北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ミサイル防衛専用艦,ひゅうが型設計応用案【3】ながと型護衛艦案と陸上配備型の再検証

2022-09-10 20:21:17 | 防衛・安全保障
■ながと型ミサイル護衛艦
 ひゅうが型護衛艦の設計を応用し護衛艦ながと型とする、伊勢型戦艦の次が長門型戦艦という部分に妙に重なるのですが。

 ながと型護衛艦、巨大な陸上配備イージスミサイル防衛システム用のSPY-7を政治的理由から陸上に配備できなくなったため、しかし既にSPY-7はアメリカへ発注しており、キャンセスした場合は数百億円が返還されないままとなるのを回避する為に無理に海上に陸上配備システムを搭載するという無理な案に、ひゅうが型護衛艦の船体を利用する提案です。

 戦艦長門、真珠湾攻撃の際には呉軍港に連合艦隊旗艦として停泊しており、太平洋戦争の激戦が続く中でもトラック諸島に展開し動かない動かさない戦艦となっていた、第三次ソロモン海海戦などに参加していれば相応の活躍が期待できたのに、という歴史がありますが、イージスアショア艦載型ならば、まさに動かない事が日本本土の守りとなる訳ですね。

 イージスアショア代替の護衛艦設計に巨大な護衛案ひゅうが型を提示する背景にはもう一つ居住性の視点があります。ブルーリッジの様に空母型船体の中央部に蔵部構造物を配置し、航空機用エレベータの位置にミサイルのVLSを搭載する、こうした場合でも護衛艦ひゅうが型の広大な格納庫容積は充分居住性の高い設計に転用するだけの余裕が残ります。

 乗員は努めて個室、個室が難しい場合でも二人部屋として一人が当直中にはプライバシーを確保できるよう配慮する必要がありますし、イージスシステムのSPYレーダーは強力故に甲板上に出る事が不可能となりますので、艦内の体育施設や入浴施設、供用施設という名の娯楽施設なども配慮すべきでしょう、ストレスと疲労は事故に繋がる、その為のもの。

 ひびき型音響観測艦、海上自衛隊に2隻が配備され、更に3番艦が建造されている双胴船型の観測艦などは、長期間の航海に対応するべく、ほぼ個室、という良好な居住環境を確保すると共に太陽光採光型の運動施設や供用区画に余裕を持たせ、艦上での温室や野菜栽培装置まで搭載し、長期間の観測任務に対応させています。人間が乗る原則を忘れず、に。

 もっとも、イージスミサイル防衛システムは海上自衛隊がアメリカ海軍とその草創期から研究を重ねた分野であるものを、陸上自衛隊という野戦防空では世界最高水準の能力を持つがイージスシステムとは別の技術を独自構築した集団へ押しつけ、実績に疑問あるSPY-7を採用してしまった状況が始発点、追い上げには負担の覚悟が相応に必要となります。

 イージスアショア。ただ、やはり検証しなければならないのは何故SPY-7を採用したかの不明瞭な選択肢です、富士通製端子が採用されている等相応の利点は強調されるのですが、日本のイージスシステム運用の実績がSPY-1とその発展型SPY-6に依拠する事を踏まえての決定であったのか、また陸上配備を行う前提でしたが、イージス艦が省かれた理由は。

 航空自衛隊がペトリオットPAC-3ミサイルを運用しており、弾道ミサイル防衛の一翼を担っていますが、陸上自衛隊にはこれを受け巡航ミサイル防衛という別の能力が求められ、野戦防空に加え新しい能力を整備してきました、此処に弾道ミサイル防衛だ。いわば甲子園を目指し府下有数の野球部に明日からラグビーをやれと命じられ今度はサッカーだ、と。

 イージスアショアの問題は迎撃ミサイルのブースターが自衛隊施設外に落下するという、切り離したブースターの制御技術が確立しない為と云いますが、スタンダードミサイルを搭載するMk41VLS垂直発射装置は車載型が既に開発されており、ミサイルを別の場所から発射する事も可能です、こうした事情を加味せず海上に置くのは、全く納得できません。

 SPYレーダー、イージスアショアはブースター問題に終始していますが、逆にSPYレーダーから照射される強烈な電磁波の問題、動く艦艇同士での海上運用では問題は指摘されませんが数千km先を警戒するレーダー電波を常時持続的に照射された場合の周辺住民の影響などは解決されているのか、防衛装備庁が試験を行ったという話も、聞かないのですね。

 イージスアショアは動かない分、巡航ミサイル攻撃を受けやすく、また陸上自衛隊の装備体系とも異なり、12式地対艦ミサイルシステムや改良型の開発が続く03式中距離地対空誘導弾システム等の装備体系と一部重複する為、四半世紀単位で装備体系再構築に進む懸念もありました、ただ、数を装備し各方面隊に一基を配備できれば本土防衛に資するとも。

 利点も欠点も数多いですが、此処まで検討して導入を決定したのか、そもそも費用算出が既存イージス艦から機関部と航行装置や船体費用を省いた費用が競合するTHAADよりも安価という丼勘定で選定され、安価が利点でしたが実際に算出するとTHAADよりも高価、更に海上配備で高価としようとしている。何れこの決定妥当性も検証せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都,鎌倉時代からの千本釈迦堂隣で頂くトマトソースのパスタ

