北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

小松-装輪装甲車(改)の再評価【1】陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退

2022-09-23 20:06:26 | 先端軍事テクノロジー
■ほんとうに欠陥装備だったか
 陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退となりました装輪装甲車(改)について、改めて少し考えてみましょう。

 小松製作所が開発しました装輪装甲車(改)についてですが、今更ではありますが防御力の不足が原因という事での制式化見送りを再検討する必要があるのではないか、と。具体的には装甲車両には第一線での激烈な戦闘に展開する車両とは別に防御力が有る程度保持されているならば、装甲を有さないソフトスキン車よりも用途が広い、というものがある。

 NBC偵察車。装輪装甲車(改)はこの全国に配備されています装甲車両を原型として開発されているのですが、NBC偵察車そのものが有用な装甲車両なのですね、車高が高いために転覆限界などの問題がありますが。装輪装甲車(改)はこの部分の車高を下げることで実用化されたものです、当初計画では即応機動連隊へ大量配備される計画だったのですが。

 即応機動連隊。96式装輪装甲車が配備されていますが、96式装輪装甲車はもともと1990年代前半に全国の普通科連隊へ大量配備させる安価な装甲車両として構想されており、試作車28両のうち少なくない車両を重機関銃や無反動砲による試験に完全破壊されるまでに試験を通していまして、防御力は一定程度有しています、これは相応に良い車両でした。

 96式装輪装甲車は、しかし設計当時に簡易爆発物IEDという脅威を念頭に置いていなかったという問題がありまして、いや日本は専守防衛なのだからIEDは仕掛ける側であってそこまで考慮する必要はないのではないか、とも思うのですが、2003年のイラク戦争ののちに自衛隊のイラク復興人道支援任務派遣を筆頭に日本は"行く側"となるのですね。

 三菱重工と小松製作所。装輪装甲車開発に際してはこの二社が名乗りを上げます、自衛隊の要求は96式装輪装甲車を上回る防御力とともに努めて車幅を道路運送車両法の一般車両にあたる2.5m以内に抑え、そして取得費用を可能な限り抑えること、です。細部は燃料や車体構造と定員などがありましたが、車幅というものが重要でした、国内運用するために。

 小松製作所の車体は2.5m以下に抑えられていました、そして取得費用も1億8000万円に抑えられています、やすいというのは重要です、96式装輪装甲車は取得開始当時1億4500万円でした、90年代半ばにはオーストリアのパンドゥール装甲車やフィンランドのXA-180などが6000万円から8000万円程度でしたので高く見えたのですが、量産が進むと日本も。

 96式装輪装甲車は9600万円まで量産が進むとともに量産効果で安価となりまして、この頃にはストライカー装甲車が140万ドル、スイス製LAVシリーズが250万ドルとなりますので、もちろんこちらの方が車幅も広く防御力はたかいものなのですが、日本国内で普通に運用できて安価、という点は非常に重宝するものだったといえます、整備は複雑だが。

 三菱重工は車幅を2.5m以内に抑えては十分な防御力を与えた場合、将来発展性に重大な限界が生じるという一種の確信があったのでしょう、そこで16式機動戦闘車の車体、これが車幅2.98mあるのですが、これを応用する案を提示しました。小松製作所が量産中のNBC偵察車派生型を提示したように、安価とするには既存車両を発展させるほかないのですね。

 16式機動戦闘車派生案ですが、防衛省の書類選考を通ることは出来ませんでした。車幅2.98mというものはあったようにおもうのですが、もう一つ、三菱案は一両あたり2億5000万円を要するといいまして、三割近く安価です、年間50億円の装甲車予算があるとして小松案ならば2個中隊所要28両取得調達できますが三菱案では1個中隊強に留まるという。

 装輪装甲車(改)、試作予算は小松製作所に発注されることとなりましたが、防衛予算に記された装輪装甲車(改)のイメージ図はパトリアAMVを小型化したようなイメージ図を記していたのに対し、完成した車体は、防衛装備庁に記されたものは、無理に高い車高、車高を高くしないとIED爆風に耐えられないためですが、驚いたものです、これか、と。

 陸上自衛隊は即応機動連隊の16式機動戦闘車に伍して運用する車両を構想していまして、転覆限界などは側聞する程度ですが言われている以上に芳しくないものだったという、NBC偵察車の車高を無理に上げた、その分を下げた戦闘室が無理な配置となっていまして。しかも防御力は一定の角度で機関銃弾が貫徹するという結果となり、IEDにも脆弱性が。

 結果的に不採用となり、開発費返還を求められた小松製作所は、しかし一定の角度しか防御力を求められず仕様は満たしているために経営方針ではこれ以上防衛産業に関与することはできないとして、防衛産業から撤退を決定するのです。しかし、防衛省も安価ゆえに不採用とせずとも、用途を考えれば用いられる運用領域はかなりあったように思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】特急かもめ号885系電車とキハ220形気動車時代のシーサイドライナー

2022-09-23 14:19:46 | コラム
■長崎駅の特急かもめ号
 護衛艦もがみ建造進む長崎、COVID-19影響により最近行けていません。この長崎へは長崎新幹線計画が着々と進むようですが現在既に非常に高性能の特急が運行中だ。

