北大路機関

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【防衛情報】中華民国台湾,最新F-16V戦闘機夜間演習実施と新型の天弓3型地対空ミサイルを報道公開

2022-09-27 20:02:08 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 中華民国台湾について中国軍事演習への対抗といえる新装備の発表がありました。

 台湾空軍は8月17日、戦闘即応演習としてアメリカから導入した最新鋭のF-16V戦闘機による夜間演習を発表した。この訓練は台湾花蓮県の花蓮空軍基地において実施され、F-16V戦闘機6機の同時発進が行われている。この基地では翌日に新型の天弓3型地対空ミサイルの報道公開が行われており、対抗演習における報道拠点の役目を担ったといえる。

 F-16VはF-16戦闘機のBlock70とBlock72を示す名称で、当初は廉価な戦闘機で在ったとの印象のあるF-16は年々強力な改良型が開発される一方、改良とともに費用の増大に見舞われている。自衛隊のF-2戦闘機と比較されたBlock52は過去のものとなり、ロッキードマーティン社では新型を強調すべくF-16E/Fの呼称を用いたが、更に一歩進めたもの。

 F-16Vはロッキードマーティン社が製造する戦闘機では第五世代戦闘機であるF-35戦闘機に準じる性能を持ち、AN/APG-83AESAレーダーを搭載するとともに機体フレーム強化設計により耐用飛行時間が12000時間に延伸、エンジンも強力なF100-PW-229を積む。台湾はF-16V戦闘機をを66機導入する方針であり、既に導入したF-16の改良も急いでいる。
■天弓3型地対空ミサイル
 天弓3型地対空ミサイルという新型ミサイルが公開されました。

 中華民国台湾国防部は新型の天弓3型地対空ミサイルを報道公開した。天弓3型は2022年8月18日、台湾花蓮県の花蓮空軍基地で報道陣に公開された。天弓3型は中華民国台湾が国産開発した地対空ミサイル天弓シリーズの最新型で、これにより旧式化が著しいMIN-23ホーク地対空ミサイル全てをこれからの数年間で置換える事が期待されている。

 天弓ミサイルシリーズは1984年に台北での閲兵式において初公開され、公開された当時はアメリカのペトリオットミサイルよりも優秀とされ、一方で閲兵式当日には当時最新の技術であったアクティヴフューズドアレイ方式のAESAレーダーは完成せずモックアップが行進していた、しかし、現物の開発は遅延を重ね、最終的にペトリオットを輸入する。

 天弓はその後一応のめどが立ち、1993年より配備開始となったが射程は70kmに留まった、この為2002年に改良型の天弓2型が開発され射程を150kmに延伸するとともに射程500kmの短距離弾道ミサイル天戟の母体ともなった。天弓3型は射程を更に200kmへ延伸すると共に、当面の脅威である中国製短距離弾道弾への迎撃能力を付与した新型である。
■Mk.41VLS対応の艦載型
 日本の様にイージスシステムの早い段階での供与が実現した状況とは違う台湾の新しい試み。

 天弓3型地対空ミサイルの報道公開により今後台湾が開発する対空ミサイル体系への影響と、この派生型となる短距離弾道弾の開発は大きな関心事といえよう。地対空ミサイルの弾道ミサイル改修は、例えば韓国の玄武シリーズの原点となる玄武Ⅰ型はアメリカから供与されたナイキハーキュリース地対空ミサイルをそのまま転用したもので、一般的だ。

 天弓3型の一つの特色は天弓2型と異なり発射器を垂直発射可能とした点だ、これは陸上自衛隊が沖縄などに配備する03式中距離地対空誘導弾システムと同様だが、森林やビル街等の錯綜地形から発射できると共に、艦載運用の可能性を示すものとなっている。特に台湾は海軍艦艇に搭載する天弓3型艦載型を試験中である、Mk.41VLSからの運用を見込む。

 Mk.41VLSは標準的な垂直発射装置であるが、台湾では1993年から8隻を導入した成功級ミサイルフリゲイトの搭載するターターシステムの旧式化という問題を抱えており、例えば台湾が過去に実施した第二次大戦型のギアリング級駆逐艦改修の様に成功級へMk.13発射装置に代えMk.41を搭載するならば、相応に強力な防空艦として再生しうるといえよう。
■強弓計画
 台湾では中国の弾道ミサイル脅威にもさらされている最中だ。

