北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリス軍エアバスH-175提示とポーランドAW-149契約,ナイジェリアのAH-1ZとエジプトのCH-47

2022-09-13 20:11:44 | 先端軍事テクノロジー
週報:世界の防衛,最新10情報
 陸上自衛隊ではUH-2以外に課題山積の航空部隊ですが、今回は各国陸軍のヘリコプター関連について最新の10論点を集めてみました。

 イギリス軍NMH次期中型ヘリコプターへエアバスはエアバスH-175を売り込む専従班を設置したとのこと。この専従班は単にH-175ヘリコプターの有用性をイギリスに提示するだけではなく、イギリス国内の防衛産業とどのように連携できるかを集約し提示する目的であり、機体そのものも欧州ではなく北ウェールズのブロートンでの製造を見込みます。

 NMH次期中型ヘリコプター計画はイギリス陸軍と空軍用のヘリコプター選定で7年間で12億ポンドが投じられる計画、この候補機としてはエアバスH-175のほか、レオナルドAW-149,そしてベル525にシコルスキーUH-60等が提案、2022年9月30日までに機種が選定される予定となっています。現段階でH-175はまだ、その候補の一機種に過ぎません。

 エアバスH-175はエアバスがユーロコプター時代に中国の中国航空工業集団公司とともに共同開発した航空機で、乗員2名に加え兵員16名から18名を輸送、エンジンはプラット&ホイットニーカナダ社製PT6C-67E ターボシャフトエンジンの双発で、空虚重量4.6t、ペイロードは3.15tと余裕があり、巡航速度278km/h、航続距離は1260kmに上ります。
■スイスのクーガー延命
 ヘリコプターというのは延命して大切に使う時代なのだ。

 スイス空軍はクーガーヘリコプターの計画されていた延命改修を完了させました、その対象となったのはフランス製アエロスパシアルAS-532,現在はエアバスヘリコプターH-215Mヘリコプターです。所謂シュペルピューマシリーズヘリコプターをスイス空軍は1986年から導入開始、1998年からはその拡大改良型のクーガーを12機導入しています。

 クーガーヘリコプターの延命は9機に対して行われ、これにより2035年まで運用が可能となる見通し。延命に併せ、ローターブレードの複合素材化や着陸装置の更新、テイルブレードも新型となています。スイス空軍ではクーガーヘリコプターを兵員輸送に加え急患輸送や航空救難にも対応しているとのこと。9機目の納入式典は5月5日に挙行されました。
■ナイジェリアのAH-1Z
 アフリカ諸国でさえ二桁のAH-1Zを調達しているわけで自衛隊のAH-1S後継も真剣に考えるべきだと思う。

 ナイジェリア軍が導入を希望するAH-1Z攻撃ヘリコプターの輸出を四月、アメリカ国務省が承認しました。ナイジェリアはサハラ以南地域のアメリカとの防衛協力パートナーシップを推進する為、AH-1Zの導入を希望していました。今回導入するのはAH-1Z攻撃ヘリコプター12機と弾薬や各種の関連装備等から成り、契約費用は9億9700万ドルに達する。

 AH-1Zの導入、9億9700万ドルの契約は機体12機とT-700GE401Cエンジンが28基、弾薬としてはAPKWS先進精密攻撃弾薬2000発となっています、エンジンは双発で予備の4基を含んだもの。契約にヘルファイアミサイルが含まれませんが、APKWSは70mmロケット弾の精密誘導型、戦車以外には充分な打撃力を有するミサイルとなっています。
■米軍AH-6延命模索
 AH-6は要するにOH-6の派生型だ。

 アメリカ合衆国特殊作戦群はAH-6/MH-6リトルバード特殊作戦ヘリコプターの延命を模索しています。特殊作戦群では現在、陸軍が進めるFARA将来垂直離着陸機計画、これらの航空機が複合ヘリコプターや可動翼機方式を採用する為、AH-6/MH-6では明らかに巡航速度が低いと認識されているものの、今後数十年を延命させる模索が続けられています。

 AH-6/MH-6について、5月16日、フロリダ州タンパにて開かれた国防産業界特殊部隊産業会議では、この速度の問題が認識され、当面はローターブレードを6枚とした上で将来はローターそのものを大型化し速度を強化する事で、少なくとも2034年まで第一線運用を行う方針を示しました。ただ、ボーイングでは2024年に胴体新造を計画しています。

 AH-6/MH-6は使いやすく信頼性が高い為、FARA将来垂直離着陸機計画については、全ての陸軍航空機を置換えるかについては一概に言えない点があり、ここにAH-6/MH-6の長期運用は可能性が残るとされているようで、具体的にはハイブリット動力の採用などで特殊作戦に対応する用途の模索、更なる高速化への改修改良などが想定されているとのこと。
■エジプトCH-47を26機
 日本では川崎重工がライセンス生産しているお蔭で価格が安定していますが。

