ウクライナはロシアを許すか
ゼレンスキーウクライナ大統領は5月にブチャでの自国民虐殺事件を受け2014年のクリミア併合後占領が続くクリミア半島を含めた領土奪還姿勢を堅持しています。
セバストポリのロシア軍基地は維持できるのか。これは少々気が早い話なのかもしれませんが、仮に今後ウクライナ軍が東部地域と南部地域に続いて、クリミア半島奪還を開始した場合、ソ連時代からロシア連邦時代まで一貫して維持している黒海艦隊の拠点、クリミア半島南部のセバストポリ軍港をロシア軍基地として維持できるのかは、問題となります。
黒海艦隊の任務は黒海にNATO海軍の進出を抑止し、潜水艦などからの巡航ミサイル攻撃からロシア本土、特にモスクワを防衛する事に在ります。現代、というよりも冷戦時代から冷静に装備を考えるならばモスクワを南方から攻撃する手段は既にあるのですが、黒海艦隊が南からの攻撃への抑止力になる、という概念は既に防衛の基盤となっているのです。
クリミア半島南部のセバストポリ、人口は42万名でセバストポリ市の面積は864平方キロメートル、このセバストポリの半島に占める面積なのですが、クリミア半島は面積として2万6844平方キロメートルですので、もともと大半がウクライナ領土であったのですが、ここを2014年にロシア軍が侵攻し奪取、ロシア式の統治や治安維持態勢が惹かれている。
ウクライナの領土奪還への強い意志は、もともとキエフ北方のブチャで確認されたロシア占領軍による虐殺行為、この表現には議論の余地があるようですが、避難する民間人の車に戦車砲を撃ちこんだ、商店に押し入り逃げる民間人を射殺、こうした監視カメラ映像が確認、後ろから撃たれた集団埋葬地などが奪還後に発見されると、こう云わざるを得ない。
イジューム、上記のブチャはロシア軍占領が一ヶ月程度でしたが、今週ウクライナ軍が奪還したハリコフ州のイジュームでも残虐行為が確認されており、同市の市議によれば人口4万0200名規模の街ではあるのですが、1000名程が死亡したという、今後確認が必要な証言もあり、ブチャ以上の残虐行為が確認されたならば、ウクライナ世論は硬化しましょう。
クリミア半島での占領は8年間に及び、もちろんロシア側の主張では住民投票を行いロシア側への統合を希望していたとの主張はあるのですが、選挙の正当性、なにしろ日本の様な適正な選挙を行わない国は存在しますので、適法なデモ行為やWebでの政治的発言一つで逮捕される国があり、クリミア半島の住民がウクライナ本土ほど自由でない事は確かだ。
ヘルソン州でのウクライナ軍反撃は進展しているとの報道が大勢を占めています、もともとヘルソン州でのウクライナ軍反撃はロシア軍をハリコフ州から引き離すための陽動と考えられていて、ウクライナ当局者もこれを認める話が出されているのですが、陽動であっても、ロシア軍の占領部隊が戦闘能力が低く南へ、つまりクリミア半島方向へ進んでいる。
セバストポリについて考えられるのは二つ、クリミア半島をウクライナ軍は奪還するが元々ロシアの街であったセバストポリをウクライナ領土クリミア半島からは切り離して考える、という可能性が一つ。もう一つは、勢いに乗ってセバストポリまで占領しロシアに思い知らせるという、いわばウクライナ侵攻への報復的な行動が執られるということ。
クリミア大橋の維持が認められるのかも問題です。2014年のクリミア併合と共にロシアは2018年にクリミア大橋という、クリミア半島と大陸側のロシアロストフ州のタマン半島を結ぶ18kmの鉄橋を開通させています、クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋梁ですが、セバストポリは菱形のクリミア半島南部にあり、道路の大半はウクライナ領を通行している。
ゼレンスキー大統領の出口戦略がどのように考えられているかは未知数ですが、一つはセバストポリの維持を認めた上でクリミア半島を奪還する、つまり2014年以前の状態へ回復させる事です。これならばロシアを刺激しないがウクライナ住民の人権をウクライナの制度に戻す事が出来る、将来再度の侵攻の懸念を残すが決定的な対立は避けられるといえる。
セバストポリを含めて占領するとなりますと、ロシア側の停戦交渉における交渉余地がなくなる可能性が高くなります、何故ならば黒海にはロシア本土のクラスノダールにも基地はありますが小規模であり、またセバストポリには造船所があるため、ここを失陥すると黒海艦隊は再建さえ出来なくなる、こうした事情から戦争が全面戦争に拡大する可能性が。
ウクライナ世論を考えますと強硬論が出てくる可能性があります、それはロシア軍によるインフラ破壊が大き過ぎ、非戦闘員の被害も看過できなかったものがあるためです。ただ、こうした出口戦略とは、これは軍事用語では“政治の季節”という段階であり、今はそこまで考える余地は無い、まだまだ戦闘の趨勢が全般を決める段階ともいえるのですが、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ゼレンスキーウクライナ大統領は5月にブチャでの自国民虐殺事件を受け2014年のクリミア併合後占領が続くクリミア半島を含めた領土奪還姿勢を堅持しています。
