■ほんとうに欠陥装備だったか
陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退となりました装輪装甲車(改)について、改めて少し考えてみましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/97/2314494e138e6c204d0d97145c380cd1.jpg)
小松製作所が開発しました装輪装甲車(改)についてですが、今更ではありますが防御力の不足が原因という事での制式化見送りを再検討する必要があるのではないか、と。具体的には装甲車両には第一線での激烈な戦闘に展開する車両とは別に防御力が有る程度保持されているならば、装甲を有さないソフトスキン車よりも用途が広い、というものがある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/0e/954f11bfc86a9789b2e50e6d7c37d0be.jpg)
NBC偵察車。装輪装甲車(改)はこの全国に配備されています装甲車両を原型として開発されているのですが、NBC偵察車そのものが有用な装甲車両なのですね、車高が高いために転覆限界などの問題がありますが。装輪装甲車(改)はこの部分の車高を下げることで実用化されたものです、当初計画では即応機動連隊へ大量配備される計画だったのですが。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/fa/f2ea6bf21c9643882400cb726d16d921.jpg)
即応機動連隊。96式装輪装甲車が配備されていますが、96式装輪装甲車はもともと1990年代前半に全国の普通科連隊へ大量配備させる安価な装甲車両として構想されており、試作車28両のうち少なくない車両を重機関銃や無反動砲による試験に完全破壊されるまでに試験を通していまして、防御力は一定程度有しています、これは相応に良い車両でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/e3/56d2fade78631110da38d0ad5c065fd4.jpg)
96式装輪装甲車は、しかし設計当時に簡易爆発物IEDという脅威を念頭に置いていなかったという問題がありまして、いや日本は専守防衛なのだからIEDは仕掛ける側であってそこまで考慮する必要はないのではないか、とも思うのですが、2003年のイラク戦争ののちに自衛隊のイラク復興人道支援任務派遣を筆頭に日本は"行く側"となるのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/07/37a3bf6e41aaf24621bb974efd93794e.jpg)
三菱重工と小松製作所。装輪装甲車開発に際してはこの二社が名乗りを上げます、自衛隊の要求は96式装輪装甲車を上回る防御力とともに努めて車幅を道路運送車両法の一般車両にあたる2.5m以内に抑え、そして取得費用を可能な限り抑えること、です。細部は燃料や車体構造と定員などがありましたが、車幅というものが重要でした、国内運用するために。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/2d/c977990d45c1c524ac876964730bca5d.jpg)
小松製作所の車体は2.5m以下に抑えられていました、そして取得費用も1億8000万円に抑えられています、やすいというのは重要です、96式装輪装甲車は取得開始当時1億4500万円でした、90年代半ばにはオーストリアのパンドゥール装甲車やフィンランドのXA-180などが6000万円から8000万円程度でしたので高く見えたのですが、量産が進むと日本も。
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96式装輪装甲車は9600万円まで量産が進むとともに量産効果で安価となりまして、この頃にはストライカー装甲車が140万ドル、スイス製LAVシリーズが250万ドルとなりますので、もちろんこちらの方が車幅も広く防御力はたかいものなのですが、日本国内で普通に運用できて安価、という点は非常に重宝するものだったといえます、整備は複雑だが。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/35/0897f209900fe17cc8775672e2e61eed.jpg)
三菱重工は車幅を2.5m以内に抑えては十分な防御力を与えた場合、将来発展性に重大な限界が生じるという一種の確信があったのでしょう、そこで16式機動戦闘車の車体、これが車幅2.98mあるのですが、これを応用する案を提示しました。小松製作所が量産中のNBC偵察車派生型を提示したように、安価とするには既存車両を発展させるほかないのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/29/f1fe9f0e840c9b6b7891437e59e51c8c.jpg)
16式機動戦闘車派生案ですが、防衛省の書類選考を通ることは出来ませんでした。車幅2.98mというものはあったようにおもうのですが、もう一つ、三菱案は一両あたり2億5000万円を要するといいまして、三割近く安価です、年間50億円の装甲車予算があるとして小松案ならば2個中隊所要28両取得調達できますが三菱案では1個中隊強に留まるという。
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装輪装甲車(改)、試作予算は小松製作所に発注されることとなりましたが、防衛予算に記された装輪装甲車(改)のイメージ図はパトリアAMVを小型化したようなイメージ図を記していたのに対し、完成した車体は、防衛装備庁に記されたものは、無理に高い車高、車高を高くしないとIED爆風に耐えられないためですが、驚いたものです、これか、と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/c9/9f27e0d8b460b1447533c4fd28ea590a.jpg)
陸上自衛隊は即応機動連隊の16式機動戦闘車に伍して運用する車両を構想していまして、転覆限界などは側聞する程度ですが言われている以上に芳しくないものだったという、NBC偵察車の車高を無理に上げた、その分を下げた戦闘室が無理な配置となっていまして。しかも防御力は一定の角度で機関銃弾が貫徹するという結果となり、IEDにも脆弱性が。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/0e/4434838817aec0776826dd5bb0d13985.jpg)