 特急かもめ。JR九州885系特急電車です。この885系電車というのは2000年に運用開始となった、九州の風景に馴染んだ特急電車ですが、初めて旅行誌や鉄道誌において紹介された際は、ドイツの高速鉄道ICEを思わせる、優美で秀逸な形状に驚かされたものです。

 長崎駅に停車する特急かもめ。かもめ号は885系電車のほかに787系電車と若干古い783系電車が投入されているのですが、博多駅と長崎駅の区間を、具体的には始発は門司港駅と吉塚駅と博多駅あり、佐賀駅と肥前鹿島駅と長崎駅と、150kmの距離を結んでいます。

 885系特急電車は振り子式制御車輛で、急カーブが連続する九州の峻険な地形を高速で走り抜ける高性能を誇るのですが、乗ってみますと高性能もさることながら客室や供用区画に豪華な装飾と余裕の間取りがあり、客席もおさまりが良く、更に革張り座席に驚きました。

 日立製作所が製造する885系、営業最高速度は130km/hで設計最高速度は更に上という高性能車ですが、この先頭車の高性能を思わせる流線型車両がホームに到着しますと、仕事でも出張でも旅路に出るのだ、という気分の高揚がありまして、この特別感は特に大きい。

 シーサイドライナー、長崎へ行くとするならば神戸空港から旅客機か、山陽新幹線を博多駅で特急かもめ乗換、最近は九州新幹線で鳥栖から諫早駅方面へ乗り換えるという方式があります、この中で大村市の長崎空港を利用する空路の場合は、シーサイドライナーへ。

 キハ220形気動車。驚いたのですが、2020年3月にシーサイドライナーでの運用が終了しているそうです、長崎駅と佐世保駅を結ぶ快速列車でして、快速電車と紹介したいところなのですが実際は見た目の通り表記の通りディーゼルカーでして、高性能を思わせる。

 佐世保と長崎、その中間に大村駅がありまして、佐世保と云えば海軍の軍港都市、長崎と云えば造船工業都市、その二つをシーサイドライナーが結んでいます。とはいっても京阪神の普通列車と新快速電車程速度差はないのですが、クロスシートでゆったりしています。

 キハ66系気動車のシーサイドライナー、佐世保まで乗ってゆきましたらばもう暗くなっていた。2021年ではシーサイドライナーはキハ220形気動車が転出し、キハ66系気動車となっています。こちらの方が先に引退するかと思えば長生き、窓も開き楽しい車両です。

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ロシア軍予備役動員令30万招集,応召低調ならば大学軍事教練履修対象者へ拡大するか?ロシア世論反応をよむ

2022-09-23 07:00:21 | 国際・政治
■臨時情報-ロシア動員令
 ロシアからの国際便が予約できる範囲内で満席となっている状況を見ますとやはりまともな近代装備が枯渇した上で散々な用兵の前線で弾除けにはなりたくないのかと考えさせられる。

 ロシアでの部分動員令を受け、ロシア国内から出国を模索する動きが加速しています。部分動員令とは予備役30万名の動員となっています。ロシアは徴兵制を維持していますが、大学生の事実上の徴兵免除や代替民生奉仕活動など徴兵回避制度が整備されている為、徴兵適齢者の一割程度が応召している状況です。その対象者の出国が加速しているとのこと。

 旅客機による出国が加速している、これはインターネット分析企業などがロシア国内での航空券や出国方法などを検索する分析により判明していますが、ロシア国内の航空会社は18歳から65歳までのロシア国籍保持者の内男性についての受付を停止する動きがあり、日欧米のロシア直行便運航が経済制裁により停止する中、残る国際便に予約が殺到している。

 ロシア軍はBTG大隊戦術群という陸軍の戦術単位の陸軍全体で七割を今年二月にウクライナ国境に展開させ、侵攻しています。これは交代を考えずに短期決戦を目指して侵攻した構図です。ただ、首都キエフ攻略を目指した部隊は撤退しましたし、東部第二都市ハリコフを攻撃の部隊も撤退、故にこれらの部隊を転用していたのでしょうが、限界が来たのか。

 大学での軍事教練、プーチン大統領の部分動員令において不確定要素であるのはロシア軍の予備役は30万規模となっていますが、出国や負傷その他の要因から免除や応召拒否の可能性が残り、要するに予備役30万を招集する決定がそのまま30万の兵力増強に繋がらない可能性がある。一方でロシアの大学では軍事教練制度があり、徴兵を補完しています。

 予備役を対象とした今回の部分動員令が充分な人員を招集できないならば、大学での軍事教練経験者を事実上の軍務経験者と見做し、動員の対象とする可能性はあるのでしょうか。今回の動員は、国威発揚や国防意識向上ではなく兵員不足、ウクライナでの戦闘に対応する人員の枯渇が背景にあり補充兵人数確保が目的、教練経験者が招集される可能性は残る。

 世論の反応が問題です。これまでプーチン大統領及びロシア政府は、ウクライナ侵攻を戦争ではなく特別軍事作戦であるとし、職業軍人だけが参加するものとして国民に支持を訴えてきました、国民には日欧米豪州等の経済制裁が加えられますが、我慢していれば影響はない前提、今回の動員令は前提を崩したもの。世論支持が継続するのか、関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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