セバストポリのロシア軍基地は維持できるのか。これは少々気が早い話なのかもしれませんが、仮に今後ウクライナ軍が東部地域と南部地域に続いて、クリミア半島奪還を開始した場合、ソ連時代からロシア連邦時代まで一貫して維持している黒海艦隊の拠点、クリミア半島南部のセバストポリ軍港をロシア軍基地として維持できるのかは、問題となります。
黒海艦隊の任務は黒海にNATO海軍の進出を抑止し、潜水艦などからの巡航ミサイル攻撃からロシア本土、特にモスクワを防衛する事に在ります。現代、というよりも冷戦時代から冷静に装備を考えるならばモスクワを南方から攻撃する手段は既にあるのですが、黒海艦隊が南からの攻撃への抑止力になる、という概念は既に防衛の基盤となっているのです。
クリミア半島南部のセバストポリ、人口は42万名でセバストポリ市の面積は864平方キロメートル、このセバストポリの半島に占める面積なのですが、クリミア半島は面積として2万6844平方キロメートルですので、もともと大半がウクライナ領土であったのですが、ここを2014年にロシア軍が侵攻し奪取、ロシア式の統治や治安維持態勢が惹かれている。
ウクライナの領土奪還への強い意志は、もともとキエフ北方のブチャで確認されたロシア占領軍による虐殺行為、この表現には議論の余地があるようですが、避難する民間人の車に戦車砲を撃ちこんだ、商店に押し入り逃げる民間人を射殺、こうした監視カメラ映像が確認、後ろから撃たれた集団埋葬地などが奪還後に発見されると、こう云わざるを得ない。
イジューム、上記のブチャはロシア軍占領が一ヶ月程度でしたが、今週ウクライナ軍が奪還したハリコフ州のイジュームでも残虐行為が確認されており、同市の市議によれば人口4万0200名規模の街ではあるのですが、1000名程が死亡したという、今後確認が必要な証言もあり、ブチャ以上の残虐行為が確認されたならば、ウクライナ世論は硬化しましょう。
クリミア半島での占領は8年間に及び、もちろんロシア側の主張では住民投票を行いロシア側への統合を希望していたとの主張はあるのですが、選挙の正当性、なにしろ日本の様な適正な選挙を行わない国は存在しますので、適法なデモ行為やWebでの政治的発言一つで逮捕される国があり、クリミア半島の住民がウクライナ本土ほど自由でない事は確かだ。
ヘルソン州でのウクライナ軍反撃は進展しているとの報道が大勢を占めています、もともとヘルソン州でのウクライナ軍反撃はロシア軍をハリコフ州から引き離すための陽動と考えられていて、ウクライナ当局者もこれを認める話が出されているのですが、陽動であっても、ロシア軍の占領部隊が戦闘能力が低く南へ、つまりクリミア半島方向へ進んでいる。
セバストポリについて考えられるのは二つ、クリミア半島をウクライナ軍は奪還するが元々ロシアの街であったセバストポリをウクライナ領土クリミア半島からは切り離して考える、という可能性が一つ。もう一つは、勢いに乗ってセバストポリまで占領しロシアに思い知らせるという、いわばウクライナ侵攻への報復的な行動が執られるということ。
クリミア大橋の維持が認められるのかも問題です。2014年のクリミア併合と共にロシアは2018年にクリミア大橋という、クリミア半島と大陸側のロシアロストフ州のタマン半島を結ぶ18kmの鉄橋を開通させています、クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋梁ですが、セバストポリは菱形のクリミア半島南部にあり、道路の大半はウクライナ領を通行している。
ゼレンスキー大統領の出口戦略がどのように考えられているかは未知数ですが、一つはセバストポリの維持を認めた上でクリミア半島を奪還する、つまり2014年以前の状態へ回復させる事です。これならばロシアを刺激しないがウクライナ住民の人権をウクライナの制度に戻す事が出来る、将来再度の侵攻の懸念を残すが決定的な対立は避けられるといえる。
セバストポリを含めて占領するとなりますと、ロシア側の停戦交渉における交渉余地がなくなる可能性が高くなります、何故ならば黒海にはロシア本土のクラスノダールにも基地はありますが小規模であり、またセバストポリには造船所があるため、ここを失陥すると黒海艦隊は再建さえ出来なくなる、こうした事情から戦争が全面戦争に拡大する可能性が。
ウクライナ世論を考えますと強硬論が出てくる可能性があります、それはロシア軍によるインフラ破壊が大き過ぎ、非戦闘員の被害も看過できなかったものがあるためです。ただ、こうした出口戦略とは、これは軍事用語では“政治の季節”という段階であり、今はそこまで考える余地は無い、まだまだ戦闘の趨勢が全般を決める段階ともいえるのですが、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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