 中華民国台湾国防部は強弓計画という天弓3型地対空ミサイル改良型を開発中だ。天弓3型地対空ミサイルの報道公開の実施はそのシステム完成を誇示するものだが、同時にその発展型の開発も今後本格化する事だろう。具体的には射程を延伸し弾道ミサイル迎撃能力を強化するもので、特に8月初旬に中国の実施した演習が開発を加速させる要素となる。

 強弓計画そのものは2014年より推進されており、天弓3型地対空ミサイルは開発時点でミサイル防衛に転用するものであったといい得る。計画では有効射高を70kmまで延伸するといい、この為に現在の単段式ミサイルを二段式ミサイルへ改修する計画といい、今後は天戟戦術弾道ミサイルを転用した標的弾道ミサイルを用いた射撃試験を行う構想とされる。

 中国の軍事演習が加速させる可能性について、中国はアメリカのペロシ下院議長台湾訪問を受け、アメリカを牽制するべく弾道ミサイル演習を強行し、弾道ミサイルは敢えて台北上空を飛翔する経路で台湾東方沖海上へ着弾させる試験を実施している。台湾では国民を安心させるためにはミサイル防衛能力の強化も必要となり、計画の加速が予想されよう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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静岡県が自衛隊へ災害派遣要請-台風15号豪雨による大規模断水と地域孤立受け,発災三日後-危機管理に課題

2022-09-27 07:01:01 | 防災・災害派遣
臨時情報-台風15号静岡災害
 台風による水害から本日で四日目となりました。暴風圏こそなく中心気圧も台風としては大きくは無かった台風15号ですが静岡県を中心に線状降水帯が発生しました。

 静岡県の川勝知事は台風15号による静岡市清水区の興津川取水口閉塞による大規模断水、そして静岡市や川根本町など23の集落が道路に土砂が流れ込むなどして孤立状態となっている状況を受け、自衛隊へ災害派遣要請を出しました。これを受け静岡県を警備隊区として受け持つ第34普通科連隊等が給水支援を開始しています。しかし発災三日後のこと。

 断水は広範囲に及び、清水区では八割の世帯が断水となっています。清水区といいますと政令指定都市の静岡市一街区と思われるかもしれませんが、町村合併以前には清水市という大都市であり、いうならば旧清水市の八割が断水している状況、静岡県は県と海上保安庁などが28の臨時給水所を設置しているとのことですが、不充分との声が上がっています。

 川勝知事は当初災害派遣要請を出さなかった為、断水や交通遮断は短期間で解消されると受け止めていたのですが興津川取水口閉塞は増水した際に流木などが閉塞し26日朝の時点では復旧見通しよりも、状況確認が完了していない状況でした。すると、災害派遣要請を出さない背景には、静岡県の給水車等に余裕が在った為なのか、こう解釈していましたが。

 自衛隊法83条では災害派遣要請は都道府県知事の所管であり、地方自治法2条からも中央が災害派遣要請を代行し発出する事は、地方自治の原則に反します。平成28年度熊本地震では中央が自治体からの具体的要請を待たずプッシュ型支援という支援物資送付を実施した実例はありますが、これは災害派遣要請を受けての事で、ブッシュ型派遣はできません。

 川勝知事の判断ができない状況であったならば、副知事が災害派遣要請を代行する事は可能です、これは実際過去に実例があり、2011年3月11日、宮城県亘理町において町長が津波により死亡した際、副町長が臨時代行した事例があります、ただこれは公職選挙法東日本大震災特例法が根拠で、実質、県知事を政府が越権し要請を出す法律はありません。

 非常事態法制として、地方自治法や自衛隊法を平時から有事の段階へ切り替える法体系も必要なのかもしれませんが、これには憲法改正が必要であり、法治国家である事を重視するならば法律を簡単に乗り越えられない事は理解しているのですが、今回、大規模な死者は出ていないものの、阪神大震災の兵庫県知事を思いだし、大丈夫なのか、と危惧します。

 興津川取水口閉塞の復旧は今月中には無理の見通し、26日午後には静岡市が土曜日以降順次復旧するとの見通しを発表しており、これは言い換えれば9月中の復旧見通しが無い事を示した形です。すると、静岡県は危機管理の面で、被害状況の把握に三日以上を要した事となり非常に拙い状況を示した事となります。静岡県、防災先進県と考えられていた。

 東海地震、静岡県は元々1974年に大規模地震対策特別措置法に基づく想定東海地震の強化地域となっており防災行政は先進的であると考えられていました、しかし、今回の台風15号災害では後手に回り、先ず被害把握から時間を要する事を示した訳であり、地方自治に当る政治家の危機管理意識というものはもう少し真剣に考えるべきといえるでしょう。

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