結果的に不採用となり、開発費返還を求められた小松製作所は、しかし一定の角度しか防御力を求められず仕様は満たしているために経営方針ではこれ以上防衛産業に関与することはできないとして、防衛産業から撤退を決定するのです。しかし、防衛省も安価ゆえに不採用とせずとも、用途を考えれば用いられる運用領域はかなりあったように思うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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陸上自衛隊不採用と小松製作所防衛産業新規事業撤退となりました装輪装甲車(改)について、改めて少し考えてみましょう。
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小松製作所が開発しました装輪装甲車(改)についてですが、今更ではありますが防御力の不足が原因という事での制式化見送りを再検討する必要があるのではないか、と。具体的には装甲車両には第一線での激烈な戦闘に展開する車両とは別に防御力が有る程度保持されているならば、装甲を有さないソフトスキン車よりも用途が広い、というものがある。
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NBC偵察車。装輪装甲車(改)はこの全国に配備されています装甲車両を原型として開発されているのですが、NBC偵察車そのものが有用な装甲車両なのですね、車高が高いために転覆限界などの問題がありますが。装輪装甲車(改)はこの部分の車高を下げることで実用化されたものです、当初計画では即応機動連隊へ大量配備される計画だったのですが。
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即応機動連隊。96式装輪装甲車が配備されていますが、96式装輪装甲車はもともと1990年代前半に全国の普通科連隊へ大量配備させる安価な装甲車両として構想されており、試作車28両のうち少なくない車両を重機関銃や無反動砲による試験に完全破壊されるまでに試験を通していまして、防御力は一定程度有しています、これは相応に良い車両でした。
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96式装輪装甲車は、しかし設計当時に簡易爆発物IEDという脅威を念頭に置いていなかったという問題がありまして、いや日本は専守防衛なのだからIEDは仕掛ける側であってそこまで考慮する必要はないのではないか、とも思うのですが、2003年のイラク戦争ののちに自衛隊のイラク復興人道支援任務派遣を筆頭に日本は"行く側"となるのですね。
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三菱重工と小松製作所。装輪装甲車開発に際してはこの二社が名乗りを上げます、自衛隊の要求は96式装輪装甲車を上回る防御力とともに努めて車幅を道路運送車両法の一般車両にあたる2.5m以内に抑え、そして取得費用を可能な限り抑えること、です。細部は燃料や車体構造と定員などがありましたが、車幅というものが重要でした、国内運用するために。
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小松製作所の車体は2.5m以下に抑えられていました、そして取得費用も1億8000万円に抑えられています、やすいというのは重要です、96式装輪装甲車は取得開始当時1億4500万円でした、90年代半ばにはオーストリアのパンドゥール装甲車やフィンランドのXA-180などが6000万円から8000万円程度でしたので高く見えたのですが、量産が進むと日本も。
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96式装輪装甲車は9600万円まで量産が進むとともに量産効果で安価となりまして、この頃にはストライカー装甲車が140万ドル、スイス製LAVシリーズが250万ドルとなりますので、もちろんこちらの方が車幅も広く防御力はたかいものなのですが、日本国内で普通に運用できて安価、という点は非常に重宝するものだったといえます、整備は複雑だが。
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三菱重工は車幅を2.5m以内に抑えては十分な防御力を与えた場合、将来発展性に重大な限界が生じるという一種の確信があったのでしょう、そこで16式機動戦闘車の車体、これが車幅2.98mあるのですが、これを応用する案を提示しました。小松製作所が量産中のNBC偵察車派生型を提示したように、安価とするには既存車両を発展させるほかないのですね。
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16式機動戦闘車派生案ですが、防衛省の書類選考を通ることは出来ませんでした。車幅2.98mというものはあったようにおもうのですが、もう一つ、三菱案は一両あたり2億5000万円を要するといいまして、三割近く安価です、年間50億円の装甲車予算があるとして小松案ならば2個中隊所要28両取得調達できますが三菱案では1個中隊強に留まるという。
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装輪装甲車(改)、試作予算は小松製作所に発注されることとなりましたが、防衛予算に記された装輪装甲車(改)のイメージ図はパトリアAMVを小型化したようなイメージ図を記していたのに対し、完成した車体は、防衛装備庁に記されたものは、無理に高い車高、車高を高くしないとIED爆風に耐えられないためですが、驚いたものです、これか、と。
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陸上自衛隊は即応機動連隊の16式機動戦闘車に伍して運用する車両を構想していまして、転覆限界などは側聞する程度ですが言われている以上に芳しくないものだったという、NBC偵察車の車高を無理に上げた、その分を下げた戦闘室が無理な配置となっていまして。しかも防御力は一定の角度で機関銃弾が貫徹するという結果となり、IEDにも脆弱性が。
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結果的に不採用となり、開発費返還を求められた小松製作所は、しかし一定の角度しか防御力を求められず仕様は満たしているために経営方針ではこれ以上防衛産業に関与することはできないとして、防衛産業から撤退を決定するのです。しかし、防衛省も安価ゆえに不採用とせずとも、用途を考えれば用いられる運用領域はかなりあったように思うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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