北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【14】スクランブル!緊急発進は首都防空の訓練展示(2012-10-20)

2022-09-25 20:17:04 | 航空自衛隊 装備名鑑
■ファントムスクランブル
 百里基地第七航空団の任務は首都防空、スクランブルの緊急発進展示はそのまま日本御首都防空を再現する訓練展示でもあるのです。

 F-4戦闘機は歴史の中に去りましたが、航空家遺体はF-4戦闘機にASM-2空対艦ミサイル運用能力を付与し、対艦攻撃の一翼を担う事で戦闘機としての運用寿命を延伸しました、レーダーも換装していまして、もっとも換装したAPG-66は2000年代には旧式でしたが。

 戦闘機の支援戦闘機への運用変更は、F-86戦闘機がF-104戦闘機により置換えられた際に実施していました、もちろんF-86に対艦ミサイルを搭載する様な無茶な事はせず、500ポンド爆弾を搭載し反跳爆撃にて対艦攻撃を行うという、一寸難しい運用変更でしたけれど。

 ASM-2空対艦ミサイルは射程が150km程度と長く、F-4戦闘機自体は旧式であってもASM-2を敵艦隊より遠方から投射する運用ならば、生存性と戦果を両立できるものでした。もう一つ、レーダーを乾燥してドイツのF-4戦闘機の様にAMRAAMを運用できればとも。

 航空自衛隊のF-4戦闘機、しかし思った以上に運用が継続しまして、この写真を撮影した2012年から実に十年近く現役に在った事は驚きなのですが、仮に防衛出動の際にF-4はどういった運用を想定していたのかが関心事でした、しかも最後の任務は首都防空なのです。

 首都防空、ファントムは南西方面の緊張増大と共に、長らく配備されていた沖縄の那覇基地と、南九州の新田原基地を置換えるべく、首都防空に当っていましたこの第7航空団からイーグルを送り出しファントムを引き取る事としていました、2012年はこの過渡期です。

 東京急行という、ロシア軍ミサイル爆撃機が北海道北部から三陸海岸沖に沿って高速で南下し東京に接近する運用、これを迎撃するのが百里基地第7航空団の任務なのですが、爆撃機ならばファントムからのスパロー空対空ミサイルでも迎撃できるのかもしれません。

 スクランブル発進に際しては、確かにそうなのですが、しかし有事の際を考えますとロシア軍ミサイル爆撃機の任務は長射程の空対地ミサイル投射であり、平時の防空識別圏内進入は単に示威行為でしかありません、するとスパローに巡航ミサイルを迎撃できるのか。

 AAM-4空対空ミサイル、三菱電機が開発した国産の空対空ミサイルであれば射程も長いですしAMRAAM以上に巡航ミサイル迎撃を想定した設計で、何故ならば元々は空対空ミサイルに加え艦対空ミサイルとして護衛艦に搭載し対艦ミサイルを迎撃する計画でしたから。

 航空自衛隊はこれ程ファントムを長く運用するつもりだったのだろうか、逆に考えてしまうのはF-4戦闘機後継機選定が本格化したのが小泉内閣時代であったということです、つまり2002年、いまから20年も前の話であり、この北大路機関さえ出来る前の話なのです。

 次期戦闘機選定は、浜田防衛大臣、現職の浜田防衛大臣が前に防衛大臣を務めた時代に遡るものでして、この頃は浜田防衛大臣が当時、F-22戦闘機の導入を望む、こう発言していました通り、現在航空自衛隊に配備されているF-35ではなくF-22の導入を目指していた。

 F-22戦闘機は、しかし覚悟が必要、こう云われたほどに機密の塊であると共に恐らく日本でのライセンス生産は不可能という、高度な機密の戦闘機でした。ただ、当時開発が進められていたF-35戦闘機はJSF計画と呼ばれた段階、中々に使い難さが予想されたもの。

 JSF計画当時のF-35戦闘機はSが打撃を意味し、実質は戦闘攻撃機といいますか戦域優位獲得の為の多目的戦闘機が優位獲得の一環として空対空戦闘を行うという認識であり、専守防衛の日本としてはF-22戦闘機のほうが防空戦闘に適した機体とも考えられています。