2022-09-10 14:17:44 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 舞鶴総監部の置かれる京都府、鎌倉時代に源頼朝は初めて塩鮭を口にし余り物美味しさに涙したといいますが、その鎌倉時代からの建物の残る京都市は街中の古刹千本釈迦堂の隣には凄く美味しいお店がある。

 昔は人の多い所が敢えて嫌いではなかったのですけれども、今の時代は、特にCOVID-19の時代に入りますと感染対策というもののほうを優先してしまいまして、何と言いますか気分よく一杯、という昔の日常が相当遠くなってしまったようで、上陸ビールさえ遠い。

 千本釈迦堂の直ぐ西側、個人的には此処は穴場だと思っているのですがちょっとお気に入りのイタリアンなお店があります、Vertigo,ヴァーティゴなんて戦闘機の空間失調のようで緊張してしまいますが落ち着いた店内とオープン席もありまして、気持ちが良いのです。

 海老とベーコンとナスとトマトのパスタ。もう少し違う名前だったかもしれませんが。京都らしいといいますか、長ほそい店内の奥には混雑と無縁の空間が広がっていまして、そして高い天井のその上へパスタの香りと共に空調利く室内へ湯気が上がってゆくのが分る。

 紅色のパスタが白い大きなお皿の上で主張しているのが良く分かるのだ。トマトソースのパスタにナスは水分がほどよく流れ出まして滑り込むように頂ける、酸味とともに茄子の皮かなと思うとぷりぷりした海老であったりで、噛み応えと広がる素材の味を愉しめる。

 トマトソース、パスタにもいろいろあるのですがクリーム系よりも個人的に好きなのです、くどさがない、ということなのかもしれませんが先日この好みに対してなんで、と聞かれた際に応えられなかった、ああ、トマトでも、トマトクリームは苦手かもしれません。

 アイスティとともにパスタのオリーブオイルの気分をさっぱりと洗い流す。珈琲も選べるのですが、どちらがすきかというとこればかりは気分なのですよね。これがグラッパだったりするとVertigo,ヴァーティゴで空間失調になるのかもしれませんけれどもね。

 Vertigo、上京区東柳町の、千本釈迦堂の細い入口から西に30mほど行った場所にあります、古民家風といいますか風景に溶け込んでいるけれども大きなガラスが入り口から店内の様子を見せてくれる開放感のあるお店です。ちょっとしたお散歩の際に、寄りたいお店です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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エリザベス女王崩御とチャールズ三世国王即位,世界に広がる緩やかな共同体-英連邦"コモンウェルス"の将来

2022-09-10 07:00:32 | 国際・政治
■一つの時代とともに
 一つの時代が終わった、もちろん日本から見れば友好国の君主という点なのですが70年の治世を次代に継承するという事は世界に少なからず影響があります。

 エリザベス二世女王陛下の崩御。女王陛下という尊称に慣れたイギリスは勿論、日本も含め国王陛下という言葉に慣れるには時間を要する事かもしれませんが、女王陛下はもともと日の沈まぬ大国と称された大英帝国からコモンウェルスという現代的な英連邦という繋がりに転換させるとともに、実のところ、この緩やかな連合体の維持に尽力されました。

 コモンウェルスという現代的な英連邦、これは緩やかな価値観の共同体となっています。イギリス国家元首との同君連合にはカナダやオーストラリアなど多くの国々が参加していますが、英連邦、正確には1949年にイギリスの国名は省かれており、さりとて共和制というコモンウェルスの訳語も意味が幅広く、次の訳語を考えるべきですが、意味は多きい。

 コモンウェルスは元々戦前のブロック経済を志向した組織ではありましたが、帝国特恵関税制度は戦時中に破綻しており、同君連合とも別の、元々は経済共同体でありながら高等弁務官を派遣し首脳会談も実施、人権擁護や経済上の障害等に対する寄り合い所帯的な、緩やかである為に権利も義務も乏しいが結ばれているという制度となっているものです。

 エリザベス二世女王は、この維持に尽力されました。勿論緩やかであり出入り自由である為にマレーシアやシンガポールも加入出来ていますが、ソロモン諸島始め権威主義的制度への移行には関与しませんし、過去にアメリカがグレナダ侵攻に踏切った際に英連邦に加盟し君主にエリザベス女王を冠していても、イギリス軍はグレナダを支援できなかった。

 緩やかな共同体、帝国特恵関税制度廃止後は貧乏人の寄り合い所帯と揶揄されるも不当な対外債務や外交的孤立に際しては高等弁務官の助言は大きな意味がありました、が、それ以上にコモンウェルスの意味は、インド始め人口の多い56か国が参加し、世界人口の三分の一が参加する、国連に次いで巨大な共同体が維持されている事には、存在こそ意味が。

 チャールズ三世国王も、コモンウェルス維持に尽力することでしょう。勿論日本にできる事は見守る事でしか無く、それ以上の事は有得ないのですが、こうした価値観の共同体が存在することは、緩やかであっても意味があるものです。ただ、緩やか過ぎる故に存在意義を加入国の国民に問われる事もあり、どのように推移するのかは、大きな関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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