 エジプト軍はCH-47F輸送ヘリコプター23機と関連機材26億ドル規模の調達をアメリカ国務省から認可されました。CH-47F輸送ヘリコプター23機に加えての関連機材は、10基のスペアを含むT-55-GA-714Aエンジン56基や慣性航法装置とミサイル警報システムやGPS装置と一機当たり3丁のM-240汎用機銃、及び予備機材などから構成されています。

 CH-47F輸送ヘリコプターはエジプト軍の戦力投射能力を大幅に近代化する可能性があります、その背景にはエジプト海軍はフランスからミストラル級強襲揚陸艦、元々はウラジオストク級としてロシアへ輸出される予定が2014年クリミア侵略を契機に制裁として引き渡し中止となった、ガマールアブドルナーセル級2隻の艦載機として有用である為です。
■韓国-ベル505導入へ
 かなり小型ではあるけれども実用性の高い機種であるとともにエンストロムの様にどう経営が転じるか分らない機種を避けたという。

 韓国軍は次期練習ヘリコプターとしてベル505ジェットレンジャーXを選定しました。韓国軍は陸軍及び海軍の練習ヘリコプターを機種統合し、2025年までに練習ヘリコプター40機を導入する計画です。ベルヘリコプターテキストロン社はこの計画にジェットレンジャーXを提示、5月6日に40機を1億3280万ドルで納入する購入契約を結びました。

 ジェットレンジャーXは2013年に発表されたジェットレンジャーシリーズの最新型で、乗員を含む5名が搭乗でき、グラスコックピットを採用しています。既にジェットレンジャーXはモンテネグロ空軍やインドネシア海軍に採用されており、ポーランドやニュージーランドでも運用され、300機以上が製造されています。契約にはシミュレータ8基も含まれる。
■クロアチアのOH-58
 観測ヘリコプターを補助的な攻撃ヘリに使うということ。

 クロアチア軍は導入したOH-58D観測ヘリコプター用の70mmロケット弾を調達する、OH-58Dカイオワ観測ヘリコプターはアメリカ陸軍において長期間運用されていた観測ヘリコプターで、1980年代に新たにAH-64Aアパッチ攻撃ヘリコプターが開発されるとレーザー誘導方式のヘルファイアミサイルを照準する重要な観測ヘリコプターとなっていた。

 OH-58Dはアメリカでロングボウレーダーを搭載したAH-64Dが開発されると次第に用途は転換してゆき、クロアチア軍はこのうち16機を中古にて取得した、クロアチア軍ではOH-58を観測とともに火力支援の武装ヘリコプターとして運用する構想だ、この70mmロケット弾はハイドラ70シリーズ、クロアチア軍では12.7mm機銃も搭載し運用している。
■カナダ-CH-146改良
 日本では警察が採用している機種で自衛隊は警察の実績をもう少し慎重に精査した方が良いようにも思うのです。

 カナダ統合軍空軍は2022年5月にベルテキトロンカナダリミテッド社との間で8億ドル規模CH-146ヘリコプターの近代化改修を契約しました。この契約では早くとも2031年までCH-146ヘリコプターの運用を継続する事が可能となります。CH-146ヘリコプターはベル412EP多用途ヘリコプターのカナダ軍仕様であり、愛称はグリフォンとなっています。

 CH-146ヘリコプターは空軍に85機が運用されており、今回の契約では先行して先ず9機を改造するとともに続いて76機を改造する二段階が構想されています。ベル412シリーズは巡航速度220km/hで輸送能力は乗員3名の他10名と平均的な機体ですが、コンパクトで、カナダ空軍のCC-130輸送機やCC-17輸送機により緊急展開が可能となっています。
■ポーランドAW-149を32機
 ポーランドの焦燥感のような国防計画の拡大ぶりには驚かされるのです。

 ポーランド軍は空中機動力強化へ11億5000万ドル規模のAW-149中型ヘリコプター取得を検討中だ。ポーランドのブラスザック国防相によればポーランド軍はイタリアのレオナルド社との間で地雷処理車や通信衛星等を新たに導入する計画を立てており、この一環として同社製AW-149を検討している、その取得規模は32機、11億5000万ドル規模だ。

 AW-149中型ヘリコプターは乗員の他人員18名か完全武装兵員12名を空輸可能という多用途ヘリコプターだ、イタリアではこの契約はレオナルド社の年間契約に占める7.7%に相当するとされる。ポーランド軍は過去にも輸送ヘリコプター導入計画を進め、フランスよりエアバスH-225を調達する調整を進めていたが、取得費用交渉が難航し実現していない。
■アルゼンチンロシア機断念
 ロシア製ヘリコプターは今の時代には難しい。