 専守防衛、しかしこれは今の日本も含めてみないようにしているだけで、戦域優位に戦闘機が制空権だけを考える時代はとうの昔に終わり、結局は策源地攻撃や防空制圧はじめ、つまり専守防衛の範疇でも敵の攻撃与点を爆撃し無力化する必要があるという現実が。

 ファントムは、こうした議論の末に結局思ったよりも長く使ってしまった戦闘機、という印象が拭えないのですね。他方で、政治はもう少し例えば、用兵側である航空自衛隊が機種選定を完了できないならば三菱重工のF-2戦闘機の製造を延長する、というような。

 F-2には制空戦闘任務偏重の航空自衛隊には一部懐疑的な意見があるといい、しかしそれでもこうした柔軟な選択肢でF-4をF-2に切替える努力をしてほしかったのですが、石破防衛庁長官時代の決定が響いていたのです。ここで日本の前例踏襲主義が響いたのではとも。

 納税者に説明できないという石破防衛著長官の決定がそのまま覆されずに堅持されてしまいまして、当時は130機の生産計画を96機に縮小してしまいます、これが逆に思うのは、1950年代設計のファントムを2010年代以降も使う事が納税者への説明か、ともおもう。

 F-2戦闘機を予定通り130機生産し、ファントムの耐用年数に併せて先ず一個飛行隊を置換え、まだ後継機が選定出来ないようならばFSX計画の時点での141機まで生産を戻し、そして二個飛行隊を中期防衛力整備計画で整備する、こうした選択肢はあってよかった。

 RF-2戦術偵察機、こうした上でF-4後継機がF-35でもF/A-18E/FでもF-16Vでもストライクイーグルでもいいのですが、決定した後には増強したF-2戦闘機は逆にRF-4戦術偵察機の後継機と改修、改修といっても偵察ポッドを搭載するだけですが、使い道は幅広い。

 ファントムをここまで長く運用する前提がもしあったならば、EJ改への改修に重ねて再度レーダーを換装しAPG-2のようなF-2と同等のレーダーに置換えるか、若しくはF-2のレーダー換装を急ぎ、降ろしたF-2のレーダーをファントムに積む選択肢はあったのでは。

 F-2戦闘機はAAM-4運用能力付与が遅れ、セミアクティヴレーダー誘導方式のミサイルではAAM-4やAMRAAMのようなアクティヴレーダー誘導方式のミサイルよりも運用成約が大きくなってしまいましたが、F-2とF-4,同じレーダーを使っていれば話は変ります。

 能力向上改修は、機種ごとに開発費用が決まりますので、開発費用を機数で割るならば機種当たりの保有数が多い方が有利です、すると、F-2とF-4が同じレーダー系統を使っていたならば、一つの改修プログラムで二機種を改修できる事になるのですね、費用を抑えて。

 AAM-4やAMRAAMのようなアクティヴレーダー誘導方式のミサイル運用能力付与も、レーダーを統合するか機種を統合していたならば早められたのではないか、こう考えられるのです。しかし事情が在った、F-22の導入案の他に、防衛費を増やせないという事情が。

 北朝鮮ミサイル開発が加速すると共に2006年には核実験を実施した事でミサイル防衛の優先度が高まり、しかし財政再建により防衛費を増やせない事で日本の防衛予算は新任務を前に非常に逼迫し、後周しさせる装備計画が多くなりました、ここに甘えたようにおもう。

 ファントムは良い戦闘機なのですが2020年代に相応しい戦闘機なのかと問われますと、無人機母機やミサイル運搬機ならば兎も角、戦闘機として使いにはEJ改の性能では限界を超えていたように思う、予算が無いという言い訳とはいえ、政治は反省すべき命題でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】西九州新幹線開通!特急かもめ号は特急かささぎ号へ,九州旅客鉄道787系電車30年目の挑戦

2022-09-25 18:18:03 | コラム
■在りし日の長崎本線
 西九州新幹線開通という祝賀は同時に前の列車が歴史の彼方へ去るという転換期であったりもします。

 九州旅客鉄道787系電車、1992年に登場した列車で当時存在を知ったのは旅行会社のパンフレットでした、もちろんこんな先進的なデザインの特急は日本ではなかなか想像がつかなかったものですから、ヨーロッパ旅行でのフランスTGVを紹介したのかと思いましたね。

