■特報:世界の防衛,最新論点
今回は潜水艦特集です、ブラジルの原子力潜水艦構想はオーストラリアの将来原潜構想にも影響を与えるような課題への試金石となるか。
ブラジル政府は原子力潜水艦建造に関する核物質管理方法についてIAEA国際原子力機関との間で協議を開始した。NPT核不拡散条約下では1967年までに公然と核武装を行った核兵器国以外の批准国は核物質の移動に厳格な規制を受ける事となる、この為、核燃料を必要とする潜水艦は移動する核物質の輸送手段という想定外の扱いとならざるを得ない。
IAEAは核兵器国以外の原子力施設を定期査察する権限を有しているが、核拡散防止条約批准国で核兵器国以外に原潜を保有する国は無い。インドはアリハント級原潜の建造を進めているが、インドは独自核開発として1974年に核実験を実施した後に核兵器を放棄したが再度1998年以降継続して核兵意を保有、この関係から核拡散防止条約に批准していない。
ブラジル海軍は初の攻撃型原潜アルバロアルベルトの建造計画を進めている、既に2021年からはフランス企業の支援を受け設計作業が開始されフランスのスコルペヌ級の技術が応用される見通しという、PWR加圧水型原子炉を採用し、水中排水量は6000t前後で全長は100m、計画では最高速力を25ノットとしていて、早ければ2032年にも就役させる計画だ。
■ドイツ潜水艦業界
潜水艦業界の再編といいますか建造能力の増強はどのように市場を確保してゆくのでしょうか。
ドイツの潜水艦メーカーであるティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を傘下に置く事となりました。MVベルフテンはドイツ北部のウィスマルにある造船所で、客船建造などを手掛けてきましたが2022年1月、COVID-19新型コロナウィルス感染症の世界的感染拡大による旅客船需要低下の煽りを受け経営破たんに陥っていました。
MVベルフテンは2021年にも1億9300万ユーロの緊急融資を受け事業継続を模索していましたが、クルーズ船運行会社香港ゲンティングループが発注した世界最大規模の客船建造が資金繰りに難渋し、ドイツ政府による救済措置も見送られ破綻する事となっています。この経営再建にティッセンクルップマリンシステムズが手を伸ばしたという構図です。
ティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を潜水艦造船所として再建する構想で、地元経済紙などによれば潜水艦造船所に転換した場合、800名の新規雇用が2024年までに創出、造船部門と管理部門を加えた場合は1500名の雇用に繋がるとのこと。またこれはティッセンクルップマリンシステムズの潜水艦造船能力強化も意味します。
■豪仏潜水艦問題和解へ
そうりゅう型潜水艦を選んでいれば迷っているうちに一番艦二番艦と就役していたのでしょうね。
オーストラリアのアルバニージー新首相は潜水艦問題でナーバルグループと和解しました。これはスコットモリソン前首相時代、フランスからのアタック級潜水艦導入計画を進めていた最中にオーストラリアが計画の一方的破棄を発表し、新たにアメリカとイギリスの協力を受け原子力潜水艦を導入すると発表、突然の破棄に損害賠償が要求されたもの。
5億5500万ユーロ、6月11日に発表された和解金はドル換算で5億8358万ドルとなりました。アタック級潜水艦はフランス海軍の新型原子力潜水艦を、オーストラリアが求める非核ドクトリンと豪州大陸周辺と云う長大な警戒範囲に対応するべく大型通常動力潜水艦へ再設計するというもので、無理な要求を前に設計は難航、突然の中止決定となりました。
アルバニージー首相は、フランスとの関係を重視し、インド太平洋地域におけるフランスの役割と積極的な関与の重要性という視点から和解へ進めた、としています。これにより豪仏関係はモリソン政権時代の、首脳会談を打診するもフランスに断られる、という状況から、アルバニージー首相のパリ訪問が現実的となるなど関係良好の兆しが見えています。
■攻撃型原潜モンタナ
ヴァージニア級ももう21番艦ですが一向に新型が開発されず改良型というものも不思議な印象です。
アメリカ海軍はヴァージニア級攻撃型原潜モンタナを受領しました、6月25日にノーフォークにて行われた竣工式ではエリックKレイヴン海軍次官が出席、モンタナはヴァージニア級攻撃型原潜全体では21番艦となりますが、blockⅣの3番艦にあたり、民生技術を大幅に取り入れる事で性能を維持しつつ、建造費を抑えた設計が特色となっています。
モンタナとともにblockⅣはバーモントとオレゴンが就役、ハイマンGリッコーバーとニュージャージー、アイオワ、マサチューセッツ、アイダホ、アーカンソー、ユタが建造中となっています。大半が州の名となっていますが、アイオワやニュージャージーなど、先代は戦艦の艦名であり従来は戦略ミサイル原潜の艦名に充てられていた地名でした。
ヴァージニア級攻撃型原潜は続くblockⅤの建造が決定しており、blockⅤからは船体を延長しVPTヴァージニアペイロードモジュールというトマホークなどを搭載する垂直発射管を搭載、これにより船体前部の垂直発射装置と併せ、トマホーク巡航ミサイル40発の搭載が可能、巡航ミサイル潜水艦といい得るものです。VPTはblockⅣ後期艦にも搭載されます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は潜水艦特集です、ブラジルの原子力潜水艦構想はオーストラリアの将来原潜構想にも影響を与えるような課題への試金石となるか。