 アルゼンチン軍は次期輸送ヘリコプターとして当初検討したロシア製Mi-26を排除しアメリカ製CH-47輸送ヘリコプターを選定しました。これは6月10日の陸軍統合幕僚本部決議により決定したもので、4機を取得し大規模災害を含む任務に充てるとのこと。アルゼンチンは1980年から2000年までCH-47を運用しており、22年ぶりの配備決定となる。

 アルゼンチンでは軍事作戦よりも災害対処を念頭としたヘリコプター調達であり、一機当たりの輸送能力が大きいロシア製Mi-26大型ヘリコプターの導入を検討したとのことですが、政治的な問題よりも大型過ぎ実用性を超えていたという背景があるようです。なお、先に運用していたCH-47はフォークランド紛争においてアルゼンチン軍が運用しています。
■経済制裁下のMi-17
 経済制裁の最中に何処へ輸出したのでしょうかね。

 ロシアのロシアンヘリコプターズ社はMi-171Eヘリコプターの経済制裁下での契約成立を発表した、Mi-171EヘリコプターはMi-17シリーズの最新改良型で、回転翼が複合素材となったほかテイルローターが十字型となり、トランスミッション部分が新型となっている、この改良により吊下げ輸送能力が20%増加し5tの装備品を吊下げ空輸可能とされる。

 ロシアは現在、ウクライナ侵攻による各国経済制裁を受けており、ロシアンヘリコプターズのウランウデ航空工場で製造されるこの機体や、購入後の定期整備などにも適用される。ヘリコプター以外の武器輸出にも影響が出ているとされるが、今回7月中に国名を示さない第三国への輸出契約が成立したとのこと。親会社の国営ロステック社が契約を発表した。

 Mi-171Eヘリコプターは25名規模の歩兵部隊や機体後部扉からのキャビン部分への装備輸送など、非常に安価なヘリコプターではあるが信頼性の高い機体として知られ、その原型はソ連時代に設計されたMi-8ヘリコプター、生産数はアメリカのUH-1シリーズを越え一万機以上が製造され、ソ連の友好国は勿論、自由主義圏へも輸出されている航空機である。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ軍反撃でロシア軍ハリコフ州撤退,南部ヘルソン州での陽動作戦と東部ハリコフ正面周到な戦力集結

2022-09-13 07:00:17 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ軍にとっては首都キエフ防衛戦の勝利以来となるハリコフ州電撃戦が進んでいます。日本の防衛を考える上で参考としたいのは危機は時機でもあり見方を変える重要さでしょう。

 ウクライナ軍の東部における反撃は驚くべき進捗であり、3月のキエフ防衛戦勝利に続く転換点といえるでしょう。また、アメリカが供与したHARM対レーダーミサイルが成果を上げており、これまでロシア軍地対空ミサイルに行動を制されていたウクライナ空軍が低空用の攻撃機以外により航空戦を再開したと、幾つかの報道があります。そのハリコフ州は。

 イギリス国防省は12日の最新発表において、ロシア軍がウクライナ東部ハリコフ州のオスキル川以西全域から撤退を命じた可能性が高いと発表しました。これを裏付ける様にタス通信が10日、ロシア国防省発表としてハリコフ州のイジューム周辺のロシア部隊に撤退を命じ、ドネツク州など他の方面での作戦を強化する転進命令を出したと発表しています。

 ヘルソン州とクリミア半島でのウクライナ軍攻撃は陽動であった可能性が高い、クリミア半島のロシア軍航空基地への攻撃はSu-24戦闘爆撃機等の破損状況からスイッチブレード無人機や対戦車火器などが用いられた可能性が高く、これは特殊部隊の浸透攻撃による戦果と思われます、そして治安作戦強化の為に、ロシア軍はハリコフ州等から転進しました。

 ハリコフ州でのウクライナ軍反撃は機械化部隊が中心として展開しており、周到に部隊を集結させていたと考えられます、ゼレンスキー大統領もクリミア半島奪還を宣言、古典的ですが高度な情報戦が行われていました。これと似た状況は1967年の第三次中東戦争において、政治家がエジプト軍を攻撃目標のシナイ半島からアカバ湾へ遠ざける際に行われた。

 陽動作戦としてクリミア半島、ロシアにはセバストポリ軍港があり2014年に占領したクリミア半島だけは守る優先度が高いと判断しウクライナ軍の偽装工作、恐らくハリコフ州でのウクライナ機械化部隊集結状況を見誤り、実は相当な部隊が集結している正面から、引抜いてはならない状況でヘルソン州へ転進、ウクライナ軍が反撃に転じたかたちでしょう。

 ウクライナ軍はヘルソン州ではなくハリコフ州に相当規模を集結させていた点は、ロシア国営RTRへハリコフ駐在ロシア側当局者の話として、反撃に転じたウクライナ軍はハリコフ州のロシア軍および親ロシア派勢力の8倍という戦力であると報じています。軍事合理性に基づき周到に計画された攻撃はしばしば成功する、この言葉通りの展開となっています。

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