北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ブラジル原潜IAEA核燃料問題とドイツ潜水艦業界,オーストラリアフランス潜水艦問題の和解

2022-09-06 20:11:34 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は潜水艦特集です、ブラジルの原子力潜水艦構想はオーストラリアの将来原潜構想にも影響を与えるような課題への試金石となるか。

 ブラジル政府は原子力潜水艦建造に関する核物質管理方法についてIAEA国際原子力機関との間で協議を開始した。NPT核不拡散条約下では1967年までに公然と核武装を行った核兵器国以外の批准国は核物質の移動に厳格な規制を受ける事となる、この為、核燃料を必要とする潜水艦は移動する核物質の輸送手段という想定外の扱いとならざるを得ない。

 IAEAは核兵器国以外の原子力施設を定期査察する権限を有しているが、核拡散防止条約批准国で核兵器国以外に原潜を保有する国は無い。インドはアリハント級原潜の建造を進めているが、インドは独自核開発として1974年に核実験を実施した後に核兵器を放棄したが再度1998年以降継続して核兵意を保有、この関係から核拡散防止条約に批准していない。

 ブラジル海軍は初の攻撃型原潜アルバロアルベルトの建造計画を進めている、既に2021年からはフランス企業の支援を受け設計作業が開始されフランスのスコルペヌ級の技術が応用される見通しという、PWR加圧水型原子炉を採用し、水中排水量は6000t前後で全長は100m、計画では最高速力を25ノットとしていて、早ければ2032年にも就役させる計画だ。
■ドイツ潜水艦業界
 潜水艦業界の再編といいますか建造能力の増強はどのように市場を確保してゆくのでしょうか。

 ドイツの潜水艦メーカーであるティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を傘下に置く事となりました。MVベルフテンはドイツ北部のウィスマルにある造船所で、客船建造などを手掛けてきましたが2022年1月、COVID-19新型コロナウィルス感染症の世界的感染拡大による旅客船需要低下の煽りを受け経営破たんに陥っていました。

 MVベルフテンは2021年にも1億9300万ユーロの緊急融資を受け事業継続を模索していましたが、クルーズ船運行会社香港ゲンティングループが発注した世界最大規模の客船建造が資金繰りに難渋し、ドイツ政府による救済措置も見送られ破綻する事となっています。この経営再建にティッセンクルップマリンシステムズが手を伸ばしたという構図です。

 ティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を潜水艦造船所として再建する構想で、地元経済紙などによれば潜水艦造船所に転換した場合、800名の新規雇用が2024年までに創出、造船部門と管理部門を加えた場合は1500名の雇用に繋がるとのこと。またこれはティッセンクルップマリンシステムズの潜水艦造船能力強化も意味します。
■豪仏潜水艦問題和解へ
 そうりゅう型潜水艦を選んでいれば迷っているうちに一番艦二番艦と就役していたのでしょうね。

 オーストラリアのアルバニージー新首相は潜水艦問題でナーバルグループと和解しました。これはスコットモリソン前首相時代、フランスからのアタック級潜水艦導入計画を進めていた最中にオーストラリアが計画の一方的破棄を発表し、新たにアメリカとイギリスの協力を受け原子力潜水艦を導入すると発表、突然の破棄に損害賠償が要求されたもの。

 5億5500万ユーロ、6月11日に発表された和解金はドル換算で5億8358万ドルとなりました。アタック級潜水艦はフランス海軍の新型原子力潜水艦を、オーストラリアが求める非核ドクトリンと豪州大陸周辺と云う長大な警戒範囲に対応するべく大型通常動力潜水艦へ再設計するというもので、無理な要求を前に設計は難航、突然の中止決定となりました。

 アルバニージー首相は、フランスとの関係を重視し、インド太平洋地域におけるフランスの役割と積極的な関与の重要性という視点から和解へ進めた、としています。これにより豪仏関係はモリソン政権時代の、首脳会談を打診するもフランスに断られる、という状況から、アルバニージー首相のパリ訪問が現実的となるなど関係良好の兆しが見えています。
■攻撃型原潜モンタナ
 ヴァージニア級ももう21番艦ですが一向に新型が開発されず改良型というものも不思議な印象です。

 アメリカ海軍はヴァージニア級攻撃型原潜モンタナを受領しました、6月25日にノーフォークにて行われた竣工式ではエリックKレイヴン海軍次官が出席、モンタナはヴァージニア級攻撃型原潜全体では21番艦となりますが、blockⅣの3番艦にあたり、民生技術を大幅に取り入れる事で性能を維持しつつ、建造費を抑えた設計が特色となっています。

 モンタナとともにblockⅣはバーモントとオレゴンが就役、ハイマンGリッコーバーとニュージャージー、アイオワ、マサチューセッツ、アイダホ、アーカンソー、ユタが建造中となっています。大半が州の名となっていますが、アイオワやニュージャージーなど、先代は戦艦の艦名であり従来は戦略ミサイル原潜の艦名に充てられていた地名でした。

 ヴァージニア級攻撃型原潜は続くblockⅤの建造が決定しており、blockⅤからは船体を延長しVPTヴァージニアペイロードモジュールというトマホークなどを搭載する垂直発射管を搭載、これにより船体前部の垂直発射装置と併せ、トマホーク巡航ミサイル40発の搭載が可能、巡航ミサイル潜水艦といい得るものです。VPTはblockⅣ後期艦にも搭載されます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G3X撮影速報】KC-46A空中給油輸送機が小牧基地展開-美保基地に迫る台風11号からの退避(2022-09-05)

2022-09-06 07:01:19 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■KC-46A空中給油輸送機
 台風対策の肝要はいち早い危険な地域からの避難なのですが自衛隊の航空機もその例外ではない。

 KC-46A空中給油輸送機が、小牧基地に展開しました。KC-46Aは美保基地の航空機であり、これは現在九州と山陰地方に接近している台風11号からの退避と考えられます。美保基地は鳥取県米子市、第3輸送航空隊に所属している自衛隊最新鋭の空中給油輸送機です。

 第3輸送航空隊はC-2輸送機を運用する第403飛行隊とKC-46A空中給油輸送機を運用する第405飛行隊から成ります。KC-46Aは2021年10月19日に初号機を配備し今回撮影した2号機は2022年2月24日に配備されたという最新型、北大路機関も初めて撮影した。

 烏天狗を部隊マークとしていますKC-46A、第405飛行隊には現在2機が配備されていますが、2024年度内に6機体制となり、美保基地は第403飛行隊のC-2輸送機とともに巨大な空輸能力を整備する事となります、海外派遣といえば小牧、という時代も転換するやも。

 KC-767空中給油輸送機、こちらは小牧基地第404飛行隊の機体です。そもそもKC-46A空中給油輸送機はアメリカ空軍がKC-135空中給油機の後継機を選定した際に、KC-767を推す声とエアバス製輸送機を推す声があり、紆余曲折の後に767となった経緯が、ある。

 台風11号からの退避というかたちになりましたKC-46Aの小牧展開は期せずしてKC-767とKC-46Aの並び、という構図を実現させる事となりました、KC-46Aが全長50.5mでKC-767は全長48.5mと若干大きく、機体自衛装置等も違うのですが、色の違いが際立つ。

 小牧基地、台風が接近しますと艦艇が台風避泊を行い岸壁と衝突する危険から回避するように、航空部隊も格納庫などの状況から別の基地へ退避する事があるのですがKC-46A空中給油輸送機は昨年配備開始となったばかりの最新鋭装備、見る事が出来、幸いでしたね。

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