■特報:世界の防衛最新論点
今回はヘリコプター関連の世界最新情報を纏めましたので特報としてお伝えしましょう。先ずはOH-1以降停滞している日本の観測ヘリコプターに一石を投じそうな機体です。
アメリカ陸軍向けに製造が進むS-97レイダーX複合ヘリコプター試作機が全体工程の九割を終えたとのこと。これはアメリカ陸軍の将来型攻撃偵察機計画へシコルスキー社が提示する機体の原型機であり、S-97の巡航速度は205ノット以上を想定、従来のヘリコプターを元にV-22オスプレイ可動翼航空機並の巡航速度を付与した複合ヘリコプターです。
S-97レイダーX複合ヘリコプターは乗員2名と兵員6名を輸送し最大離陸重量は6.4tで先行開発されたレイダーの拡大改良型となっています、レイダーの重量は4.05t、またレイダーとレイダーXの相違点に格納式20mm機関砲があり、人員区画をそのままミサイル区画にも転用可能、二転三転したOH-58D観測ヘリコプター後継機が漸くかたちとなりました。
二重反転ローターにより高速飛行を実現、この二重反転ローター技術は2008年に初飛行したシコルスキーX2試験機の技術が応用されていて、開発中止となったRAH-66コマンチ偵察攻撃ヘリコプターの技術も反映されているものです。現在製造されているのは初号機ですが、数週間間隔をあけて二号機の製造も開始、間もなく披露されることになるでしょう。
■NGRC次世代回転翼機
V-22オスプレイのような可動翼航空機が基本となる時代が今度こそ到来するのでしょうか。
ベルギーのブリュッセルで6月16日に行われたNATO防衛閣僚会合においてNGRC北大西洋条約機構次世代回転翼航空機能力構築の覚書が署名されました。これはイギリス、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダが参加する将来ヘリコプター能力構築を目指すもので、現在のNH-90多用途ヘリコプターを置換える新型機開発を目指している。
NGRC北大西洋条約機構次世代回転翼航空機は、具体的には、航続距離1650km以上で巡航速度は220ノット即ち407km/h、滞空時間は5時間から増槽装着で8時間、機体重量は4000kg程度で機内貨物搭載能力は2500kg、燃料を含む最大離陸重量は10tから17t、特に巡航速度の面で複合ヘリコプターなど野心的な機体を目指している事が見て取れます。
NH-90は新世代の多用途ヘリコプターとしてNBC環境への対応能力や後部ハッチの採用による大型機材の輸送能力などが付与されているものの、巡航速度は当時のヘリコプターの平均的な要求水準に抑えられており、一方で次世代の多用途ヘリコプターはアメリカのMV-22を筆頭にティルトローター方式や複合ヘリコプター方式など高速化する見通しです。
■AH-64Eから射程50km
アパッチシリーズはアパッチロングボウからアパッチガーディアンで意外な程の深化を迎えようとしているもよう。
イスラエルのラファエル社はAH-64E戦闘ヘリコプター用弾薬に射程50kmの次世代型スパイクミサイルを提案しました。これは6月にパリで開かれたユーロサトリ国際装備展において発表されたものです。スパイクNLOSは光ファイヴァー誘導方式の射程の長いミサイルでしたが、改良型はTV誘導方式となり、その更なる改良型の発表となります。
AH-64Eアパッチガーディアンに搭載のアメリカ陸軍次期長距離精密弾薬、今回発表された改良型スパイクNLOSはスパイクNLOSでも第六世代型、第五世代型は米軍評価試験を受けました。2022年内に予定されている戦闘ヘリコプター弾薬選定への参加が目的であり、この競合を超えて採用された場合には、陸軍の将来偵察航空機用としても採用されます。
スパイクNLOS第六世代型は射程50km、前型として評価試験を受けた第五世代型は射程40kmである為、ヘリコプターからの打撃力としては恐るべき長射程で、更に誘導方式の改良により4目標へ当時射撃が可能となっています。この長大な射程は、戦闘ヘリコプターの脅威となる地対空ミサイル制圧などにも大きな威力を発揮することとなるでしょう。
■フィリピンUH-2に関心
円安の影響もあるのでしょうが自衛隊向けのUH-2は国際市場でどのように受け止められるのかの試金石となる事例がありました。
フィリピン軍は日本の富士重工/スバル社製UH-2多用途ヘリコプターに関心を示している、これは陸軍総司令官のロメオブラウナー中将が表明したもので、フィリピン陸軍には現在60名規模の操縦要員がいる為に保有ヘリコプターの増強が必要だと表明、フィリピン陸軍と自衛隊は2022年6月に防災訓練を行うなど相互協力を強化しているところです。
UH-2多用途ヘリコプターは陸上自衛隊が装備する120機のUH-1J多用途ヘリコプターの後継としてベル412シリーズを元にUH-1Jの設計を双発四枚ローター化するなど国産開発したもので、2022年から20年間で150機を導入する計画で、試作機の航空学校での試験は完了し、既に量産機がスバル宇都宮工場での初飛行を完了させ自衛隊納入が開始される。
ベル412ヘリコプターは元々フィリピンがベル社から165機を2億3300万ドルで導入する計画でしたが、ベル社工場の所在するカナダのトルドー首相が当時のフィリピンドゥテルテ政権の強権政策に反発し輸出制限を示唆した事から契約は解消されており、新しい代替案として412シリーズの系譜に在る日本製UH-2が注目されたかたちとなっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回はヘリコプター関連の世界最新情報を纏めましたので特報としてお伝えしましょう。先ずはOH-1以降停滞している日本の観測ヘリコプターに一石を投じそうな機体です。