 かもめ。この三連休に運行を開始した西九州新幹線により新幹線列車名となりました特急かもめ、在りし日の姿です。もともとこの787系電車は1992年に西鹿児島と博多を結んだ特急つばめ運用に当る列車としてデビュー、つばめ、も今は九州新幹線の名称なのです。

 長崎本線へは1993年から運用開始となりましたが、1996年のダイヤ改正で883系が導入開始となったこともあり、一時的に長崎本線かもめ運用から撤退します、しかし逆に2000年からハウステンボスと博多を結ぶ特急ハウステンボスとして佐世保線大村線へ乗り入れ。

 かもめ運用には2001年から再開しまして、しかし九州新幹線の建設が進む中で九州の特急は、九州はビジネス特急と観光特急という二つの用途に合って観光特急のビジネス化というような、乗り心地と機能性を両立した車両が増えてゆきました、見た目も中々優美です。

 西九州新幹線の武雄温泉駅長崎駅間開業に伴い、リレーかもめ号が武雄温泉駅と博多駅を結ぶところとなりまして、少々乗換の手間が荷物が有る時は困りますのでチッキのようなサービスが欲しいと思いつつ、リレーかもめ運用は885系電車で統一されているとのこと。

 かささぎ、博多駅や小倉駅や門司港駅から肥前鹿島駅や佐賀駅を結ぶ新特急が9月23日から運行開始となりまして、わかさぎ、と聞き間違えたのですが新特急かささぎ、が787系での運行となっています。デビュー30周年の787系、まだまだ活躍の場は広そうですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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戦術核兵器使用の可能性-ロシア核兵器使用の条件を考える,示威行動か核実験か化学兵器など使用の懸念と共に

2022-09-25 07:01:20 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 即座に使用される可能性は低いが実戦投入される可能性を常に考慮し対策を考えなければならないのが、核兵器です。

 ロシア軍が仮に戦術核兵器を使用する場合は、どういった状況が考えられるか。21世紀に入り、冷戦時代の全面核戦争という安全保障上のリスクを度外視し国際関係や世界政治を展開している現状では、ならば実際に使われた場合はどうするのか、という問題領域を、あり得ない事態、単純に選択肢から省いてよいのか、こうした疑問が湧いてくるのです。

 大陸間弾道弾実射演習、劣化ウラン弾の大規模使用、ダーティボムの使用、ロシア領内での地下核実験、ロシア領内での大気圏内核実験、北極圏での大気圏内核実験、実のところ、いきなりウクライナ国内での戦術核兵器使用の前に、幾つかの段階を踏む可能性が高いのではないかと考えています。一方、戦術核兵器ではなく化学兵器を使用する可能性はある。

 ダーティボムの使用や化学兵器の使用、特に核廃棄物を充填したドラム缶などを爆薬により空中散布する手法、また、ウクライナ原子力施設を原子炉破壊させ放射性物質を拡散させるという選択肢は、ウクライナ軍に核防護装備無では行動できない地域を出現させ遅滞行動を行う、こうした戦術的な意義もあります。もう一つ考えられるのは核実験の実施だ。

 核実験を行い示威行動とする、ロシア軍は実際にウクライナへ戦術核兵器を使用した場合は国際的非難に曝されますが、ロシア国内において核実験を行い、次は戦場で使う、こうした示威を行う事は、北朝鮮核実験の様に批判が集まる事は避けられないが非戦闘員を核攻撃するよりは批判は薄いでしょう。また、実際に核兵器が作動するかを確認ができます。

 気象条件などではどのような状況が核兵器を使いやすいのか、例えば放射性物質がロシアではなく黒海方面へ拡散する気象条件か、逆に第三国へ放射性物質が拡散せぬよう西方乃至北方に風が吹いている状況で使われ得るのか、こうしたものを気象学的に検証する事で、どういった気象条件や時間帯が危険なのかを予め検討することも可能なのかもしれません。

 核防護装備のウクライナ供与、ロシア軍による戦術核兵器使用を拒否する為には、仮に使用した場合の経済制裁等を検討する事も重要ですが、同時にウクライナ軍へ核防護装備を供給し、万一使用された場合でも威力を局限できる事を強調する事が出来る体制構築も必要でしょう。意見は多々あるでしょうが、核兵器が使われる懸念を受け留め、その対策が必要と考えます。

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