ブラジル政府は原子力潜水艦建造に関する核物質管理方法についてIAEA国際原子力機関との間で協議を開始した。NPT核不拡散条約下では1967年までに公然と核武装を行った核兵器国以外の批准国は核物質の移動に厳格な規制を受ける事となる、この為、核燃料を必要とする潜水艦は移動する核物質の輸送手段という想定外の扱いとならざるを得ない。
IAEAは核兵器国以外の原子力施設を定期査察する権限を有しているが、核拡散防止条約批准国で核兵器国以外に原潜を保有する国は無い。インドはアリハント級原潜の建造を進めているが、インドは独自核開発として1974年に核実験を実施した後に核兵器を放棄したが再度1998年以降継続して核兵意を保有、この関係から核拡散防止条約に批准していない。
ブラジル海軍は初の攻撃型原潜アルバロアルベルトの建造計画を進めている、既に2021年からはフランス企業の支援を受け設計作業が開始されフランスのスコルペヌ級の技術が応用される見通しという、PWR加圧水型原子炉を採用し、水中排水量は6000t前後で全長は100m、計画では最高速力を25ノットとしていて、早ければ2032年にも就役させる計画だ。
■ドイツ潜水艦業界
潜水艦業界の再編といいますか建造能力の増強はどのように市場を確保してゆくのでしょうか。
ドイツの潜水艦メーカーであるティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を傘下に置く事となりました。MVベルフテンはドイツ北部のウィスマルにある造船所で、客船建造などを手掛けてきましたが2022年1月、COVID-19新型コロナウィルス感染症の世界的感染拡大による旅客船需要低下の煽りを受け経営破たんに陥っていました。
MVベルフテンは2021年にも1億9300万ユーロの緊急融資を受け事業継続を模索していましたが、クルーズ船運行会社香港ゲンティングループが発注した世界最大規模の客船建造が資金繰りに難渋し、ドイツ政府による救済措置も見送られ破綻する事となっています。この経営再建にティッセンクルップマリンシステムズが手を伸ばしたという構図です。
ティッセンクルップマリンシステムズはMVベルフテン造船所を潜水艦造船所として再建する構想で、地元経済紙などによれば潜水艦造船所に転換した場合、800名の新規雇用が2024年までに創出、造船部門と管理部門を加えた場合は1500名の雇用に繋がるとのこと。またこれはティッセンクルップマリンシステムズの潜水艦造船能力強化も意味します。
■豪仏潜水艦問題和解へ
そうりゅう型潜水艦を選んでいれば迷っているうちに一番艦二番艦と就役していたのでしょうね。
オーストラリアのアルバニージー新首相は潜水艦問題でナーバルグループと和解しました。これはスコットモリソン前首相時代、フランスからのアタック級潜水艦導入計画を進めていた最中にオーストラリアが計画の一方的破棄を発表し、新たにアメリカとイギリスの協力を受け原子力潜水艦を導入すると発表、突然の破棄に損害賠償が要求されたもの。
5億5500万ユーロ、6月11日に発表された和解金はドル換算で5億8358万ドルとなりました。アタック級潜水艦はフランス海軍の新型原子力潜水艦を、オーストラリアが求める非核ドクトリンと豪州大陸周辺と云う長大な警戒範囲に対応するべく大型通常動力潜水艦へ再設計するというもので、無理な要求を前に設計は難航、突然の中止決定となりました。
アルバニージー首相は、フランスとの関係を重視し、インド太平洋地域におけるフランスの役割と積極的な関与の重要性という視点から和解へ進めた、としています。これにより豪仏関係はモリソン政権時代の、首脳会談を打診するもフランスに断られる、という状況から、アルバニージー首相のパリ訪問が現実的となるなど関係良好の兆しが見えています。
■攻撃型原潜モンタナ
ヴァージニア級ももう21番艦ですが一向に新型が開発されず改良型というものも不思議な印象です。
アメリカ海軍はヴァージニア級攻撃型原潜モンタナを受領しました、6月25日にノーフォークにて行われた竣工式ではエリックKレイヴン海軍次官が出席、モンタナはヴァージニア級攻撃型原潜全体では21番艦となりますが、blockⅣの3番艦にあたり、民生技術を大幅に取り入れる事で性能を維持しつつ、建造費を抑えた設計が特色となっています。
モンタナとともにblockⅣはバーモントとオレゴンが就役、ハイマンGリッコーバーとニュージャージー、アイオワ、マサチューセッツ、アイダホ、アーカンソー、ユタが建造中となっています。大半が州の名となっていますが、アイオワやニュージャージーなど、先代は戦艦の艦名であり従来は戦略ミサイル原潜の艦名に充てられていた地名でした。
ヴァージニア級攻撃型原潜は続くblockⅤの建造が決定しており、blockⅤからは船体を延長しVPTヴァージニアペイロードモジュールというトマホークなどを搭載する垂直発射管を搭載、これにより船体前部の垂直発射装置と併せ、トマホーク巡航ミサイル40発の搭載が可能、巡航ミサイル潜水艦といい得るものです。VPTはblockⅣ後期艦にも搭載されます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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