アメリカ陸軍向けに製造が進むS-97レイダーX複合ヘリコプター試作機が全体工程の九割を終えたとのこと。これはアメリカ陸軍の将来型攻撃偵察機計画へシコルスキー社が提示する機体の原型機であり、S-97の巡航速度は205ノット以上を想定、従来のヘリコプターを元にV-22オスプレイ可動翼航空機並の巡航速度を付与した複合ヘリコプターです。
S-97レイダーX複合ヘリコプターは乗員2名と兵員6名を輸送し最大離陸重量は6.4tで先行開発されたレイダーの拡大改良型となっています、レイダーの重量は4.05t、またレイダーとレイダーXの相違点に格納式20mm機関砲があり、人員区画をそのままミサイル区画にも転用可能、二転三転したOH-58D観測ヘリコプター後継機が漸くかたちとなりました。
二重反転ローターにより高速飛行を実現、この二重反転ローター技術は2008年に初飛行したシコルスキーX2試験機の技術が応用されていて、開発中止となったRAH-66コマンチ偵察攻撃ヘリコプターの技術も反映されているものです。現在製造されているのは初号機ですが、数週間間隔をあけて二号機の製造も開始、間もなく披露されることになるでしょう。
■NGRC次世代回転翼機
V-22オスプレイのような可動翼航空機が基本となる時代が今度こそ到来するのでしょうか。
ベルギーのブリュッセルで6月16日に行われたNATO防衛閣僚会合においてNGRC北大西洋条約機構次世代回転翼航空機能力構築の覚書が署名されました。これはイギリス、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダが参加する将来ヘリコプター能力構築を目指すもので、現在のNH-90多用途ヘリコプターを置換える新型機開発を目指している。
NGRC北大西洋条約機構次世代回転翼航空機は、具体的には、航続距離1650km以上で巡航速度は220ノット即ち407km/h、滞空時間は5時間から増槽装着で8時間、機体重量は4000kg程度で機内貨物搭載能力は2500kg、燃料を含む最大離陸重量は10tから17t、特に巡航速度の面で複合ヘリコプターなど野心的な機体を目指している事が見て取れます。
NH-90は新世代の多用途ヘリコプターとしてNBC環境への対応能力や後部ハッチの採用による大型機材の輸送能力などが付与されているものの、巡航速度は当時のヘリコプターの平均的な要求水準に抑えられており、一方で次世代の多用途ヘリコプターはアメリカのMV-22を筆頭にティルトローター方式や複合ヘリコプター方式など高速化する見通しです。
■AH-64Eから射程50km
アパッチシリーズはアパッチロングボウからアパッチガーディアンで意外な程の深化を迎えようとしているもよう。
イスラエルのラファエル社はAH-64E戦闘ヘリコプター用弾薬に射程50kmの次世代型スパイクミサイルを提案しました。これは6月にパリで開かれたユーロサトリ国際装備展において発表されたものです。スパイクNLOSは光ファイヴァー誘導方式の射程の長いミサイルでしたが、改良型はTV誘導方式となり、その更なる改良型の発表となります。
AH-64Eアパッチガーディアンに搭載のアメリカ陸軍次期長距離精密弾薬、今回発表された改良型スパイクNLOSはスパイクNLOSでも第六世代型、第五世代型は米軍評価試験を受けました。2022年内に予定されている戦闘ヘリコプター弾薬選定への参加が目的であり、この競合を超えて採用された場合には、陸軍の将来偵察航空機用としても採用されます。
スパイクNLOS第六世代型は射程50km、前型として評価試験を受けた第五世代型は射程40kmである為、ヘリコプターからの打撃力としては恐るべき長射程で、更に誘導方式の改良により4目標へ当時射撃が可能となっています。この長大な射程は、戦闘ヘリコプターの脅威となる地対空ミサイル制圧などにも大きな威力を発揮することとなるでしょう。
■フィリピンUH-2に関心
円安の影響もあるのでしょうが自衛隊向けのUH-2は国際市場でどのように受け止められるのかの試金石となる事例がありました。
フィリピン軍は日本の富士重工/スバル社製UH-2多用途ヘリコプターに関心を示している、これは陸軍総司令官のロメオブラウナー中将が表明したもので、フィリピン陸軍には現在60名規模の操縦要員がいる為に保有ヘリコプターの増強が必要だと表明、フィリピン陸軍と自衛隊は2022年6月に防災訓練を行うなど相互協力を強化しているところです。
UH-2多用途ヘリコプターは陸上自衛隊が装備する120機のUH-1J多用途ヘリコプターの後継としてベル412シリーズを元にUH-1Jの設計を双発四枚ローター化するなど国産開発したもので、2022年から20年間で150機を導入する計画で、試作機の航空学校での試験は完了し、既に量産機がスバル宇都宮工場での初飛行を完了させ自衛隊納入が開始される。
ベル412ヘリコプターは元々フィリピンがベル社から165機を2億3300万ドルで導入する計画でしたが、ベル社工場の所在するカナダのトルドー首相が当時のフィリピンドゥテルテ政権の強権政策に反発し輸出制限を示唆した事から契約は解消されており、新しい代替案として412シリーズの系譜に在る日本製UH-2が注目されたかたちとなっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)