段階に行われた大規模な展示訓練において、水陸両用装甲車を含む機械化部隊を洋上から海岸線に展開させる実動演習を演練したものです。
パグシシカップ2021演習での揚陸演習はフィリピン海兵隊第8上陸大隊と海軍第2建設大隊が中心となり、予備役部隊や周辺住民ボランティアも参加し、ターラック級揚陸艦から発進した上陸用舟艇2隻とAAV-7両用戦闘車4両、及び複合高速艇など舟艇が参加し実施されています。なお、フィリピンは韓国でライセンス生産されたAAV-7を取得運用中だ。
AAV-7両用戦闘車も参加した今回のパグシシカップ2021演習はフィリピン海軍が新しく編成したMARU海兵隊水陸両用即応群の実証実験としての側面を有しているとともに、上陸作戦のほか、人道支援や大規模災害における海上からの救援を想定したものであり、戦闘訓練と共に巡回医療や沿岸部での井戸掘削等、訓練内容は多岐に及ぶものとなっています。
■海軍史上二度目のミサイル訓練
自衛隊では普通のハープーンの様なミサイルはなかなかフィリピンには荷が重いのでしょうか。
フィリピン海軍は水上戦闘艦からの史上二度目の対水上ミサイル発射試験に成功しました。フィリピン海軍は2000年代まで第二次世界大戦中の中古艦を装備するなど限られた海上防衛力で凌いでいましたが、近年中国海軍の軍事圧力増大を受け海軍力強化を進めていました。射撃試験を実施したのはイスラエルより取得したスパイクER対戦車ミサイルです。
スパイクER対戦車ミサイルは射程8kmの対戦車ミサイルですが、イスラエルのラファエル社は艦載用にMPAC多目的発射装置を改修しており、小型の警備艇であっても近距離であれば水上戦闘艦に大きな打撃を加える装備として販売しています。ミサイルの発射試験は2021年10月28日にミンダナオ島近海に設定された演習海域において実施されています。
パグシシカップ2021演習として実施されたミサイル発射演習は、フィリピン海軍の第3水上舟艇船体の警備艇より実施されました。射程8kmの対艦ミサイルはハープーン対艦ミサイル等と比較すれば射程は短いですが、排水量25tの小型警備艇にも76mm艦砲に匹敵する打撃力の付与が可能です。演習は対テロ任務等も加えて五日間に渡り実施されました。
■ホセリサール級に対空ミサイル
ミストラルと云うのは野戦用の自衛防空戦闘に用いるものという印象があるのですが。
フィリピン海軍は新型フリゲイトホセリサール級へミストラル3艦対空ミサイルを搭載する計画です。ホセリサールは韓国の現代重工により一番艦ホセリサールが2020年に、まだ二番艦アントニオルナが2021年3月に竣工、本級は韓国海軍のインチョン級フリゲイトのフィリピン海軍仕様となっています、建造費は2隻で160億ペソ、兵装は含みません。
ホセリサール級フリゲイトは満載排水量2600tで韓国製海星艦対艦ミサイルや76mm艦砲を搭載していますが、建造費160億ペソとは別の兵器費用は20億ペソしかなく、艦対空ミサイルの搭載は後日搭載となっていました。しかしMBDA社との間で正式にミストラル3艦対空ミサイル調達が決定したという、射程は6km、原型は歩兵携行式MANPADSです。
フィリピン海軍は1992年にミスチーフ環礁を中国に占領されていますが、海軍近代化は鈍く十年前まで駆逐艦は第二次大戦中の護衛駆逐艦とアメリカ製カッターのみ、潜水艦は勿論ミサイル艇も保有せず、潜水艦を探知可能な航空機は哨戒ヘリコプターを含め皆無でしたが、近年更なる中国の軍事圧力を受け、漸くながら沿岸作戦能力を整備しつつあります。
■T-129攻撃ヘリコプター検討
日本もAH-1S後継ヘリコプターの選定が難航していますが。
フィリピンはトルコよりT-129攻撃ヘリコプターとFNSS-PRS装輪両用装甲車導入構想を更に進めました。これは10月1日にフィリピンのロレンザナ国防大臣とトルコのアカル国防大臣の電話会談において、調達装備の概要では、2021年4月に進捗の在ったトルコからの防衛装備供与に関する具体的な納入時期と予算について詰めの交渉を行ったものです。
FNSS-PRS装輪両用装甲車はFNSS社がファミリー化した装輪装甲車で四輪型の偵察車と六輪型の装甲輸送車、砲塔搭載が可能な八輪型の多目的装甲車型があり、いずれも水陸両用能力を有しています。フィリピン軍は四輪型の導入を計画しており、これは操縦手と車長及び斥候兵など5名が定員となっており、RWS遠隔操作型銃搭の搭載も可能というもの。
T-129攻撃ヘリコプターはアグスタウェストランド社が開発したA-129攻撃ヘリコプターをトルコのTAI社がライセンス生産し、独自の戦闘システムを搭載したもので、スパイクERミサイルやヘルファイアミサイルの運用能力を有し、改良型としてトルコ製エンジン搭載型の開発も進められています。フィリピンは防衛力強化として陸軍刷新を進めています。
■東欧製ブラックホーク取得
ブラックホークヘリコプターをフィリピンは工夫し安価に取得しました。
フィリピン軍は新しく取得したブラックホークヘリコプターを東部ミンダナオ軍管区へ配備しました。配備された数は4機、フィリピン国内で活動を続ける武装ゲリラ鎮圧任務へ投入されます。ブラックホークヘリコプターではありますが軍用型のUH-60ではなく民間型のS-70iヘリコプターを取得し軍用仕様としたもので初期機の不具合を解消したもの。
S-70iヘリコプターはシコルスキー社の子会社であるポーランドのPZLミエレツ社により製造されているもので、UH-60よりも飛行能力以外の性能は無いものの、安価となっています。フィリピン軍は2億4146万ドルで5機を取得しましたが、初号機が事故に見舞われた為、これらの問題を是正した4機が、改めてフィリピン軍へ配備されたかたちです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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